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内部通報について元検事の弁護士が解説

1 公益通報者保護法改正の背景

平成18年4月に公益通報者保護法(平成16年法律第122号)が施行されてから、はや15年が経過しました。

しかし、報道等でも明らかなように、近年になっても、一部の事業者による重大な法令違反行為をはじめとした不祥事が後を絶ちません。

そうした不祥事事案の中には、法令違反行為が認識されていたものの適切な通報がなされなかった事例や、通報があったにもかかわらず適切な調査や是正が行われなかった事例が見られ、事業者において内部通報体制が一応は設けられていたものの、その体制が機能不全に陥っている状況があったとの指摘がなされています。

このような状況を受けて、令和2年6月、事業者内部からの公益通報に対応する実効的な体制の整備を法により義務付け、法令違反行為の早期是正及び未然防止を図り、国民の利益を確保するため、公益通報者保護法が改正するに至りました。

2 改正公益通報者保護法の概要

この改正公益通報者保護法は、従業員数が300人を超える事業者(株式会社等の企業のみならず医療法人・学校法人なども含まれます。)に対して、内部通報受付窓口の設置を義務付けるとともに、内部通報に適切に対応するために必要な体制を整備することなどを義務付けています(改正法第11条第1項及び第2項)。

また、改正公益通報者保護法は、内部通報体制の整備をより実効的なものとするため、行政上の措置を導入し、行政機関が事業者に対して報告を求め、助言・指導・勧告をすることができる旨規定しています(改正法第15条)。

さらに、改正公益通報者保護法は、事業者が報告に応じなかったり虚偽報告を行った場合の行政罰(20万円以下の過料)を定めているほか、事業者が勧告に従わなかった場合の公表措置を制裁として定めています(改正法第16条、22条)。

3 内部通報体制整備の必要性

前述のとおり、従業員数が300人を超える事業者に対しては、内部通報受付窓口の設置が義務付けられ、内部通報に適切に対応するために必要な体制を整備することなどが義務付けられました。

そして、これらの義務違反に対しては、公表等の行政上の制裁が定められているため、事業者としては、制裁を回避するためにも、内部通報体制の整備を行わざるを得ないでしょう。

他方で、内部通報体制の整備は、法令違反行為の早期是正・未然防止に役立つため、結果として、自浄作用のある事業者であることを社会に知らしめることができ、企業価値・社会的評価(レピュテーション)の低下を防ぐのみならず、かえってその向上にもつながることもあります。

このように、義務違反を回避するという消極的な視点からのみならず、事業者のレピュテーションの維持・向上を図りひいては事業の継続可能性を確保するという積極的な視点からも、内部通報体制を整備する必要性は高いといえます。

4 内部通報体制の設計についての基本的な考え方

公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会による「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会報告書」(令和3年4月)によれば、事業者がとるべき措置の個別具体的な内容については、各事業者において、内閣総理大臣が定める指針に沿った対応をとるためにいかなる取組等が必要であるかを、①事業者の規模、②組織形態、③業態、④法令違反行為が発生する可能性の程度、⑤ステークホルダーの多寡、⑥労働者及び役員や内部通報体制の活動状況、⑦その時々における社会背景等の諸要素を踏まえて主体的に検討を行った上で、策定・運用することが必要とされています。

つまり、基本的には、事業者ごとに、その固有の事情に応じて、合理的かつ効果的な内部通報制度を設計することが求められています。

他方で、内部通報体制は、内閣総理大臣が定める指針(公益通報者保護法第11条1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針)に沿って設計する必要があります。

そして、現時点での指針案は、下表のとおり、事業者に対し、部門横断的な通報対応業務を行う体制の整備、通報者を保護する体制の整備、内部通報対応体制を実効的に機能させるための措置を行うよう求めています。

 

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