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強制性交等で不起訴になる場合とは

 捜査の対象となったらどうすべきか

 

性的関係を持った相手が捜査機関に「暴行などされて意思に反する性交等をされた」と申告すると,強制性交等罪の嫌疑がかかります。


強制性交等罪として捜査される事件は,見知らぬ人の家に押し入って犯行に及んだり路上や暗がりにいる人を襲う「他人型」。

マッチングアプリで知り合った相手や以前からの友人などの知っている人と自宅やカラオケボックスにいるときに行為に及ぶ「知人型」の事件も少なくありません。


知人型の事件においては,加害者とされている人が

・「被害申告者は行為に同意していた」
・「同意していたと思っていた」

と話す事件がたくさんあります。

※知人型の事件の中には,被害申告者が「お酒を飲みすぎて意識がないときに行為をされた」「記憶がないので薬を飲まされていたのだと思う」と話す事件もあります。

抵抗できない状態の人に対する行為を処する「準強制性交等罪の嫌疑がかかります。


このような事件でも捜査機関は加害者とされている人を被疑者として扱い,同意や同意したと思っていたことの真実性を捜査します。


強制性交等をしてしまった方は,何もしなければ実刑となって刑務所行きになるリスクがあるめ,しっかりとした弁護活動を受ける必要があります。

それだけでなく

・「被害申告者は行為に同意していた」
・「同意していたと思っていた」

と認識している方も,強制性交等罪で起訴されたり有罪判決を受けると人生にとても大きな悪影響が生じるため,しっかりとした防御活動をする必要があります。


この記事では

☑ 強制性交等罪とは何か

☑ 強制性交等罪の被害深刻をされたり捜査の対象となった方がどうすべきなのか

記載します。

準強制性交等罪についてはこちらをご覧ください。

 

 強制性交等罪とは

強制性交等罪は刑法177条に規定されています。


13歳以上の人に対して,被害者が反抗できないくらいの暴行又は脅迫をして性交(セックス)したり,性交類似行為(口腔性交,肛門性交)した罪です。

,13歳未満の男女に対しては,暴行や脅迫をしなくても,性交や性交類似行為をした場合は,強制性交等罪が成立します。

13歳未満の男女に対しては,相手の同意があっても,強制性交等罪が成立します。

以前は強姦罪として強制性交を罰していましたが,平成29年7月施行の法改正により,強制性交等罪が規定されました。

強姦罪においては被害者が女性に限定されていましたし,被害者などの告訴がなければ起訴できない(このような罪を「親告罪」と言います。)とされていました。

ですが,強制性交等罪への法改正により,性交に限らず性交類似行為も強制性交等罪として重く処罰することとするとともに,被害者の性別も問われず,告訴も必要なくなりました

※ 令和4年10月現在,強制性交等罪の処罰対象をより広範にするなどの法改正が準備されていますが,この記事では令和4年10月現在で施行されている法律の内容を解説しています。


お酒を飲ませて意識を失わせたり嘘をついたりして抵抗できなくして性交や性交類似行為をした場合,強制性交等罪と同様に扱われます。

た,18歳未満の男女に対して,その者を現に監護する者が影響力を利用して性交や性交類似行為をした場合は,監護者性交等罪として強制性交等罪と同様に扱われます。

強制性交等罪,準強制性交等罪,監護者性交等罪を犯して人を死亡させたり怪我させた場合,強制性交等致死傷罪となります。

強制性交等罪,準強制性交等罪,監護者性交等罪の法定刑は5年以上20年以下の懲役(時効は10年)。

強制性交等致死傷罪の法定刑は無期懲役又は6年以上20年以下の懲役(時効は30年)です。

刑法抜粋

(強制性交等)

第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛(こう)門性交又は口腔(くう)性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。


(準強制わいせつ及び準強制性交等)

第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。

2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。


(監護者わいせつ及び監護者性交等)

第百七十九条 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。

2 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。


(強制わいせつ等致死傷)

第百八十一条 第百七十六条、第百七十八条第一項若しくは第百七十九条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。

2 第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。

 

 逮捕されないためには

令和3年犯罪白書によると強制性交等罪の勾留請求率は99.6%となっており,逮捕されたらほぼ確実に勾留請求される,ということがわかります。


ですが,これは逮捕された後のことであり,被害申告者が警察に逮捕してほしいと言ってもすぐに逮捕されるとは限りません。


強制性交等罪で逮捕をされると,逮捕された人の人生にとても大きな影響を与える可能性があります。


そのため,特に知人型の事件(
マッチングアプリで知り合った相手や以前からの友人などの知っている人による事件)で性行為の行われたホテルや家に一緒に行っているのであれば,同意の上で行為をしていたり,加害者とされている人が同意があると誤解していた可能性があります。


このような場合,捜査機関は,メッセージ履歴や防犯カメラ映像などの客観的な証拠から行為前後の行動や行為者同士の関係を考慮し,逮捕に踏み切るべきかを慎重に検討します。

 

上原総合法律事務所では,知人型の事件において,弁護側が

・独自に証拠を収集

・当時の状況を書面にまとめるなどして捜査機関に提出

捜査機関の理解を得ることで,身柄拘束を避ける,ということを繰り返しています。

 

なお,他人型の事件(見知らぬ人の家に押し入って犯行に及んだり路上や暗がりにいる人を襲った場合)について犯人が誰なのかが明らかになったら,更なる犯行が行われることを防ぐため,捜査機関はなるべく早く逮捕するのが通常であると考えられます。

 不起訴になる場合とは

令和3年の検察統計によれば、検察庁で処理した1541件のうち948件の約61%が不起訴処分となっています。


検察官が事件を不起訴処分にする理由はたくさんありますが,多くの事件は「起訴猶予」もしくは「嫌疑不十分」という理由により不起訴になっています。


起訴猶予とは,犯罪の嫌疑が十分あり,起訴して有罪にできる証拠があるけれども,検察官の判断で訴追の必要がないと考えて起訴をしない処分のことす。

起訴便宜主義

刑事訴訟法第二百四十八条は「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」と規定しており,犯罪をしたと考えられる場合でも起訴しないことができます。


示談が成立して被害者が刑事処罰を望んでいない場合には,起訴猶予となることが見込まれます。


嫌疑不十分とは,犯罪を立証して裁判で有罪判決を勝ち取ることができるほどの証拠がない場合に不起訴にするものです。


加害者とされた人が「同意があった」「同意があると思っていた」などと主張しているときに,これを覆すに足りる証拠がない場合などには,嫌疑不十分で不起訴になります。


検察庁内では,嫌疑不十分にすべきか議論する際に,裁判で有罪に持ち込むことができるかどうか,という意味で「公判維持できるかできないか」などと言われます。

 

 不起訴にするための弁護活動

強制性交等を実際にしてしまっている場合,捜査機関は有罪にできる証拠を収集できる可能性があるため,嫌疑不十分で不起訴になると期待するのは危険であり,起訴猶予を目指すことになります。


そうすると,不起訴にするための最も有効な手段は,示談することです。

この場合,被害者は強制性交等の被害に遭っているので,そう簡単には許してくれません。


ですが,被害者にとっても,刑事事件に長期間関わることは良いことではありません。


加害者側が誠意を尽くし,粘り強く交渉していくことで,示談を成立させ,被害者を刑事事件から解放することを目指すべきです


この場合,示談金の金額は高く,100万円以上になることも少なくありません。


これに対して,本当に同意があったり,本当に同意があると思っていた場合,犯罪は成立しません。


このような場合嫌疑不十分での不起訴を目指すことができます。


同意があったり同意があると思っていた場合には当事者間で性行為に至る経緯があるため,丁寧に証拠を探していくことで,行為前後のやりとりや従前の人間関係を立証できます。

 

嫌疑不十分を目指すときの考え方

検察官は,起訴したら確実に有罪を勝ち取れる,と考える場合にのみ起訴します。

そのため,嫌疑不十分を目指すためには,無実を立証することまでは必要なく,検察官が「これはもしかしたら有罪にならないかもしれない」と思わせられれば良いことになります。

無実の立証と,検察官に「これはもしかしたら有罪にならないかもしれない」と思わせることの間には,大きな差があります

 

上原総合法律事務所は元検察官の弁護士5名(令和4年11月1日現在)が在籍しており,事件について議論しながら事件処理をしています。


上原総合法律事務所は,元検察官の弁護士集団である利点を生かし,ご依頼をいただいた事件について,どのような証拠・主張があれば検察官に「これはもしかしたら有罪にならないかもしれない」と思わせられるかを検討することで,不起訴を勝ち取り続けています。

 執行猶予にするための弁護活動

強制性交等罪の法定刑は5年以上20年以下の懲役であり,重い罪です。


執行猶予は3年以下の懲役についてつけることができるため,強制性交等罪の法定刑では執行猶予をつけてもらうことができません。


この意味で,強制性交等罪は原則として実刑になる罪です。

刑法抜粋(下線筆者)

(刑の全部の執行猶予)

第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。

一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

 

そのため,強制性交等罪を犯して執行猶予をつけてもらうためには,減軽してもらう必要があります。


減軽により,裁判所は,法定刑よりも軽い刑罰を下すことができます。


法律上,さまざまな減軽がありますが,強制性交等罪を犯した場合に視野に入れるべき減軽は,以下の2つです。

・自首減軽

・酌量減軽


自首は,犯行自体もしくは犯人が誰なのかが知られる前に捜査機関に自己の犯罪を申告することで成立します。


裁判所は自首を被告人に有利な情状として考慮しますので,執行猶予になる確率が高まります。


また,酌量減軽は,「犯罪に情状に酌量すべきものがあるとき」になされます。


酌量すべき事情は個別の事案に応じて多様ですが,全ての事案で示談交渉と再犯防止を行う必要があります。


示談して被害者に被害弁償をすることや許してもらうことは有利な情状になります。


た,強制性交等罪を含む性犯罪は再犯率が高いため,裁判官に安心して執行猶予にしてもらうため,再犯予防のための仕組みを構築する必要があります

 

再犯予防

再犯予防は,本人の「もうしません」という意思や言葉だけでは足りず,犯行に及んだ原因とそれに対する対処を,医師などの専門家とともに構築する必要があります。

強制性交等を行なってしまった方の多くは認知の歪み等の原因があります。

上原総合法律事務所では,専門の医師にご相談しながら実際に再犯を防ぐための活動も支援します。

刑法抜粋(下線筆者)

(自首等)

第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。


(酌量減軽)

第六十六条 犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは、その刑を減軽することができる。

 

 自首について

まだ警察から連絡が来ていなかったり逮捕されていない場合でも,以下のような悩みを抱えている方は多いです。

☑ 後悔している
☑ 夜も眠れない
☑ 逮捕されたらと考えると不安でしかたない

このような方は、相手方が分かっていれば弁護士を通じて示談交渉するべきです。
また、示談交渉ができないのであれば、自首をすることを強くお勧めします。

強制性交等は、実刑になる可能性が高いです。

ですが,自首をすれば,逮捕を避けられる可能性が出てきます。

また,逮捕されたとしても裁判官が勾留しないでくれたりする可能性が出てきます。

6で述べたとおり,自首すれば,執行猶予がつく可能性も高まります。


被害者にも,反省していることをわかりやすく示すことができます。


そのため,あらかじめ弁護士に相談し,自首後に警察にどのようなことを話すのかを打ち合わせの上,弁護士を同行させて自首するべきです。

 

 無実について

強制性交等をしていない場合は,冤罪により刑罰を受けないように,不起訴処分や無罪を求めて徹底的に戦う必要があります。


これには,性交等をしたけれども同意があったと思っていたという場合も含まれます。


性交等自体をしていないという場合,以下のような可能性があります。

・ 被害者による犯人の特定が誤りである可能性

・ 被害者が嘘を言っていて強制性交等の被害自体がなかったという可能性


そのため,弁護士が,無罪を勝ち取るための証拠を探します。


た,無実の場合,取調べ対応についても,弁護士としっかり打ち合わせをする必要があります。


「無実だから事実を正直に言えば良い」とだけ思って取調べに応じていると,思わぬ形で揚げ足を取られる可能性があります。


逮捕されている事案では,弁護士が警察署に行ってこの打ち合わせをします。


弁護士との打ち合わせには警察官の立ち会いはなく,誰にも聞かれることがないので安心して相談ができます。

 

 お気軽にご相談ください

刑事事件では,まずは弁護士に相談し,事案に応じた適切な対応を速やかにとるように努めることが大切です。


特に,強制性交等罪は重い罪ですので,対応を間違えると実刑になって刑務所行きになりかねません


上原総合法律事務所は,元検事の弁護士5名(2022年11月現在)からなる刑事事件の専門家集団です。


迅速にご相談をお受けできる体制を整えています。


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