オーバーステイとは?罰則や強制送還・対処法について元検事の弁護士が解説

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弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。捜査・公判の両面で多数の刑事事件 を担当。検事退官後、都内法律事務所を経て個人事務所を開設。2021年に弁護士法人化し、新宿・ 横浜・立川に展開。元検事(ヤメ検)として、捜査機関の思考・動き方を熟知した立場から、逮捕前 の対応・示談交渉・公判弁護まで一貫してサポートしている。

外国人が日本に滞在するためには、在留資格ごとに定められた在留期間を守る必要があります。

しかし、在留期間を過ぎても日本に滞在し続ける「オーバーステイ(不法残留)」となった場合、退去強制の対象となるだけでなく、刑事罰が科される可能性もあります。また、日本への再入国が一定期間認められなくなるなど、将来に大きな影響を及ぼすことも少なくありません。

一方で、オーバーステイとなったからといって、すべてのケースで直ちに逮捕や強制送還となるわけではありません。状況によっては、出国命令制度や在留特別許可などの制度を利用できる可能性もあります。そのため、誤った対応を取る前に、自身の状況を正しく理解することが重要です。

この記事では、オーバーステイとは何かという基本的な知識から、入管法上の罰則、退去強制の流れ、オーバーステイとなった場合の対処法、弁護士へ相談するメリットまで、元検事の弁護士が分かりやすく解説します。

第1 オーバーステイとは

外国人が日本に滞在するためには、在留資格ごとに定められた在留期間内に滞在する必要があります。しかし、正当な手続きを経ずに在留期間を過ぎて日本に滞在し続けると違法状態となり、これが「オーバーステイ」と呼ばれます。オーバーステイは法律に記載された言葉ではなく、不法な残留状態のことを指す通称です。

オーバーステイになると、退去強制の対象となるだけでなく、刑事罰を受ける可能性もあります。また、将来的に日本へ再入国できなくなるケースもあるため、軽く考えてはいけません。

ここでは、オーバーステイの意味や、不法滞在との違い、主な原因について解説します。

1 オーバーステイとは何か

オーバーステイとは、在留資格で認められた在留期間を過ぎても、日本に滞在し続けることをいいます。

例えば、90日の短期滞在で来日した外国人が、在留期間の更新や変更の手続きをしないまま91日目以降も日本に滞在した場合は、オーバーステイとなります。

また、「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「留学」などの期限付きの在留資格についても同様です。在留期間が満了したにもかかわらず、更新や変更の許可を受けないまま滞在を続けると、オーバーステイとなる可能性があります。

オーバーステイは、退去強制事由となるほか、刑事罰の対象となることもあります。

2 オーバーステイと不法滞在の違い

「オーバーステイ」と「不法滞在」は同じ意味で使われることもありますが、厳密には異なります。

不法滞在とは、日本に適法な在留資格がない状態で滞在していること全般を指します

一方、オーバーステイとは、適法に入国したものの、在留期間を超えて滞在し続けている状態をいいます。

つまり、不法滞在には

  • 在留期間を超えて滞在するオーバーステイ
  • 不法入国や不法上陸による滞在

などが含まれます。

オーバーステイは、不法滞在の一種であると理解すると分かりやすいでしょう。

3 オーバーステイになる主な原因

オーバーステイとなる原因はさまざまですが、代表的なものとして次のようなケースがあります。

  • 在留期間を勘違いしていた
  • 在留期間更新許可申請を忘れてしまった
  • 帰国費用を用意できなかった
  • 病気や家族の事情により帰国できなかった
  • もっと日本で働きたいので逃亡した

特に多いのは、「更新手続きを忘れていた」「まだ期限があると思っていた」といった認識不足によるケースです。

また、就労先の変更や転職などに伴い、在留資格の変更が必要であるにもかかわらず、その手続きを行わなかった結果、オーバーステイとなるケースもあります。

在留期間は在留カードなどで確認できますので、有効期限を日頃から確認し、更新が必要な場合は余裕をもって手続きを行うことが重要です。

第2 オーバーステイになるとどうなる?

オーバーステイは、在留期間を過ぎても日本に滞在し続ける行為であり、入管法違反となります

「数日程度だから問題ない」「悪意はなかったから処罰されない」と考える方もいますが、オーバーステイの期間が短いか長いかにかかわらず、法律上は不法残留に該当する可能性があります。

ここでは、オーバーステイとなった場合の法的な影響について解説します。

1 入管法違反となる理由

外国人は、在留資格ごとに認められた期間内のみ日本に滞在することができます。

在留期間が満了すると、そのままでは日本に滞在する法的な根拠がなくなるため、引き続き日本に滞在するには、在留期間更新許可や在留資格変更許可などの手続を行う必要があります。

これらの手続きを行わずに日本に滞在し続けた場合は、入管法上の「不法残留」となり、退去強制事由に該当します。

そのため、入国管理局(出入国在留管理庁)の調査を受けることとなり、状況によっては退去強制手続が進められる可能性があります。

2 オーバーステイの刑事罰

オーバーステイには刑事罰が設けられています。

入管法では、不法残留をした場合、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又はこれらの併科が定められています。

もっとも、オーバーステイとなったすべての人が刑事裁判を受けるわけではありません。

例えば、在留期間をわずかに過ぎてしまった場合や、自ら出入国在留管理局へ出頭し、誠実に手続へ協力しているようなケースでは、刑事処分ではなく退去強制手続が中心となることもあります。

一方で

  • 長期間にわたりオーバーステイを続けていた場合
  • 偽造在留カードなどを使用していた場合
  • 身分を偽って就労していた場合
  • 過去にも入管法違反を繰り返している場合

などでは、悪質性が高いと判断され、厳しい処分を受ける可能性が高まります。

3 退去強制(強制送還)の流れ

オーバーステイが判明すると、多くの場合は退去強制手続が開始されます。

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 違反発覚
  2. 入国警備官による違反事実の調査
  3. 主任審査官による収容するかどうかの審査
  4. 主任審査官による退去強制事由に該当するかどうかの審査
  5. 特別審理官による審理(4に対して異議を申し出た場合)
  6. 法務大臣または地方出入国在留管理局長の裁決
  7. 退去強制令書の発付
  8. 送還

なお、3次第では退去強制手続の途中で収容される場合もありますが、すべてのケースで直ちに収容されるわけではありません。

また、事情によっては退去強制ではなく、後述する「出国命令制度」の対象となることもあります。

4 再入国が制限される期間

オーバーステイにより退去強制となった場合、日本への再入国は一定期間認められません。

一般的には

  • 出国命令制度により出国した場合:1年間
  • 退去強制により出国した場合:5年間
  • 過去にも退去強制を受けたことがある場合など:10年間

の上陸拒否期間が設けられることがあります。

この期間中は、原則として日本へ入国することができません

また、上陸拒否期間が終了したとしても、自動的に日本へ入国できるわけではありません。ビザの取得や上陸審査において、過去のオーバーステイの事実が考慮されるため、状況によっては入国が認められない場合もあります。

そのため、日本での就労や家族との生活を希望している場合には、オーバーステイとなった時点で早めに適切な対応を取ることが重要です。

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第3 オーバーステイ状態になった場合の対処法

オーバーステイとなった場合は、できるだけ早く現在の状況を確認し、適切な手続きを取ることが重要です。

「見つからなければ大丈夫」「そのうち帰国すれば問題ない」と考えて放置すると、状況がさらに悪化する可能性があります。

1 自主的に出国した方がよいケース

オーバーステイとなったことに気付いた場合は、まず現在の状況を確認しましょう。

例えば

  • 在留期間を数日過ぎてしまったことに気付いた
  • 更新手続きを忘れていた
  • 更新申請が不許可となった

といったケースでは、早めに出入国在留管理局へ相談することで、出国命令制度が利用できる可能性があります。

一方で、何年もオーバーステイを続けている場合や、就労資格がないにもかかわらず働いていた場合などは、より慎重な対応が必要です。

いずれにしても、問題を放置して状況が改善することはありません。早めに専門家へ相談し、適切な対応方針を検討することが大切です。

2 出国命令制度とは

出国命令制度とは、一定の条件を満たした外国人が自主的に出国する場合に利用できる制度です。

退去強制手続とは異なり、自ら出国する意思を示し、一定の要件を満たしている場合には、出国命令により帰国することが認められます。

出国命令制度を利用できるかどうかは個別の事情によりますが、一般的には

  • 自ら出頭していること
  • 悪質な入管法違反ではないこと
  • 逃亡のおそれが低いこと

などが考慮されます。

出国命令制度を利用した場合は、再入国制限期間が1年になるというメリットがあります

そのため、制度を利用できる可能性がある場合には、早めに検討することが重要です。

3 在留特別許可が認められるケース

オーバーステイとなった場合でも、一定の場合には在留特別許可が認められる可能性があります。

在留特別許可とは、本来であれば退去強制の対象となる外国人について、人道的な事情などを考慮し、例外的に日本での在留を認める制度です。

例えば

  • 日本人や永住者と婚姻している場合
  • 日本で生まれ育った子どもがいる場合
  • 家族の生活状況などを考慮する必要がある場合

など、さまざまな事情が総合的に判断されます。

もっとも、「日本人と結婚しているから必ず許可される」「長く日本に住んでいるから認められる」というものではありません。

オーバーステイの期間や経緯、家族関係、生活状況、過去の法令違反の有無など、個別の事情を踏まえて判断されるため、在留特別許可が認められるかどうかはケースによって異なります。

そのため、在留特別許可を希望する場合には、早い段階で弁護士へ相談し、必要な資料の準備や適切な対応について助言を受けることをおすすめします

第4 オーバーステイで逮捕されることはある?

「オーバーステイをするとすぐに逮捕されるのでしょうか。」

法律事務所にも、このような相談が寄せられることがあります。

結論からいえば、オーバーステイになったからといって、すべてのケースで直ちに逮捕されるわけではありません。しかし、状況によっては身柄を拘束されたり、刑事事件として処理されたりする可能性があります。

1 逮捕されるケース

オーバーステイで逮捕される可能性があるのは、例えば次のようなケースです。

  • 長期間にわたりオーバーステイを続けている
  • 出入国在留管理局からの呼び出しに応じない
  • 逃亡するおそれがある
  • 身分を偽って生活している
  • 偽造在留カードなどを使用している
  • 他の犯罪にも関与している

このようなケースでは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断され、身柄を拘束される可能性があります。

2 逮捕されないケース

一方で、オーバーステイとなっても、必ず逮捕されるわけではありません。

例えば

  • 自ら出入国在留管理局へ出頭した場合
  • 調査や事情聴取に誠実に応じている場合
  • 逃亡のおそれが低い場合

などでは、身柄を拘束されずに手続が進められるケースもあります。

もっとも、逮捕されなかったとしても、退去強制手続や刑事処分の可能性がなくなるわけではありません。

「逮捕されなかったから安心」と考えるのではなく、その後の対応が重要となります。

3 出入国在留管理局での手続の流れ

オーバーステイが判明すると、通常は出入国在留管理局において事情聴取や違反調査が行われます。

その後、入国審査官による審査などを経て、退去強制とするか、在留特別許可の可能性があるかなどが検討されます。

この手続では、これまでの生活状況や家族関係、日本での生活実態などが確認されることも少なくありません。

説明の内容や提出する資料が判断に影響を与えることもあるため、不安がある場合には、手続の前に弁護士へ相談することをおすすめします。

第5 オーバーステイが刑事事件となった場合のポイント

オーバーステイは、退去強制の対象となるだけでなく、入管法違反として刑事事件となる場合もあります。

しかし、刑事事件となったすべてのケースで起訴されるわけではありません。また、外国人であることを理由に不起訴になりやすいということもありません

ここでは、オーバーステイが刑事事件となった場合に知っておきたいポイントについて解説します。

1 不起訴とは何か

不起訴とは、検察官が事件を刑事裁判にかけないと判断する処分をいいます。

不起訴となる理由にはさまざまなものがありますが、例えば、犯罪を立証するための証拠が十分でない場合や、犯罪の内容や経緯、本人の反省状況などを総合的に考慮し、刑事処分を科す必要がないと判断される場合などがあります。

オーバーステイについても、すべての事件が起訴されるわけではなく、個々の事情に応じて不起訴となるケースがあります。

2 外国人だから不起訴になりやすいわけではない

「外国人は不起訴になりやすい」という話を耳にすることがありますが、そのようなことはありません

不起訴となるかどうかは、日本人・外国人を問わず、犯罪の内容や証拠関係、犯行に至った経緯、被害状況、反省の程度などを踏まえ、個別の事案ごとに判断されます。

そのため、「外国人だから」という理由だけで不起訴になりやすい、あるいは起訴されやすいということはありません。

3 外国人事件ならではの特徴

外国人が関係する刑事事件では、日本人同士の事件とは異なる事情から、捜査に時間や労力を要することがあります。

例えば

  • 通訳を介した取調べや事情聴取が必要となる
  • 身元や在留状況の確認が必要となる
  • 関係者や参考人が外国人であるため、意思疎通や事情聴取に時間を要する
  • 共犯者や証拠が海外にあり、捜査が難航する
  • 在留資格を利用した不法就労や、不法滞在に関連する事件のほか、近年では外貨両替などを利用したマネー・ローンダリングが疑われる事案など、国際的な要素を含む事件もみられる

このように、外国人事件には特有の事情がみられることがありますが、それらの事情が直ちに不起訴につながるものではありません。

4 不起訴となった場合でも入管手続は別に進む

オーバーステイが刑事事件となり、不起訴となった場合でも、それだけで日本での在留が認められるわけではありません

刑事手続と退去強制手続は別の制度であり、不起訴となった場合でも、出入国在留管理庁において退去強制や出国命令制度、在留特別許可の可否などが個別に判断されます。

そのため、刑事事件で不起訴となった場合であっても、入管手続を見据えた対応が重要となります。

外国人が不起訴となった場合の退去強制や在留資格への影響については、当事務所の「外国人が犯罪をしても不起訴なら強制送還されない?」の記事で詳しく解説しています。

第6 オーバーステイに関するよくある質問

1 オーバーステイに時効はありますか?

オーバーステイを続けていれば、そのうち問題がなくなるのではないかと考える方もいます。

しかし、オーバーステイ状態が続いている限り、不法残留の状態は解消されません。

そのため、「何年も経過したから大丈夫」というものではなく、発覚すれば退去強制手続や刑事処分の対象となる可能性があります。

状況によって判断が異なるため、自己判断せずに弁護士へ相談することをおすすめします。

2 オーバーステイ中でも結婚できますか?

日本人や永住者と結婚すること自体は可能です。

しかし、結婚したからといって、自動的にオーバーステイが解消されたり、日本に在留できるようになったりするわけではありません。

在留特別許可が認められるかどうかは、婚姻の実態や生活状況、オーバーステイとなった経緯などを踏まえ、個別に判断されます。

3 オーバーステイした外国人を雇用するとどうなりますか?

オーバーステイをしている外国人には、原則として就労資格がありません。

そのような外国人を雇用した場合、雇用主は不法就労助長罪に問われる可能性があります。

「オーバーステイであることを知らなかった」と主張しても、在留カードの確認を怠っていた場合などには責任を問われることがあります。

外国人を採用する際には、在留カードの有効期限や就労資格の有無を必ず確認することが重要です。

4 オーバーステイに気付いたらどうすればよいですか?

オーバーステイに気付いた場合は、そのまま放置することは避けましょう。

放置するほど状況が改善することはほとんどなく、退去強制や刑事処分につながる可能性が高まります。

まずは、自身の状況を整理したうえで、出入国在留管理局や弁護士へ相談し、適切な対応方法を検討することが大切です。

第7 お気軽にご相談ください

オーバーステイは、在留期間を過ぎて日本に滞在することで成立する入管法違反です。

オーバーステイとなった場合には、退去強制の対象となるだけでなく、刑事罰を受ける可能性があります。また、将来的な再入国にも大きな影響を及ぼすため、安易に放置することはおすすめできません。

もっとも、オーバーステイとなったすべてのケースで直ちに逮捕や強制送還となるわけではなく、出国命令制度や在留特別許可などが認められる可能性もあります。そのため、状況に応じた適切な対応を取ることが重要です。

当事務所では、元検事の弁護士が、オーバーステイになった外国人を雇用している方からのご相談を承っています。

上原総合法律事務所は、元検事の弁護士8名(令和8年7月31日現在)を中心とする弁護士集団で,迅速にご相談に乗れる体制を整えています。

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