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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。捜査・公判の両面で多数の刑事事件 を担当。検事退官後、都内法律事務所を経て個人事務所を開設。2021年に弁護士法人化し、新宿・ 横浜・立川に展開。元検事(ヤメ検)として、捜査機関の思考・動き方を熟知した立場から、逮捕前 の対応・示談交渉・公判弁護まで一貫してサポートしている。
撮影罪(性的姿態等撮影罪)については、「初犯なら重い処分にはならないのではないか」「処罰を受け、前科がつくことにはならないのではないか」「略式手続による罰金には留まるだろう」などと考えている方もいるかもしれません。
しかし、初めて盗撮等が警察に発覚した場合であっても処罰対象となりえますし、スマートフォンなどに過去の盗撮画像や動画が残っている場合、警察の捜査によって余罪が発覚することもあります。
余罪が発覚すれば、検挙のきっかけとなった犯行だけではなく、過去の盗撮についても捜査を受ける可能性があります。また、余罪の件数や内容などによっては、起訴・不起訴の判断や最終的な刑事処分に影響する可能性もあります。
この記事では、性的姿態等撮影罪を念頭に、初犯でも余罪がある場合にはどうなるのか、余罪が発覚するきっかけや捜査の流れ、刑事処分への影響、弁護士による対応について、元検事(ヤメ検)の弁護士が解説します。
目次
第1 撮影罪(性的姿態等撮影罪)とは
1 撮影罪の概要
「撮影罪」は、性的姿態撮影等処罰法により処罰される犯罪であり、正しくは性的姿態等撮影罪といいます。
例えば、正当な理由なく、ひそかに人の性的な部位や下着などを撮影する行為などが処罰の対象となります。
駅や電車、商業施設などでスカート内を撮影するような典型的な盗撮だけでなく、配偶者や交際相手との性行為の際、あるいは風俗店の利用中などに無断で撮影する行為、年少者の性的な姿態等を撮影する行為なども性的姿態等撮影罪が成立する可能性があります。
性的姿態等撮影罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。
もっとも、撮影行為がすべて性的姿態等撮影罪になるわけではありません。具体的な行為が撮影罪に当たるかどうかは、撮影した対象や方法、状況などを踏まえて判断する必要があります。
※性的姿態等撮影罪についての詳細は( 性的姿態等撮影罪(撮影罪)とは?性的姿態撮影等処罰法に違反した場合の刑罰や対処法などを元検事の弁護士が解説 )をご参照ください。
2 初犯でも余罪がある場合とは
刑事事件で「初犯」という場合、一般には、それまでに同種・類似の犯罪で処罰を受けたことがない場合などを指して使われます。
一方、「余罪」とは、捜査の対象となっている事件とは別に犯した犯罪をいいます。
※「余罪」について、詳しくは( 余罪捜査はどこまで?余罪ありの初犯はどうなるのかについて元検事の弁護士が解説 )をご参照ください。
そのため、今回初めて盗撮で警察の捜査を受けた場合でも、過去に複数回の盗撮をしていれば、初めて摘発された事件以外の行為が余罪として捜査される可能性があります。
つまり、「初犯」であっても「余罪」があり、「余罪」があれば多数の犯行が同時に捜査対象・処罰対象となる可能性があるのです。
例えば、今回初めて駅での盗撮が発覚したものの、押収されたスマートフォンから過去に撮影した別の盗撮動画が見つかった場合などが考えられます。
第2 撮影罪(性的姿態等撮影罪)の余罪に関する捜査の特徴
1 捜査開始のきっかけ
性的姿態等撮影罪では、被害者や目撃者が盗撮に気付き、警察に通報したり、その場で被疑者を現行犯逮捕したことなどをきっかけとして捜査が始まります。
その後、警察が被疑者のスマートフォンなどを押収し、保存されているデータを確認する過程で、発覚の契機となった事件とは別の撮影データが発見されることがあります。
このように、当初は1件の性的姿態等撮影罪について捜査されていたとしても、押収された端末の解析などをきっかけに余罪の捜査へ広がることがあります。
2 証拠収集の方法
性的姿態等撮影罪では、スマートフォンやカメラなどの撮影機器が重要な証拠となりえます。
捜査機関は、事件の状況に応じて
- スマートフォンやカメラの解析
- 保存されている画像・動画の確認
- 撮影日時や位置情報などの確認
- 犯行が記録されている可能性のある防犯カメラ映像の確認
- 被害者や目撃者からの事情聴取
などを行うことがあります。
また、自宅等の捜索差押え(いわゆる家宅捜索)でパソコンやハードディスクなどが押収され、その復元や解析が行われることもあります。
端末などに多数の撮影データが保存されている場合、それぞれのデータについて、いつ、どこで、どのような状況で撮影されたものなのかなども捜査される可能性があります。
3 捜査機関の役割
性的姿態等撮影罪の事件では、その他の大多数の事件と同様、まず警察が証拠を収集し、被疑者への取調べなどを行います。
その後、事件が検察官に送致されると、検察官が必要な捜査を行ったうえで、起訴するか不起訴にするかを判断します。
逮捕された場合には、その後も勾留され、身柄が拘束されたまま捜査が続くこともあります。
※刑事事件の流れについては( 刑事事件の流れについて元検事の弁護士が解説 )をご参照ください。
余罪が見つかった場合には、当初の事件だけでなく、余罪についても捜査が行われ、立件の可否が検討され、立件された場合には余罪についても考慮の上、起訴するか否かが判断されることがあります。
※不起訴(起訴猶予)処分の獲得については( 起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや前科・前歴との関係、起訴猶予処分獲得のポイントについて解説 )もご参照ください。
もっとも、端末内に過去の画像や動画があるからといって、そのすべてが当然に性的姿態等撮影罪として立件されるわけではありません。撮影日時や場所、撮影態様、被害者の特定など、個々の事件ごとに立件等の可否、要否などが検討されることとなります。
第3 余罪発覚のパターンとその後の流れ
1 スマートフォンなどの解析
性的姿態等撮影罪が発覚した場合、犯行に使用されたスマートフォンなどが押収され、解析されることが一般的です。
また、状況次第では、自宅の捜索差押え(いわゆる家宅捜索)が行われるなどし、パソコンやハードディスク、その他の記録媒体の押収や復元、解析が行われることもあります。
その際、検挙の契機となった犯行に係る画像や動画だけではなく、端末等に保存されている過去のデータが確認される場合があります。
その結果、過去にも同様の盗撮をしていたことを疑わせる画像や動画が発見され、余罪捜査につながることがあります。
また、盗撮によるものでなくとも、児童ポルノに該当する画像や動画等があれば、それ自体、児童ポルノの所持などとして捜査対象となる可能性もあります。
※児童ポルノについては( 児童ポルノのダウンロードや単純所持について弁護士に相談 )もご参照ください。
削除したデータについても、端末の状態や解析方法、復元の可否などによっては捜査対象となる可能性があります。
※スマホの解析、復元等については( スマホは警察にどこまで見られる?解析やデータ復元、余罪発覚の可能性等について元検事の弁護士が解説 )もご参照ください。
2 余罪が発覚した場合の捜査
余罪とみられる撮影データが発見された場合、警察は、その画像や動画についても捜査を行うことがあります。
例えば、記録されている画像等自体の精査やプロパティの確認などから
- 撮影日時
- 撮影場所
- 撮影された人物
- 撮影方法
- 防犯カメラなどの客観的証拠
などを明らかにし、犯罪として立件できるかを検討します。
また、余罪について改めて取調べを受けることもあります。
余罪の数が多ければ、その確認や捜査に時間を要することも考えられます。
身柄が拘束されている場合、再逮捕がなされる場合もありますし、そうでなくとも、余罪の追送致、追起訴などが繰り返されるケースもあります。
※再逮捕については( 再逮捕とは?罪が重くなる?何回まで可能?元検事の弁護士が解説 )もご参照ください。
3 余罪がある場合の注意点
余罪がある場合、「警察にどこまで話すべきなのか」「余罪について自分から説明した方がよいのか」と悩む方も少なくありません。
しかし、余罪についてどのように対応すべきかは、事件の内容や証拠の状況によって大きく異なりえます。
不用意な説明によって、自分の認識とは異なる内容で供述調書が作成されるなどの問題が生じる可能性もあります。
一方で、事件によっては、適切に事実関係を説明することがその後の処分を考えるうえで重要になったり、早期に示談交渉を行うためのきっかけとなる場合もあります。
また、タイミング次第では余罪については自首が成立する可能性もあります。
※自首については( 自首のメリットや流れは?元検事が弁護士の自首同行等についても解説 )もご参照ください。
そのため、余罪がある場合には、できるだけ早い段階から弁護士に相談し、どのように対応するべきか検討することが重要です。
※「余罪」について、詳しくは( 余罪捜査はどこまで?余罪ありの初犯はどうなるのかについて元検事の弁護士が解説 )をご参照ください。
第4 余罪がある場合の法的リスク
1 初犯でも余罪が多いと処分に影響する可能性がある
初犯であることは、刑事処分を判断する際に考慮され得る事情の一つです。
しかし、初めて摘発された事件であっても、多数の余罪がある場合には、余罪自体が刑事事件として立件されるには至らなくとも、反復・継続して盗撮をしていた事情として、より処分を重くする方向に評価される可能性があります。
そのため、「初犯だから罰金で済む」「初犯だから不起訴になる」と一概にいうことはできません。
なお、起訴するか否か、正式裁判か略式手続かなどの判断においては、余罪の有無や件数だけでなく
- 各事件の内容
- 犯行の期間や頻度
- 被害の程度
- 示談の有無
- 本人の反省状況
- 再犯防止に向けた取組み
- 前科・前歴の有無
など、さまざまな事情を踏まえて判断がなされます。
※不起訴(起訴猶予)処分の獲得については( 起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや前科・前歴との関係、起訴猶予処分獲得のポイントについて解説 )もご参照ください。
※略式手続による罰金については( 略式起訴・略式命令でも前科?手続の流れ、罰金の相場等を元検事の弁護士が解説 )もご参照ください。
2 過去の事件も刑事事件になる可能性がある
余罪について十分な証拠が集まれば、今回の事件とは別の犯罪として立件される可能性があります。
余罪のすべてが立件・起訴されるとは限りませんが、複数の事件が起訴されれば、刑事裁判で複数の犯罪について審理されることとなります。
また、多数の余罪が捜査の進捗によって時間差で立件されていき、追送致や追起訴が繰り返される、再逮捕が繰り返されるといったケースもあります。
※再逮捕については( 再逮捕とは?罪が重くなる?何回まで可能?元検事の弁護士が解説 )もご参照ください。
第5 撮影罪で余罪がある場合の弁護活動
1 事件と証拠の状況を整理し、見通しを検討する
性的姿態等撮影罪で余罪がある場合には、まず現在どの事件について捜査されているのか、警察がどのような証拠を把握している可能性があるのか、さらに今後の捜査でどのような証拠や事実関係が捜査機関に把握されると見込まれるかなどを整理することが重要です。
特にスマートフォンなどが押収されている場合、端末内にどのようなデータがあるのかを本人が把握している範囲で弁護士に説明することも重要ですし、自宅のパソコン等にも記録されているといった場合、いわゆる家宅捜索の可能性を減少させるために任意で提出すべきかなども検討しなくてはなりません。
そのうえで、余罪についてどのタイミングでどのように供述するかなど、取調べへの対応方法等を検討する必要があり、捜査機関の手法などを踏まえ、今後の捜査の見通しなどを立てることが可能な弁護士のサポートを受けることが有用でしょう。
2 被害者との示談を試みる
被害者が特定されている、あるいは特定されうる事件では、示談が重要なファクターとなってきます。
示談が成立し、被害者から宥恕(許し)を得られた場合には、検察官が起訴・不起訴を判断する際などに考慮される重要な情状事実となりえます。
もっとも、盗撮事件では、被疑者本人が被害者に直接連絡することは通常は適切ではありません。
被害者への接触が新たなトラブルにつながる可能性もあるため、示談を希望する場合には弁護士を通じて行うことが一般的です。
余罪が複数ある場合には、どの事件について被害者が特定されているのか(されうるのか)、どの事件について示談交渉が可能なのかを整理し、示談交渉を試みる必要があります。
3 再犯防止策を具体化する
余罪がある場合には、単に「反省している」と述べるだけではなく、再び盗撮をしないための具体的な対策を行った上、そのことを捜査機関や裁判所に的確に伝えることも重要です。
初犯であっても、余罪が多数ある場合、常習性や依存性があるものとして厳しい判断となりがちですし、更生や再犯防止について適切な対応が必要です。
事件の背景や被疑者・被告人の置かれている環境にもよりますが
- 家族などによる生活上の監督
- スマートフォン等の利用方法の見直し
- 専門機関への相談・受診
- カウンセリングや治療への取組み
- 盗撮につながりやすい行動や環境を避けるための具体的方策
など、再犯防止策を整備した上、適切なタイミング、方法で捜査機関や裁判所に主張しなくてはなりません。
どのような対策が適切か、どのように主張すべきかは事件ごとに異なりうるため、刑事事件についてはもちろん、捜査機関等の考え方についても精通した弁護士のサポートを受けることも重要です。
第6 撮影罪(性的姿態等撮影罪)で余罪がある場合は早めに弁護士へ相談する
性的姿態等撮影罪で余罪がある場合には、検挙されたことは初めて、すなわち初犯であっても、当初の1件だけを前提として対応すると、その後の捜査に十分対応できないことがあります。
特にスマートフォンなどが押収されている場合、解析によって余罪が発覚する可能性も考えながら、今後の捜査や取調べへの対応を検討する必要があります。
弁護士に早い段階で相談することで
- 余罪捜査の見通しを検討する
- 取調べへの対応について助言を受ける
- 被害者との示談を検討する
- 不起訴や刑の軽減に向けた事情を整理する
- 再犯防止策を準備する
といった対応が可能になります。
余罪について詳しくは、以下の記事もご覧ください。
余罪捜査はどこまで?余罪ありの初犯はどうなるのかについて元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所
第7 お気軽にご相談ください
盗撮(性的姿態等撮影罪)で初めて警察の捜査を受けた場合でも、過去に盗撮をしていたのであれば、スマートフォンなどの解析から余罪が発覚する可能性があります。
もっとも、余罪が見つかったからといって、そのすべてが直ちに立件されたり、初犯でも必ず重い刑事処分を受けたりするわけではありません。余罪の内容や件数、証拠関係、示談の状況、再犯防止への取組みなどによって、その後の見通しは異なります。
重要なのは、余罪があること、それが捜査対象、処罰対象となりうることを踏まえたうえで、捜査や取調べにどのように対応するのかを早い段階から検討することです。
上原総合法律事務所は、元検事の弁護士7名(令和8年7月31日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
刑事事件のご相談、ご依頼については、元検事の弁護士が担当し、直接対応させていただいております。
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