外国人は不起訴になりやすい?外国人事件の特徴等を元検事の弁護士が解説

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弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。捜査・公判の両面で多数の刑事事件 を担当。検事退官後、都内法律事務所を経て個人事務所を開設。2021年に弁護士法人化し、新宿・ 横浜・立川に展開。元検事(ヤメ検)として、捜査機関の思考・動き方を熟知した立場から、逮捕前 の対応・示談交渉・公判弁護まで一貫してサポートしている。

外国人が被疑者となった事件について、「不起訴になった」というニュースを見て、「外国人は日本人より不起訴になりやすいのではないか」と疑問を持つ方もいるかもしれません。インターネット上などでは、「外国人だから不起訴になったのだろう」、「不公平だ」などといった意見を目にすることも少なくありません。

結論からいうと、「外国人だから」という理由だけで不起訴になりやすいというわけではないと考えられます。

検察官は、犯罪を立証できるだけの証拠があるか、犯罪の内容や被疑者の事情などを踏まえて、起訴するか不起訴にするかを判断します。この点は、被疑者が外国人であっても基本的には同じはずです。

もっとも、外国人が関係する事件では、日本人のみが関係する事件とは異なる事情が生じる可能性があることも事実です。

この記事では、不起訴とは何か、外国人事件にはどのような特徴があるのか、外国人は本当に不起訴になりやすいのか、不起訴になった後はどうなるのかなどについて、元検事(ヤメ検)の弁護士が解説します。

第1 そもそも不起訴とは?

1 不起訴とは

不起訴(不起訴処分)とは、捜査を行った事件について、検察官が被疑者を起訴しない(刑事裁判にかけない)と判断する処分です。

警察に逮捕されたり、事件について取り調べを受けたりしたからといって、必ず起訴されて処罰されるわけではありません。

捜査を経た事件について、検察官が起訴する必要があると判断すれば起訴されます。一方、証拠が十分でない場合や、犯罪を認定はできるものの諸事情を考慮して起訴する必要がないと判断された場合などには、不起訴となります。

不起訴になれば、その事件について刑事裁判は開かれず、処罰されることもありませんし、前科もつきません。他方、不起訴であっても前歴としては残ることとなります。

※前科等については( 前科・前歴の違いとは?法的な意義、生活や就職への影響などについて元検事の弁護士が解説 )もご参照ください。

2 不起訴となるパターン

不起訴となる代表的な類型として、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」があります。

嫌疑なしとは、捜査の結果、被疑者が犯人ではないことや犯罪に該当する事実がないことが明らかになった場合などです。

嫌疑不十分とは、被疑者が犯罪を行った疑いは残っているものの、刑事裁判で犯罪を立証するための証拠が十分ではない場合です。

起訴猶予とは、犯罪の嫌疑は認められるものの、事件の内容や示談の有無、前科前歴の内容や犯人の性質、反省状況などを考慮して、検察官が処罰の必要はないと判断する場合です。

刑事訴訟法247条は「公訴は、検察官がこれを行う。」と定め、同法248条は、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」と定めており、起訴するか否かの判断は検察官に委ねられています(これを起訴便宜主義といいます。)。

このように、検察官には起訴しないという判断も可能ですが、外国人が被疑者であっても、そのこと自体で不起訴としているのではなく、基本的には証拠関係や事件ごとの事情を踏まえて、起訴・不起訴の判断がなされているはずです。

また、少なくとも嫌疑なしや嫌疑不十分による不起訴の場合、被疑者の性質ではなく、そもそも犯罪や犯人性を認定できるかどうかという観点からの判断です。

第2 外国人事件の特徴等

1 在留資格などに関係する事件

外国人事件に特徴的なものとして、在留資格など出入国管理法(入管法)に関係する事件があります。

たとえば、不法残留(オーバーステイ)や資格外活動、在留カードに関係する犯罪などです。

こうした事件では、刑事事件としての処分だけでなく、その後の在留資格取消や退去強制手続なども問題になる可能性があります。

※オーバーステイ等については( オーバーステイとは?罰則や強制送還・対処法について元検事の弁護士が解説 )もご参照ください。

※不法就労助長等については( 不法就労助長罪とは?罰則や外国人を雇用する際の注意点 )もご参照ください。

2 外国人の共犯事件

外国人が関係する刑事事件では、同じ国出身の複数人が関与する窃盗などが問題になるケースもあります。

複数人が関係する共犯事件では、それぞれの人物が犯罪についてどこまで認識していたのか、誰がどのような役割を果たしたのかなどが問題となることがあり、多数の共犯者が外国人である場合には、通訳等の問題で取調べ等が難航するケースもあります。

また、関係者の一部が既に日本国外にいる場合や被害品等が海外へ持ち出された場合などには、事件の全体像を解明するための捜査が困難になることもあります。

3 外国人同士のトラブルから発生する事件

日本で生活する外国人同士のトラブルから、暴行や傷害などの刑事事件に発展するケースもあります。

このような事件では、被疑者だけでなく、被害者や目撃者などの参考人も外国人であることがあります。

関係者が日本語を十分に話せなければ通訳を介して事情を聴く必要があるため取調べが難航するケースがあるほか、被害者等が事件後に帰国してしまった場合には、事情聴取や証拠収集が難しくなることもあります。

4 海外送金や外貨両替に関連したマネーロンダリングなどの事件

近年、海外送金や外貨両替などを利用したマネーロンダリングに関係する犯罪収益移転防止法(犯収法)違反や組織犯罪処罰法(組処法)違反の事件も報道等で目にする機会が増えています。

このような事件では、日本国内だけでなく、海外の銀行口座、送金先、国外にいる関係者などを調べる必要が生じる可能性があります。

この場合、捜査共助等が必要になるケースもあり、日本国内だけで完結する事件と比較して捜査等に時間を要したり、そもそも証拠収集が困難になるといったことも想定されます。

第3 外国人は不起訴になりやすい?

結論として、外国人だからという理由それ自体で不起訴になりやすいわけではないと考えられます。

外国人であっても、日本国内で犯罪を行った場合には、原則として日本の法律に基づいて捜査が行われますし、起訴するか否かの判断に当たって、外国人であることそれ自体が判断に影響するとは考えにくいところです。

したがって、証拠関係や情状関係が同じであれば、「日本人であれば起訴されるのに、外国人だから不起訴になった」ということは想定しにくく、

外国人が不起訴になったというニュースを見て、「外国人だから不起訴になりやすいのだ」と判断することには注意が必要です。

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第4 外国人事件では捜査が難航することも

他方、外国人事件では、その内容等から捜査が難航し、その結果として不起訴とならざるをえないといった事態はありうるとも考えられます。

具体的には、外国人事件においては以下のような問題が生じることがあります。

1 言語と通訳・翻訳の問題

外国人事件では、被疑者が十分に日本語を理解できない場合があります。

その場合、通訳を介して取調べを行う必要があります。

通訳を介する場合、基本的に

  • 日本語で質問
  • 通訳人が質問を外国語に翻訳
  • 被疑者が外国語で回答
  • 通訳が回答を日本語に翻訳

といった流れで進むため、単純に考えても倍以上の時間がかかります。

また、言語によってはそもそも通訳人の確保も容易ではなく、取調べの回数や時間が制約されるケースもあります。

さらに、事件の内容によっては、細かな言葉のニュアンスや、本人がどのような認識を持っていたのかが重要になることがあるところ、通訳を介することで細かなニュアンスの確認が難しくなり、時間を要したり、噛みあわないやりとりになったりすることもありえます。

そのほか、取調べの場面以外でも、例えば被疑者のスマホ内のメッセージの内容を確認するためにも翻訳が必要となり、時間を要することもあります。

このように、通訳や翻訳が必要となる結果、真実を明らかにしたり証拠を収集することが難しくなり、結果として不起訴になるケースはあるかもしれません。

2 被害者や参考人も外国人である場合

外国人事件では、被疑者だけでなく、被害者も外国人、目撃者等の参考人も外国人、といったケースもあります。

その場合、それぞれの関係者について通訳を介した事情聴取が必要になることがあり、その場面でも先述のような言語と通訳の問題が生じます。

また、被害者や重要な参考人が事件後に帰国してすでに日本にいない場合、そもそも聴取を行うことができなかったり、勾留期間には間に合わなかったりすることもあり、このような事情から結果として釈放や不起訴とせざるを得ないようなケースも想定されます。

3 国外にある証拠を収集しなければならない場合

事件によっては、海外の銀行口座、通信記録などを調べなければ、事件の全体像を明らかにできない場合があります。

日本の捜査機関の捜査権限が及ぶのは基本的に日本国内だけであり、国外にある証拠を収集したい場合には、関係者等が取り寄せたものを任意で提出してもらったり、海外の捜査機関との捜査共助といった方法をとらざるを得ない場合があります。このような事情から、証拠収集が不可能となったり、あまりに時間を要することとなり、証拠収集がままならずに不起訴となるケースがありうるところです。

4 前提となる文化や認識に差異がある場合

前提となる文化や認識が異なるということが、起訴・不起訴の判断に影響する可能性も考えられます。

特に故意や認識が問題となるケースでは、「こういった状況からは当然こういった認識があったはずだ」という経験則が、前提となる背景が異なることで当てはまらない場合もあるかもしれません。

例えば、「ネットで知り合った人から、荷物を受け取って指示通り運べば報酬がもらえると言われそのとおりにした」といった場合、通常、少なくとも受け子などの犯罪ではないかという未必的な認識はあっただろうと認定しうるものと解されます。

ただ、これは特殊詐欺等が社会問題化しているという前提事情があるからこそという側面があり、日本社会における生活期間が短いような人についても同じような認定が可能かどうかには慎重な判断が必要となる場合もあるでしょう。

5 捜査が難航しうることと「外国人だから不起訴」は別の問題

以上のとおり、外国人事件では、言語が異なるがゆえに通訳等の問題がある、関係者や証拠が日本に存在しないため証拠収集が難しくなるなどといったケースがあり、それがゆえに不起訴とならざるをえないという場合も想定できます。

しかしながら、それはあくまで捜査等が難しくなるからという理由であり、「被疑者が外国人であること」それ自体が不起訴の理由となっているわけではありません。

「外国人であること」と「捜査、証拠収集が難しい場合があること」は別の問題であることは認識しておく必要があるでしょう。

もちろん、そのような中でも捜査機関としては可能な限りの捜査を尽くすでしょうし、困難を乗り越えて真実を明らかにできるケースもあるはずです。

また、外国人であるがゆえに、指導監督等をしてくれる家族等が日本にいない、すぐに示談の原資を用意はできないといったケースも考えられ、そういった事情はむしろ不起訴となりにくい方向に働きうるものと考えられます。

第5 外国人が不起訴になった場合はどうなる?

1 不起訴になれば刑事裁判にはならない

外国人であっても、不起訴になれば、その事件について刑事裁判を受けることはありません。

そのため、その事件について有罪判決を受け、刑罰を科されることもありませんし、前科もつきません。

ただし、外国人の場合には、ここで問題がすべて終わるとは限りません。

2 不起訴と在留し続けられるかは別の問題

外国人の場合、刑事事件で不起訴になったとしても、その後も日本に在留し続けることができるとは限りません。

たとえば、捜査をきっかけに在留資格そのものに問題があることが判明した場合などには、刑事事件が不起訴になった後も退去強制等の手続が問題となる可能性があります。

また、刑事事件の内容や処分のほか、捜査等をきっかけに明らかになった生活実態などから、在留資格の取消や更新の不許可等に繋がる可能性もあります。

刑事事件の処分と強制送還(退去強制)等の関係については( 外国人が犯罪をしても不起訴なら強制送還されない?退去強制・在留資格への影響を元検事の弁護士が解説 )もご参照ください。

第6 刑事事件でお困りの方はお気軽にご相談ください

外国人が不起訴になったというニュースを見て、「外国人は不起訴になりやすいのではないか」と疑問を持つ方もいるでしょう。

外国人事件では、被疑者の取調べや証拠の精査における言語の問題、被害者や参考人も外国人であるケースもままあること、海外にある証拠を収集する必要があることなどから、捜査や立証が難しくなるケースもありますが、外国人であること自体を理由に不起訴になりやすいわけではないと考えられます。

また、外国人の場合には、刑事事件で不起訴になった後も、退去強制手続や在留資格に関する問題が生じ、別途対応が必要となることがあります。

上原総合法律事務所は、元検事の弁護士8名(令和8年7月31日現在) を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えており、日本語が話せる方、あるいは通訳されるご家族や知人等が同席される場合などは、外国人の方の事件についてもご相談等を承っています。

また、外国人を雇用されている事業主の方からのご相談等もお受けしております。

刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。

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