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風営法とは?飲食店を始める人が気を付けるべき注意点等を元検事の弁護士が詳しく解説

 

 風営法違反に気をつけるべき

飲食店を営むには,食品衛生法の規定により保健所による許可を得る必要があります。

ですが,飲食店を経営する人が気を付けなければいけないのは食品衛生法だけではありません。

飲食店は,業態によっては風営法の規制を受けます。

正式には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」という名前の法律です。

この記事では「風営法」と略します。

特に,「風俗営業」に当たるかどうかについて注意が必要です。

風俗営業に当たると,許可を取ったり従業員の年齢制限が出たりします。

この記事では,コンカフェ,バーなどの飲食店の経営において注意すべき風営法上の規制について説明します。

 風営法とは

風営法は,以前は風俗営業等取締法という名前で,昭和23年に成立しました。

風営法は社会の変化に従って改正を繰り返し,昭和59年には名称を「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に変更しています。風適法,などとも呼ばれます。

「風俗営業等取締法」から「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に名前が変わっているように,現在の風営法は必ずしも風俗営業等を禁止したりして悪いものとするものではなく,風俗営業等が社会に害を加えずに社会と両立していけるようにするための法律です。

 

(目的)

第一条 この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。

 


風営法は,「風俗営業」と「性風俗関連特殊営業等」を規制しています。

飲食店との関係では,そのお店が「風俗営業」に当たるかが問題となります。

また,主にお酒を提供する飲食店(「酒類提供飲食店営業」と言います。)を深夜(午前零時から午前六時)に営業しようとする場合,届出が必要となります。

 

酒類提供飲食店営業の定義

正確には,風営法第2条第13項第4号において,酒類提供飲食店営業とは「飲食店営業(設備を設けて客に飲食をさせる営業で食品衛生法(中略)の許可を受けて営むものをいい、前三号(注:接待飲食等営業、店舗型性風俗特殊営業、特定遊興飲食店営業のこと)に掲げる営業に該当するものを除く。以下同じ。)のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業(営業の常態として、通常主食と認められる食事を提供して営むものを除く。)」と定義されています。


なお,風俗営業は,原則として,深夜に営業することはできません(風営法第13条第1項)。

以下では風俗営業について詳しく説明していきます。

 

 風俗営業とは

風営法第2条において,5種類の「風俗営業」が規定されています。

 

(1)第1号営業 料理店,社交飲食店(風営法第2条第1項第1号)

「キャバレー、待合、料理店、カフェーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業」は風営法第2条第1項第1号で風俗営業とされています。


ここでは「接待」に当たるかどうかが問題となり得ます。

接待については4で詳しく記載します。

 

(2)第2号営業 低照度飲食店(風営法第2条第1項第2号)

「喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの(前号に該当する営業として営むものを除く。)」は風営法第2条第1項第2号で風俗営業とされています。


ルクス
というのは明るさを示す指標で,機械を使って計測することができます。

低照度飲食店に当たるかどうかは,お店の明るさという客観的に判断可能な基準がありますので,第2号営業に当たるかどうかは問題になりづらいです。

なお,10ルクスとは,概ね上映前の映画館と同じくらいの明るさと言われています。

 

(3)第3号営業 区画席飲食店(風営法第2条第1項第3号)

「喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの」は風営法第2条第1項第3号で風俗営業とされています。


区画席飲食店に当たるかどうかも,設備の広さという客観的に判断可能な基準がありますので,第3号営業に当たるかどうかは問題になりづらいです。

 

(4)第4号営業 麻雀,パチンコ等(風営法第2条第1項第4号)

「まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」は風営法第2条第1項第5号で風俗営業とされています。


麻雀やパチンコなどをする店かどうか,というのは明白
ですので,第4号営業に当たるかどうかは問題になりづらいです。

 

(5)第5号営業 ゲームセンター等(風営法第2条第1項第5号)

「スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)」は風営法第2条第1項第5号で風俗営業とされています。


第5号営業の代表例はゲームセンターです。

ゲームセンターかどうか,というのは明白ですので,第5号営業に当たるかどうかは問題になりづらいです。

 

 接待とは

コンカフェやバーの経営者の方からは、以下の接客の方法に関するご相談をいただきます。

・経営しているお店が第1号営業にあたらないか

・風俗営業になってしまわないか

・風俗営業だといわれるおそれをなくすためにどうすべきか


接客の方法については「接待」に当たらないかが問題となります。

風営法にいう「接待」とは,「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と規定されています(風営法第2条第3項)。

ですが,この文言だけでは何が「接待」に当たるのかが明らかではありません。

法律に「接待」に当たるかどうかの細かい基準が書かれていませんが,警察による基準が作られています。

 

接待についての警察の基準におけるコメント

この基準には,「接待とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」をいう。

この意味は、営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して(中略)興趣を添える会話やサービス等を行うことをいう。

言い換えれば、「特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うことである。」とコメントされています。

 

警察の基準ですので,警察官はこの基準に従います。

そのため,実際の事案において「接待」に当たるかどうかは,この基準に基づいて,お店の状況を具体的にみながら,判断されるといえます。

 

裁判例について

第3号営業における「ダンス」に当たるかどうかが問題となった裁判例があり,参考になります。

その裁判例は,第3号営業を無許可で行ったという風営法違反被告事件が最高裁まで争われ,地裁,高裁,最高裁の全てで弁護側が勝訴し,無罪判決が確定しています。

この一連の裁判で,高裁が「ダンス」の判断基準を述べています。

高裁は,まず「規制の主な目的が、男女間の享楽的雰囲気が過度に醸成されることを防止することを通じて性的逸脱行為の発生を防ぎ健全な性風俗秩序を維持することにある」などとして規制の目的等を検討しました。

その上で,第3号営業の対象となる「ダンス」はダンス全てではなく,「男女が組になり、かつ、身体を接触して踊るのが通常の形態とされているダンスを指す」とし,第3号営業として規制される営業は,「設備を設け、このようなダンスを客にさせ、かつ、客に飲食をさせる営業である」としています。

第1号営業の規制の目的が「男女間の享楽的雰囲気が過度に醸成されることを防止することを通じて性的逸脱行為の発生を防ぎ健全な性風俗秩序を維持することにある」と考える余地は十分にあります。

そうすると,このような目的に照らして規制が必要な行為が「接待」に当たる,ということになり得ます。

実際のお店での行為が「接待」に当たるかどうかは,このような視点を持ちながら,具体的事情を踏まえて検討する必要があります。

 

以下では警察の基準に書かれている具体例を記載します。

なお,接待は異性間によるものだけではありません。同性間での行為も接待になります。

 

 警察の基準における具体例

談笑・お酌について

【一般に接待に当たるとされているもの】

・特定少数のお客さんの近くにいて,継続して,話し相手となったり,お酒等の飲食物を提供したりすること


【一般に接待に当たらないと考えられているもの】

・お酌をしたり水割りを作るけれどもすぐにその場を立ち去る行為

・お客さんの後方で待機したりカウンター内にいたりして,単に注文に応じて酒類等を提供するだけの行為

・あいさつやちょっとした世間話など,短時間のコミュニケーション

ショーなどについて

【一般に接待に当たるとされているもの】

・特定少数のお客さんに対して,そのお客さんだけの客室又は場所において,ショーを見せたり歌を聴かせたりすること


【一般に接待に当たらないと考えられているもの】

・ホテルのディナーショーのように不特定多数のお客さんに対し,同時に,ショーを見せたり歌を聴かせたりすること

お客さんの歌などについて

【一般に接待に当たるとされているもの】

・特定少数のお客さんの近くで,そのお客さんが歌うこと勧めたり,その客さんの歌に手拍子をとったり褒めたり一緒に歌ったりすること


【一般に接待に当たらないと考えられているもの】

・お客さんの近くにいず,不特定のお客さんに対し歌うことを勧めたり,不特定のお客さんの歌に対し拍手をしたり褒めたりすること

その他

【一般に接待に当たるとされているもの】

・お客さんと身体を密着させたり,手を握る等客の身体に接触すること

・お客さんの口まで飲食物を差出し,お客さんに飲食させること

 

【一般に接待に当たらないと考えられているもの】

・社交儀礼上の握手,酔ったお客さんの介抱のために必要な限度での触れたりすること

・単に飲食物を運んだり片付けたり,お客さんの荷物, コート等を預かること

 

 風営法に違反したらどうなるか

警察庁は,風俗関係事犯の取締り状況を公表しています。

令和3年は936件の風営法違反が摘発されました。

そのうちの148件が無許可営業によるものです。

「飲食店グループの経営者らは、公安委員会から風俗営業の許可を受けないで、店内において客に対し、女性従業員に接待をさせるとともに、酒類を提供して飲食をさせるなど無許可で風俗営業を営んだ。」事例などが摘発されたと記載されています。

 

第1号営業の無許可営業は刑事事件になります。

法定刑は,2年以下の懲役又は200万円以下の罰金(風営法第49条第1号。懲役と罰金が両方課されることもあります。)

 

無許可営業の摘発に際しては,通常,店舗における捜索差押が行われ,場合によっては経営者などが逮捕され,営業ができなくなります。

また,無許可営業で摘発されて懲役又は罰金となると,5年間風俗営業の許可を得られなくなります(風営法第4条第2号イ)。

 

法人の場合の不許可事由

法人が風俗営業の許可申請をしようとする場合,法人の役員に不許可事由があると,その法人についての不許可事由となります(風営法風営法第4条第11号)。

すなわち,A社の役員であるX氏について不許可事由があると,X社の許可申請も不許可になります。

 

無許可営業で有罪または罰金になったということはそのお店が風俗営業にあたるということなので,摘発されてしまうと,風俗営業の許可を5年間取れなくなり,同じ形態ではお店の営業ができなくなることを意味してしまいます。

このように,無許可営業をすると,身柄拘束や刑罰の対象となる他,風俗営業の許可も得られなくなってしまうため,とても注意が必要です。

 

 お気軽にお問い合わせください

以上のように,飲食店を経営するときには,風営法違反にならないように注意が必要です。

特に,営業態様が「接待」に当たるか微妙な場合

・風俗営業としての許可を取得するか

・接待に当たらないように業務内容を作るかの

いずれかの対処が必要です。

上原総合法律事務所では,個別具体的な事案に応じ,風俗営業にあたらないかどうか,どのようにしたらお客さんの満足度を下げずに風俗営業にあたらないようになりえるかなどについて,個別具体的にご相談に乗ることができます。

何事も紛争・トラブルを予防するための事前の対処がとても大切です。

飲食店を経営していてお悩みの方は,お気軽にご相談ください。

 弁護士費用について

法律相談料は25000円(1時間まで)です。

風俗営業にあたらないか等の判断については,顧問契約をご依頼いただく方を対象に,税別10万円でお受けいたします(1店舗あたり。必要に応じて現地に参ります。実費別。)。

顧問契約についてはこちらをご参照ください。

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