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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
「逮捕されたらスマホの中身を全部見られるのか」
「削除したLINEや写真も復元されるのか」
「スマホから余罪が発覚することはあるのか」
刑事事件に関し、このような質問を受けることがしばしばあります。
近年では、多くの人がスマートフォンを日常的に使用しており、連絡手段だけでなく、写真、動画、SNS、ネット検索履歴、位置情報など様々な情報が保存されています。
そのため、警察からスマホを押収された場合、「どこまで調べられるのか」「プライバシーは守られるのか」と不安になる方も少なくありません。
実際、スマホは刑事事件において重要な証拠となることが多く、警察は押収したスマホの解析を行うことがあります。また、スマホの解析等をきっかけに、今立件されている事件とは別の犯罪、いわゆる余罪が発覚するケースもあります。
特に、児童ポルノ事犯や盗撮等の場合、余罪が発覚しないことの方が珍しいかもしれません。
本記事では、スマホが押収された場合の解析や復元の可能性、余罪発覚や立件の可能性、想定されるスマホの返還時期などについて、元検事(ヤメ検)の弁護士が解説します。
目次
第1 携帯・スマホはどんな場合に押収されるのか
スマホは、事件との関連性が認められる場合、特に事件と関連するデータやメッセージ等がスマホに記録されているのではないかとうかがわれるような場合に押収されることがあります。
1 逮捕時に押収されるケース
逮捕された際に、所持していたスマホが押収されることがしばしばあります。
刑事訴訟法220条1項2号は逮捕の現場における捜索や差押えなどを認めており、これに基づいてスマホが押収されることがあります。
例えば
- 詐欺事件
- 窃盗事件
- 覚せい剤事件
- 性犯罪(特に性的姿態等撮影、盗撮、児童ポルノ)
- 名誉毀損や脅迫事件
- SNSトラブル
などでは、共犯者とのやりとり、被害者を騙したり脅したりするメッセージや薬物の売買に関するメッセージ、盗撮のデータや違法な投稿の履歴など、スマホの中に事件に関する証拠が保存されている可能性があります。
そのため、逮捕時に所持していたスマホが押収されることがあります。
2 捜索差押えで押収されるケース
逮捕されていなくても、自宅や職場に対する捜索差押えが行われる場合があります。
いわゆる「家宅捜索」です。
この場合、データという形で証拠が存在しうるような事件であれば、スマホやそれに類するものとして、
- スマホ
- タブレット
- パソコン
- USBメモリ
- 外付けハードディスク
などが押収対象となることがあります。
3 任意提出を求められるケース
警察から
「スマホを見せてください」
「提出してもらえませんか」
と求められることがあります。
この場合は任意提出であることもありますが、仮に拒否したとしても、後に逮捕や差押えに発展することもあるため注意が必要です。
第2 押収を拒否することは可能?パスワードは?
1 差押令状がある場合や逮捕時の差押えの場合
裁判官が発付した差押令状(通常、捜索と合わせて捜索差押許可状が発布されることが多いと思われます。)がある場合には、基本的に押収を拒否することはできません。
拒否したとしても、警察は令状に基づいて差押えを行います。
また、逮捕の際に刑事訴訟法に基づいて行われる差押えも同様であり、拒否はできないものと考えてよいでしょう。
2 任意提出の場合
任意提出であれば拒否できる場合があります。
もっとも、拒否した結果として、後日令状請求が行われることもあります。
また、提出を拒否したことなどから、罪証隠滅(証拠隠滅)のおそれがあるという評価に繋がり、逮捕・勾留にまで発展するリスクもあります。
そのため、対応については弁護士へ相談することをおすすめします。
3 パスワードを教えたりロックを解除する義務はあるのか
スマホには、基本的にはパスワードや指紋、顔人証によるロックがかかっており、本人以外は内容を確認できないため、捜査機関が押収したり任意提出されたスマホについてロックの解除を求めてくることがあります。
結論から言うと、パスワードや暗証番号を捜査機関に教える法的義務はありませんし、顔認証等に協力する義務もありません。
これは、強制的に押収された場合も同様であり、捜査機関はあくまでスマホという「物」を押収でき、それを自由に精査することができるだけであって、持ち主の協力まで強制できるものではないのです。
ただ、押収したスマホは捜査機関が自由に扱えるため(もちろん破壊したりはしない限度ですが)、ロックを突破されてしまう可能性も否定できません。
また、スマホのロック解除に協力しないことでより怪しまれたり、「罪証隠滅のおそれ」があると受け止められ、逮捕等のリスクが上がってしまうというデメリットもありえます。
第3 押収されたスマホ等はどこまで調べられる
1 LINEやメール
被害者や共犯者等とのやりとりが存在しうるような事件の場合、最も重点的に調べられるのがLINEやメールでしょう。
例えば
- 被害者とのやり取り(脅迫や詐欺のメッセージなど)
- 共犯者との連絡
- 被害品の売却等の連絡
などが確認されます。
削除したトークについても、状況によっては復元され、解析対象となる可能性があります。
共犯者との連絡などは、故意や共謀についての非常に重要な証拠となりますし、脅迫や詐欺をLINE等で行っていれば犯行そのものを客観的に立証する証拠となりえます。
2 画像や動画
スマホ内の画像や動画も確認されることがあります。
特に
- 性犯罪(特に性的姿態等撮影、盗撮や児童ポルノ事犯など)
- 薬物事件(取引に当たり用いられた画像など)
- 暴行事件(犯行状況を共犯者が記録している場合など)
などで重要な証拠となる場合があります。
また、盗撮や児童ポルノの事案では、スマホ内のデータの解析により多数の余罪が発覚するパターンも少なくありません。
3 検索履歴
インターネットの検索履歴が調べられることもあります。
例えば
- 犯行方法の検索
- 被害者情報の検索
- 違法薬物に関する検索
などが問題となることがあります。
4 位置情報
スマホには位置情報が記録されている場合があります。
そのため
- 犯行現場付近にいたか
- アリバイがあるか
などが検討されることがあります。
5 SNSアカウント
近年では
- X(旧Twitter)
- TikTok
などのSNSも捜査対象となることがあります。
児童ポルノ事犯や淫行の事例ではこれらのSNSを通じて被害児童と知り合うなどといったケースもありますし、特殊詐欺やいわゆるトクリュウの犯行ではSNSを通じて実行役などが募集されるケースもあります。
6 削除したデータは復元されるのか
「削除したから捜査機関も確認できないはず」と考えるかもしれませんすが、必ずしもそうとは限りません。
捜査機関は、スマホ等のデータの復元や解析を行う技術を有しています。
状況によっては
- 削除した写真
- 削除したメッセージ
- 削除したファイル
が復元される可能性があります。
もちろん、すべてのデータが復元できるわけではありませんが、復元される可能性はもちろん、相手のいるメッセージ等であれば相手方の端末に記録が残っているといった可能性もあります。
第4 余罪を追及される可能性
1 余罪とは
余罪とは、現在捜査対象となっている事件以外の犯罪事実を指します。
偶発的な傷害事件や事故等はさておき、万引きを含む窃盗や薬物事犯、特殊詐欺や盗撮等の事件では、繰り返し犯行が行われ、その中の1件で検挙されたことで多数の余罪が発覚するというケースが多くあります。
※余罪捜査についてはこちら( 余罪捜査はどこまで?余罪ありの初犯はどうなるのかについて元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所 )の記事もご参照ください。
2 スマホから余罪が発覚するケース
例えば
- 別の被害者とのやり取り(淫行の被害児童など)
- 違法画像の保存(盗撮、児童ポルノなど)
- 過去の詐欺行為(多数の相手への詐欺など)
- 薬物の購入履歴(売人とのやりとりなど)
などが発見されることがあります。
典型的な事例としてはやはり児童ポルノ事犯と盗撮が挙げられ、そもそも画像や動画データとして記録が残る類型の犯罪であること、同種犯行が繰り返されがちであることから、大多数のケースにおいて余罪が発覚するといっても過言ではありません。
※児童ポルノの所持等についてはこちら( 児童ポルノのダウンロードや単純所持について弁護士に相談|元検事の弁護士が弁護します|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
※性的姿態等撮影罪についてはこちら( 撮影罪(性的姿態撮影罪)とは何か|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
3 余罪が見つかった場合
余罪が発覚すると、その内容について新たな捜査が開始される可能性があります。
その結果
- 再逮捕
- 追起訴
につながることもあります。
※再逮捕についてはこちら( 再逮捕とは?罪が重くなる?何回まで可能?元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所 )の記事もご参照ください。
4 余罪追及が行われやすい事件
特に
- 性犯罪(特に児童ポルノ事犯や盗撮等)
- 詐欺(特に特殊詐欺)
- 薬物犯罪(覚せい剤、大麻、MDMAなど)
- 窃盗(万引き、下着等など)
などでは余罪捜査が行われることがあります。
いずれについても、そもそも犯行が繰り返されやすい類型です。
もっとも、すべての事件で余罪追及が行われるわけではありません。
※余罪捜査についてはこちら( 余罪捜査はどこまで?余罪ありの初犯はどうなるのかについて元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
第5 スマホはいつ返してもらえるのか
1 事件との関係がなくなった場合
押収物は証拠としての必要性がなくなれば返還されるのが原則です。
後述のとおり、スマホ内の必要なデータを抽出した段階で返還されることもありますが、事件の進行次第でさらなる解析等が必要となる可能性が残っている場合はまだ証拠としての必要性が残っていると判断されることもあるでしょう。
2 返還までの期間
事件内容によって異なりますが、内容の簡単な精査やデータ抽出だけで数日~数週間で還付となることもあれば、起訴不起訴が決まるまで、あるいは裁判が終わるまで還付されず、数か月~数年単位となってしまう可能性もあります。
3 コピー後に返還されるケース
通常、スマホそれ自体ではなく、保存されているデータに証拠としての価値があると考えられます。また、スマホ自体は比較的高価ですし、破損のおそれもあるため、捜査機関としては必要なければあまり手元に置いておきたいものでもありません。
そのような事情から、スマホ内のデータを抽出した上で、本体を返還するケースもあります。
もっとも、事件によって異なり、スマホ自体が証拠としての価値がある場合やさらなる復元、抽出、解析等が必要となりうるケースでは一定のデータ抽出がなされた後もすぐに還付はされないでしょう。
4 還付の要請等
在宅事件や保釈されたケースなどで、社会生活上スマホが必要だという場合もあるでしょう。
別途購入して契約もし直すなどで足りる場合もあるかもしれませんが、費用がかかりますし、スマホ内の連絡先データ等が必要というケースもあるかと思われます。
そのような場合、弁護士を介し、捜査機関に対し早期の還付を申し入れるという手段もあります。
基本的には「お願い」ベースの要請、申入れではありますが、既に必要性がない、あるいは乏しいと考えられる場合で、反対に還付の必要がある場合には、具体的に事情を説明すれば配慮が得られる場合もあります。
また、スマホ自体の還付には至らなくても、事実上スマホ内の連絡先の教示を受けたり、捜査機関の監視の下で一定の操作を行うといったことが可能になるケースもありますので、必要であれば申入れは行うべきでしょう。
第6 押収される時の注意点
1 勝手にデータを削除しない
証拠隠滅行為と評価され、逮捕・勾留に繋がってしまう可能性があります。
※逮捕についてはこちら( 逮捕されたくない|上原総合法律事務所 )の記事もご参照ください。
2 警察の質問に安易に答えない
先に述べたとおり、スマホを押収されたとしても、パスワードを教えるなど、ロックの解除について協力する義務はありません。
他方、結局はロックを解除されたり、協力を拒否したことで罪証隠滅のおそれありという評価に繋がったりという可能性もあるため、どのように対応すべきかは要検討です。
3 早めに弁護士へ相談する
スマホ解析の結果は、その後の捜査方針に大きな影響を与えます。
そのため、押収された段階で弁護士へ相談することが重要です。
ロックの解除に応じるべきか否か、保存されているデータについて弁解すべきことがあるかなどは検討が必要ですし、余罪の発覚が見込まれる場合には早めにその対応策も練っておくことが重要です。
4 代替の通信手段や連絡先等の確保を行っておく
スマホの押収が予期される場合、あるいは自首を行うような場合、押収後の連絡手段を先に確保しておいたり(回線自体が必要な場合は想定しがたく、機種変更をした上、事件当時のスマホを提出するという選択肢もありえます。)、今後の生活に必要な情報は控えておくといった準備をしておくことが望ましいでしょう。
また、可能な範囲で家族等の周囲にもスマホが押収されることを予め伝えておくという選択肢もあります。
いずれについても、弁護士と相談しながら対応することが大切です。
第7 お気軽にご相談ください
スマホは現代社会において最も重要な情報端末の一つです。
そのため、警察に押収されると、
「どこまで見られるのか」
「LINEは見られるのか」
「削除したデータは復元されるのか」
「余罪まで調べられるのか」
と不安を抱く方が少なくありません。
実際、スマホの解析結果は事件の方向性を大きく左右することがあります。
また、スマホの解析等から余罪が発覚し、再逮捕や追送致、追起訴に繋がる可能性もあります。
当事務所には、検察官として数多くの刑事事件を担当してきた経験を有する弁護士が多数在籍しています。
ご自身やご家族のスマホが押収されてお困りの方、警察から任意提出を求められている方は、お早めにご相談ください。
上原総合法律事務所は、元検事8名を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えており、経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。
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