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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。捜査・公判の両面で多数の刑事事件 を担当。検事退官後、都内法律事務所を経て個人事務所を開設。2021年に弁護士法人化し、新宿・ 横浜・立川に展開。元検事(ヤメ検)として、捜査機関の思考・動き方を熟知した立場から、逮捕前 の対応・示談交渉・公判弁護まで一貫してサポートしている。
「詐欺罪で逮捕されたら必ず実刑になるのだろうか」「初犯なら執行猶予が付く可能性はあるのか」と不安を抱えている方も多いでしょう。
詐欺罪は、初犯であっても実刑となるケースがある一方、適切な対応によって執行猶予付き判決となるケースも少なくありません。
また、早期に示談が成立するなどすれば不起訴となる可能性もあります。
執行猶予が付くか、不起訴となるかどうかは、「初犯だから」「反省しているから」といった一つの事情だけで決まるものではなく、様々な事情が総合的に判断されます。
この記事では、元検事(ヤメ検)の弁護士が、詐欺罪の基本概念から、成立要件、法定刑、そして逮捕後の流れや弁護士によるサポート内容まで分かりやすく解説します。
目次
第1 詐欺罪とは何か
詐欺罪とは、人を欺いて(だまして)金品などの財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たりする犯罪を指します。
刑法第246条に規定されており、条文は以下のとおりです。
(詐欺)第246条
1 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の拘禁刑に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
近年では、振り込め詐欺やオレオレ詐欺などの「特殊詐欺」が社会問題化しており、捜査機関や裁判所はこれらの事件に対して非常に厳格な姿勢で臨んでいます。
また、友人間の金銭トラブルやインターネット上の取引においても、当初から返済や商品引き渡しの意思がなかったと判断されれば、詐欺罪が成立する可能性があります。
第2 詐欺罪の成立要件
詐欺罪が成立するためには、以下の1~4の客観的要件が因果関係をもって満たされていること及び詐欺の故意が必要です。
1 欺罔(ぎもう)行為
人を騙す行為のことです。事実を偽る積極的な行為だけでなく、真実を告げるべき義務があるのにあえて告げない(不作為)場合も含まれます。
例えば
- 存在しない投資商品を紹介する
- 偽物の商品を本物であると説明する
- 商品に重大な欠陥があることを知りながら、あえて黙って売りつける
- 返済するつもりもそのあてもないのに、返済する(できる)ふりをしてお金を借りる
- 他人のクレジットカードなどを使って商品を購入するなどする
- 偽物のチケットで入場する
などが典型例です。
2 錯誤(さくご)
欺罔行為によって、相手方がだまされて事実を誤認することです。
誤認していることが必要ですので、相手の欺罔行為の内容につき虚偽だと気付いていた場合には、詐欺罪は成立しません。
3 交付行為(処分行為)
錯誤に陥った相手方が、自らの意思で財物や利益を渡す(処分する)ことです
例えば
- 現金を振り込む
- 商品を渡す
- 債務免除の意思表示をする
などが該当します。
4 財物の移転・財産上不法の利益の取得
相手方の交付行為によって、加害者または第三者に財物が移転する、あるいは経済的利益が発生することです。
1~4の一連の流れに加えて、行為者に「故意(だまして財産を奪う認識とそれに対する認容)」がなければ、詐欺罪は成立しません。
例えば、「返すつもりで借りたが、結果的に返せなくなった」という場合は、だまし取る故意がありませんので、原則として民事上の責任にとどまり、詐欺罪には問われません。
第3 詐欺罪の法定刑
詐欺罪(刑法第246条第1項)の法定刑は
10年以下の拘禁刑
です。
ここで重要なポイントは、詐欺罪には、窃盗罪等と異なり「罰金刑」が規定されていないという点です。
したがって、詐欺罪で処罰される場合には、略式手続による罰金刑で済むということは有りえません。
略式手続については(略式起訴・略式命令でも前科?手続の流れ、罰金の相場等を元検事の弁護士が解説)の記事をご参照ください。
また、起訴されて有罪判決を受けた場合、必ず拘禁刑となり、下で説明する「執行猶予」が付かない限りは刑務所に収監されることとなります。
第4 逮捕後の流れと不起訴(起訴猶予・嫌疑不十分)となるケース
1 逮捕後の流れ
逮捕されると、まず警察署に身柄を拘束され、取調べを受けることになります。
その後、検察に送致され、勾留請求されるかどうかが判断されます。
勾留請求後、裁判所の判断で勾留が認められた場合、最長でそこから20日、身柄拘束が続く可能性があります。
逮捕後の流れについて詳しくは(逮捕から起訴までの流れと期間を元検事の弁護士が図でわかりやすく解説 )の記事をご参照ください。
なお、在宅事件の場合、警察から呼び出されて取調べを受けるなどした後、事件が検察に送致(いわゆる書類送検)され、検察でも取調べを受けるなどした上で処分が決まるという流れが一般的です。
2 起訴・不起訴の判断
逮捕・勾留された場合には、通常、勾留期間の満期までに起訴されるか不起訴となるか、検察官により判断されます。
犯罪事実が証拠上認められない(故意が認定できないなどの場合も含みます。)などといった場合には嫌疑不十分という形で不起訴になることもありますし、示談が成立して起訴猶予という形で不起訴となるケースもあります。
いわゆる財産犯である詐欺罪の場合、被害弁償が済んで示談が成立し、被害者の宥恕を得られた(許してもらえた)といった場合には起訴猶予の可能性があるものと考えられます。
※不起訴(嫌疑不十分)の獲得については(嫌疑不十分とは?不起訴となるためのポイントや処分までの流れについて元検事の弁護士が解説)の記事もご参照ください。
※不起訴(起訴猶予)の獲得については( 起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや前科・前歴との関係、起訴猶予処分獲得のポイントについて解説 )の記事もご参照ください。
第5 執行猶予とは
執行猶予とは、有罪判決を受けても、一定期間刑の執行が猶予される制度です。
例えば「拘禁刑3年、執行猶予5年間」というのは、「3年間、刑務所に行かなければならない、ただし、5年の猶予期間に新しく犯罪をするなどして執行猶予を取り消されなければ、刑務所に行かなくてよくなる」という意味です。
執行猶予期間中に犯罪を犯さなければ刑務所に行く必要はない一方、執行猶予期間中に一定の犯罪を犯した場合には、原則として、執行猶予が取り消され、猶予されていた刑と新たな刑を合わせて服役しなければならなくなります。
執行猶予については(執行猶予とはなにか?元検事の弁護士が拘禁刑で実刑となる場合との違いなどついて解説 )の記事もご参照ください。
第6 詐欺罪で執行猶予になる場合
① 執行猶予の対象となる条件
詐欺罪に限らず、執行猶予となるためには、そもそも判決が拘禁刑3年以内である必要があります。
拘禁刑3年を超える判決であれば、そもそも法律上執行猶予の対象とはなりません。
また、 執行猶予の条件として、前科も関係しており、単純化すると
- 拘禁刑の前科がない場合
- 拘禁刑等の前科があっても、服役等を終えて5年が経過している場合(≒累犯前科がない場合)
- 保護観察なしの執行猶予中の再犯であるものの、拘禁刑2年以下となり特に酌量すべき場合
に執行猶予の対象となります。
② 執行猶予につながる情状
執行猶予が付されるのは、①の条件を満たした上で、執行猶予に付するべきと判断される「情状」が認められる場合に限られます。
「情状」とは、事件に関する様々の事情のことですので、最終的に執行猶予が付されるか否かは、その事件の内容を総合的に考慮して判断されることとなります。
一般的に、詐欺罪において、執行猶予につながり得る有利な情状は以下のとおりです。
・被害弁償および示談の成立
財産犯である詐欺罪において、最も重視される情状が「被害の回復」です。
被害者に対してだまし取った金額(被害額)を全額弁償し、かつ「宥恕条項(被告人を許し、処罰を望まないという意思表示)」を含む示談が成立している場合、極めて有利な情状として評価されます。
・犯行の動機と経緯において酌量の余地があること
生活困窮など、やむにやまれぬ事情が背景にある場合、ギャンブルや遊興費目的の詐欺であった場合と比較して、情状として酌量される余地があります。
・従属的な関与
組織的な犯行において、主犯格の指示に逆らえず末端の役割を担わされたに過ぎない場合、関与の度合いが低いとして有利な情状になり得ます。
・本人の反省と更生環境の整備
真摯な反省態度に加え、家族や雇用主などが「監督者」として被告人の今後の生活を指導・支援する体制が整っていることは、再犯防止の観点から有利な情状となります。
執行猶予の獲得については(執行猶予を獲得するには?元検事の弁護士が執行猶予となるための弁護活動や条件について解説)の記事もご参照ください。
第7 執行猶予や不起訴などを目指すために弁護士へ依頼するメリット
事実を争わない場合(起訴猶予や執行猶予を目指す場合)
詐欺罪における有利な情状は、上記のとおりですので、有利な判決を獲得するためには、これらの有利な情状を主張できるようにすることが重要となります。
この点、弁護士に依頼する大きなメリットは
被害者との間で示談交渉を進められる
ということです。
示談交渉は、相手方が警戒して被疑者本人やその関係者と連絡をとるのを拒むことが多いこと、そもそも被疑者本人が相手方の連絡先を知らなければ進めることは不可能なことなどから、弁護人抜きで行うことは非常に困難ですし、示談交渉自体がトラブルの種になりかねません。また、示談の内容についても、不起訴や執行猶予獲得のために有利に斟酌されるであろう条項となっている必要があります。
弁護士であれば、相手方が警戒を解いて連絡をとってくれる可能性が高まりますし、捜査機関は、相手方の承諾を得られれば、弁護士限りでその連絡先を開示してくれます。また、示談の内容についても最大限有利な内容となるよう交渉することになります。
示談する方法については(刑事事件で示談する方法を元検事の弁護士が解説)の記事をご参照ください。
そのほか、弁護士に依頼することで、犯行に至った経緯、犯行への関与の度合い、反省状況、更生環境といった被疑者・被告人に有利に斟酌されるべき事情について、必要に応じて適切に主張・立証することができるようになるでしょう。
不起訴(起訴猶予)の獲得については(起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや前科・前歴との関係、起訴猶予処分獲得のポイントについて解説)の記事もご参照ください。
執行猶予の獲得については(執行猶予を獲得するには?元検事の弁護士が執行猶予となるための弁護活動や条件について解説)の記事もご参照ください。
また、起訴された場合、保釈請求等についても弁護士が重要な役割を果たし、早期の身柄解放にも繋がりえます。
※保釈については(保釈請求(保釈申請)とは?手続の流れ・許可の要件・保釈保証金等について元検事の弁護士が解説)の記事もご参照ください。
いずれにせよ、詐欺事件では、早期に弁護士へ相談することで、有利な結果となる可能性を高められると言えます。
被疑事実を争う場合(嫌疑不十分や無罪を目指す場合)
騙すつもりはなかった、共犯だと疑われているが事情を知らずに巻き込まれただけだといった場合など、嫌疑不十分という形での不起訴を目指すべきケースや、起訴されてしまって裁判で無罪を目指すべきケースもあります。
このようなケースでは、認識の点が問題であったりすることから、取調べにおいてどのように供述するか、どのような供述調書が作成されるかなども非常に重要になってきます。
被害者や共犯者(とされている者)の証言などもある以上、ただ黙秘するという選択がベストとは限りませんし、的確な主張をしていくこと、反対に不正確、不用意な供述等をしないことも重要です。
取調べにおいてどのような点に注意し、どのような主張をしていくべきかは、事案の内容や証拠関係、さらには捜査機関の考え方なども踏まえた弁護士の的確なアドバイスを受けるべきでしょう。
不起訴(嫌疑不十分)の獲得については(嫌疑不十分とは?不起訴となるためのポイントや処分までの流れについて元検事の弁護士が解説)の記事もご参照ください。
起訴されてしまったという場合、日本の刑事裁判における有罪率はいまだ99%を超えており、無罪を獲得することは容易ではありません。しかし、数は少ないながらも、無罪判決となるケースは確実に存在しており、当事務所でも複数の無罪判決を獲得しています。
裁判において無罪を獲得するには、まずは証拠関係、検察側の主張内容等を正確に把握する必要があります。
その上で、検察官請求証拠に対する意見や主張・立証すべき内容を検討し、裁判官に響く内容、方法で主張等をしていかなくてはなりません。
弁護側の証人尋問や証拠請求はもちろん、被告人質問でどのような内容を話すのか、また検察の反対質問等にどう対応していくかなども、弁護人と綿密に打ち合わせる必要があります。
無罪の獲得については(無罪を勝ち取りたい)の記事もご参照ください。
第8 詐欺罪でお悩みの方は上原総合法律事務所へお気軽にご相談ください
詐欺事件で起訴されるか不起訴となるか、起訴された場合に執行猶予となるか実刑となるかなどは、事件後の対応によって大きく左右されます。特に、被害弁償の有無は、量刑判断に影響を与える重要な要素です。
詐欺事件で警察の捜査を受けている方、ご家族が逮捕されてしまった方は、一人で悩まず、できるだけ早く弁護士に相談すべきと言えます。
早期の対応が、その後の結果を左右することも少なくありません。
上原総合法律事務所は、元検事の弁護士8名(令和8年7月31日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。
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