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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
「デリヘルで本番行為をしたら、キャストとトラブルになって店に連絡され、やってきた男性従業員に高額な『罰金』を請求され、『払わなければ警察に通報する』と言われた」
風俗店でトラブルになった方(主に男性)からこのようなご相談をいただくことが多くあります。
風俗店での本番行為(性交)について、「キャストの同意をもらっていたから」「キャストにお金を払う約束をしたから」と軽く考えていると、ある日突然警察がやってきて逮捕され、起訴されて実刑判決を受け刑務所で服役することになるといった重大な性犯罪事件へと発展するおそれがあります。
本記事では、元検事(ヤメ検)の弁護士が、風俗店における本番行為をめぐる法的問題と刑事事件化の可能性、そしてトラブルになった際の対処法について詳しく解説します。
目次
第1 デリヘル等での本番行為は犯罪?
〇売春防止法との関係
売春防止法は、対償を受け又は受ける約束で不特定の相手方と性交(女性器に男性器を挿入する行為)をすることを、「売春」と定義し(同法2条)
- 売春のあっせんをすること(同法6条1項)
- 人に売春させることを内容とする契約を結ぶこと(同法10条1項)
- 売春を行う場所を提供すること(同法11条1項)
などを禁じています。
そのため(もあって)、いわゆるデリヘルやホテヘル等の風俗店は、キャストにも客にも本番行為(=性交)を禁止していることが通常です。
もっとも、同法は、(現時点では、)買春者(性を買った者)に対する刑事罰を設けていませんので、風俗店を利用した客が、(店を介してではなくあくまでも直接)キャストとの間でお金を払う約束をするなどして本番行為(=性交)をしたとしても、売春防止法違反として刑事事件になることはありません。
〇不同意性交等罪
しかしながら、性交を相手の同意なく行えば、刑法上の不同意性交等罪となります。
不同意性交等罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑であり(刑法177条1項)、相当に重く処罰される犯罪です。
また、被害者が怪我をした場合には、更に重い不同意性交等致傷罪となります(刑法181条2項。法定刑は無期または6年以上の拘禁刑。)
したがって、キャストの同意なく性交をした場合には、当然ながら不同意性交等罪が成立し、警察に通報されれば刑事事件化することになります。
また、キャストの同意の下で性交をした場合であっても、後からキャストに「無理矢理された」などと主張されて警察に通報され、刑事事件化するケースもあります。
※不同意性交等罪については、不同意性交と不同意わいせつの違いとは?行為や刑罰の違いについて元検事の弁護士が解説 の記事もご参照ください。
※不同意性交等致傷罪については、不同意性交等致傷とは?元検事の弁護士が成立要件や弁護活動について解説 の記事も御参照ください。
第2 同意の下で本番行為をしたのに不同意性交等罪として刑事事件化してしまったら
不同意性交等罪は、相手の同意なく(意思に反して)性交等を行うことを処罰する罪です。
したがって、同意の下で本番行為(=性交)をしたにもかかわらず、後になってキャストから意思に反して本番行為(=性交)をされたと警察に被害申告されてしまった場合には、不同意性交等罪は成立せず、冤罪(その濡れ衣を着せられている)ということになります。
また、犯罪が成立するには「故意」で行ったことも要件とされており、不同意性交等罪では、相手が同意していないこと(同意していない可能性があること)を認識しつつ性交をしたのでなければ、同罪は成立しません。したがって、キャストが同意していると信じていた場合には、実際にはキャストが完全に同意をしていなかったとしても、不同意性交等罪は成立しません。そのような場合も一種の冤罪ということができます。
同意の下で、あるいは同意があったと信じていた中で本番行為(=性交)をしたにもかかわらず、キャスト(や店)に通報されて不同意性交等罪として刑事事件化してしまった場合、まずは、嫌疑不十分での不起訴処分(裁判にならずに終了)を獲得することが目標となります。
上記のようなあらぬ嫌疑を掛けられることになってしまった場合、まずは、こちら側の言い分をしっかりと警察に話すというのが、ベストな選択となることが多いでしょう。
不同意性交等罪の冤罪で不起訴・無罪を目指す方法の詳細は、不同意性交等罪の冤罪で示談せずに不起訴・無罪を目指す方法の記事を御参照ください。
第3 本番行為で逮捕されるか
キャスト(や店)が不同意性交等の被害に遭ったとして警察に通報した場合であっても、風俗店の客とキャストが(お金を払う約束をするなどして)同意の下で本番行為(=性交)をすることも少なくない実情にあることもあってか、(通報されたのがキャストと別れる前であったか別れた後(後日)であったかを問わず、)客が逮捕までされることはあまりありません。
しかしながら、そのように刑事事件化した場合には、逮捕はされなくとも、在宅のまま、警察から警察署に呼び出されて取調べを(場合によっては複数回)受けた後、事件が検察に送致されて(いわゆる書類送検)、検察官からも検察庁に呼び出されて取調べを受けるという流れになるのが通常です。その上で、検察官によって起訴・不起訴が決定されることとなります。
※書類送検については、書類送検されると前科がつく?不起訴になるためには|上原総合法律事務所 の記事も御参照ください。
もっとも、キャストが通常のサービスの過程では生じ得ないような怪我をしていた、キャストが店の業務中であるにもかかわらず極度に酩酊していた、サービス時間を過ぎても長時間にわたって店がキャストと連絡を取れなくなっていたといったような、キャストが不同意性交等の犯罪の被害に遭ったこと(上記のような冤罪ではないこと)が強く疑われるような客観的事情が認められる場合には、キャスト(や店)から通報を受けた警察によって客が逮捕される可能性が高くなります。
第4 トラブルになった場合に避けるべきことと対処法
もしキャストや店とトラブルになってしまった場合、避けるべきことと対処法は以下のとおりです。
避けるべきこと
- 言われるがまま「罰金」や「慰謝料」を支払う
- 不同意性交等を認めるような謝罪文等を書く
対処法
- 事実と異なる主張をされている場合は否定する
- 証拠がある場合は保存しておく
- 一刻も早く弁護士に相談する
もし、キャストと同意の下で本番行為をしたにもかかわらずトラブルになってしまった場合、店(やキャスト)に言われるがまま「罰金」などと称される金銭を支払ったり謝罪文を書いたりすることは避けるべきです。
冤罪を認めて不当な要求を呑むことになってしまうからです。また、作成した謝罪文等をもとに後日さらに金銭を請求されたり、刑事事件化した際に、その書面が、不同意性交等があったことをうかがわせる証拠のひとつともなりかねません。
また、そのような場合には、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
店(やキャスト)からの「罰金」等の(不当な)要求を拒めば、不同意性交等の被害に遭ったとして警察に通報される可能性が高いと言わざるを得ません。
前述のとおり、不同意性交等罪は、相当に重い法定刑が定められている犯罪であり、万が一起訴されて有罪判決を受ければ実刑判決になる可能性が高いと言えます。
また、取調べは非常に厳しく行われ、その精神的な負担も想像以上に大きいものです。
自身の判断だけで対応するのは危険であり、できるだけ早い段階で弁護士に相談・依頼し、助言を受けながら適切な対応策をとっていくべきです。
なお、冤罪であっても早期解決等のために示談をするという選択肢もあり得ます。もっとも、その進め方を間違えてしまえばかえって不起訴の可能性を狭めてしまう可能性もあります。示談交渉は、弁護士を通して進めるべきです。
不同意性交等の冤罪の場合に示談をするという選択肢の詳細は、【冤罪】同意があったのに不同意性交だと言われている場合の対処法を元検事の弁護士が解説 の記事をご参照ください。
第5 まとめ
風俗店での本番行為をめぐるトラブルは、重大な刑事事件に発展しかねません。
「店から脅されている」 「警察に行くと言われて毎日不安で眠れない」
このような状況に陥った場合は、すぐに弁護士へご相談ください。早期の法律支援が非常に重要です。
上原総合法律事務所は、元検事8名を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。
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