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クレプトマニア(窃盗症・窃盗癖)とは?弁護活動や再犯予防の要点について元検事(ヤメ検)の弁護士が解説

 万引きがやめられない「クレプトマニア(窃盗症)」とは

 

 ☑お金は持っているのに万引きをやめられない

 ☑必要ない物なのに万引きをやめられない

 ☑以前万引きをして捕まって辛い思いをしたのに、まだ万引きをやめられない

 ☑執行猶予中であるのに万引きをやめられない

 ☑盗んだ記憶はないのに気がついたら万引きをしたあとだったなど

 

万引きの衝動や欲求を抑えることができず、万引きを繰り返してしまう方がいます。

盗んだ物を捨ててしまったり、人にあげたり、クローゼットに隠すなど、盗んだ物を使わない方も多いです。

そのような方は、物が欲しくて万引きをするのではなく「万引き」という行為自体に依存してしまっています。

その衝動、もしかしたらクレプトマニア(窃盗症)によるものかもしれません。

クレプトマニアは精神疾患の一種と位置付けられています。

国際的な診断マニュアル(いわゆる「DSM-5」)では、以下の5つがクレプトマニアと診断する基準となっています。

1 個人的に用いるためでも、その金銭的価値のためでもなく、物を盗ろうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される

2 窃盗におよぶ直前に緊張の高まりがある

3 窃盗を犯すときの快感、満足、または解放感がある

4 盗みは、怒りや報復を表現するためのものではなく、妄想や幻覚に反応したものでもない

5 盗みは、躁病エピソードや反社会性パーソナリティ障害ではうまく説明されない

 

上記に当てはまる場合、クレプトマニア(窃盗症)である可能性があります。

クレプトマニアの方の多くは、万引きを辞めたいと心の底から思っています。

また、ご家族も万引きをやめさせたいと思っています。

ですが、病気ですので、やめたいと思っただけではやめることができません

クレプトマニアの方は、摂食障害を中心とする精神的な問題を抱えている方も多く、とても苦しんでいます。

万引きをして捕まることを繰り返しているうちに、次に万引きをして捕まったら刑務所に行かなければいけないというプレッシャーを感じ、さらに精神的に追い込まれ、万引きをやめることが難しくなる、と言う悪循環に苦しむことも少なくはありません。

上原総合法律事務所は、クレプトマニアの方の再犯予防のために治療こそが大切であると考えており、再犯予防策を練りながら行う弁護活動に力を入れています。

以下、獲得目標別に説明します。

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 捜査段階で不起訴・罰金を目指す

 示談交渉

万引きで検挙された場合には、まず、捜査段階での不起訴や罰金刑を目指して弁護活動をします。

通常の窃盗罪と同様に、窃盗の被害に遭った被害者に対して、被害弁償や示談を行うことが重要です。

ですが、クレプトマニアの方は同じ店で何度も万引きを繰り返した末に検挙されることも多く、お店の方が示談交渉を受け入れてくれないことがあります。

そのような場合でも、被害弁償をすること自体は有益です。

 原因分析と再犯予防

クレプトマニアの方については、なぜ万引きをしたのかについて考え、再犯予防策を練ることがとても大切です。

ご家族やご自身だけで充分な分析をする事は難しいです。

経験のある弁護士と一緒に考えていくことが有益です。

弁護士と一緒に考え、医療機関に通ったり家族と話し合いをするなどして再犯予防策を練り、その状況を捜査機関に伝え、理解してもらいます。

また、クレプトマニアの方は、摂食障害や鬱など、何らかの病気で精神科を受診した経歴を持つ方も多いです。

そのような方については、診断書を入手して検察官に提出するなどし、病気の状況を理解してもらう必要があります。

診断書を自分で入手することができなければ、弁護士から検察官に申し入れをし、捜査機関において医師から入手してもらうようにお願いすることも可能です。

これらの状況踏まえ、必要に応じ弁護士から検察官に「刑罰よりも治療が必要である」旨を申し入れします。

結果、その事件について、刑罰よりも治療が必要であることを検察官が理解し、不起訴や略式罰金にしてくれることがあります。

実際に、上原総合法律事務所では、本来であれば公判請求(起訴)されるのが通例である事案について、このような方法で不起訴を勝ちとっています。

また、検察官時代、公判請求(起訴)が通例である事案について、略式罰金にしたり不起訴にしたりしています。

略式罰金や不起訴になれば、刑事手続は終了しますので、クレプトマニアの方は、その後治療に集中できることとなります。

 

 裁判段階で執行猶予や罰金を目指す

初犯や数回目の犯行の場合は不起訴や執行猶予付きの判決が言い渡されることが多い窃盗罪ですが、繰り返し犯してしまうと、被害額が少額であっても実刑判決を言い渡される可能性が高くなります。

以下の場合、実刑判決となるリスクが高いです。

 ・ 既に執行猶予付き判決を受けている場合

 ・ 出所後5年以内に万引きをした場合

 

ですが、まだやれる事はあります。

近年では、クレプトマニアの方に刑罰を加えることが適切ではないという議論も広く知れ渡っています。

クレプトマニアであることを裁判官に適切に伝え、無罪とまではいかなくとも、再度の執行猶予や罰金刑を目指して行動すべきです。

そのためにはまず、自分がクレプトマニアであることを理解し、医療機関において治療等を行うとともに、家族などの周辺者の理解と協力を得る必要があります。

自分が万引きを繰り返してしまうため対処が必要であることを自覚した上でどうすべきかを考え、それを実際に行動し続けることが大切です。

この時にありがちなのが「刑務所に行くかもしれないと思ったので事態の深刻さを理解しました。なので、もう万引きはしません。」というような、自分の心がけ「だけ」で対処しようとしてしまうという間違いがあります。

その気持ちが真実で大切なことは裁判官も理解してくれますが、その気持ちだけで再犯が防げるかは別問題です。

実刑がかかっている裁判にまで至っている場合、それまでに何度か刑事手続を経ているはずで、過去の刑事手続でも「もう二度と万引きをしない」と心に誓ってきたはずです。

それなのに万引きをしているという事は、心に誓うだけでは万引きは止められないということです。

過去に何度か刑事手続があったにもかかわらず万引きを止めていないということを深刻に受け止め、何が原因だったのかを考える必要があります。

例えば、実刑がかかっている裁判に至っている場合、病院にかかっていたことがあるけれどもやめてしまった、というような事情がある方も少なくありません。

弁護士として依頼者からお聞きすると、「病院が合わないと思った」「もう大丈夫だと思った」「めんどくさくなってしまった」などという理由が多く語られます。

このような場合、自分の判断で病院に行かなくなるのを防ぐための仕組みを構築しておく必要があります。

このような仕組みは、ご家族と構築することも可能ですし、第三者と構築することも可能です。

上原総合法律事務所では、刑事裁判後に定期的に依頼者と連絡を取り、お話をお聞きするとともに病院に行っているかを確認することも可能です。

また、前回の刑事手続の後、年単位で長い間問題なく万引きをせずに過ごせていたのだけれども、突然強いストレスがかかって状況が変化し、再び万引きをするようになってしまった、というお話もお聞きします。

このような方については、ご家族などの周辺者やクリニックに適切にご相談できる環境を整えていくことが大切です。

また、刑事手続を一緒に進めた場合には、刑事裁判後に定期的に依頼者と連絡を取り、お話をお聞きすることも可能です。

ほとんどのケースでは、前回の刑事手続で「もう二度と万引きをしません。そのために病院に通います。」と言うところまではたどりついていても、病院に通い続けるための仕組みや、ストレスがかかったときに相談できる環境を整えていたりすることまではできていません。

ここまでの環境を整え、それを自分自身の言葉でしっかりと裁判官に伝えるなどして、刑務所における更生ではなく、医療機関での治療が有効であることを裁判官に伝えることで、実刑を回避できる可能性があります。

 

 再犯を防ぐために

 治療について

クレプトマニアは精神疾患の一種と位置付けられています。

病院で精神科において入院・治療を行うことが有益です。

最近ではクレプトマニアを専門に扱う医療機関も増えてきており、同じ病気の方が集まって互いの経験を共有して回復を目指す自助グループなどもあります。

万引きをやめるためには、どうして窃盗を繰り返し行ってしまうのか、なぜやめられないのかなど、窃盗を止められない理由を知り、それを解決していくことが重要です。

 治療の継続について

クレプトマニアの治療に終わりはなく、生涯続けなくてはいけないことを覚悟することです。

あるクリニックの方は、「万引きをもう二度としないために、はじめのうちは週に何度も通院してもらいます。時間が経って病状が良くなってきたら頻度を減らし、週に1度とか、月に1度で良くなります。ですが、もう二度と来なくて良いというタイミングは来ません。

「万引き依存症になった方は、1年に1回でも、必ず定期的に来ることが再犯予防上とても大切です。」とお話ししていました。

上原総合法律事務所でも、同様に考えています。

言うまでもありませんが、万引きは、過去に行ったものを最後に、もう二度としてはいけません。

そして、万引きを止めることができるようになった後も、もう二度と万引きをしないと決意した後に一度万引きをしてしまうと、ズルズルとまた万引きを繰り返すようになってしまいます。 

どんな状況になっても万引きをすることのないよう、定期的に気持ちを引き締め直す必要があります。

みなさん、万引きをしてしまうかもしれないと言う不安な気持ちから逃れたいと考えています。

そのため、長期間万引きをせずにいられると、「私はもう大丈夫なんだ」と考えたくなります。

ですが、この気持ちの緩みがとても危険です。

自分の過去から逃げずに正面から向き合い、もう二度と万引きをしないと言う強い気持ちを持ち直す機会を定期的に作ることが重要だと考えています。

 家族などの周囲の方について

クレプトマニアの方が立ち直ろうとするときに、ご家族などの周囲の方の協力が得られる事はとても助けになります。

周囲の方にとって大切な事は、万引きを繰り返してしまう事はご本人の気持ちの問題ではなく、病気の問題である、ということを理解して、根気強く寄り添ってもらうことです。

ご本人は、万引きを繰り返してしまうことや周囲の方に迷惑をかけていることにとても強い負い目を感じています。

病院に通うために送り迎えをしてもらったり、病院代や弁護士費用のほかに生活費も出してもらっている方も多いです。

クレプトマニアのご本人は真面目な方が多く、周囲の方に負担をかけている事について、とても申し訳ないという気持ちを感じています。

その気持ちが自信を喪失させ、悪循環を生じさせてしまうということもあります。

ですので、ご家族などの周囲の方には、ご本人のこのような気持ちを理解し、尊重しながらサポートしていただくことをお願いしたいです。

ですが、万引きを繰り返してしまうご本人と同様に、もしくはそれ以上に、ご家族などの周辺者の方も苦しんでいます。

上原総合法律事務所では、ご本人のケアとともにご家族のケアも大切だと考えています。

ご家族のケアとして、ご家族がクレプトマニアとは何なのか、再犯予防策や刑事手続の見通しを含めてよく知るとともに、同じような状況の人と情報共有をし合う事が有益だと考えています。

上原総合法律事務所では、依頼者の状況に応じ、ご家族の情報共有をしているクリニックをご紹介しております。

当然、専門領域である刑事手続については、懇切丁寧にご説明するようにしております。

 

 無罪のために

「クレプトマニアは万引きをやめられない状態なので、やむを得ない行為だったということで無罪になるのではないか。」というご相談をいただくことがあります。

しかし、「クレプトマニアであること」を理由に、刑が軽くなったり、無罪になることは極めて稀です。

なぜなら、クレプトマニアというのは、その人に「盗りたい気持ちが強くて常習的に盗る傾向がある」ということを言い直したに過ぎないからです。

つまり、語弊をおそれず簡単にいえば、「クレプトマニアであるから盗んでしまった」のではなく、「繰り返し盗む人のことをクレプトマニアと呼んでいる」というだけなのです。

犯行時にクレプトマニア(などの精神の障害)があり、これを理由に無罪にならないかというご相談の核心は「犯行時に心神喪失状態であったかどうか」の問題となります。

心神喪失は法律の専門用語です。

心神喪失

精神の障害により、①善悪を区別する能力(弁識能力)または、②善悪の区別にしたがって自分の行動をコントロールする能力(制御能力)が欠けている状態

 

これまでにクレプトマニアを理由として心神喪失で無罪になった裁判例はなく、「クレプトマニアだから心神喪失である」という形で無罪判決が下される可能性はとても低いです。

ですが、「万引きを繰り返してしまう人」について、「クレプトマニアとは別の精神の障害」があり、「それが犯行に影響を与えた」ことを理由に無罪判決が下される可能性は存在します。

以下、詳しく説明します。

上で「1 クレプトマニア(窃盗症)とは」に記載したとおり、国際的な診断マニュアル(いわゆる「DSM-5」)では、以下の5つがクレプトマニアと診断する基準となっています。

1 個人的に用いるためでも、その金銭的価値のためでもなく、物を盗ろうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される

2 窃盗におよぶ直前に緊張の高まりがある

3 窃盗を犯すときの快感、満足、または解放感がある

4 盗みは、怒りや報復を表現するためのものではなく、妄想や幻覚に反応したものでもない

5 盗みは、躁病エピソードや反社会性パーソナリティ障害ではうまく説明されない

 

この4や5の部分に書かれているように、妄想、幻覚、躁病等である場合については、クレプトマニアとは診断されづらいということになります。

クレプトマニアであるとの診断を受けた方でも、その診断をした医師のところに適切な精神障害の情報が伝わっていないこともあります。

そのような場合、適切な情報が伝わればクレプトマニアではなく別の精神障害であると診断されることがあります。

また、別の医師の診断を受けることでクレプトマニアではなく別の精神障害であることが発覚したりすることもあり得ます。

そして、最終的に事件が心神喪失状態でなされたものかどうかは、医師の判断を参考にした裁判官の判断によって決まります。

万引きを止められない方の中には、クレプトマニア的傾向とともに、摂食障害等の精神障害を持っている方がとても多いです。

万引きをする際の気持ちなどに着目してクレプトマニアとして語られている方であっても、妄想、幻覚、躁病等のその他の精神障害について着目した場合に、「犯行の原因はクレプトマニアではなく、その他の精神障害の影響で犯行当時心神喪失のであった事による」との判断がなされる可能性があります。

クレプトマニアだという診断を受けたからといって、必ず無罪にならないというわけではなく、事件当時の状況をどれだけ的確に医師と裁判所に伝えられるかによって、結果が変わってくると考えています。

 

 上原総合法律事務所の思い

上原総合法律事務所は、元検察官により構成されている弁護士集団です。

弊所の弁護士は、検事としても、弁護士としても、クレプトマニアの案件を多数取り扱ってきました。

そのような経験の中で、クレプトマニア(クレプトマニアという診断はつかないけれども窃盗がやめられない方を含みます。)については、「ご本人も、ご家族などの周辺者も、窃盗をやめたい・やめさせたいと本気で思っているのにやめられない」という点に特徴があると考えています。

検察官としても弁護士としても、何とか再犯を防ぎたい、と強く思い続けています

クレプトマニアの方が窃盗をやめるようになるのは、簡単なことではなく、少なくとも年単位での対処が必要となります。

そのため、ご家族の負担も大きいものとなります。

窃盗がやめられない方の多くは摂食障害、うつ、統合失調症などの何らかの精神疾患を有している方も多く、依存性が強いことと併せて、ご本人もご家族も、大変辛い思いをしています。

上原総合法律事務所では、「窃盗をやめたい・やめさせたいと本気で思っているのにやめられない」状況の依頼者について、その苦しい状況を理解し、依頼者が一歩ずつ前進し、時に後退するのに寄り添うパートナーでありたいと考えています。

クレプトマニアを扱う病院のご紹介(就業状況やお住まいに応じ、適切な医院をご案内します。)や窃盗事件への対応など、事務所一丸となって、適切かつ迅速に対応いたします。

まずはお話をお聞きし、その後の必要な弁護活動を誠心誠意行います。お気軽にご相談ください。

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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。

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弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

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