逮捕され、検察庁に送致されると、多くの事案で検察官による勾留請求がなされ、裁判所がこれを踏まえて勾留を決定します。
勾留が決まると、原則として「検察官の勾留請求の日」から数えて10日間、身柄拘束が続きます。
そして、場合によっては勾留が延長され、身柄拘束がさらに長引くこともあります。
本記事では元検察官(ヤメ検)の弁護士が、勾留延長や勾留延長を阻止する方法等について解説します。
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勾留延長とは、検察官の勾留延長請求に基づき、裁判所が勾留の延長決定をすることにより、当初の10日間の勾留期間がさらに延長(最大で10日間)されることを言います。
刑事訴訟法208条2項では、「やむを得ない事由があると認めるとき」に最大で10日間、勾留の延長ができると規定されています(なお、一部の犯罪についてはさらに追加で最大5日間の延長ができます。)。
では、検察官はどのようなときに勾留延長請求をするのでしょうか。
まず、そもそも勾留というのは、検察官が被疑者の起訴・不起訴を決めるために身柄拘束が必要であると認められる場合に許可されます。
とはいえ、身柄拘束は人権制約の程度が極めて大きいですから、その期間は延長を含めても最大で20日間と法律により定められているのです。
こうした勾留制度のもと、検察官は、勾留期間内に必要な捜査を遂げて事案を解明して起訴・不起訴を判断することになるのですが、実務上は、要するに「10日間では起訴・不起訴が決められない」「勾留10日目時点でさらなる補充捜査の必要がある」ときに勾留延長請求がされています。
なお、法律上はあくまで10日間では捜査が遂げられない「やむを得ない事由がある」場合にのみ、例外的に勾留延長が認められるとされていますが、実務では相当数の事案(著者の体感では優に過半数を超えます)が勾留延長されています。
では、具体的にどのような場合に勾留延長請求がされ、勾留延長が認められているのでしょうか。
判例上、勾留延長が認められるための要件である「やむを得ない事由があると認めるとき」とは、「事件の複雑困難(被疑者もしくは被疑事実多数のほか、計算複雑、被疑者関係人らの供述又はその他の証拠のくいちがいが少なからず、あるいは取調を必要と見込まれる関係人、証拠物等多数の場合等)、あるいは証拠蒐集の遅延若しくは困難(重要と思料される参考人の病気、旅行、所在不明もしくは鑑定等に多くの日時を要すること)等により勾留期間を延長して更に取調をするのでなければ起訴もしくは不起訴の決定をすることが困難な場合をいうものと解するのが相当である(なお、この「やむを得ない事由」の存否の判断には当該事件と牽連ある他の事件との関係も相当な限度で考慮にいれることを妨げるものではない)。」と判示しています(最三小判昭和37年7月3日判決・民集16巻7号1408頁)。
判例の書きぶりは法律に慣れていないと難解に見えるかもしれませんが、要するに「事案が複雑、証拠や関係者多数等の理由で10日では起訴不起訴が判断できない場合に延長が認められる」という内容で、上で説明した検察官が勾留延長請求をする場合と同様のことを言っています。
典型例でいうと、例えば「覚醒剤や精神鑑定等の鑑定結果が出ていない」とか、「被害者や共犯者が複数いる」「(逮捕後に押収した)電子機器の解析結果の精査が未了」といったケースがあります。
現行犯逮捕の事案では被疑者から押収した覚醒剤を科捜研に鑑定してもらい、その鑑定書によって違法薬物であることや違法薬物の重量を立証することになるのですが、科捜研の繁忙状況等により鑑定結果が10日で間に合わないことがあります。
このような場合、検察官は鑑定書が届くのがいつになるかを警察に確認し、その鑑定書が届いてから検察庁内部で必要な決裁手続等の時間も考慮して、延長が必要な日数を算定しています。
また被害者や共犯者が複数いる場合には、その取調べに時間がかかりますし、ある人から1度取調べをした後に、別の人から聞いた話を踏まえてもう一度同じ人から話を聞いたり、確認する必要が出てくるということは良くあります。
こういった事案では検察官から勾留延長請求される可能性が極めて高いです。
なお、最初の勾留期間は原則として10日ですが、勾留延長の日数に決まりはなく、裁判所が必要と判断した日数が延長されます。
検察官が請求した日数から削られることもあり、10日で請求したものが8日、6日の延長決定となることは決して珍しくありません。
また、実務では、土日に起訴・不起訴の処分をすることはありませんので、その手前の金曜日までが延長期間(延長満期)とされています。
勾留延長を阻止するための弁護活動としては、検察官が勾留延長請求をする前に、あらかじめ、勾留延長を請求しないよう求める意見書を提出するということが考えられます。
また、それでも勾留延長請求をされてしまった場合には、裁判所に対して、勾留延長決定をするべきではない旨の意見書を提出したり、勾留延長決定が出てしまったら、それに対する異議申立て(準抗告)をすることにより、勾留延長を阻止あるいは延長期間を短くすることが期待できます。
検察官が勾留延長請求をした事案で結果として延長日数がゼロになることは極めて稀ですが、検察官は多少の余裕を見て延長日数を請求しているのが実態です。
というのは、検察庁では勾留満期の1〜2日前には内部での起訴・不起訴決裁が終わらせるという運用をしているため、延長日数の1〜2日分は捜査というよりも検察庁内部の手続のために(多めに)請求しているという側面が強いのです。
そのため、弁護人が準抗告等で争えば、延長日数が1〜2日程度減少することは珍しくありません。
また、仮に延長日数が減らなかったとしても、勾留延長決定後早期に示談ができるなど、検察官が不起訴を決める重要な進展があった場合には、延長期間の途中であっても不起訴・釈放されることもあります。
ですから、勾留延長がされてしまったからといって諦めてしまう必要はなく、早期に釈放されるためにできる弁護活動は複数残されています(なお、示談が成立した場合、直ちに検察官に連絡をして不起訴処分を早くするよう積極的に働きかけないと、ズルズルと延長満期まで処分時期を遅らせてしまうので注意が必要です。)。
このように、勾留延長を阻止、あるいは勾留期間の減少・早期の釈放(身柄開放)を目指す上では、弁護人が意見書の提出、準抗告、示談交渉等をする必要があり、弁護人の活動が極めて重要といえます。
事例1
飲酒運転の事例 | 元検事の弁護士へのご相談なら (keiji-kaiketsu.com)
事例2
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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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