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撮影罪(性的姿態撮影罪)とは何か

令和5年6月現在、盗撮行為等の規制が強化されようとしています。

この記事では、新しく規制されようとしている「性的姿態撮影罪」(撮影罪)とは何かについて解説します。

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 撮影罪(性的姿態撮影罪)とは

令和5年3月14日、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」案(以下「本法律案」と言います。)が国会に提出され、今国会での成立が目指されています。


本法律案では、駅や街中などで知らない人の下着などをひそかにスマートフォンやカメラで撮影するいわゆる盗撮行為のみならず、人の性的行為を密かに撮影したり、強制わいせつや強制性交等が行われている場合において撮影する行為が「性的姿態等撮影」罪として規制されています。


本法律案では、「性的姿態等撮影」罪の法定刑は三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金とされています。

 撮影罪の具体的内容

性的姿態撮影罪(撮影罪)に当たるのは、以下の4つの行為です(「対象性的姿態等」の意味は後ろで解説します。)。

1 正当な理由がないのに、ひそかに、対象性的姿態等を撮影する行為
2 不同意わいせつ罪に当たる行為等を利用して、対象性的姿態等を撮影する行為
3 行為の性質が性的なものではないと勘違いさせたり、特定の者以外の者が見ないと勘違いさせるなどして、対象性的姿態等を撮影する行為
4 正当な理由がないのに、13歳未満の者の性的姿態等を撮影し、又は、五年以上前に生まれた人が13歳以上16歳未満の者の性的姿態等を撮影する行為

 

対象性的姿態等」とは、以下のイとロから、「人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているもの」を除いたもののことを言います。

イ 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
ロ わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態

 

よくある盗撮行為として、駅のエスカレーターで女性のスカート内の下着を撮影する行為や、室内での性的行為を外から撮影する行為がありますが、これらの行為が「1 正当な理由がないのに、ひそかに、対象性的姿態等を撮影する行為」として性的姿態撮影罪になり得ます。


参考 本件法律案抜粋

(性的姿態等撮影)

第二条

次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。


一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為


イ 人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分


ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態


二 刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為


三 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為


四 正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

 

 罰則等

罪名説明罰則
性的姿態等撮影罪

正当な理由がないのに、ひそかに、性的姿態等を撮影3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
不同意わいせつ罪に当たる行為等を利用して、性的姿態等を撮影
性的なものではないと勘違いさせたり、特定の者以外の者が見ないと勘違いさせるなどして、性的姿態等を撮影する行為
正当な理由がないのに、16歳未満の子どもの性的姿態等を撮影
(相手が13歳以上16歳未満の子どもであるときは、行為者が5歳以上年長である場合)
性的影像記録提供等罪性的姿態等の画像(性的影像記録)を特定・少数の者に提供3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
性的姿態等の画像(性的影像記録)を不特定・多数の者に提供又は公然と陳列5年以下の懲役又は500万円以下の罰金
性的影像記録保管罪提供又は公然陳列の目的で、性的姿態等の画像(性的影像記録)を保管した者2年以下の懲役又は200万円以下の罰金
性的姿態等影像送信罪不特定・多数の者に、撮影罪に該当する行為と同じ方法で、性的姿態等の影像を送信(ライブストリーミング)5年以下の懲役又は500万円以下の罰金
性的姿態等影像記録罪送信罪の配信行為により送信された性的姿態等の影像を、その事情を知りながら記録3年以下の懲役又は300万円以下の罰金

 現在の規制との違い

これまでは、駅や街中などで知らない人の下着などをひそかにスマートフォンやカメラで撮影するいわゆる盗撮行為については、都道府県が制定する条例で規制されていました。


都道府県によって、どの場所における行為を規制しているかが違っていましたし、法定刑も「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」とする地域もあれば「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」とする地域もあるなど、ばらつきがありました。


本法律案が成立すれば、「正当な理由がないのに、ひそかに、対象性的姿態等を撮影する行為」が対象として統一されるとともに、法定刑も
3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金と引き上げられます。

 

・強制わいせつをしている際の撮影
・性的なものではないと勘違いさせての撮影
・特定の人以外が見ないと勘違いさせての撮影
・16歳未満の者の撮影
が規制された点も規制の強化と言えます。

 

 具体的に何か変わるのか

本法律案が成立すると、これまで条例違反とされていた盗撮行為が性的姿態等撮影罪となり、法定刑が上がります。


法定刑が上がると、その分、いわば「悪い罪」ということになり、規制が増えます。


まず、緊急逮捕(罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときに、逮捕状なしで逮捕すること)が可能になります


また、逮捕・勾留された後に起訴された場合の保釈に関する法律関係が変わります


起訴された人について保釈の請求があった場合、裁判所は、一定の除外事由に該当しない限り保釈を許可しなければいけません(権利保釈、と言います。)。


ですが、常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したときはこの例外に当たります(刑事訴訟法第89条第1項第3号)。


そのため、常習として性的姿態等撮影罪を犯していた場合、権利保釈を得られないこととなり、釈放されるためには、権利保釈の除外事由があっても保釈するとする裁量保釈(刑事訴訟法第90条)を勝ち取る必要があります。

 性的姿態等撮影をしてしまったら

本法律案が成立した場合、性的姿態等撮影行為の規制を強化する、という国の意思が存在するということができます。

昨今、意図せずにインターネット上に自分のわいせつ画像が載せられてしまうという問題が多発しています。

国の規制強化は、このような社会情勢を反映していると考えられます。


そのため、性的姿態等撮影行為をしてしまった場合、適切な対処をとらなければ、厳しい処罰を受けることになります。


性的姿態等撮影行為をしてしまった人がするべき適切な対処は、大きく分けて、

「再犯防止」

「発生した事件に対する誠実な対応」

の二つです。


特にいわゆる盗撮行為の場合、行為への依存傾向のある人が犯行を繰り返し行なった末に検挙されます。

そのため、現在検挙されていないけれども盗撮行為をしてしまっている人は、再犯予防をすることが必要です。

【再犯予防】

盗撮を繰り返している方は、「盗撮は悪いことだ」とわかりながら繰り返しているのですから、自分の意思だけで再犯を予防することは困難です。

医師などの専門家と、同種の問題を抱える人との対話を繰り返す中で、一日一日再犯を防いでいく必要があります。

 

【真摯な対応】

被害者が誰かわかっている事案では、被害者に対して謝罪・示談等する必要があります。

特に、捜査機関に検挙されている場合、逮捕されている場合はもちろん、逮捕されていない場合でも、しっかりと謝罪・示談をすることが重要です。

対して、まだ検挙されておらず、かつ、被害者が誰かわからない場合、警察に自首するという選択肢があります。

自首をすれば必ず警察に事件を認識されるため、ためらわれることもあるかと思いますが、弁護士に相談の上、自首するかどうか検討するべきです。

盗撮をしてしまったらどうすれば良いかについて、詳しくはこちらをご覧ください

https://keiji-kaiketsu.com/sexciaxciacrime/voyeur/

 お気軽にお問い合わせください

上原総合法律事務所には、元検事の弁護士が8名在籍し、刑事事件に力を入れて取り組んでいます。

事件に適切に対処するとともに、今後もう二度と犯罪を繰り返さずに生きていくためには、専門家の手助けが必要です。

上原総合法律事務所では、刑事事件の対処のみならず、依頼者のその後の人生がより良くなるようにお手伝いをさせていただきます。

お気軽にお問い合わせください。

 

弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

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