わいせつ物頒布等罪とは?わいせつ物頒布等罪で捜査・逮捕されたらどうすれば良いのでしょうか?
法律的な定義や採り得る弁護活動等について、刑事事件を熟知している元検事(ヤメ検)の弁護士が詳しく解説します。
わいせつ物頒布等罪は刑法175条に規定されています。
刑法175条は、1項において、
・わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者
・電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者
2項において、
・有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者
をそれぞれ処罰することを定めています。
これらを整理すると以下のようになります。
まず、有体物(データ等ではなく、物理的に空間の一部を占めて存在するもの)である
①わいせつ文書
②わいせつ図画
③わいせつ電磁的記録記録媒体(※)
④わいせつ物(その他の物。わいせつな造形物等(彫刻や3Dプリンタ等によって作成されたものなど)
のいずれかについて、
・頒布(不特定又は多数の人に対して交付・譲渡すること)
・公然陳列(不特定又は多数の人がその内容を認識できる状態に置くこと)
・有償頒布目的所持(不特定又は多数の人に対して有償で交付・譲渡する目的で所持すること)
のいずれかの行為をした者が処罰されます。
さらに、無体物である
⑤わいせつ電磁的記録等
について
・電気通信の送信により頒布
・有償頒布目的で保管
のいずれかの行為をした者も処罰されます。
この中で、“わいせつ電磁的記録記録媒体の公然陳列”がイメージしにくいかと思いますが、例えば、わいせつ動画のデータをインターネットサイト上にアップロード(することによって、そのサイトのサーバコンピュータのHDD上に保存)し、これを不特定多数の者が見られるようにする行為は、わいせつ電磁的記録記録媒体(であるサーバコンピュータのHDDを)公然と陳列する(不特定又は多数の人がその内容=わいせつ動画を認識できる状態に置く)行為に当たります。
※ わいせつ電磁的記録等とは(ハードディスク等の記録媒体に記録された)わいせつなデータそれ自体のことです。わいせつ電磁的記録記録媒体とは、わいせつ電磁的記録(データ)自体ではなく、そのわいせつデータが保存されたハードディスクやDVD等の記録媒体のことです。
どのような「文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物」が「わいせつ」な物に該当するのかについては、最高裁判例において、
いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう
とされています。
この定義は、具体的に何がわいせつであり何がわいせつではない、と一義的に線引きができるというようなものではありません。
何がわいせつかは、時代と社会によって変わり得る相対的・流動的な概念であり、一般社会における良識すなわち社会通念に従って裁判所が判断すべき事柄であるとされています。
したがって、どのような物が「わいせつ」に当たるかを一概に述べることは困難ですが、モザイク等を付すことなく性器が露骨に記録されているような画像・動画は、「わいせつ」であるとされる可能性が高いでしょう。
上記1で挙げた行為は、いずれも
2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する
と定められています。
常習的な犯行、特に営利目的で有償頒布することを繰り返しているような職業的犯行の場合には、懲役刑を科されたり懲役刑と罰金刑が併科されたりするなど、重く処罰される可能性が高いと言えます。
上記のとおり、常習的な犯行、特に営利目的で有償頒布することを繰り返しているような職業的犯行の場合には、重い処罰が科されることが多いため、逮捕される可能性も高いと考えられます。
わいせつ物頒布等罪は、直接の被害者がいるわけではなく酌量すべき事情を観念しづらい犯罪であることもあってか、立件・送致された場合は起訴されることが多い犯罪です。
もっとも、例えば、単発的な犯行であるとか、有償頒布を繰り返していたわいせつDVD販売店の末端従業員として働いていたにすぎず従属的な犯行であるなど悪質性が低い事案や、ファイル共有ソフトを使用していたもののわいせつなデータまで不特定多数に共有されているとは認識しておらず犯罪が成立するとは言えない事案などでは、不起訴処分となる可能性があります。
弁護活動としては、そのような悪質性が低いと評価し得る事情や犯罪が成立しないと言うべき事情等について、弁護人から検察官等に適切に主張することなどが考えられるところです。
上原総合法律事務所は、元検事8名(令和6年12月20日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
刑事事件に関するお悩みがある方は、お気軽に当事務所にご相談ください。
経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。
■LINEでのお問い合わせはこちら
■メールでのお問い合わせはこちら
※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
【新着コラム】
【コラムカテゴリー】
【新宿事務所】
〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-27-3
やまとビル7階
新宿駅新南口 徒歩3分
新宿三丁目駅 E8出口すぐ
代々木駅東口 徒歩5分
【横浜事務所】
〒220-0004
神奈川県横浜市西区北幸2-9-40
銀洋ビル7階
横浜駅南9出口徒歩5分
【立川事務所】
〒190ー0012
東京都立川市曙町2ー8ー28
TAMA MIRAI SQUARE 4階
JR立川駅北口徒歩5分