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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
当事務所には、性行為当時は同意があったのに、後になって不同意性交等(レイプ)だと言われ困っている、というご相談を(残念ながら)多数いただいています。
性交等は通常相手と2人きりの状況下で行われますから、相手の意思に反していなかったという証拠を提示することが難しい場合も多いのですが、手をこまねいていれば、状況が不利になったり、逮捕されたりするリスクがあると言わざるを得ません。
冤罪なのだから示談はしないと決めたとしても、その前提でできることは多数あります。
この記事では、刑事事件を熟知する元検事(ヤメ検)の弁護士が、加害者とされている側の視点で、示談しない方針に決めた場合に、不利益を避けるためにはどうすれば良いのかを説明します。
なお、示談を視野に入れている方向けの記事も作成しています。
示談を検討している方は、【冤罪】同意があったのに不同意性交だと言われている場合の対処法を元検事の弁護士が解説をご覧ください。
不同意性交等罪・不同意性交等致傷罪とは何か、これらの罪を犯したらどうなるか、について詳しくは不同意性交等致傷とは?元検事の弁護士が成立要件や弁護活動について解説をご参照ください。
不同意性交等罪をしたらどうすれば良いか、について詳しくは不同意性交等罪を犯したらどうなるのか、逮捕や実刑を防ぐためにどうすべきかをご参照ください。
示談した方が良いのかについては【冤罪】犯罪をしていないけれども示談した方が良いのか・示談する方法・注意点をご覧ください。
目次
不同意性交等罪の冤罪とは?
同意があった/同意があると思っていた
不同意性交等罪は、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」(=「不同意」で)、性交等を行うことを処罰する罪です。
つまり、
- 同意しない意思を「形成」することが困難な状態
※例えば泥酔したり薬物の影響等で意識がない場合など、性的行為をするかどうかを考えたり、決めたりするきっかけや能力が不足したりしていて、性的行為をしない、したくないという意思を持つこと自体が難しい状態をいいます。 - 同意しない意思を「表明」することが困難な状態
※例えば強い上下関係のある相手で断れないなど、性的行為をしない、したくないという意思を持つことはできたものの、それを外部に表すことが難しい状態をいいます。 - 同意しない意思を「全う」することが困難な状態
※例えば暴行や脅迫によって無理やりに性交等をされる場合など、性的行為をしない、したくないという意思を外部に表すことはできたものの、その意思のとおりになることが難しい状態をいいます。
の3つのいずれかに、「させ」又は「その状態に乗じ」ることが要件とされています。
したがって、そもそも相手方と性交等をしていないのに相手方から性交等をしたとの被害を申告されている場合のほか、同意の下で性交等をしたにもかかわらず後になって相手方から意思に反して性交等をさせられたと申告されている場合も、冤罪(本来は不同意性交等罪が成立しないのにその濡れ衣を着せられている状態)ということができます。
また、犯罪が成立するには「故意」が必要とされるところ、不同意性交等の場合、不同意であったことを認識していない、言い換えれば同意があったと信じていたという場合には、例え実際は完全な同意がなかったとしても、不同意性交等罪は成立せず、一種の冤罪といえます。
なお、客観的には不同意であったという場合には、意図せず同意のない性交等を行ってしまったことについて被害弁償や示談をするという余地もあります。
※同意の誤信があった場合の示談等については【冤罪】同意があったのに不同意性交だと言われている場合の対処法を元検事の弁護士が解説の記事もご参照ください。
このような形の冤罪は不同意わいせつの場合もあり得るところであり、性交までには至らないわいせつな行為について、「行為そのものをしていない場合」のほか、「同意があった(同意があると思っていた)場合」も冤罪ということができます。
相手の年齢に関する誤解
刑法は、一定の年齢に達していない相手方と性交等をした場合には、その相手方の同意の有無を問わず、性交等をしたことだけで不同意性交等罪が成立すると定めています。
すなわち、13歳未満の人と性交等をした場合には、相手方の同意の有無に関係なく、不同意性交等罪が成立します。
また、13歳以上16歳未満の人と性交等をした者が、相手より5歳以上年長(年上)であった場合にも、相手方の同意の有無に関係なく、不同意性交等罪が成立します。
もっとも、これらの類型では、性交等をする時点で、相手方が“13歳未満である”又は“13歳以上16歳未満で、自分より5歳以上年下である”と認識していなければ、不同意性交等罪は成立しません。
したがって、性交等をした時点で、相手方の年齢をそのように認識していなかった(13歳未満であるとか、13歳以上16歳未満で自分より5歳以上年下であると認識していなかった)にもかかわらず不同意性交等罪であるとの嫌疑をかけられている場合にも、冤罪ということができます。
このような年齢に関する誤解は不同意わいせつの場合も問題となり、誤信があれば冤罪となりえます。
また、年齢について誤信していたものの実際の年齢は不同意性交等が成立してしまう関係にあったといった場合も、被害弁償や示談をするという余地もあります。
※年齢等について誤信があった場合の示談等については【冤罪】同意があったのに不同意性交だと言われている場合の対処法を元検事の弁護士が解説の記事もご参照ください。
不同意性交等と「レイプ」「強姦」との違い
2023年7月13日に改正刑法が施行され、かつての強制性交等罪(更に過去へ遡れば強姦罪)が不同意性交等罪という名称に変更されるなどしました。
巷で使われる「レイプ」という言葉は、男性の陰茎を女性の膣内に挿入する「膣性交」を無理矢理されたとの意味合いで使われることが多いと思います。
しかしながら、不同意性交等罪にいう「性交等」には、そうした「膣性交」のほか、「肛門性交」、「口腔性交」、例えば指などを膣又は肛門に挿入するわいせつな行為も含まれますし、男性が被害者の場合もありえます。
また、年齢によっては同意の上であっても不同意性交等罪が成立する場合もあります。
「レイプ」という言葉に厳密な定義はないかもしれませんが、基本的には「レイプ」は不同意性交等に当たるものの、一般的な感覚では「レイプ」に当たらない状況でも不同意性交等罪が成立する場合があるという関係にあると言えるでしょう。
なお、被害者が傷害を負った場合には不同意性交等致傷という更に重い犯罪となり得ます。
不同意性交等罪・不同意性交等致傷罪とは何か、これらの罪を犯したらどうなるか、について詳しくは不同意性交等致傷とは?元検事の弁護士が成立要件や弁護活動について解説をご参照ください。
示談をせずに不起訴・無罪を目指す際の方針
「不同意性交等の被害に遭った」と主張している相手方から警察に被害を届け出られてしまった場合、加害者とされた側としては、当然ながら、まずは不起訴処分(裁判にならずに終了)、仮に起訴されてしまった場合でも無罪判決を獲得することが目標となります。
また、逮捕や報道による事実上の不利益を回避することが重要になってくる場合もあります。
刑事手続には法律(ルール)がありますから、不起訴処分または無罪判決という目標を達成するためには、そうした法律(ルール)を把握する必要があります。
刑事裁判には、疑わしきは罰せず(疑わしきは被告人の利益に)、というルールがあります。
これは、犯罪の疑いを掛けられている者にとって不利な事実は、(裁判官が)確信できるほどにまで証明されなければ(疑わしいというだけにとどまるのであれば)、存在しないものとして取り扱わなければならない(疑いを掛けられている者に有利となるように取り扱わなければならない)、というルールです。
こうしたルールは、刑事裁判において裁判官が判断する際のみならず、その前段階で起訴・不起訴を決める検察官も、当然の前提としています。すなわち、検察官は、確実に有罪判決を獲得できると判断した場合でなければ起訴することはなく、それ故、当該事案において犯罪に該当する行為をしたと確信できるほどの証拠がないと考えれば、不起訴処分にするのです。
不同意性交等罪について言えば、たとえば、「性行為の時に暴力を振るった」「当時、被害者はお酒を飲み過ぎて意識不明だった」「当時、加害者は、被害者が性行為に同意していないことを分かっていた」といったような事実は、加害者とされた側にとって不利な事実です。
こうした事実は、その存在が確信できるほどにまで証明されなければ、刑事手続においては、存在しないものとして取り扱われます。
すなわち、犯罪の嫌疑を掛けられた者(加害者とされた側)としては、自身が犯罪に該当する行為を「していない」とまで(シロであることまで)証明しなければいけないわけではなく、犯罪に該当する行為をしていないかもしれない(クロではない可能性がある)と検察官・裁判官に思ってもらえれば、不起訴処分・無罪判決を獲得することができるということになります。
したがって、冤罪と戦うためには、起訴前であれば検察官・起訴後であれば裁判官に、不利な事実が真実ではない可能性がある、ひいては、犯罪に該当する行為をしていない可能性がある、と思ってもらうための活動をすることになります。
※不起訴(嫌疑不十分)については嫌疑不十分とは?不起訴となるためのポイントや処分までの流れについて元検事の弁護士が解説の記事もご参照ください。
※無罪の獲得については無罪を勝ち取りたいの記事もご参照ください。
証拠収集
不起訴または無罪を勝ち取るために最も有効なのは、被害に遭ったと主張している相手方の主張と相反する、あるいは、自身の主張と整合する証拠です。
例えば、被害に遭ったとされる時点より前の経緯に関するものであれば、
- 相手方が自身に好意を寄せているようなメッセージ
- 相手方と2人きりになる前に同席していた知人による「相手方の方が好意を寄せているようだった」旨の証言
- 相手方が積極的に一緒にホテル等へ入っていく状況が記録された防犯カメラ映像
などが考えられるでしょう。
また、被害に遭ったとされる時点より後の経緯に関するものであれば、 - 相手方がその後も自身に好意を寄せているようなメッセージ
- 相手方との親密な関係が継続していたことが分かる写真や動画
などが考えられるでしょう。
あるいは、相手方が警察に被害申告する前に直接不満を伝えてきたりしている場合に、その内容を録音しておき、相手方の言い分が一貫していないということを後から主張立証できるようにするということも考えられます。
これらはあくまで一例にすぎず事案によって異なりますから、事案に応じた証拠を探していくことになります。
もっとも、このような証拠は、何もしなければ失われていってしまう可能性がありますから、しっかりと早期に収集・保全することが重要です。
不同意性交等罪では男性が不利なのか?
なお、不同意性交等として被害申告がなされる事件は、非力な女性が体格で勝る男性から意に反して性交等をされたという内容のものが大半であり、男性の方が不同意性交等罪の嫌疑(容疑)をかけられやすいという意味では、「男性が不利」であると言えるでしょう。
しかしながら、不同意性交等で刑事事件化した後は、基本的に、被害を申告している者(多くは女性)の供述が信用できるかということについて、その供述のみならず、加害者とされる者(多くは男性)の供述、前記のような様々な証拠等を多角的に考慮し、他の事件と同様に「疑わしきは罰せず」の原則に則って、判断されることになります。
したがって、不同意性交等として刑事事件化した後について言えば、「女性の話が全面的に信用され、男性の話は一切聞いてもらえない」というようなことはないはずであり、その意味で「男性が不利」と一概に言うことはできません。
法と証拠のみに基づき判断することを責務とする警察・検察・裁判所において適正な判断がなされるよう、それらの機関に前記のとおり“不同意性交等に該当する行為をしていない可能性がある”と思わせるべく活動することが重要です。
ですから、加害者とされる側としても、自身の言い分を捜査機関に対して詳細に供述する方が良い場合が多いでしょう。
もっとも、この点は、事案や状況に応じた検討が必要であり、場合によっては黙秘すべき場合もあるでしょうから、刑事事件についてはもちろん、裁判所や捜査機関の考え方についても熟知した弁護士に相談することをおすすめします。
警察への相談・上申書(陳述書)の提出
「不同意性交等罪の被害に遭った」と主張をしている相手方とトラブルになってしまったものの、まだ捜査機関への被害申告等までは至っていない場合には、加害者とされている側が自ら警察へ相談に行くということも、1つの選択肢となります。
相手方よりも先に自ら警察へ相談に行けば、自身の言い分を先に聞いてもらってから、相手方の話を聞いてもらうことができるため、相手方の言い分だけに依拠して捜査が進んでいってしまうという事態を防ぐことができます。
自分から警察に相談したということ自体から、主張を信用してもらいやすくなるという効果もあり得ますし、逮捕されるか否かという観点からも、罪証隠滅や逃亡のおそれを低減させる事情ともなりえます。
※逮捕の回避については逮捕されたくないの記事もご参照ください。
また、自ら警察へ相談に行く場合、自ら口頭で一から事情を説明した方が、記憶に従った話をしていると警察官に認識してもらいやすいでしょう。
しかし、口頭で正確かつ網羅的に事情を説明する自信がないなどの場合には、話したい内容をあらかじめ「上申書(陳述書)」という形で書面にしておき、警察へ相談に行く際に持参して提出するということも検討すべきです。
そうすることにより、もし緊張等から口頭ではうまく説明できなかったとしても、主張すべき内容を正確に伝えることができますし、書面を作成することによって自らの記憶の整理等にも繋がります。
また、署名押印等をした書面は一定の証拠にもなりますし、のちに捜査が進行していった段階でも当初から一貫した主張をしていたことの証左ともなり得ます。
上申書作成の方法については刑事事件の陳述書とは?書き方や提出方法について元検事の弁護士が解説をご覧ください。
もっとも、実際に自ら先に警察に相談すべきかや、どのように相談するか、上申書(陳述書)を作成して提出すべきかなどについては、事案に応じた検討が必要であり、この点も弁護士に相談することをおすすめします。場合によっては弁護士が警察へ同行すべき場合もあるでしょう。
相手方に対する刑事告訴
「不同意性交等罪の被害に遭った」と主張をしている相手方から警察に被害届を出された場合、理論上は、逆に相手方を虚偽告訴罪等で刑事告訴することも可能です。
もっとも、刑事告訴をしたとしても、不同意性交等罪での起訴・有罪判決のハードルが高いのと同様に、相手方が虚偽告訴罪で起訴されたり有罪判決を受けたりするところまで至らせるのは、簡単ではありません。
虚偽告訴罪で告訴しようとすれば、弁護士費用もかかりますし、捜査機関において同罪の捜査も行う必要が生じるため不同意性交等罪の事件処理に一層時間がかかる可能性もあります。
虚偽告訴罪で刑事告訴するかどうかは、慎重に検討すべきです。
相手方やメディアなどに対する損害賠償請求
不同意性交等罪の被害に遭ったと主張している相手方やこれを報道したメディアに対して、名誉毀損等として民事訴訟を提起することも、選択肢の1つとしてはあり得ます。
著名人がそうした民事訴訟を提起していることがありますが、これは、民事訴訟を提起することで、相手方に金銭的な賠償をさせようという目的に加え、民事訴訟を提起したことそれ自体や勝訴判決を得たことをもって、名誉を回復させようという目的があるものと思われます。
もっとも、民事訴訟を提起することによって、逆に事件の存在を更に広く知らしめることになってしまう可能性もありますし、また、民事訴訟で敗訴してしまえば更に名誉が傷つくことになってしまうリスクもあると言わざるを得ません。
民事訴訟を提起するかどうかも、慎重に検討すべきです。
不同意性交等罪の冤罪を弁護士に相談するメリット
不同意性交等罪は重大な犯罪ですが、他方、巻き込まれる可能性の高い犯罪でもあります。
万が一トラブルや事件となってしまった場合、早期に弁護士に相談することで、不起訴処分や無罪判決を獲得できる可能性が高まります。
どのようなものが有利な証拠となるのか(どのようなものを証拠として収集・保全しておくべきか)、捜査機関に対してどのように対応すべきか、相手方に対して刑事告訴や民事訴訟の提起をすべきかなどについて、なるべく早く、刑事事件はもちろん、捜査の流れや捜査機関や裁判所が判断する際のポイントにも精通した弁護士に相談して適切なアドバイスを受けていただくのがよいでしょう。
上原総合法律事務所には、非常に豊富な刑事事件の経験を有する元検察官(ヤメ検)の弁護士が多数在籍しており、不同意性交等を含め刑事事件のご相談をお受けしています。
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