ご注意ください
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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。捜査・公判の両面で多数の刑事事件 を担当。検事退官後、都内法律事務所を経て個人事務所を開設。2021年に弁護士法人化し、新宿・ 横浜・立川に展開。元検事(ヤメ検)として、捜査機関の思考・動き方を熟知した立場から、逮捕前 の対応・示談交渉・公判弁護まで一貫してサポートしている。
すでにある刑事事件で起訴されているところ、警察や検察から別の事件についても聴取を受けるなどしている場合、「この事件も追起訴されるのではないか」と不安になる方は少なくないでしょう。
特に、窃盗や詐欺、盗撮などを繰り返して複数の余罪がある事件では、一つの事件で起訴された後、別の事件で再逮捕や追送致をされ、その事件について追起訴され、さらに別の事件で追起訴されるという形で複数件の事件について裁判を受けることとなるケースがあります。
この場合、本人や家族にとって大きな問題になるのが、「いつまで身柄拘束が続くのか」「いつ保釈を請求すべきなのか」「追起訴されると刑罰が重くなるのか」といった点です。
余罪が多数ある事件では、捜査機関も弁護人も、単に目の前の一件だけを見るのではなく、今後どの事件で再逮捕・追起訴される可能性があるのかまで見通したうえで対応を行っていく必要があります。
この記事では、元検事(ヤメ検)の弁護士が、追起訴とは何か、再逮捕や追送致との関係や違い、追起訴までの流れ、裁判や刑罰、保釈への影響等について解説します。
目次
追起訴とは、すでにある事件について起訴されている被告人を、別の犯罪事実について追加で起訴することをいいます。
「追起訴」という言葉自体は、刑事訴訟法上の規定にある表現ではなく、実務上使われている呼び方です。裁判所の資料などでも、すでに起訴されている被告人について、別の事件で起訴されることを追起訴と説明しています。
例えば、1月にコンビニで商品を盗んだ事件について逮捕され、その事件で起訴された後、捜査によって12月に別の店舗でも窃盗をしていたことが判明した場合、検察官がこの12月の事件についても起訴すれば、それが追起訴です。
さらに別の窃盗事件が判明すれば、再び追起訴されることもあります。
追起訴は、窃盗、詐欺、盗撮など、犯行が繰り返されることがしばしばある類型の事件や薬物事件における所持と使用など、一連の行為が複数の犯罪に該当しうる類型の事件でも問題になることが多いと考えられます。
※余罪の捜査等については( 余罪捜査はどこまで?余罪ありの初犯はどうなるのかについて元検事の弁護士が解説 )もご参照ください。
追起訴と混同されやすい言葉として、「再逮捕」と「追送致」があります。
「追起訴」は検察官が、既に起訴されている被告人について、別の事件で起訴する行為であるのに対し、「再逮捕」は、逮捕や勾留をされた被疑者ないし被告人について、別の事件で捜査するにあたり再度(再々度といった場合もありえます。)逮捕するものです。また、追送致は警察が余罪に関する事件を、その事件で逮捕はせずに検察官に送致する(いわゆる書類送検)ことを意味します。
したがって、再逮捕されたから必ず追起訴されるわけではありませんし、反対に、再逮捕されなくても、追送致の上、追起訴されることはあります。
例えば、すでに起訴された被告人について余罪の捜査が続いている場合、別件で改めて再逮捕・勾留したうえで追起訴することもあれば、再逮捕せずに余罪を追送致し、検察官がその事件について追起訴することもあります。
整理すると、再逮捕は「身柄拘束」、追送致は「警察から検察への事件送付」、追起訴は「検察から裁判所への追加の起訴」という違いがあります。
なお、再逮捕、追送致、追起訴のいずれについても、二件目のみならず、三件目、四件目と繰り返し行われるケースもあることは共通です。
※再逮捕については( 再逮捕とは?罪が重くなる?何回まで可能?元検事の弁護士が解説 )もご参照ください。
典型的なパターンとして、以下のようないくつかの流れが考えられます。
まずA事件について逮捕・勾留され、その事件について検察官が公判請求(起訴)をします。
起訴された時点で、それまで「被疑者」と呼ばれていた本人は「被告人」という立場になり、A事件について被告人としての勾留が続きます。
その後、別のB事件について捜査が続いていれば、B事件で再逮捕されることがあります。
再逮捕された場合には、B事件について改めて逮捕・勾留の手続が進み、その捜査結果を踏まえて検察官が起訴するか不起訴にするかを判断します。
この間、A事件については被告人として勾留され、B事件については被疑者として勾留されているという形になります。
捜査の結果、B事件でも起訴されれば、A事件に続く追起訴となります。
こうなると、AとB両方の事件について被告人となり、それぞれの事件について被告人として勾留されている、という関係になります。
また、場合によっては、C事件、D事件と再逮捕や追起訴がさらに繰り返される可能性もあります。
後にも述べますとおり、このパターンで注意が必要なのは保釈請求のタイミングです。
ある事件について起訴されて被告人としての勾留を受けている場合、保釈請求が可能になります。しかし、保釈については事件ごとですから、再逮捕がすぐになされる場合には、A事件について保釈が認められても、B事件についての逮捕や被疑者としての勾留があるという状態になり、結局のところ身柄は解放されず、実質的には意味のないものになってしまいかねません。
さらにいえば、A事件について保釈請求をしたことが、B事件について再逮捕しようという判断のきっかけとなるおそれも否定できません。
保釈による身柄の解放を目指すのであれば、B事件以降の事件についても起訴された後(あるいはそれらの事件について釈放となった後)に、被告人としての勾留の対象となっている事件全てについて保釈の許可を獲得する必要があります。
※保釈の獲得については( 保釈請求(保釈申請)とは?手続の流れ・許可の要件・保釈保証金等について元検事の弁護士が解説 )もご参照ください。
A事件について逮捕・勾留された上、同事件で起訴されると、前記のとおりA事件について被告人として勾留されているという状態になります。
さらにB事件についても立件されるとしても、B事件については再逮捕せずに捜査が進むというケースもあります。
この場合、A事件について保釈されていなければ、実態としては身体拘束下でB事件の捜査も進んでいくこととなります。
B事件について再逮捕されず、追送致後に追起訴されるということとなれば、B事件についての身体拘束はなく、A事件についての被告人としての勾留のみがなされているという状況となります。
A事件についていわゆる在宅事件として捜査が進み、検察への送致(いわゆる書類送検)、起訴と進んだ場合、A事件についての被告人としての勾留も受けません(例外的に、起訴と同時に勾留を求める求令起訴といった方法がとられるケースはあります。)。
この場合、余罪があってもあえて余罪の捜査から逮捕を行うといったことは稀であると考えられ、B事件についても在宅のまま追送致され、追起訴を受け、引き続き在宅のままAとB両方の事件の裁判を受けることとなるケースがほとんどでしょう。
なお、追起訴された事件については、先に起訴されている事件と併せて裁判が行われることが通常ですが、必ず併合されるとは限らず、刑事訴訟法上、弁論を併合するかどうか(追起訴された事件も併せて審理するかどうか)は裁判所が判断します。
※無料相談は警察が介入した事件の加害者側ご本人、逮捕勾留されている方のご家族・婚約者・内縁関係の方が対象となります。
その他のご相談は原則有料相談となりますので、ご了承ください。
※刑事事件の無料相談は一部対象を限定しておりますので、予めご了承ください。詳細は弁護士費用ページをご覧ください。
余罪が多い事件で特に大きな問題となるのが、身体拘束の長期化です。
一般的な刑事事件では、警察が被疑者を逮捕した場合、原則として48時間以内に検察官へ送致し、その後、検察官は身柄を受け取ってから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に勾留請求、起訴または釈放などの判断をします。
裁判官が勾留を認めた場合、被疑者勾留は原則10日間で、必要がある場合にはさらに10日以内の延長が認められることがあります。そのため、逮捕から起訴までの身体拘束は、一つの事件について通常最長23日程度となります。
※逮捕後の流れについては( 逮捕から起訴までの流れと期間を元検事の弁護士が図でわかりやすく解説 )もご参照ください。
しかし、別の犯罪事実についても逮捕・勾留の要件が認められる場合には、その別事件について改めて逮捕・勾留されることがあります。そのため、実務では、
A事件で逮捕・勾留
→A事件を起訴
→B事件で再逮捕・勾留
→B事件を追起訴
→C事件で再逮捕・勾留
→C事件をさらに追起訴
という流れになることがあります。
窃盗や詐欺、盗撮などを繰り返していて余罪が多数ある事件などでは、このような形で再逮捕と追起訴が続くことがあります。
制度上はそれぞれの事件について逮捕・勾留の要件が審査されることになりますが、被疑者・被告人本人から見れば、留置施設などで身体拘束された状態が何十日、場合によっては数か月にわたって続くことがあります。
20日、40日、60日と身体拘束が続けば、その精神的負担は非常に大きなものになります。
刑事弁護では、法律上の手続だけでなく、このような長期間の身体拘束による本人の精神状態にも配慮する必要があります。
※再逮捕については( 再逮捕とは?罪が重くなる?何回まで可能?元検事の弁護士が解説 )もご参照ください。
余罪がある事件で、特に判断が難しいのが保釈請求のタイミングです。
保釈は起訴後の被告人について認められる制度で、保証金を納付することなどを条件として身体拘束を解くものです。裁判所は、逃亡や証拠隠滅のおそれなどを考慮して保釈の可否を判断します。
例えば、A事件で起訴された直後に保釈を請求し、裁判所から保釈許可を得たとします。
しかし、B事件についてすでに再逮捕する予定があるのであれば、A事件で保釈された直後にB事件で逮捕されるといった可能性がありますし、A事件についての保釈請求がB事件での再逮捕の呼び水となってしまうというおそれも否定できません。
そうなると、せっかく保釈許可を得ても、実際には身体拘束は続き、自由な生活に戻ることができないということになります。
そのため、余罪のある事件では、弁護人が検察官に対して、他に捜査中の事件があるのか、再逮捕や追起訴が予定されているのかなどを確認しながら、保釈を申し立てる時期を検討することがあります。
もちろん、捜査中の事件について検察官がすべての予定を弁護人に教えてくれるとは限りません。
それでも、現在の捜査状況、本人がどの範囲まで取調べを受けているのか、警察がどの事件について証拠を収集しているのかなどから、今後の流れをできる限り予測して弁護方針を考える必要があります。
※保釈の獲得については( 保釈請求(保釈申請)とは?手続の流れ・許可の要件・保釈保証金等について元検事の弁護士が解説 )もご参照ください。
余罪や追起訴の可能性が残っているからといって、法律上当然に保釈が認められなくなるわけではありません。
取調べが相当程度終了している、主要な証拠がすでに収集されている、身元引受人や監督者がしっかりしている、住居が安定している、被害者や関係者に接触しないことが確保できるといった事情があれば、追起訴の可能性が残っていても保釈が認められることはあります。
一方で、否認事件などでは、捜査機関や裁判所から証拠隠滅のおそれが問題とされやすく、実務上、保釈のハードルが高くなることがあります。
ここはかなり現実的に考える必要があります。
否認しているからという理由だけで法律上保釈されないわけではありませんし、本来は具体的な逃亡や罪証隠滅のおそれを個別に判断すべきです。もっとも、弁護の現場では、「理論上保釈が可能か」だけを考えていても十分ではありません。
現実に保釈が認められる可能性がどの程度あるのか、再逮捕等の可能性がどの程度あるのか、その時点で保釈請求を行う意味があるのかまで考える必要があります。
追起訴が予定されている事件では、「一日でも早く保釈請求すべきだ」と単純に決められないことがあります。
例えば、最終的に執行猶予が十分見込まれる事件であり、本人が仕事を続けることで被害弁償の資金を確保できる場合には、早期の保釈を目指す意味は大きいでしょう。
家族と一緒に生活を再開し、監督環境を整えたり、治療やカウンセリングを受けたりすることが、裁判に向けた有利な事情になる場合もあります。
一方、多数の余罪があり、今後も複数回の再逮捕が現実的に予想される場合には、一つ目の事件で急いで保釈請求しても、直後に別件で再逮捕される可能性があります。
また、事件の内容から最終的に実刑となる可能性が高いのか、示談や被害弁償によって執行猶予を目指せる事件なのかによっても、弁護方針は変わります。
保釈は単独で考えるのではなく、再逮捕、追起訴、示談、被害弁償、公判、最終的な刑罰まで含めて判断すべき問題です。
※保釈の獲得については( 保釈請求(保釈申請)とは?手続の流れ・許可の要件・保釈保証金等について元検事の弁護士が解説 )もご参照ください。
追起訴されたという事実だけで、自動的に刑罰が一定程度重くなるわけではありません。
しかし、追起訴されるということは、裁判で判断される犯罪事実が増えることを意味します。
例えば、一件だけの窃盗と、複数の店舗で繰り返し窃盗を行っていた事件では、当然ながら犯罪の回数、被害総額、犯行の常習性などに違いがあります。
そのため、余罪が追起訴されれば、結果として求刑や量刑、執行猶予を付すか否かの判断に大きな影響が生じることがあります。
先行する事件と追起訴された事件が併合して審理されれば、裁判所はそれらの犯罪事実をまとめて審理し、刑を判断することになります。
ただし、具体的にどのような刑になるかは、罪名、事件数、被害内容、犯行態様、前科、示談や被害弁償の状況などによって大きく異なります。
「追起訴されたから実刑になる」「追起訴が一件だけなら執行猶予になる」といった単純な判断はできません。
※執行猶予の獲得については( 執行猶予を獲得するには?元検事の弁護士が執行猶予となるための弁護活動や条件について解説 )もご参照ください。
余罪があるからといって、すべての事件が必ず追起訴されるわけではありません。
検察官はそれぞれの事件について起訴・不起訴を判断します。
そのため、被害者がいる事件であれば示談や被害弁償を進め、不起訴を求めることが重要になる場合があります。
例えば、複数の窃盗事件で一件についてすでに起訴されていたとしても、別の被害者との示談が成立し、被害が全額回復され、被害者が処罰を求めていないという事情があれば、その事件について不起訴を求めて検察官に意見を伝える余地があります。
すでに一件起訴されているからといって、「どうせまとめて刑事裁判になるから、他の事件について示談しても意味がない」と考えるのは適切ではありません。
追起訴される事件を減らすことができれば、最終的な量刑にも影響する可能性があります。
既に起訴されている事件があったとしても、追起訴を回避しうるのであれば余罪の不起訴処分を目指すべきでしょう。
※不起訴(起訴猶予)処分の獲得については( 起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや前科・前歴との関係、起訴猶予処分獲得のポイントについて解説 )もご参照ください。
追起訴について「○回まで」という一律の回数制限があるわけではありません。
複数の余罪があり、それぞれについて捜査が進められている場合には、複数回にわたって追起訴されることも考えられます。
もっとも、実務上は発覚している余罪全てについて追起訴されるとは限らず、実際にどの事件を起訴するのかは、証拠関係や事件全体の事情などを踏まえて検察官が判断します。
追起訴までの期間は事件によって異なります。
余罪について再逮捕・勾留されている場合と、身柄を拘束せずに捜査されている場合とでは、捜査の進み方も異なります。
また、余罪の件数や証拠収集に必要な時間によっても変わるため、「最初の起訴から○日以内に追起訴される」と一概にいうことはできません。
追起訴されたことだけを理由として、必ず実刑になるわけではありません。
最終的な刑は
などを踏まえて判断されます。
追起訴される可能性がある場合には、余罪を含めた事件全体を弁護士に伝え、今後の処分や裁判の見通しについて相談することが重要です。
「すでに起訴されたが、別の事件についても捜査されている」「家族が再逮捕され、追起訴されるのではないか」といった状況では、今後の裁判や身柄拘束、刑罰がどうなるのか不安に感じる方も多いでしょう。
追起訴されるかどうかは、余罪の内容や証拠関係などによって異なります。また、追起訴が見込まれる場合には、最初の事件だけではなく、余罪を含めて刑事手続全体を見据えた対応が重要です。
被害者との示談や不起訴を求める活動、保釈請求など、追起訴される前の段階から検討できる弁護活動もあります。
上原総合法律事務所は、元検事の弁護士7名(令和8年10月現在)を中心とする弁護士集団で、刑事事件のご相談、ご依頼については元検事の弁護士が直接担当させていただきます。
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