上原総合法律事務所では、顧問先企業などから、罰則による営業許認可の取消や営業停止についてのご相談をいただきます。
どのような場合に許認可の取消や営業停止が問題になるかは、業種によって異なります。
旅館やホテルといった旅館業については、旅館業法という法律により規制されており、場合によっては旅館業許可の取消や営業停止になることもあるため、注意が必要です。
本記事では、どのような場合に旅館やホテルが許可取消や営業停止になるのか、事件が起きてしまった際に許可取消・営業停止にならないためにどうすべきか、を解説にします。
Contents
旅館業法は、営業者(法人役員を含む。)が、
・旅館業法または旅館業法に基づく命令・処分に違反した場合
・禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して三年を経過していない場合
などに、許可取消や営業停止になり得ると規定しています。
また、営業者だけでなく、従業員等であっても、
・公然わいせつ、わいせつ物頒布等
・児童買春、児童ポルノ所持・製造
・性的姿態等撮影(いわゆる撮影罪)
などの犯罪をした場合には、営業許可取消や営業停止になり得ると規定しています(※詳細な法律の規定は末尾に記載してあります)。
旅館業の経営者の方は、当然、旅館業法と旅館業法に基づく命令・処分を守ることを意識していると思います。
しかし、経営者が気をつけていても起きてしまい得る事項が、
・法人役員を含む経営者が禁錮以上の刑に処せられる場合
・従業員による前記犯罪が発生する場合
です。
まず、法人役員を含む経営者が禁錮以上の刑に処せられる場合とは、例えば、交通事故に際しての救護・報告義務違反(いわゆるひき逃げ)や、飲酒運転による事故です。
また、人身事故で被害者が重傷を負った場合にも、禁錮以上の刑罰を受ける可能性があります。
交通事故は、車両を運転する方全てが起こす可能性があるため、特に注意が必要です。
また、従業員による前記犯罪については、特に、児童ポルノ法違反や撮影罪といった犯罪に注意が必要です。
これらの犯罪は、個人の性的嗜好に基づいた犯罪で、かつ、依存症の可能性もある犯罪です。
そのため、従業員数が多い組織では、このような性的嗜好を有している従業員が存在する可能性が高くなります。
この手の犯罪が旅館やホテルで発生すれば、企業の存在を揺るがしかねない大事件にもなることは言うまでもありません。
特に従業員数が多い組織では、この手の犯罪が生じにくくするための対策を講じることが有益です。
これらの違反をした場合、違反した理由があるはずです。
そのため、まずはその理由を明らかにするとともに、再発予防策を構築し、行政に報告する必要があります。
なお、再発予防策については、「もうしません」「気をつけます」といった企業の意思に基づくものでは不十分です。
再発が予防できる仕組みを構築する必要があります。
刑事事件が発生したとしても、必ず禁錮以上の刑になるとは限りません。
まずは、刑事事件として適切な対応をし、不起訴や罰金で済むようになるべく活動するべきです。
いわゆるひき逃げの場合にも、情状により、禁錮以上の刑を避けられる可能性もあります。
そして、刑事事件の見通しを立てながら、当該役員の進退を検討する必要があります。
当該企業の事業環境的に退任することが可能であれば、営業許可のために該役員が役員を辞めるということも検討することもあり得ます。
この場合、従業員に退職してもらうとともに、再発予防策を構築することが大切です。
再発が予防できる仕組みを構築する必要があることは、(1)と同様です。
なお、従業員を懲戒解雇するためには、事前に就業規則に規定が必要ですし、適法な手続きを取る必要があります。
手続きを誤ると会社が損害賠償責任を負うこともありますので、注意してください。
※旅館業法
第八条
都道府県知事は、営業者が、この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくはこの法律に基づく処分に違反したとき、又は第三条第二項各号(第四号を除く。)に該当するに至つたときは、同条第一項の許可を取り消し、又は一年以内の期間を定めて旅館業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。営業者(営業者が法人である場合におけるその代表者を含む。)又はその代理人、使用人その他の従業者が、当該旅館業に関し次に掲げる罪を犯したときも、同様とする。
一 刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十四条、第百七十五条、第百八十二条又は第百八十三条の罪
二 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)に規定する罪(同法第二条第四項の接待飲食等営業及び同条第十一項の特定遊興飲食店営業に関するものに限る。)
三 売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)第二章に規定する罪
四 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第五十二号)第二章に規定する罪
五 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(令和五年法律第六十七号)第二章に規定する罪
第三条 旅館業を営もうとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。第四項を除き、以下同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、旅館・ホテル営業又は簡易宿所営業の許可を受けた者が、当該施設において下宿営業を営もうとする場合は、この限りでない。
2 都道府県知事は、前項の許可の申請があつた場合において、その申請に係る施設の構造設備が政令で定める基準に適合しないと認めるとき、当該施設の設置場所が公衆衛生上不適当であると認めるとき、又は申請者が次の各号のいずれかに該当するときは、同項の許可を与えないことができる。
一 心身の故障により旅館業を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
三 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律若しくはこの法律に基づく処分に違反して罰金以下の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して三年を経過していない者
四 第八条の規定により許可を取り消され、取消しの日から起算して三年を経過していない者
五 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなつた日から起算して五年を経過しない者(第八号において「暴力団員等」という。)
六 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法定代理人が法人である場合においては、その役員を含む。)が前各号のいずれかに該当するもの
七 法人であつて、その業務を行う役員のうちに第一号から第五号までのいずれかに該当する者があるもの
八 暴力団員等がその事業活動を支配する者
上原総合法律事務所は、旅館やホテルの方からのご相談をお受けしています。
上原総合法律事務所は、元検察官の弁護士と労働問題を専門とする弁護士により構成されており、許認可の取消・営業停止が問題となり得る刑事事件や企業不祥事対策に精通しています。
お困りの方はお気軽にご相談ください。
■LINEでのお問い合わせはこちら
■メールでのお問い合わせはこちら
※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
【新着コラム】
【コラムカテゴリー】
【新宿事務所】
〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-27-3
やまとビル7階
新宿駅新南口 徒歩3分
新宿三丁目駅 E8出口すぐ
代々木駅東口 徒歩5分
【横浜事務所】
〒220-0004
神奈川県横浜市西区北幸2-9-40
銀洋ビル7階
横浜駅南9出口徒歩5分
【立川事務所】
〒190ー0012
東京都立川市曙町2ー8ー28
TAMA MIRAI SQUARE 4階
JR立川駅北口徒歩5分