当事務所には、性行為当時は同意があったのに後になって不同意性交等(レイプ)だと言われている、というご相談を多数いただいています。
密室で性交をした場合、目撃者がいなければ、不同意性交をしていないことの証拠を提出することはとても難しいです。
ですが、何もせずにいれば、状況が不利になったり、逮捕されたりするリスクもあります。
示談しないと決めるのであれば、その視点で、やれることがあります。
この記事では、刑事事件を熟知する元検事(ヤメ検)の弁護士が、加害者とされている側の視点で、示談しないと決まっている場合に、不利益を避けるためにどうすれば良いのかを説明します。
なお、示談を視野に入れている方向けの記事も作成しています。
不同意性交等罪・不同意性交等致傷罪とは何か、これらの罪を犯したらどうなるか、について詳しくはこちらをご参照ください。
不同意性交等罪をしたらどうすれば良いか、について詳しくはこちらをご参照ください。
Contents
自称被害者が警察に被害を届け出た場合、加害者とされた側の目標は不起訴(裁判にならずに終了)または無罪です。
刑事事件は法律(ルール)にしたがって処理されるので、不起訴または無罪という目標を達成するためには、刑事事件のルールを把握する必要があります。
刑事裁判には、疑わしきは被告人の利益に、というルールがあります。
これは、ある被告人に不利益な事実の存在が確実ではない(疑わしいだけである)場合、被告人に有利なように、その事実がないと判断する、ということです。
不同意性交等罪について言えば、たとえば「当時、被害者はお酒を飲み過ぎて意識不明だった」「当時、加害者は、被害者が性行為に同意していないことをわかっていた」などの事実が、加害者に不利な事実です。
このような加害者に不利な事実の存在が確実ではない(疑わしいだけである)場合、被告人に有利なように、その事実がないと判断されます。
そのため、冤罪と戦うためには、自分に不利な事実の存在が確実ではない(疑わしいだけである)と検察官・裁判官に思ってもらうための活動をすることになります。
潔白を証明しなければいけないというわけではなく、クロではない可能性があると思って貰えば良いということになります。
さらに、有罪か無罪かどうかはクロではない可能性があるかについての裁判官の判断ですが、起訴するかどうかは検察官が決めます。
検察官は、確実に有罪になると考える場合に起訴します。
そうすると、検察官は、いわば、「クロではない可能性がある」と裁判官が考える可能性がある場合には不起訴にします。
そのため、起訴前弁護においては、検察官に、裁判官が「クロではない可能性がある」と考える可能性がある、と考えてもらって不起訴にしてもらうことが目標になります。
また、起訴後弁護(公判弁護)においては、裁判官に、クロではない可能性がある、と考えてもらって無罪にしてもらうことが目標です。
冤罪と戦うためには、これらの考え方を念頭に置いて、活動をしていくことになります。
以下ではわかりやすくするために、被害届が出されてかどうかに関わらず、加害者とされた人のことを「被疑者」と記載します。
不起訴または無罪を勝ち取るために最も有効なのは、事件があったとされる当時の事実関係を示す証拠です。
例えば、自称被害者がお酒を飲みすぎて自分では歩けないほどの状態の時にホテルに連れて行かれて被害を受けたと言っている事案で、ホテルの防犯カメラに、被害者が一人でしっかりとした足取りで歩いて被疑者についていっている様子が記録されていれば、容疑はほとんど晴れたと言えるかと思います。
また、当日のものではなくても有効な証拠になることもあります。
例えば、性的行為の翌朝に被疑者と自称被害者が食事をしていて、そこで被疑者が交際を断ったことの逆恨みで被害深刻に至った事案であれば、食事前には仲良く歩いている被疑者と自称被害者がうつった防犯カメラ映像が証拠になり得ます。
もちろん、事件前後のLINEなどのメッセージも証拠になります。
このような証拠は、何もしなければ失われていってしまう可能性があります。
しっかりと早期に収集することが大切です。
性行為当時は同意があったのに後になって不同意性交等(レイプ)だと言われている場合、自称被害者が被疑者に不満を伝えてきたり、警察に被害申告したりすることで、被疑者はトラブルが発生したことを知ります。
このような場合、自称被害者の言い分が一貫しているとは限りません。
むしろ、逆恨みなどに基づく事件の場合、発言が矛盾したり、不同意性交等の被害に遭ったとは考えられないような言動をすることがあります。
その状況を録音するなどして証拠にしておければ、防御手段として有効になることがあります。
検察官や裁判官は、事件処理や裁判をするときに、自称被害者の言い分を信用できるかを必ず検討します。
その際に、自称被害者の発言が矛盾したり、不同意性交等の被害に遭ったとは考えられないような言動をしていれば、自称被害者の言い分の信用性が下がります。
自称被害者が被害申告すると、警察官は、はじめに聞いた自称被害者の話をベースに事件のことを考えます。
自称被害者の話の内容が矛盾していたりしない限り、警察官は、自称被害者の話の内容がしっかりしている場合、警察官は、その話を一応確からしいと感じます。
そうすると、加害者とされた人にとっては不利になり得ます。
自称被害者の話を聞いた後に、加害者とされた人から話を聞く際には、自称被害者の話と異なる内容を、疑いを抱きながら聞く可能性が高いからです。
そのため、トラブルになった場合、被疑者は、自分から警察に相談に行くことを検討すべきです。
自分から警察に相談に行く場合、上申書を作成して持っていくことが有効です。
警察に相談に行っても、警察官が話を聞くだけで、書類を作成してくれないかもしれません。
しかし、上申書を用意していけば、確実に、相談した内容を書類に残すことができます。
また、警察官が書類を作成してくれるとしても、その内容がどのようなものになるかは分かりません。
上申書は、あらかじめ自分で作成するものなので、事件に関する自分の認識を正確に伝えることができます。
自分から警察に行くのであれば、よほど緊急で上申書を作成する時間がないという例外的な場合を除き、上申書を作成していくべきです。
自称被害者が捜査機関に被害届を出した場合、理論上、虚偽告訴罪などで刑事告訴することが可能です。
ですが、自称被害者が虚偽告訴罪で逮捕・起訴されたり有罪になるとは限りません。
1で説明したように、起訴・有罪の立証のハードルは高く、不同意性交等罪で起訴・有罪にするのが難しいのと同様、虚偽告訴罪での起訴・有罪も簡単ではありません。
虚偽告訴罪で告訴しようとすれば、弁護士費用もかかりますし、虚偽告訴罪の捜査も行う必要が生じるため不同意性交等罪の事件処理が遅くなる可能性もあります。
虚偽告訴罪で刑事告訴するかどうかは、立証の難易度その他の事情を総合的に考慮して決めることをお勧めします。
著名人の事件においては、自称被害者やメディアなどを名誉毀損などで損害賠償請求することがあります。
これは、損害賠償請求をすることで金銭で被害弁償をしてもらうほかに、損害賠償請求をしたという事実自体で名誉を回復させる効果を持つものと思われます。
他方、損害賠償請求をすること自体は、事件の存在をさらに広く知らしめる行為にもなります。
損害賠償請求するかどうかについても、事情を総合的に考慮して決めることをお勧めします。
上原総合法律事務所には、元検察官(ヤメ検)の弁護士が多数在籍しており、刑事事件のご相談をお受けしています。
検察官は、1年間に100件以上の刑事事件を担当することも稀ではなく、当事務所の弁護士は、非常に豊富な刑事事件の経験を有しています。
冤罪被害を避けるために、誠心誠意寄り添います。
お困りの方はお気軽にご相談ください。
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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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