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個人も顧問弁護士を持つ?その役割・存在意義などを元検事の弁護士が解説

「顧問弁護士」というと、企業や団体が持つものと思われがちです。

しかし、一般の個人、特に自分で個人事業の運営などもしていない方、たとえばサラリーマンをされている方や、主婦の方、お仕事を引退後の方などでも、弁護士と顧問契約を結んでいる方がいます。

このような個人の方々にとって、顧問弁護士が必要な理由は何でしょうか?また、顧問弁護士は、どのような役割を果たしてくれるのでしょうか?

この記事では、顧問弁護士の役割、個人が顧問弁護士を持つ存在意義、相談できる内容などについて、説明し、顧問契約の費用や弁護士の探し方も解説します。

1. 顧問弁護士とは?

顧問弁護士とは、顧問契約を結んだお客様に対し、法律相談、法的書面のチェック、法的文書の作成などのサービスを提供してくれる弁護士です。いわば法律分野での「かかりつけ医」と考えることもできます。

2. 個人が顧問弁護士を必要とする法律問題

たとえ、格別に事業を営んではいない個人の方でも、社会生活を送る上で、法律問題と無縁でいるわけにはいかず、様々な問題に巻き込まれる可能性は否定できません。

では、個人の方が、顧問弁護士に相談される問題には、どのようなものが多いのでしょうか?

2-1. 離婚問題

個人のお客様からの相談が多いのは、まず家族をめぐる問題であり、離婚問題が典型的です。

例えば、配偶者の不倫行為で離婚を考える場合、次のような疑問が解消できなければ、離婚するかどうかを決心することはできません。

  1. ①離婚の慰謝料額はいくらか?
  2. ②別居中の生活費(婚姻費用)を請求できるか?
  3. ③子どもの親権者はどちらになるのか?また養育費はいくらもらえるのか?
  4. ④配偶者名義の預金は半分もらえるのか?
  5. ⑤ローンが残っているマンションの名義はどうなるのか?
  6. ⑥配偶者が離婚を拒否したら、裁判所は離婚を認めてくれるのか?
  7. ⑦不倫相手に請求できる慰謝料はいくらか?

離婚問題ひとつをとっても、ここでは書き切れない程の法律問題が絡んでおり、そのひとつひとつを明らかにすることで、今後とるべき道を判断できるようになります。

例えば、預金が夫名義であっても、それが結婚前からの夫の財産であったり、夫が相続で得た財産であったりした場合を除き、夫婦の共有財産と評価され、離婚時の財産分与(民法768条)として、原則として妻も預金の半分をもらう権利が認められます。

このような問題に、顧問弁護士は即座に回答することができますから、決心に必要な情報、それも専門家による正確な情報を素早く知ることができます。

2-2. 相続問題

家族をめぐる法律問題で、相続問題も、顧問弁護士が個人のお客様から相談を受ける機会が多い事案です。

相続問題では、顧問弁護士は、個人のお客様から、次のような相談を受けることが多くあります。

  1. ①没後のトラブルを避けるための遺言書の書き方は?
  2. ②親戚がたくさんで、どこまでが相続権をもつ人なのか?
  3. ③長年、親の介護をしてきた自分の遺産の取り分は多くなるのか?
  4. ④兄は、生前の父から家を贈与されたのに、弟と同じ遺産では不公平ではないか?
  5. ⑤父が認知症になった後に書いたという遺言書が出てきたが、有効な遺言なのか?
  6. ⑥長男が全部相続するとの遺言書。他の子どもは何ももらえないのか?

例えば、ご自分が遺言書さえ残しておけば、そのとおりに相続させることができ、トラブルは起こらないと考える方がいます。しかし、配偶者や子どもといった法定相続人には、必ず相続できる遺留分(民法1042条)が保障されており、遺留分に配慮しない遺言書では、かえってトラブルの原因となりかねません。

また、亡くなった方から生前に財産を贈与されていた相続人は、特別受益者(民法903条)として、相続財産の先渡しを受けたものと評価されますので、これを考慮して、公平となるように相続の割合を計算しなくてはなりません。

日ごろ、お客様の家族関係を把握している顧問弁護士ならば、遺言書の案文について、御希望にそった提案が可能です。

2-3. 不動産問題

住む場所なくして生活はできませんから、家をめぐる法律問題は誰にでもついて回ります。

  1. ①戸建ての中古物件を購入したら、シロアリで柱がやられていた。解約できる?
  2. ②計画していた建物を建てられない規制のある土地を買わされてしまった。
  3. ③投資用に購入した賃貸マンションに家賃滞納者が居座っている。
  4. ④賃貸建物の新オーナーから、いきなり立ち退きを要求された。拒否できる?
  5. ⑤長く住む借家が、老朽化による建て換えとなる。立退料を請求できないか?

例えば、家賃を支払って居住している建物では、たとえオーナーが交代しても、正当事由がない限り、立ち退きを要求することはできません(借地借家法31条)。

その正当事由の有無は、貸主と借主それぞれの当該建物の使用を必要とする事情、これまでの事実経過、建物の利用状況、建物の現況、貸主が申し出た立退料の金額などの諸事情を考慮して判断されます(借地借家法28条)。

このような判断は、過去の裁判例を研究し、経験を蓄積している顧問弁護士に相談することが、もっとも的確な予想を可能とします。

2-4. 消費者問題

私たちは、自分では殊更に意識しなくとも、日常的に他人との間で、実に数多くの法律的な取引を繰り返しています。スーパーで買い物をするのは売買契約であり、荷物を宅配便で送るのは運送契約、病院で医師に診察を頼むのは医療契約といった具合です。

とくに個人が消費者として、事業者と取引をする場合には、その有する情報量や交渉力に大きな格差があるため、消費者に著しく不利益な取引が押しつけられるなどのトラブルが起きがちです。

例えば、「この終身保険は、間違いなく高い利回りの配当をお約束できます」と説明され、保険契約を結んだうえ、銀行からの借入金で保険料を一時払いしたところ、説明に反し、借入金の利息を下回る低配当しかなく、損害を被ったというケースがあります。

このように不確実な将来のことがらを、あたかも決まった事項であるかのように説明する「断定的判断の提供」があったときは、消費者は保険契約を取り消すことが可能です(消費者契約法4条1項2号)。

被害に気づいた後に、直ちに顧問弁護士に相談して契約を取り消せば、損害の拡大を防ぐことができます。

そもそも、日ごろ、金額の大きい契約をするときには、前もって顧問弁護士に相談するように心がけていれば、被害に遭うこと自体を防止できたでしょう。

2-5. その他の法律問題

以上の他にも、次のような様々な法律問題が顧問弁護士に寄せられています。

相談分野 具体例
労働問題
  • ・勤務先を不当に解雇された。
  • ・賃金が未払い。
  • ・工場で機械を操作中に怪我をした。
  • ・職場でセクハラ、パワハラを受けた。
債権問題
  • ・友人に貸した金が返ってこない。
  • ・借金の保証人になってしまった。
  • ・ローンやキャッシングを重ねて返済できない。
交通事故
  • ・被害者となったが、相手の保険会社が、こちらの過失を主張して治療費を払ってくれない。
  • ・過失がないのに、加害者とされ免許停止となったが、納得できない。
刑事事件
  • ・家族が逮捕されてしまったが、面会させてもらえない。
  • ・犯罪者を刑事告訴したい。
  • ・犯罪の被害を受けたが、犯人から示談を打診された。

顧問弁護士がいれば、これらの問題を素早く相談し、的確な法的アドバイスを受けることができます。

3. 個人で顧問弁護士を契約するメリット

多様な問題を相談できるという点以外にも、個人が顧問弁護士を持つことには様々なメリットがあります。

3-1. 早く相談でき、早く対処方針を決めることができる

・弁護士は忙しい

弁護士は忙しい人が多いです。常に数十件の事件を抱え、裁判への出席、出張、現場の調査、依頼者や証人との打ち合わせ、警察署や拘置所での面会、講演活動、弁護士会の会務、企業の社外役員業務、自治体の公益委員活動など、いくつもの仕事を並行してこなしているのが普通の弁護士です。

このため、目当ての弁護士を見つけたとしても、忙しくて面談を断られてしまうこともあり、ただちに面談できるとは限りません。

・一度の相談で解決しないことも多い

相談することができても、初回の1時間程度では、相談の概要を話すことができる程度です。それで問題が解決すれば幸いですが、多くの場合、時間がたりず、また次の相談日程を予約することになります。

弁護士が事案の内容を把握することにも時間がかかる場合もありますし、特殊な法律や裁判例などを調査する必要があるケースも少なくありません。そうなると、弁護士から、方針のアドバイスを得るまで、数週間から月単位で時間がかかってしまうケースもあります。

もちろん、緊急を要する案件であれば、弁護士も配慮して対応してくれますが、そうでない限りは、どうしても時間がかかり、その間、相談者はなかなか心の平静を得られないことにもなりかねません。

・顧問弁護士なら、優先して相談を受けてくれる

しかし、顧問弁護士がいれば、そのような心配を減らすことができます。忙しくとも、顧問先のお客様には、優先的に時間をとって相談を聞きます。

弁護士によってはチャットツールで気軽に質問できる環境を用意していますし、問題が大きくなっていないうちから相談することで、早い段階から事情を理解してもらうことができます。

3-2. 信頼関係が築けている

弁護士を依頼するときには、弁護士の人柄も気になるかと思います。

性格の良し悪しよりも、依頼者と弁護士の相性に良し悪しがあり得ます。

せっかく相談した弁護士でも、横柄であったり、高圧的だったりと感じれば、依頼することを躊躇する方もいるかと思います。

逆に、人当たりが柔らかい弁護士にあたって、頼もしさが足りないと感じてしまう方もいるでしょう。

事件が起きて相談をしたのに、どうも合わない弁護士だと感じたときに、また別の弁護士を探し、予約して相談をするのには時間がかかります。

しかし、あらかじめ信頼できる顧問弁護士見つけられていれば、安心して相談することができます。

3-3. 受任費用の割引を受けることができる

弁護士によっては、顧問先のお客様の事件処理を正式に受任する場合、弁護士費用の割引をしてくれる場合があります。

割引の有無や割引率は、個々の顧問契約によって異なりますが、10%から20%の割引が多いようです。

4. 顧問弁護士にかかる費用とサービス内容

4-1. 顧問料

日本弁護士連合会の調査によると、顧問料の月額は、5万円が32.2%、3万円が30.3%、2万円が11.8%となっています(※)。

このように、顧問料は月額3万円から5万円の設定が多いのですが、個々の弁護士や顧問契約の内容によって異なりますので、よく確認することが大切です。

※日本弁護士連合会「アンケート結果に基づく市民のための弁護士報酬の目安:2008年度アンケート結果版」より

4-2. 顧問弁護士のサービス内容

一般的には、顧問契約によって受けることができるサービスは、①法律相談、②契約書などの法的な書面チェック、③比較的簡易な法的書面の作成などです。

相談できる回数や相談時間、チェックを受けることのできる書面の枚数などに、顧問契約で上限を設けているケースもあります。その範囲であれば、顧問料だけで、別途の費用は不要です。

5. 個人で顧問弁護士を探す方法

顧問弁護士を探す方法はいくつかあります。代表的なものを紹介します。

5-1. 税理士、公認会計士、司法書士など士業の先生に紹介してもらう

弁護士は、業務の性質上、同じ士業の先生方との交流が頻繁です。協力して事件を解決することも多いので、税理士や司法書士は、その弁護士の実務能力を良く知ることができます。したがって、信頼されている弁護士を紹介してもらえることが期待できます。

5-2. 企業の経営者に紹介してもらう

企業経営者なら、その顧問弁護士を紹介してもらえることもあります。顧問契約を続けているということは、弁護士としての能力・信頼性に問題がない証拠です。

5-3. 友人知人が依頼したことのある弁護士を紹介してもらう

友人知人が、ある弁護士に依頼をしたことがあり、良い結果をもたらしてくれたという場合は、その弁護士を紹介してもらうことも良いでしょう。

6. まずは問い合わせてみてください

個人で顧問弁護士を持つことを検討されている方は、何らかの不安をお持ちの方も多いかと思います。
顧問弁護士に相談しておくことで、無用なトラブルに巻き込まれることを避けることにつながります。まずは一度弁護士に会って話をしてみることが大切です。

※大変申し訳ありませんが、上原総合法律事務所では、業務多忙のため、現在、個人の方との新規顧問契約の取り扱いを停止しています。

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