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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
目次
この記事で分かること
- 外国人が犯罪をした場合、強制送還されるのか
- 不起訴処分と退去強制の関係
- 不起訴でも在留資格に影響するケース
- 有罪判決を受けた場合に退去強制事由が問題となるケース
- 刑事事件と在留資格取消・在留期間更新・在留資格変更との関係
- 退去強制事由に該当しても日本に残れる可能性
- 在留特別許可を求めるために必要な対応
- 外国人の刑事事件びポイントと弁護士ができるサポート
結論|外国人が犯罪をしても当然に強制送還されるわけではない
外国人が日本で刑事事件に関与した場合でも、そのことだけを理由に当然に強制送還されるわけではありません。
※一般に「強制送還」と呼ばれることがありますが、入管法上の正式な用語は「退去強制」です。本記事では、分かりやすさのために「強制送還」という表現も用いますが、法律上はあくまで「退去強制」です。
出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」といいます。)には退去強制事由が定められており、一定の刑に処せられた場合も退去強制事由となっています。しかし、外国人が犯罪をしてしまったとしても、不起訴処分となれば刑事裁判には進まず、有罪判決も受けません。そのため、有罪判決や刑罰を前提とする退去強制事由には該当しません。
もっとも、当初問題となった事件について不起訴になれば、入管法上の問題もすべて解決する、必ず日本に残れる、というわけではありません。
例えば、刑事事件をきっかけに、次のような事情が判明することがあります。
- 不法残留
- 資格外活動
- 不法就労
- 在留資格に応じた活動を行っていないこと
- 在留資格取得時の虚偽申請
- 入管法上の届出義務違反
- 在留カード関係の違反
このような別の入管法上の問題がある場合には、当初立件された事件について不起訴処分となった場合でも、退去強制、在留資格取消、将来の在留期間更新・在留資格変更の不許可などが問題になったり、新たに発覚した不法残留等でも立件され、起訴されるなどの可能性があります。
したがって、外国人の刑事事件では、立件される全ての事件について不起訴処分の獲得を目指すことが重要です。そのうえで、刑事事件の処分だけでなく、在留資格や入管法上の各手続への影響まで見据えて対応する必要があります。
第1 外国人が日本で犯罪をしてしまった場合の基本知識
1 外国人にも日本の刑法・刑事訴訟法が適用される
外国人であっても、日本国内で犯罪をしてしまった場合には、原則として日本の刑法・刑事訴訟法が適用されます。
外交官など特別な地位にある場合を除き、日本に滞在する外国人も、日本人と同じように日本の刑事手続の対象となります。
したがって、逮捕、勾留、取調べ、起訴・不起訴、刑事裁判といった基本的な流れは、日本人の場合と大きく変わりません。
※刑事事件の基本的な流れについてはこちら( 刑事事件の流れについて元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
もっとも、外国人の場合には、刑事事件の結果が在留資格や入管法上の手続に影響することがあるという点で、日本人とは異なります。
そのため、外国人の刑事事件では、通常の弁護活動に加え、その後も日本に在留できるようにするためにどうすべきかという視点が非常に重要になります。
2 外国人が関与する刑事事件の例
外国人が関与する刑事事件といっても、その内容はさまざまです。
窃盗や詐欺を行えば日本人と同様に処罰される可能性がありますし、自動車等を運転していて事故を起こしてしまえば過失運転致死傷罪等に問われる可能性があります。
また、外国人特有の犯罪として、不法残留や不法就労、在留カード関係の違反などをはじめとした入管法違反で処罰される可能性もあります。
他にも、言語や文化の違いから起こるコミュニケーション不足などに端を発した職場や日常生活上のトラブルが、暴行、傷害などの刑事事件に発展することもあります。
加えて、外国人の刑事事件では、通訳を介した取調べや不十分な日本語で取調べを受けることなどによって、うまく言いたいことを伝えられず、不利な内容の供述調書が作成されてしまったりするリスクもあります。
そのため、早い段階で刑事手続はもちろん、入管法等にも詳しい弁護士のサポートを受け、取調べ対応や今後の見通しについて助言を受けることが重要です。
3 外国人が逮捕された場合の刑事事件の流れ
外国人が逮捕された場合の刑事手続は、日本人の場合と同様に、基本的には次のように進みます。
- 逮捕
- 勾留
- 検察官による起訴・不起訴の判断
- 起訴された場合は刑事裁判
- 判決の言渡し
逮捕後、勾留されると、最大20日間、起訴・不起訴の判断まで身柄拘束が続く可能性があります。さらに、余罪があると再逮捕が繰り返されるといった可能性もあります。
※逮捕から起訴までの流れについてはこちら( 逮捕から起訴までの流れと期間を元検事の弁護士が図でわかりやすく解説|上原総合法律事務所 )の記事もご参照ください。
検察官による起訴不起訴の判断の段階で不起訴処分となれば、刑事裁判には進まず、有罪判決も受けることもありません。
一方、起訴されて有罪判決を受けた場合、その内容によっては、刑事罰を受けるだけでなく、退去強制事由に該当する場合もあります。
他方、有罪となったら必ず退去強制になる、というわけではありません。
退去強制事由は入管法に定められており、犯罪の種類や刑の内容等によって該当性が判断されます。
第2 不起訴処分とは何か
1 不起訴処分の意味
不起訴とは、検察官が事件を刑事裁判にかけないと判断する処分です。
日本の刑事手続では、原則として、起訴するかどうかを最終的に判断するのは検察官です。
不起訴処分となれば、刑事裁判には進まず、有罪判決も受けることもありません。そのため、前科はつきません。
この点は外国人の場合も日本人と同じです。
2 不起訴処分の主な種類
不起訴処分には、主に次のような類型があります。
嫌疑なし
嫌疑なしとは、犯罪の疑いが認められない場合です。
そもそも犯罪がなかったこと、あるいは被疑者が犯人ではないことが明らかになった場合などが考えられます。
嫌疑不十分
嫌疑不十分とは、犯罪の疑いは残るものの、起訴して有罪を立証するだけの証拠が不十分な場合です。
刑事裁判では、検察官が犯罪事実を証明しなければなりません。
証拠が不十分で起訴しても有罪立証が難しいであろうという場合には、不起訴となることがあります。
※不起訴(嫌疑不十分)の獲得についてはこちら(嫌疑不十分とは?不起訴となるためのポイントや処分までの流れについて元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください
起訴猶予
起訴猶予とは、犯罪事実は認められるものの、被害弁償、示談、反省、前科前歴、事件の軽重、再犯可能性などを考慮し、あえて起訴しない処分です。
例えば、実際に暴行をしてしまった場合であっても、被害者との示談が成立し、反省の態度が認められ、再犯のおそれが低いと判断されれば、起訴猶予により不起訴となる可能性があります。
このように、起訴猶予は、犯罪事実が認められる場合でも情状面を考慮して不起訴とするものであり、実務上も多く見られる、前科を回避できる重要な処分類型です。
※不起訴(起訴猶予)の獲得についてはこちら( 起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや起訴猶予獲得のポイントを解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください
弁護活動としては、まず不起訴処分の獲得を目指すことが重要です。
そして、どのような主張を行い、どのような類型の不起訴獲得を目指すかは事案や証拠関係によって異なります。
犯罪の成立や犯人性(犯人であるか否か)を争う事案では、嫌疑なし・嫌疑不十分による不起訴を目指しますが、犯罪事実に争いがない、あるいは争いはありつつもいずれにせよ犯罪は成立するといった事案では、被害者との示談、被害弁償、謝罪、反省、再発防止策などを整え、起訴猶予による不起訴を目指すことになります。
3 外国人にとって不起訴処分が重要な理由
外国人の刑事事件では、不起訴処分の獲得が非常に重要です。
不起訴になれば、刑事裁判には進まず、有罪判決も受けることもありません。そのため、有罪判決を前提とする退去強制事由にも該当しません。
つまり、不起訴処分を獲得することは、刑事事件としての不利益を避けるだけでなく、日本での在留を守るうえでも重要な意味を持ちます。
もっとも、不起訴になれば入管上の問題もすべて解決し、必ず日本に残留できる、というわけではありません。
この点について、次に詳しく説明します。
第3 外国人が不起訴になった場合、強制送還・在留資格にどう影響するか
1 不起訴になれば、刑罰を前提とする退去強制事由には該当しない
起訴されなければ、刑事裁判には進まず、有罪判決を受けることもありません。
そのため、有罪判決や刑罰を前提とする退去強制事由には該当しません。
したがって、外国人の刑事事件では、まず不起訴処分を目指すことが非常に重要です。
特に、被害者がいる事件では、早期に示談交渉を行い、被害弁償や謝罪の意思を示すことが、不起訴処分につながる重要な事情となることがあります。
「外国人が逮捕されたら、不起訴でも強制送還される」と誤解されることがありますが、そのような単純な関係ではありません。
刑事事件の被疑者となったり、逮捕されたりしても、起訴されなければ、あるいは無罪となれば、少なくとも一定の刑に処せられたことを前提とする退去強制事由には該当しないため、刑事事件だけを理由に直ちに退去強制となるわけではありません。
他方、逮捕や捜査をきっかけに、入管法違反の犯罪や在留資格の問題が発覚し、結局のところ退去強制となってしまうケースも少なくありません。
2 不起訴になっても、将来の在留審査で問題が残る場合がある
不起訴になれば在留資格の問題もすべて解決し、必ず日本に残留できる、というわけではありません。
在留期間更新、在留資格変更、永住許可などの審査では、在留資格に応じた活動を行っているか、素行に問題がないか、納税義務を履行しているか、入管法上の届出義務を守っているかなどが総合的に考慮されます。
不起訴処分となった場合でも、刑事事件に関与した事実やその経緯が、将来の在留審査で問題となる可能性はあります。
重要なのは、刑事事件の存在や経緯、本人の説明、反省状況、再発防止策、現在の在留状況などが、将来の在留審査で総合的に評価され得るという点です。
そのため、刑事事件で不起訴処分を得た場合でも、その後の在留期間更新や在留資格変更に備え、次のような事情を整理しておくことが重要です。
- 事件の経緯
- 不起訴処分に至った理由や事情
- 被害弁償や示談の有無
- 謝罪や反省の状況
- 再発防止策
- 現在の就労状況
- 家族関係
- 納税状況
- 社会保険加入状況
- 入管法上の届出義務の履行状況
3 刑事事件をきっかけに、別の入管法上の問題が判明することがある
不起訴処分となった場合でも、刑事事件の捜査をきっかけに、別の入管法上の問題が判明することがあります。
例えば、次のような事情です。
- 不法残留
- 資格外活動
- 不法就労
- 在留資格に応じた活動を行っていないこと
- 在留資格取得時の虚偽申請
- 入管法上の届出義務違反
- 在留カード関係の違反
このような場合には、当初問題とされていた刑事事件について不起訴処分となったとしても、別途退去強制、在留資格取消、将来の更新不許可などの問題が生じる可能性があります。
また、不法残留等はそれ自体も犯罪であり、新たに刑事事件として立件される可能性もあります。
刑事事件をきっかけに、別の入管法上の問題が判明することがあるということです。
第4 在留資格取消・更新不許可について
外国人が日本に残れるかという問題においては、退去強制、在留資格取消、在留期間更新・在留資格変更の不許可を区別し、それぞれについて理解しておくことが重要です。
これらはそれぞれ関連する場面もありますが、法的には別の制度であり、正確に理解した上で各問題に適切に対処しなくてはなりません。
1 在留資格取消は、在留資格上の問題がある場合に問題となる
在留資格取消は、刑事事件の結果とは直接関係のない、入管法上の別の制度です。
在留資格取消は、例えば、次のような場合に問題となります。
- 虚偽申請により在留資格を取得した場合
- 在留資格に応じた活動を一定期間行っていない場合
- 正当な理由なく住居地の届出をしない場合
- 虚偽の住居地を届け出た場合
刑事事件ともなりうる場合もありますが、刑事裁判で一定の刑に処せられたこと自体を理由として在留資格が取り消されるわけではありません。
注意すべきなのは、刑事事件をきっかけに、在留資格に応じた活動をしていないこと、虚偽申請、届出義務違反などが判明する可能性です。
このような場合には、刑事事件で起訴されなかったとしても、在留資格取消となり、日本に残留できなくなる可能性があります。
2 在留期間更新・在留資格変更が当然に認められるわけではない
不起訴処分となった場合でも、その後の在留期間更新や在留資格変更への影響が全くなく、当然に許可されるというわけではありません。
在留期間更新や在留資格変更は、要件を満たせば機械的に許可されるものではなく、法務大臣が更新や変更について「適当と認めるに足りる相当の理由」があるかを判断する手続です。
その判断では、主に次のような事情が確認されます。
- 在留資格に応じた活動を行っているか
- 申請内容に虚偽がないか
- 素行に問題がないか
- 納税義務を履行しているか
- 社会保険関係に問題がないか
- 入管法上の届出義務を履行しているか
- 安定した生活基盤があるか
- 刑事事件に関与した場合、その内容や処分結果、反省状況、再発防止策はどうか
そのため、刑事事件への関与があった場合には、その事件の内容、処分結果、反省状況、再発防止策、現在の生活状況などを、必要に応じて説明できるようにしておくことが重要です。
外国人の刑事事件では、刑事事件としての処分だけでなく、今後の在留資格の更新・変更にどのような影響があり得るかを早期に確認する必要があります。
第5 有罪判決を受けた外国人が強制送還・退去強制になるケース
1 退去強制とは
退去強制とは、入管法上の退去強制事由に該当する外国人について、日本国外への退去を求める行政手続です。
退去強制は刑罰ではありません。
刑事事件とは別に、出入国在留管理庁が入管法に基づいて判断する手続です。
そのため、刑事事件で有罪になったからといって必ず退去強制になるわけではありません。
反対に、不起訴になった場合でも、別の退去強制事由があれば、退去強制手続の対象となることがあります。
2 主な退去強制事由
退去強制事由には、主に次のようなものがあります。
- 不法入国・不法上陸
- 不法残留、いわゆるオーバーステイ
- 在留資格に応じた活動を行っていない場合
- 資格外活動や不法就労
- 不法就労を助長する行為
- 一定以上の刑に処せられた場合
- 特定の犯罪で有罪となった場合
- 在留カードの偽造・変造・不正使用など
もっとも、刑事事件に関与した外国人が常に退去強制になるわけではありません。
退去強制事由に該当するかどうかは、入管法に定められており、犯罪の種類や刑の内容によって該当するか否かが判断されます。
3 罰金刑や執行猶予付き判決でも注意が必要
罰金刑や執行猶予付き判決であれば、常に退去強制になるわけではありません。
一方で、罰金刑や執行猶予付き判決であっても、犯罪の種類や入管法上の条項によっては、在留資格への影響が問題になることがあります。
例えば、旅券法違反や住管法違反の特定の罪で「刑に処せられた」ことが退去強制事由となっており、罰金の場合や執行猶予が付された場合にもこのような事由に該当する場合が想定されます。
また、退去強制事由に直ちに該当しない場合でも、将来の在留期間更新、在留資格変更、永住許可申請などで、素行上の問題として考慮される可能性があります。
したがって、外国人が刑事事件に関与した場合には、刑事事件としての見通しだけでなく、どのような犯罪でどのような処分となるかを踏まえて入管法上どのような影響があるのかを個別に検討する必要があります。
第6 退去強制手続と出国命令制度
1 退去強制手続の基本的な流れ
退去強制手続は、一般に次のような流れで進みます。
- 入管による違反調査
- 入国審査官による違反審査
- 特別審理官による口頭審理
- 法務大臣への異議申出
- 在留特別許可の判断
- 退去強制令書の発付
- 送還
事案によっては、収容令書により入管施設に収容される場合があります。
一方で、一定の場合には、収容ではなく監理措置のもとで手続が進められることもあります。
刑事事件で逮捕・勾留されていた外国人が不起訴となって釈放される場合でも、別途退去強制事由が疑われるときには、そのまま入管に引き継がれ、収容されて入管手続に移行することがあります。
そのため、外国人の刑事事件では、刑事処分だけでなく、釈放後の入管対応まで見据えて準備しておくことが重要です。
2 収容される場合と収容されない場合がある
退去強制手続では、必ず収容されるとは限りません。
事案によっては収容令書により収容されることがありますが、一定の場合には、監理措置のもとで社会内にとどまりながら手続が進められることもあります。
そのため、退去強制手続を説明する場合には、「入管手続=必ず収容」と単純に考えるべきではありません。
ただし、刑事事件で勾留されていた外国人について、不起訴や刑事手続終了後に、そのまま入管収容に移行するケースはあります。
このような場合には、刑事弁護の段階から、入管手続への移行を見据えて対応することが重要です。
3 出国命令制度との違い
退去強制手続とは別に、出国命令制度があります。
出国命令制度は、主に不法残留者が自ら出頭し、一定の犯罪歴がないこと、速やかに出国する意思があることなど、法律上の要件を満たす場合に利用できる制度です。
すべての入管法違反者が利用できるわけではありません。
また、出国命令制度は、収容後に通常の流れとして行われるものではありません。
一定の要件を満たす場合に、退去強制手続とは別に問題となる制度です
第7 退去強制事由に該当しても日本に残れる可能性|在留特別許可
1 退去強制事由に該当しても、必ず退去となるわけではない
退去強制事由に該当すると判断された場合でも、必ず日本から退去しなければならなくなるとは限りません。
個別の事情によっては、在留特別許可が認められる可能性があります。
在留特別許可とは、本来であれば退去強制の対象となる外国人について、法務大臣が個別事情を考慮し、例外的に日本での在留を認める制度です。
ただし、在留特別許可は必ず認められるものではありません。
あくまで退去強制事由に該当することを前提に、個別事情に基づいて例外的に判断されるものです。
2 在留特別許可で考慮される事情
在留特別許可の判断では、例えば次のような事情が考慮されます。
- 日本人配偶者や子どもがいるか
- 日本での生活期間が長いか
- 日本で安定して就労しているか
- 納税状況や社会保険加入状況に問題がないか
- (刑事事件が先行する場合)被害弁償や示談が成立しているか
- 反省や再発防止策が具体的か
- 勤務先や家族の支援があるか
- 本国に帰国した場合の不利益が大きいか
- 退去強制事由となった行為の悪質性がどの程度か
特に刑事事件が関係する場合には、事件の内容、被害弁償の有無、示談の有無、反省状況、再発防止策などが重要になります。
3 刑事事件の段階での対応が、在留特別許可の判断にも影響し得る
刑事事件が関係する場合には、刑事事件の段階での対応が、後の在留特別許可の判断にも影響する可能性があります。
例えば、次のような事情は、刑事処分の判断だけでなく、在留特別許可を求める場面でも重要な事情となり得ます。
- 被害弁償
- 示談
- 謝罪
- 反省
- 再発防止策
- 家族の支援体制
- 勤務先の支援体制
- 生活状況の安定
- 納税・社会保険の履行
したがって、仮に起訴され、有罪判決によって退去強制事由に該当する可能性がある場合でも、刑事事件の段階から、在留が認められるべき事情を整理しておくことが重要です。
4 単に「日本に残りたい」だけでは不十分
在留特別許可を求める場合、単に「日本に残りたい」と主張するだけでは不十分です。
家族関係、生活状況、就労状況、反省、被害弁償、再発防止策などを、客観的な資料に基づいて整理する必要があります。
例えば、次のような資料が重要になることがあります。
- 家族関係を示す資料
- 配偶者や子どもの生活状況に関する資料
- 雇用証明書
- 給与明細
- 納税証明書
- 社会保険関係資料
- 示談書
- 被害弁償に関する資料
- 謝罪文
- 嘆願書
- 再発防止策に関する資料
退去強制事由に該当する可能性がある場合でも、直ちに諦めるべきではありません。
在留特別許可を求める余地があるかを検討し、必要な資料を早期に準備することが重要です。
第8 早急に弁護士へ相談すべきケース
外国人の刑事事件では、刑事処分と入管手続が密接に関係します。
特に、次のような場合には、早急に弁護士へ相談することをおすすめします。
- 外国人本人が逮捕・勾留された
- 警察から呼出しを受けている
- 被害者との示談が必要である
- 在留期限が近い
- 不法残留の疑いがある
- 資格外活動や不法就労の疑いがある
- 在留資格に応じた活動を行っていない可能性がある
- 在留カード関係の違反が疑われている
- 有罪判決を受ける可能性がある
- 釈放後に入管へ引き継がれる可能性がある
- 日本人配偶者や子どもがいて、在留特別許可を検討すべき事情がある
外国人の刑事事件では、刑事処分だけを念頭に置いた対応をすると、入管手続で不利益を受ける可能性があります。
そのため、刑事事件の早い段階から、在留資格の喪失や退去強制のリスクを見据えて対応することが重要です。
第9 外国人の刑事事件で弁護士ができるサポート
1 まず不起訴処分の獲得を目指す
外国人の刑事事件では、まず不起訴処分の獲得を目指すことが重要です。
不起訴となれば、刑事裁判には進まず、有罪判決も受けません。
そのため、有罪判決や刑罰を前提とする退去強制事由に該当するリスクを避けることができます。
弁護士は、刑事事件の段階で次のような活動を行います。
- 取調べ対応の助言
- 通訳の必要性や適正性に関する申入れ
- 不利な供述調書が作成されないようにするための助言
- 被害者との示談交渉
- 謝罪文等の作成支援
- 不起訴処分を求める意見書の提出
- 早期釈放に向けた活動
特に外国人の場合、日本語での取調べや法律用語の理解に不安があることも少なくありません。
そのため、早期に弁護士と接見し、取調べ対応の助言を受けることが重要です。
2 入管上のリスクを見据えた対応を行う
外国人の刑事事件では、刑事処分だけでなく、在留資格への影響を見据えた対応が必要です。
不起訴処分を獲得できたとしても、刑事事件をきっかけに、別の入管法上の問題が判明する可能性がありますし、その内容次第では余罪の立件や再逮捕のリスクもあります。
そのため、弁護士は、刑事弁護の段階から、次のような点を確認します。
- 現在の在留資格
- 在留期限
- 就労内容
- 資格外活動の有無
- 不法残留の有無
- 在留資格に応じた活動実態
- 家族関係
- 勤務先との関係
- 納税状況
- 社会保険加入状況
- 将来の更新・変更申請への影響
このように、まさに問題となっている刑事事件の対応に加え、余罪や入管上のリスクの確認等を同時に進めることが重要です。
3 退去強制手続が続く場合のサポート
刑事事件が終了した後、退去強制手続が続く場合があります。
その場合、弁護士は、退去強制事由に該当するかどうかを検討したうえで、必要に応じて在留特別許可を求めるための主張や資料提出をサポートします。
具体的には、次のような活動が考えられます。
- 入管への意見書・上申書の作成
- 家族関係に関する資料の整理
- 就労状況に関する資料の整理
- 納税・社会保険関係資料の整理
- 被害弁償や示談に関する資料の提出
- 勤務先や家族からの嘆願書作成支援
- 反省や再発防止策の具体化
- 在留特別許可を求めるための主張整理
退去強制事由に該当する場合でも、在留特別許可を求める余地があるかどうかは、個別事情によって異なります。
そのため、刑事事件の段階から、入管手続まで見据えて一貫した対応を行うことが重要です。
第10 よくある質問
Q1 外国人が逮捕されたらすぐに強制送還されませんか?
逮捕されただけで当然に強制送還されるわけではありません。
逮捕されたとしても不起訴になれば、刑事裁判には進まず、有罪判決も受けません。そのため、有罪判決や刑罰を前提とする退去強制事由には通常該当しません。
ただし、不法残留、資格外活動、不法就労、虚偽申請、在留資格に応じた活動実態の欠如など、別の入管法上の問題があり、これが発覚した場合には、退去強制などが問題になることがあります。
Q2 起訴猶予でも在留資格の更新に影響しますか?
起訴猶予であれば前科はつきません。
しかし、刑事事件に関与した事実やその経緯、反省状況、再発防止策などが、将来の在留期間更新、在留資格変更、永住許可申請などで考慮される可能性はあります。
そのため、起訴猶予が見込まれる場合や現に起訴猶予となった場合でも、事件の経緯、反省状況、再発防止策、現在の生活状況などを整理しておくことが重要です。
Q3 罰金刑になったら必ず強制送還ですか?
罰金刑になったからといって、常に退去強制になるわけではありません。
退去強制事由に該当するかどうかは入管法で定められており、刑事処分に関係する事由についても、犯罪の種類や刑の内容等によって退去強制事由に該当するかは異なります。
また、罰金刑であれば退去強制事由には該当しない場合であっても、将来の在留期間更新、在留資格変更、永住許可申請などで問題となる可能性はあります。
Q4 執行猶予付き判決なら日本に残れますか?
執行猶予付き判決だからといって、必ず日本に残れるとは限りません。
犯罪類型や入管法上の条項によっては、退去強制事由が問題になることがあります。
また、退去強制事由に直ちに該当しない場合でも、将来の在留審査で不利に考慮される可能性があります。
Q5 退去強制事由に該当しても日本に残る方法はありますか?
個別事情によっては、在留特別許可が認められる可能性があります。
ただし、在留特別許可は必ず認められるものではありません。
家族関係、生活状況、就労状況、納税、社会保険、反省、示談、被害弁償、再発防止策などを、資料に基づいて具体的に主張する必要があります。
Q6 外国人の刑事事件では、いつ弁護士に相談すべきですか?
少なくとも、逮捕直後、または警察から呼出しを受けた段階では相談ないし依頼するのが望ましいです。
また、捜査機関からのコンタクトがない場合であっても、先行して自首等を行うことがメリットとなりうる場合もあり、なるべく早期にご相談いただくのがベストです。
外国人の刑事事件では、刑事処分だけでなく、在留資格や入管手続への影響を見据えた対応が必要だからです。
特に、被害者との示談、取調べ対応、在留期限、退去強制のリスクが問題となる場合には、早期の相談が重要です。
第11 まとめ
外国人が日本で刑事事件に関与した場合、日本人と同じように日本の刑法・刑事訴訟法が適用されます。
もっとも、外国人の場合には、刑事事件の結果が在留資格や退去強制、いわゆる強制送還の問題に影響することがあります。
外国人の刑事事件では、刑事処分と入管手続が密接に関係するため、事件の早い段階から弁護士に相談し、不起訴処分の獲得と入管対応の双方を見据えた対応を行うことが重要です。
上原総合法律事務所は、元検事8名を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
外国人の刑事事件や、退去強制・在留資格への影響についてお悩みの方は、当事務所にご相談ください。
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