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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。捜査・公判の両面で多数の刑事事件 を担当。検事退官後、都内法律事務所を経て個人事務所を開設。2021年に弁護士法人化し、新宿・ 横浜・立川に展開。元検事(ヤメ検)として、捜査機関の思考・動き方を熟知した立場から、逮捕前 の対応・示談交渉・公判弁護まで一貫してサポートしている。
令和5年7月13日に新法が施行され、盗撮行為等に関する規制が強化されました。
この記事では、元検事(ヤメ検)の弁護士が、「性的姿態等撮影罪」(以下、単に「撮影罪」ともいいます)などの内容とその刑罰、同罪を犯してしまった場合に採るべき対処法などについて解説します。
目次
性的姿態等撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)と
令和5年7月13日、新たに、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」が施行されました(以下「性的姿態撮影等処罰法」(せいてきしたいさつえいとうしょばつほう)といいます)。
性的姿態撮影等処罰法について、所管する法務省は以下のとおり説明しています。
- 人の意思に反して性的な姿を撮影したり、それによって出来上がった記録を第三者に提供するといった行為が行われると、そのような記録の存在・拡散などによって、撮影時以外の機会に他人にそれを見られる危険が生じ、ひいては、不特定・多数の者に見られるという重大な事態が生じる危険がある。
- 同法は、意思に反して自分の性的な姿を他の機会に他人に見られないという権利利益を守るため、意思に反して性的な姿を撮影したり、これにより生まれた記録を提供する行為などを処罰することとしている。
そのため、性的姿態撮影等処罰法は、駅や街中などで見知らぬ人の下着などをひそかにスマートフォンやカメラで撮影するいわゆる盗撮行為だけにとどまらず、より広く、人の意思に反して性的な姿を撮影する行為等を性的姿態等撮影罪(せいてきしたいとうさつえいざい)として処罰することとしています。
※ネット上では性的姿態撮影罪といった表記も見受けられますが、正式な罪名は性的姿態等撮影罪です。
性的姿態等撮影罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金とされています。
また、前記のとおり、性的姿態撮影等処罰法は、撮影罪のみならず、意思に反して性的な姿を撮影した記録を、他者に提供したり、公然と陳列したり、不特定多数の者に送信(ライブストリーミング)したりする行為等も、処罰することとしています。
従来の盗撮に関する規制(迷惑防止条例違反等)との違い
性的姿態撮影等処罰法の施行前は、いわゆる盗撮行為については、都道府県のいわゆる迷惑防止条例や、児童買春等処罰法の“ひそかに児童ポルノを製造する罪”等により規制されていました。
しかしながら、迷惑防止条例は、都道府県によって処罰対象が異なっており、また、ひそかに児童ポルノを製造する罪も、保護の対象は児童のみであるなど、必ずしもこれらの条例や法律では処罰対象とし得ない行為が散見されていたところです。
そこで、性的姿態撮影等処罰法は、上記のような行為を含め、広く、人の意思に反して性的な姿を撮影する行為等を処罰することとし、法定刑も従前の迷惑防止条例よりも重い「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」としています。
撮影罪(性的姿態等撮影罪)として違反となる行為・構成要件
該当する行為
撮影罪(性的姿態等撮影罪)に当たるのは、以下の4つの行為です(「対象性的姿態等」の意味は後述)。
- 正当な理由がないのに、ひそかに、対象性的姿態等を撮影する行為
- 同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態にさせ又はその状態にあることを利用して、対象性的姿態等を撮影する行為
- 行為の性質が性的なものではないと誤信させたり、特定の者以外の者が見ないと誤信させ又はそのように誤信していることを利用して、対象性的姿態等を撮影する行為
- 正当な理由がないのに、13歳未満の者の性的姿態等を撮影し、又は、5歳以上年上の者が13歳以上16歳未満の者の性的姿態等を撮影する行為
なお、上記の各行為につき、性的な意図や目的は構成要件となっていません。ですので、嫌がらせや復讐などの意図・目的であっても、撮影対象が対象性的姿態等であれば撮影罪が成立する可能性があります。
対象性的姿態等
まず、性的姿態撮影等処罰法は、(「対象」が付されていない単なる)「性的姿態等」とは以下のものをいうと定義しています。
- 性的な部位、すなわち、性器、肛門、性器・肛門の周辺部、臀部、胸部
- 人が身に着けている下着のうち現に性的な部位を覆っている部分
- わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態
そして、「対象性的姿態等」とは、上記の「性的姿態等」から、「人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの」(簡単に言えば、公の場で自ら露出している場合等を除いたもの)をいうと定義しています。
なお、対象性的姿態等については性別の限定はなく、男性が被害者となる場合も想定されます。
この「対象性的姿態等」を、上記①~③のとおりいわゆる盗撮するなどの行為が、撮影罪(性的姿態等撮影罪)に該当するということになります。
なお、上記④の場合(13歳未満の者を撮影する場合、又は、5歳以上年上の者が13歳以上16歳未満の者を撮影する場合)には、(対象性的姿態等ではなく単なる)「性的姿態等」を正当な理由なく撮影した場合に、撮影罪が成立すると定められています。したがって、(上記①~③の場合とは異なり、)公の場で自ら露出している13歳未満の者等を正当な理由なく撮影しても、撮影罪が成立します。
性的姿態等撮影罪の具体例
例えば、駅のエスカレーターで他人のスカート内の下着を盗撮する行為やトイレにカメラを設置して性的部位を盗撮する行為、室内で行われている性的行為や更衣室、風呂などで裸になっている人の性的部位をひそかに外から盗撮する行為、交際相手などと性交している際にスマホや隠しカメラなどで盗撮する行為などは、上記①として撮影罪に該当します。
相手方の意思に反して性的行為をしている際に撮影する行為や、酔いつぶれたり寝ている人の性的な部位や下着等を撮影する行為などは、上記②として撮影罪に該当します。
性的行為をしている際に真実は公開する意図であるのに「自分以外には見せない」などと嘘をついて撮影する行為は、上記③として撮影罪に該当します。
撮影罪以外で違反となる行為
前述のとおり、性的姿態撮影等処罰法は、撮影罪以外に、以下の行為についても、性的影像記録提供等罪(㋐㋑)、性的影像記録保管罪(㋒)、性的姿態等影像送信罪(㋓)、性的姿態等影像記録罪(㋔)として処罰対象としています。
㋐ 撮影罪に該当する行為又は下記㋔に該当する行為によって撮影・記録された性的姿態等の画像・動画(=「性的影像記録」)を特定かつ少数の者に提供【3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金】
㋑ 性的影像記録を不特定若しくは多数の者に提供又は公然と陳列【5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金】
㋒ 提供又は公然陳列の目的で、性的影像記録を保管【2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金】
㋓ 撮影罪と同様の方法で、不特定又は多数の者に性的姿態等の影像を送信(ライブストリーミング)【5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金】
㋔ ㋓により送信された影像を、そのようなものであると知りながら、記録【3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金】
撮影罪で撮影した映像等を提供した場合、仲間内のLINEグループでなど特定少数に対する場合であっても㋐に該当しうるほか、インターネット上のサイトにアップするなどした場合には㋑に該当し、性的影像記録提供等罪となり得ます。また、このような提供等をする目的での保管自体、㋒の性的影像記録保管罪となる可能性があります。
時効はあるのか
各犯罪の公訴時効は、法定刑の重さによって決まり、長期が5年未満の拘禁刑に当たる罪は3年、長期が5年以上10年未満の拘禁刑に当たる罪は5年です。
性的姿態等撮影罪は、前述のとおり法定刑が「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」であり、拘禁刑の長期が5年未満なので、公訴時効は3年です。
なお、性的影像記録を不特定若しくは多数の者に提供又は公然と陳列する行為(前記㋑)や、撮影罪と同様の方法で、不特定又は多数の者に性的姿態等の影像を送信(ライブストリーミング)する行為(前記㋓)は、法定刑が「5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金」であり、拘禁刑の長期が5年以上10年未満なので、公訴時効は5年となります。
性的姿態等撮影罪で逮捕される可能性
現行犯逮捕
撮影罪に該当する盗撮行為等を行った場合には、被害者や目撃者、それらの方から通報を受けて駆け付けた警察官等に現行犯逮捕される可能性があります。
被害者や目撃者による逮捕は、いわゆる「私人(警察等の捜査機関ではない者)による現行犯逮捕(私人逮捕)」と呼ばれるものです。
刑事訴訟法は「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」と定めており(同法213条)、これにより「私人逮捕」が可能とされています。
この「私人逮捕」をした者は、直ちに逮捕した相手を警察官等に引き渡さなければならないとされています(同法214条)。
身柄が警察官等に引き渡された後は、警察官等に逮捕された場合と同様の手続がとられることになります。
通常逮捕(後日逮捕)
仮に現行犯逮捕されなかったとしても、後日、被害者や目撃者から通報を受けるなどした警察が、周辺の防犯カメラ映像を確認するなどの捜査を遂げて逮捕状の発付を受け、これにより逮捕される可能性もあります。
撮影罪は、自己の性的欲望を満足させるために行われる犯罪であって、そのような犯罪を行う者はより重大な性犯罪へと行為をエスカレートさせていくおそれが大きいと考えられるほか、撮影した映像等について消去するなどの罪証隠滅の可能性もありうると考えられるため、裁判官により逮捕状が発付され、逮捕される可能性が十分にある犯罪です。
逮捕については逮捕(たいほ)の種類や逮捕されたらどうすべきかを,元検事の弁護士がわかりやすく解説の記事もご参照ください。
性的姿態等撮影罪で逮捕された場合のリスク
逮捕されると、まず警察署に身柄を拘束され、取調べを受けることになります。
その後、検察に送致され、勾留請求されるかどうかが判断されます。
ごく軽微な事案や証拠上問題がある事案では、検察に送致される前に釈放される可能性もありますが、例外的な場合です。
勾留請求後、裁判所の判断で勾留が認められた場合、最長でそこから20日、身柄拘束が続く可能性があります。
この間、会社や学校に行くことはできず、周囲に事件が知られてしまうリスクは相当高まります。
逮捕後の流れについて詳しくは、 逮捕から起訴までの流れと期間を元検事の弁護士が図でわかりやすく解説 の記事をご参照ください。
性的姿態等撮影罪を犯してしまった場合に採るべき対処法
撮影罪を犯してしまった人が採るべき対処法は、大きく分けて、
- 犯した罪(既にしてしまった犯罪)に対する誠実な対応
- 再犯防止
の2つです。
特にいわゆる盗撮行為の場合、行為への依存傾向のある人が犯行を繰り返し行なった末に検挙されるということが大半です。
そのため、犯した罪に対して誠実に対応しなければならないのはもちろんのこと、それに加えて再犯防止策を採るべきです。
これらの事情は、被害回復、再犯防止の観点から倫理的にそうすべきというだけでなく、被疑者・被告人にとって有利な情状ともなりえ、場合によっては起訴猶予となり処罰や前科を回避できる可能性もあります。
※不起訴(起訴猶予)処分の獲得については起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや前科・前歴との関係、起訴猶予処分獲得のポイントについて解説の記事もご参照ください。
また、処罰は必要と判断された場合であっても、略式手続(法廷での審理等を経ない簡易な手続)での罰金で済んだり、執行猶予となって実刑(刑務所への収監)を避けられたりといった可能性が高まります。
※略式手続については略式起訴・略式命令でも前科?手続の流れ、罰金の相場等を元検事の弁護士が解説の記事もご参照ください。
※執行猶予の獲得については執行猶予を獲得するには?元検事の弁護士が執行猶予となるための弁護活動や条件について解説の記事もご参照ください。
犯した罪に対して誠実な対応をとる
被害者が特定されている場合
被害者の方が特定されている事案では、弁護人を介するなどしてその方に対してしっかりと謝罪し、応じてもらえるようであれば慰謝料を支払う(示談する)などすべきでしょう。
示談が成立し、被害者から宥恕してもらえる(許してもらえる)などし、それを的確に示談の内容ともできた場合には、被疑者・被告人に有利な情状として大きく斟酌されるものと考えられます。
※示談については刑事事件で示談する方法を元検事の弁護士が解説の記事もご参照ください。
なお、被害者が特定されていない場合、被害弁償に代えて贖罪寄付を行うといった選択肢もあります。
自首
まだ検挙されていなくとも、警察に自首するという選択肢もあります。
捜査機関に事件や犯人が発覚する前でしたら、法律上の自首として刑の減軽事由となりえますし、法律上の自首には該当しない場合であっても、自主的に出頭することで、反省していることなどを明らかにする事情となりえますし、罪証隠滅(証拠隠滅)や逃亡のおそれがないことをうかがわせる事情となって逮捕のリスクの低減に繋がるという面もあります。
※自首について詳しくは、自首について元検事の弁護士が解説 の記事を御参照ください。
再犯防止策を採る
盗撮行為を繰り返している方は、当然ながら「盗撮は悪いことだ」と分かっているにもかかわらず繰り返してしまっているはずですから、自分の意思だけで再犯しないようにするのではなく、それに加えて、周囲のサポートも含めた対策を講ずることが必要でしょう。
具体的には、家族等の指導監督、携帯端末やカメラの使用制限のほか、専門機関で診察を受けて治療・予防のプログラムを受けることなども選択肢のひとつです。
依存症やこれに近い状態にあるような場合には、医師などの専門家の指導の下、同種の問題を抱える人との対話を繰り返すなどしながら、一日一日再犯を防いでいく必要があります。
また、不起訴(起訴猶予)や略式手続、執行猶予の獲得といった観点からは、再犯防止策を策定した上、それを証拠化して的確に検察官や裁判官に主張しなくてはなりません。
撮影罪(性的姿態等撮影罪)でお悩みの方は、元検事の弁護士にご相談ください
上原総合法律事務所には、元検事の弁護士が8名在籍し、刑事事件に力を入れて取り組んでいます。
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上原総合法律事務所では、刑事事件の対処のみならず、依頼者のその後の人生がより良くなるようにお手伝いをさせていただきます。
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