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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
傷害致死罪について
「殺人とはどう違うのか」
「傷害致死になるとどのくらいの刑になるのか」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
傷害致死罪は、人の死亡という重大な結果が生じているため、非常に重い刑罰が科される可能性のある犯罪です。
本記事では、元検事(ヤメ検)の弁護士が、傷害致死罪の基本から量刑傾向、被疑者や被告人となってしまった場合の対応方法までわかりやすく解説します。
目次
第1 傷害致死罪とは
傷害致死罪とは、人に対して傷害を負わせた結果、その人を死亡させてしまった場合に成立する犯罪です。
条文は以下のとおりです。
刑法(傷害致死)
第205条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期拘禁刑に処する。
詳しくは後に述べますが、人の死亡という結果は「殺人罪(刑法199条)」と同様なのですが、最大の違いは、行為の時点において「殺意」があったかどうかという点です。
※殺人についてはこちら(殺人・殺人未遂について元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
例えば、口論の末に相手を1回殴ったところ転倒して頭部を強打し死亡した場合などは、殺意までは認めがたいと考えられるため、傷害致死罪に問われることが多いでしょう。
法定刑は「3年以上の有期拘禁刑」とされており、非常に重い犯罪類型に位置付けられており、事案によっては相当長期の実刑判決となる可能性があります。
第2 傷害致死罪の構成要件
傷害致死罪の構成要件は
- 傷害(又は暴行)の実行行為と傷害結果が存在すること
- 傷害(又は暴行)の故意があること(主観的要件)
- 死亡結果が発生したこと
- ①と③の間に因果関係があること
です。
① 傷害(又は暴行)の実行行為と傷害結果が存在すること
加害者による、被害者の生理的機能を害する行為と傷害という結果が存在する必要があります。暴行が典型的ですが、それに限られるわけではなく、事情を秘して有害なものを飲ませたりする行為など、暴行ではない方法による傷害も含まれます。
② 傷害(又は暴行)の故意があること(主観的要件)
「怪我を負わせたり体調不良にさせたりしてやろう」又は少なくとも「殴る、蹴るなどの暴行を加えてやろう」などという故意があることが必要です。
いわゆる「未必の故意」(傷害の結果が発生しても構わない)でも足りるとされています。
③ 死亡結果が発生したこと
被害者が死亡するという結果が発生したことが必要です。
④ ①と③の間に因果関係があること
加害者の行った「傷害の実行行為」と、被害者の「死亡結果」との間に、法的な因果関係が認められることが必要です。
このうち「因果関係」は争点になりやすいポイントです。
例えば、加害者による暴行後、被害者が別の原因で死亡した場合や、被害者の特殊な体質が死亡に大きく影響している場合には、因果関係の有無が争点となりやすいでしょう。
第3 傷害致死と他の罪との違い
1 傷害致死罪と殺人の違い
傷害致死罪と殺人罪の最大の違いは「殺意の有無」です。
殺人罪は「人を殺してやろう」あるいは「死んでも構わない」という殺意をもって行為に及び、結果として相手を死亡させた場合に成立します。
一方、傷害致死罪は傷害(又は暴行)の故意はあったものの、殺意まではなかった場合に成立します。
実務上はこの「殺意の有無」が問題となるケースが多くあります。
検察側が「殺意が認められるので殺人罪が成立する」と主張し、弁護側が「殺意までは認められないため傷害致死にとどまる」と主張するようなケースが典型です。
殺意については、被疑者の供述も重要ではありますが、主に
- 凶器の種類と性質(危険性)
- 創傷の部位と程度(傷の位置とその深さなど)
- 攻撃の態様(執拗さ・強さ)
- 犯行の動機(経緯)
- 犯行後の行動
などの客観的状況から判断されます。
※殺人についてはこちら( 殺人・殺人未遂について元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
2 傷害致死罪と過失致死の違い
過失致死罪は、過失によって人を死亡させた場合に成立します。
過失とは簡単に説明しますと「注意義務違反」 (注意すべきであったのに注意を怠ったこと)です。
これに対し、傷害致死罪は、少なくとも傷害又は暴行の故意が必要です。
つまり
- 注意義務違反をしてしまった結果、死亡の結果が発生した → 過失致死
- 故意に傷害の実行行為に及んだ結果、死亡の結果が発生した → 傷害致死
ということになります。
両者は、その法定刑が大きく異なります。
過失致死罪の法定刑は「50万円以下の罰金」であるのに対し、傷害致死罪は「3年以上の有期拘禁刑」となっています。
注意義務違反により死亡の結果が発生した場合については、一定の場合には重く処罰されることとされています。
例としては
- 業務上の注意義務違反
⇒ 業務上過失致死罪(5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金) - 自動車運転中の注意義務違反
⇒ 自動車運転過失致死罪(7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)
となっており、こちらの方がニュース等で聴きなじみのある方が多いかと思います。
第4 傷害致死罪の量刑について
傷害致死罪の量刑は、事案ごとに大きく異なります。
量刑判断においては、以下のような事情が重視されます。
- 犯行態様に関する事情(凶器使用の有無、暴行の回数、計画性の有無等)
- 犯行に至る経緯に関する事情
- 犯行後の事情
- 被告人の反省の有無
- 前科・前歴の有無
- 被害弁償・示談の有無
傷害致死罪は被害者の死亡という極めて重大な結果が発生している犯罪ですので、基本的には相当期間の実刑が見込まれる類型です。
ただし、例外的に、被疑者に有利な事情が多く認められる事案については、執行猶予が付される場合があります。
どのような事案に執行猶予が付されるのかは具体的な事情によりますが、執行猶予につながり得る有利な情状としては
- 実行行為が突発的な単発の殴打にとどまるなど、悪質とまでは言えない
- 被害者から先に苛烈な暴力や理不尽な挑発を受けたなど、犯行に至る経緯に同情の余地がある
- 遺族に十分な損害賠償を行って示談が成立し、遺族が処罰を望んでいない
- 直ちに救急車を呼ぶなど適切な救護措置をとり、法廷でも反省の情を示している
などが挙げられるでしょう。
※執行猶予の獲得についてはこちら(執行猶予を獲得するには?元検事の弁護士が執行猶予となるための弁護活動や条件について解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
第5 傷害致死罪に問われた場合の対応
傷害致死罪について想定される弁護活動は、多岐にわたります。
例えば、軽微な暴行から死の結果が生じた場合、暴行行為と死亡の結果の間に第三者の行為が介在している場合など、暴行行為と被害者の死亡との因果関係が不明瞭なケースであれば、その因果関係を争う必要があるでしょう。
その際には、取調べに適切に対応するとともに、検察官にこちらの主張が理解されるよう書面を提出することなども検討することとなります。
一方、事実関係を認める場合には、亡くなった被害者のご遺族に対する謝罪や示談の申出をして行くことになるでしょう。被害者の死亡という結果が生じている以上、示談交渉そのものを拒否されたり、厳しい示談条件を提示されることが予想されますが、真摯に対応していくしかありません。
いずれにしましても、傷害致死罪に問われた場合、早期の対応が極めて重要ですので、なるべく早く弁護士へ相談することをおすすめします。
第6 まとめ
傷害致死罪は、人の死亡という重大な結果が生じており、当然のことながら、重い刑罰が科される可能性がある犯罪です。
ただ、初動対応や示談交渉の進め方によって結果が大きく変わることがある犯罪でもあります。
上原総合法律事務所は、元検事8名を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
所属弁護士全員が刑事事件について熟知し、独自のノウハウを有しており、傷害致死罪で検挙されたとき又は検挙されそうなときの具体的な対応につきアドバイスをすることが可能です。
刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。
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