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雇調金不正受給の解決事例(労働局から一度不正受給に当たると判断された後に、判断を覆した事例)

結果:過誤受給として数百万円の返金

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事案の概要

本件は、比較的多額な雇用調整助成金(一億円以上十億円以下)を受給していた企業からのご依頼でした。

事業主様は、新型コロナウイルスの感染流行時に雇用調整助成金を受給していましたが、当時の受給について、一部誤った受給をしてしまった可能性があり、そのため労働局から不正受給と判断されてしまわないかご心配なさっていました。

そこで弊所による内部調査を行い、過誤受給の有無やその程度を明らかとし、労働局に報告することで不正の疑いを払しょくすることにしました。

調査の経過等

弊所において本件を受任してすぐ、労働局に対して連絡を取り、本件は不正受給ではないが、一部過誤受給をしてしまった可能性があること、過誤受給の具体的内容については今後弊所による調査で明らかにして報告すること、過誤受給分については返金することを伝えました。

実際に調査をしてみると、一部の従業員について、雇用調整助成金の申請上休業とされているにもかかわらず、勤務した形跡があることが判明しました。

従業員が実際は勤務しているにも関わらず休業したものとして雇用調整助成金を申請すれば、「本来得られなかったはずの助成金を受給していた」ことになり、労働局からは強く不正を疑われることになります。

そもそも雇用調整助成金における不正受給とは、(細かく規定はありますが要約すると)①故意に虚偽書類を作成するなどして②受給できないはずの助成金を受給することを指します。

仮に不正受給に該当すれば、労働局から雇用調整助成金の総受給金額に2割を加えた金額の返金を求められ、会社名の公表・刑事告発等の処分を受ける可能性があります。

そこで、当職は、事業主様以外にも、本件会社の役員・従業員等にヒアリングを実施し、実際は勤務していたにもかかわらず休業したことになっている従業員の有無、いた場合その範囲の特定及び原因の解明を行うこととしました。

結論として、本件会社では、一部の従業員が休業指示があったにもかかわらず、会社や上司等に報告をしないまま勤務していたことが発覚しました。

しかし、このような一部の従業員に見られた勤務実態は、あくまで会社に報告せずに行われた例外的なものであって、会社の指示のもと虚偽の書類が作成されたような場合とは異なり、不正受給に該当しない(前記②の条件に該当するが、前記①の条件に該当しない)ものでした。

そこで、弊所は、これらの調査結果を労働局に提出し、過誤受給してしまった助成金について返金する旨を労働局に伝えました。

不正受給であるとの判断から逆転まで

労働局は弊所からの調査結果報告を受けてから数か月の間「報告内容を検討する」として、特段のリアクションがありませんでした。

その後、労働局から報告書記載事項に関する確認として多数の資料提出を求められ、当該資料を提出するということが何度かありました。

労働局からの資料提出依頼がひと段落した後に、労働局から事業主様に対してヒアリングを行いたいとの連絡が入りました。

事業主様としても、労働局からヒアリングを受けるのは初めてのことでしたので、弊所において労働局から聞かれるであろう事項に関する想定問答を用意し、準備を行いました。

しかし、結局この準備は水泡に帰すことになります。

ヒアリング当日、労働局は事業主様にヒアリングをすることなく「あなたたちの雇用調整助成金受給は不正であると判断しましたので、この調書にサインをしてください。」といって書面を見せてきました。その書面には、事業主様がわざと不正受給を行ったことを認める内容があらかじめ記載されていたのです。

もちろん、事業主様は不正受給をしたことを認める話をしたことは一度もありません。

仮にこのような書面に「事実とは違う。」と思い流れでも署名してしまえば、「不正を認める内容の書面に自分でサインしたんだから不正を行ったに違いない。」と考えられてしまい、その後判断を覆すことがより難しくなってしまいます。

当職は、その場で労働局側に「一度もヒアリングをしていないにもかかわらず事業主名義の書面がすでに作成されていること、しかも当方の主張と真逆の内容が記載されていること」について抗議を行い、書面への署名を拒否しました。

また、その場で、労働局の担当者が不正であると考えている根拠を確認し、その根拠が提出済みの報告書や客観的証拠から排斥できるものであることを伝えましたが、結局その場では労働局担当者から「不正という判断を保留する。」との回答があったのみでした。

さらに、後日正式な書面でさらに抗議を行い、再度、法的に不正受給に該当しないことを伝えました。

そこから数か月後、労働局は、一転「本件は不正受給ではなく、過誤受給である。」として、当初の当方の主張どおりの認定をしました。

結果として、仮に不正受給と判断されていれば、数億円の返金が求められることに加え、社名公表などの不利益を被るはずだったところ、過誤受給として数百万円の返金で本件を終結させることができました。

弁護士のコメント

労働局は、雇用調整助成金に関する膨大な調査を行っていますので、残念ながら本件のように誤った判断をしてしまうことは少なからずあります。

一度労働局が誤った判断をしてしまった場合これを覆すことは非常に困難です。

しかし、誤った判断をされた場合でも、丁寧な事実調査及び証拠の収集及び認定された事実を基に法律を適切に適用すること、そしてなによりその調査の内容をしっかりと労働局に伝えることでその判断を覆すことも不可能ではありません。

新型コロナウイルスの感染流行下における雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金を受給していた企業や事業主の方が、労働局から不正受給であるとして調査を受けている場合でも、本件のように適切な対応をすれば、不正受給であるとの判断を免れることも十分可能です。

上原総合法律事務所では、雇用調整助成金の不正調査対応等の行政対応について経験豊富な弁護士が多数在籍しております。

労働局から不正を疑われている方や他の補助金等の不正受給を疑われてしまっている事業主の方などがいらっしゃいましたら是非一度弊所にご相談ください。

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