閉じる×

傷害罪で初犯の場合の処分は?元検事の弁護士が解説

傷害罪で検挙された場合、初犯であればどのような処分となるのでしょうか。
起訴猶予、略式手続で罰金となりうるか、起訴された場合には執行猶予か実刑かなど、元検事(ヤメ検)の弁護士が解説します。

元検事弁護士に無料相談 LINEでのご相談予約 メールで相談予約
03-6276-5513

1 傷害罪とは?検挙されるとどうなるのか?

・傷害罪とはどのような犯罪か

傷害罪とは、刑法204条に定められており、具体的には「人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」との規定となっています。

要するに、誰かに傷害を負わせた場合、最大で懲役15年という刑罰がありうるというものです。

「傷害」の内容は、殴る蹴るなどの「暴行」によって生じる打撲や骨折といったいわゆる「ケガ」が一般的ではありますが、これに限られません。

例えば病気を感染させる、精神的なストレスを与えてPTSD等を生じさせるといった場合にも、「人の身体を傷害した」として傷害罪が成立することがあります

反対に、爪や髪の毛を切るといった限度では、傷害罪は成立しにくいと考えられます(暴行罪が成立する可能性はあります。)。

 

検挙されるとどうなるのか

傷害罪で警察に被害申告がされた場合、すぐに被害届が受理されて刑事事件として立件される場合もあれば、例えば偶発的なケンカでケガもたいしたことがないといった事案であれば、双方を警察官がなだめておしまい、という場合もありえます。

刑事事件として立件されれば、場合によっては逮捕され、その後も被疑者としての勾留、被告人としての勾留が続いて長期間拘束される可能性もありますし、逮捕等はされずにいわゆる在宅事件として捜査が続き、警察や検察の呼び出しに応じて取調べなどが進んでいく場合もあります。

 

刑事手続の流れについて詳しくはこちらをご覧ください

在宅事件とは?身柄事件との違いや流れ、注意点について詳しくはこちらをご覧ください

逮捕された後の流れについて詳しくはこちらをご覧ください

2 どのような処分がありえるのか

・立件されるか否か

傷害事件の最初の分かれ道として、そもそも刑事事件として立件されるかという点があります。
ケガの内容が重い場合はさておき、それほどでもないという場合には、警察が事件を認知したとして必ずしも刑事事件として立件されるわけではありません。

例えば繁華街で酔客同士がもめて軽くケガをしたような事案で警察が臨場したとしても、双方をなだめて終わりということも多いでしょうし、一方がその場では強く被害を訴えていたとしても、後に謝罪等あれば結局トーンダウンして正式な被害申告、立件には至らない場合もままあります。

そもそも刑事事件として立件されなければ、処罰を受けて前科がつくこともありませんし、基本的には前歴という形ですら記録には残りません

 

・微罪処分

刑事事件として立件されると、警察が捜査を進めていきます。
通常は事件が検察庁に送致され、そこで検察官が起訴するか否かを判断しますが、ごく軽微な事件等については検察庁に送致すらされない場合もあります。
微罪処分となるのは極めて軽微で被害者も処罰を求めていないなど例外的な場合です。

微罪処分について詳しくはこちらをご覧ください

 

・不起訴処分

刑事事件として立件された事案は、例外的に微罪処分とならない限り、検察庁へ事件が送致されます。
その上で検察官が処分を決めますが、この段階で起訴して処罰する必要がない、あるいは有罪となるだけの証拠がないなどと判断されれば、不起訴処分となります。

不起訴には起訴猶予や嫌疑不十分などがあります。詳しくはこちらをご覧ください

 

・略式手続(罰金)

検察官がこの傷害事件については処罰する必要があると考えた場合であっても、必ずしも裁判所の公の法廷で裁判を受けることになるとは限りません。
いわゆる公判請求以外にも、略式起訴(略式手続)という結果もありえます。
この場合、実際に裁判所に行ったりする必要はなく、検察官が提出する証拠書類を裁判官が見て罰金額を決め、その結果である略式命令が郵送で自宅に届きます。
併せて罰金の納付方法も届くので、それに従って罰金を納付すれば刑事事件としては終了です。
略式命令の内容は罰金○○万円というもので、懲役や拘禁となることはありません
ただし罰金刑であっても前科には違いありません。
もし略式命令の内容に不服があれば、正式裁判を申し立てることも可能ではありますが、通常は納得の上で略式手続に応じているので、正式裁判を申し立てる事例はあまり見受けられません。

略式手続となるためには事実関係を認めていることが前提となります。
その上で、検察官が略式手続でもよいと判断すれば、取調べの中でその旨打診されます。
これを受け入れるのであれば略式請書に署名等し、略式手続が進んでいくこととなります。

略式手続について詳しくはこちらをご覧ください

罰金刑について詳しくはこちらをご覧ください

 

・公判請求(起訴)

刑事罰が必要であると判断された上、懲役刑等が想定されるなど、事件の内容等からして略式手続によるべきでないと検察官が判断した場合や、そもそも否認している場合、被疑者が略式手続によることを拒否した場合は、通常の起訴、いわゆる公判請求がなされ、公の法廷で裁判を受けることになります。

この場合、検察官と弁護人の双方が証拠書類や証拠物の提出、証人の尋問等を行うほか、被告人本人の話も踏まえ、裁判官が判決を言い渡します。
この場合の判決の内容としても罰金はありえますが、多くの場合は有罪か無罪のほか、執行猶予か実刑か、懲役刑の期間等が争われることとなります。

刑事裁判について詳しくはこちらをご覧ください

 

・執行猶予か実刑か

公判請求された事案において、最も多く問題となるのは、執行猶予がつくか実刑となって実際に収監されるかという点です。
もちろん有罪か無罪かが問題となるケースもありますが件数としてはまれですし、刑の重さも重要ではありますが、実刑か執行猶予そもそも刑務所に一定期間収監されるのか引続き社会内で生活を送れるかという極めて重大な分かれ道です

執行猶予について詳しくはこちらをご覧ください

 

・結論に影響する事情

傷害事件の場合、処分や判決の内容について最も影響するのは傷害の重さであると言って差支えないでしょう。
他方で、傷害を負わせるに至った経緯に酌むべき事情があるか、被害者の処罰感情がどの程度強いか(示談が成立しているか)、被疑者の前科前歴の有無や内容、反省の態度が見られるかなども処分に影響しますし、起訴される場合にはその後の求刑や判決にも影響します。

 

3 初犯でも公判請求される場合、実刑になる場合はあるのか

傷害の罪を犯したものの、初犯であれば、示談等を経て起訴されない場合が多いですし、処罰されるとしても略式手続で罰金となる事例の方が多いでしょう。
また、公判請求されても、執行猶予が付される可能性も大きいと考えられます。
他方で初犯であっても、事案の内容次第では公判請求され、さらには実刑となる可能性もゼロではありません。

・傷害の程度

公判請求や実刑判決の可能性が高くなるのは、何といっても傷害の程度が重い場合です。
傷害といってもその内容は様々であり、全治数日間の打撲や擦過傷から、身体の一部の欠損や麻痺、さらにはいわゆる植物状態といえるような重篤な後遺症が残るような場合もあります。

傷害の程度は基本的には証拠となる診断書記載の内容、特に全治や加療の期間によって判断されますが、重篤な場合や傷害の内容が複雑な場合には検察官等が医師から聴取してその供述調書等が証拠とされたり、後遺症の場合は認定結果等も含めて評価される場合もあります。
傷害結果による明確なラインがあるとは言えませんが、加療等の期間が数か月に及んだり、後遺障害が発生している場合には、初犯であっても公判請求や実刑の可能性もゼロではありません。

 

・被害者の意向

傷害は、被害者の身体という個人的な法益を害する犯罪であり、被害者の意向も処分やどのような刑となるかに大きく影響します。
同じようなケガであっても、被害者が許しているような場合と、被害者が特に重い処罰を望んでいる場合では結論は異なりえます。
他方で、被害者の意向のとおり、処分や求刑、判決が決まるわけではなく、やはり傷害の重さ自体のほうが重要ですし、あまりに軽い傷害でアンバランスに強い被害感情が示されているような場合にはあくまで傷害結果に見合った処分となるでしょう。

 

・供述態度や認否

取調べにおいて否認しているかどうかという点も、どのような処分になるかに影響しえます。
もちろん、自白していようが否認していようが傷害罪を立証するに足りる証拠がないと判断されれば嫌疑不十分で不起訴となります(なるはずです)が、否認していても傷害の事実は認定できるような場合であれば、認めて反省の態度を示していれば不起訴になりそうな事案であるにもかかわらず不合理な弁解に終始しているがために処罰すべきではないかという判断になる可能性もありますし、略式手続で罰金で済むはずの事案が、否認をしていることによって略式手続で処理できず公判請求されることもあります。

また、他の証拠から明らかに傷害の事実が認定できるにもかかわらず不合理な弁解を続けているとなれば、反省が見られないとの判断のもと、より厳しい求刑や判決となる可能性も否定できません。
特に起訴か不起訴か、罰金でよいか、執行猶予を付すべきか否かなど、どちらの結論もありうるような微妙な事案であればこそ、供述態度や認否で結論が変わってしまうかもしれないのです。

 

4 傷害罪に関する弁護活動、弁護人の必要性等

・被害弁償、示談

もし傷害を負わせてしまったのが事実であれば、まずは被害弁償や謝罪を行って示談を目指すのが通常かと思われます。
事件の内容や段階次第ですが、場合によってはそもそも刑事事件化を避けられたり微罪処分となったりする可能性もありえますし、そうでなくとも不起訴処分や略式手続となったり、あるいは公判請求されたとしても求刑、判決いずれの面でも被害弁償や示談はプラスに働きます。

示談交渉等を行う場合には、基本的には弁護人を選任することが有用になってきます。
被害者側からすれば、傷害を負わせられた本人と直接交渉等はしたくないというのが通常でしょうし、元から知り合いであったというような場合であっても、第三者である弁護人が間に入ることではじめて示談交渉が上手くいくことがありえます。

示談する方法について詳しくはこちらをご覧ください

 

・本当に傷害があるのか、本当に自分の暴行で生じたケガなのかなど

 事案によっては、傷害結果それ自体や、生じている傷害結果と自身の行為の因果関係等について争うべき場合もあるかもしれません。
特にケガが軽微な場合や、目に見えず被害者の訴えのみで診断書が発行されているような場合には、本当に傷害が生じているのかから争うべき事案もあるでしょう。
傷害自体はあるとしても、診断書記載の加療期間等が過大なのではないかといったパターンもあります。

また双方酔っていて、いつどのようにできたケガなのか記憶が曖昧な場合などもありえます。
この点、ケンカで複数人が関与した場合などであれば、共犯となったり、同時傷害の特例(刑法207条で「二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。」と定められています。)で責任を負うことになりますが、そもそも元からあったケガなのではないか、あるいはのちの全く別の理由でできたケガではないのかといったことが問題となる場合もありえます。

このように、本当にケガがあるのか、本当に診断書に記載されているほど重いものなのか、自分がケガを負わせたのかなどが分からないような場合には、様々な可能性を指摘して争う必要もありえますし、弁護人が的確な指摘をすることで検察官に慎重な判断を促すべき状況もありえます

 

・正当防衛や過剰防衛

傷害罪の場合、一方的にケガをさせたという事案よりも、トラブルがエスカレートしてしまった場合のほうが多いかもしれません。
そのような場合、先に被害者が手を出していたり、あるいは手を出されそうになったので反撃するなどしたという状況もありうるでしょう。
このような経緯であれば、正当防衛が成立したり、正当防衛までは成立しなくとも、過剰防衛として処分を決するに当たって一定程度斟酌されることもあります。

ただ、正当防衛や過剰防衛の成立しうる条件は事案次第で複雑であり、これも弁護士が事案を踏まえた適切な主張を行っていくことが重要かと思われます。

 

・ケンカや自分自身も怪我している場合など

正当防衛等までは成立しなくとも、ケンカになって被害者側も手を出している場合やさらに傷害も生じている場合はありえます。
こうした場合、理屈上は双方とも被疑者となりうるにもかかわらず、一方だけが被害申告をしているがために、片方は被疑者、他方は被害者という立場になっている状況が見受けられます。

このような場合、自分自身の被害もきちんと申告する、あるいは刑事告訴等することで相手も同様に被疑者という立場になり、それをきっかけに示談交渉等が進んだり、また処罰感情(あるいは処罰感情に関する主張)が和らぎ、不起訴等に繋がることもありえます。
ただ、反対に相手方の感情を害し、示談交渉の決裂等にも繋がりかねないというリスクもあり、この点も弁護人の経験や知見を踏まえた的確な対応が必要となってきます。

 

5 お気軽にご相談ください

傷害罪で初犯といっても、傷害の内容等によっては起訴されて実刑となってしまう可能性もありますし、反対に、早期に示談することなどによって前科がつかずにすむ場合もあります。

いずれにせよ、早い段階で信頼できる弁護士に相談し、適切な対応をしていく必要があります。

上原総合法律事務所は、元検事(ヤメ検)8名(令和6年12月20日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。

傷害罪をはじめ、刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。

 

ご相談の流れについてはこちらをご参照ください。 

弁護士費用について詳しくはこちらをご参照ください

■LINEでのお問い合わせこちら
■メールでのお問い合わせこちら
※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。

弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

元検事弁護士に無料相談 LINEでのご相談予約 メールで相談予約
元検事弁護士に無料相談 03-6276-5513 LINEでのご相談予約はこちら メールでのご相談予約はこちら

お問い合わせ メールでのお問い合わせ LINEでのご相談予約はこちら

お問い合わせ状況

昨日のお問い合わせ件数

今月のお問い合わせ件数

95

外国人労働者雇用.com

コンテンツメニュー

コラム

【新着コラム】

【コラムカテゴリー】

アクセス

【新宿事務所】

〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-27-3
やまとビル7階
新宿駅新南口 徒歩3分
新宿三丁目駅 E8出口すぐ
代々木駅東口 徒歩5分


【横浜事務所】

〒220-0004
神奈川県横浜市西区北幸2-9-40

銀洋ビル7階

横浜駅南9出口徒歩5分


【立川事務所】

〒190ー0012
東京都立川市曙町2ー8ー28

TAMA MIRAI SQUARE 4階

JR立川駅北口徒歩5分