(2021年10月27日更新)
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不正受給でお困りの専門家(税理士・社労士)の方はこちらをご覧ください。
雇用調整助成金に関するセミナーについては、こちらをご覧ください。
現在、労働局・会計検査院は雇用調整助成金の不正受給について詳しい調査を始めているそうです。
そのうえで、会社に電話での問い合わせや手紙で「資料提出のお願い」といった書面が届くことがあります。
以下の動画は5分程度となりますが、労働局から連絡が来た場合の対処法を元検事の弁護士が詳しく解説しております。
「雇用調整助成金の不正受給・詐欺に関わってしまったかもしれない」とご不安になられている方は一度ご覧ください。
雇用調整助成金は、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度で、雇用保険法の定める雇用安定事業の一環として行われているものです(なお、雇用調整助成金は、略して「雇調金」(こちょうきん)とも呼ばれています)。
そして、昨年、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、一定の条件を満たす場合に、休業手当などの一部を助成する雇用調整助成金の特例措置が設けられ、助成内容・助成対象の拡充、申請手続・受給要件の緩和がなされました(なお、この特例措置は、2021年11月末までとされていますが、同年10月19日、厚生労働省から来年3月まで延長される予定であることが報道発表されました。)。
なお、雇用調整助成金の助成対象となるのは、事業主に雇用された雇用保険被保険者に対する休業手当のみですが、学生アルバイトなどの雇用保険被保険者以外の方に対して支払った休業手当については、別途「緊急雇用安定助成金」の助成対象となります(なお、緊急雇用安定助成金は、略して「緊安金」(きんあんきん)とも呼ばれています)。
近時、雇用調整助成金、緊急雇用安定助成金、持続化給付金などのコロナ禍における各種助成金の不正受給事案に対して捜査当局が厳しい姿勢を見せており、不正受給に関与した高校生ら16名が検挙された事案や、(元)税理士ら関係者30名が検挙された事案、申請を指南した社会保険労務士が逮捕された事案などが報道されています。
それでは、雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の「不正受給」とは、いったいどのような行為を指すのでしょうか。
以下の動画では5分ほどで不正受給の事例について詳しく解説しておりますので、是非ご覧ください。
この「不正受給」の定義については、厚生労働省が発出している「雇用関係助成金支給要領」に定めがあります。
この要領によれば、「不正受給」とは、「偽りその他不正の行為(詐欺等に触れる行為のほか、犯罪を構成するに至らない場合であっても、故意に支給申請書に虚偽の記載を行い又は偽りの証明を行うことが該当する。ただし、支給申請書に事実に反する記載があった場合であっても、当該記載誤りが故意によらないものと認められる場合は不正の行為には該当しない。)により本来受けることのできない助成金の支給を受け、又は受けようとすること」を言うとされています。
不正受給の典型例は、自らが利益を得るために、従業員を全く休業させていないにもかかわらず休業させたとことにして申請したり、休業の日数や時間を真実よりも多く(水増し)申請したりして、不当な金額を受給するというものです。
また、従業員に休業手当を支払っていないのに支払ったことにして申請し、企業だけが支給された休業手当分の利益を得ているという事案もあります。
特に悪質な事案では、そもそも申請している企業が実態のないペーパーカンパニーだったり、休業したとする従業員が実在しない人物であったりといったケースも見られます。
さらに、上記のような悪意のある事例ではなくても、以下のような場合にも不正受給に当たる可能性があるので注意が必要です。
例えば、コロナ禍で危機に陥った会社の中には、大切な従業員を路頭に迷わせるくらいなら不正をしてでも会社を生き延びさせたい、嘘をついてでも休業させたことにしてお金をもらって生き延びたい、と思った会社もあると思います。しかし、このように、やむを得ない事情があったとしても、不正受給になってしまいます。
また、従業員に休業手当を支払おうにもその資力がないため、休業手当を支払ったことにして雇用調整助成金を受給し、その助成金で従業員の休業手当に補填したという事例であっても、事前に休業手当を支払っていないため、不正受給になってしまいます。
さらには、このような会社の不安・困難な状況に付け入る怪しいコンサルタントも発生しています。
これらの自称コンサルタントは、「弁護士や税理士、社会保険労務士が関与していますので安心です。」「皆やっています。」「とりあえず通るかやってみましょう。」「心配になったら取り下げられます。」などと言って不正受給を持ちかけてきます。
そして、実際に受給に成功した場合には、高額の報酬を得る(受給額の50%以上を要求しているケースもあります)一方、労働局等の調査が入った途端に連絡がつかなくなる、というのが通常です。
不正受給をしてしまった人の中には、このように、他人や知人からそそのかされて、「自分は大丈夫だろう」「犯罪ではないだろう」と考えて申請をしてしまった方も大勢います。
しかし、上記不正受給の定義からすると、他人や知人からそそのかされていたり、「犯罪ではないだろう」と思っていたとしても、「申請書類に事実と違う内容が書いてあることが分かっていながら、あえてそれを提出した」場合には、不正受給になってしまいます。
そのほか、雇用調整助成金は、申請よりも前に休業手当を支払っていないと受給できませんので、助成金をもらってそれを原資として休業手当を支払う場合も不正受給になります。
申請をしただけで、支給決定がされておらず、実際に支給は受けていないという場合はどうでしょうか(いわゆる未遂です)。
不正受給の定義上、本来受けることのできない助成金の支給を受け、又は「受けようとする」ことも不正受給に当たるとされていますので、内容虚偽の書類を提出して申請しただけで不正受給となり得ます。
また、助成金の支給要件など、制度について誤った理解や勘違いをしていて、それを前提に申請をした場合であっても、提出書類に内容虚偽の部分があり、内容が虚偽であることを認識していた(故意によるものと認められる)場合には、不正受給に該当すると取り扱われることがあります。
他方で、提出書類に内容虚偽の記載があったとしても、その記載が故意によるものと認められない場合は不正受給に該当しません。
それでは、不正受給が行われた場合、どのようにして労働局に発覚するのでしょうか。
以下の動画では発覚経緯と対応策を5分ほどの動画で解説しております。
是非こちらもご一緒にご覧ください。
不正受給の発覚経緯は事案により様々であり、発覚経緯が判然としない事案もありますが、いくつか例を挙げます。
まず、辞職した従業員がハローワークにおいて失業保険の給付申請を行った際、実際には休業手当をもらっていないのに、記録上は休業手当をもらったことになっていたことが発覚するケースがあります。
また、企業やその経営陣に不満を持つ従業員が、労働局に直接通報して不正受給が発覚するケースもあります。
さらに、不正受給のコンサルティングを行っている指南役が調査対象となり、その指南役から指導を受けている事業主に対しても調査が入るというケースもあります。
そのほか、助成金の支給申請書の内容に不審な点があるために、労働局が積極的に調査に乗り出すような事案もあると考えられます。
労働局は、ある事業主が雇用調整助成金を不正受給しているとの疑いを持った場合には、その事業主に対して調査を行います。
ところで、労働局は、雇用保険法に基づいて、雇用保険被保険者を雇用している事業主に対して、報告を求めたり、文書の提出を求めることもできます(なお、報告・提出命令に違反して報告・提出を行わなかった場合には、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられることがあります。)。
そのため、労働局による調査に対して、これを拒絶するという対応は好ましいものではなく、誠実に対応することが必要となります。
労働局による調査が行われる場合、まずは、確定申告書、決算書、総勘定元帳、損益計算書、売上証票、雇用契約書、労働者名簿、休業協定書、タイムカード、シフト表、給与明細、賃金台帳等の資料を提出するよう求められます。
そして、労働局の担当者が事業所を訪問し、事前に準備した資料の内容を確認したり、労働者の稼働実態や勤怠管理の状況を確認したりします。
また、実地調査の際には、代表者・申請担当者・労働者等のヒアリングが実施されることもあります。
ヒアリングに当たっては、不正受給を行うに至った動機・経緯、申請書及びその添付書類の作成方法など不正受給の状況等を質問されることになります。
そして、労働局において、不正受給であると判断する場合には、不正受給を認める旨の申立書を作成し、それに署名・押印をすることになります。
なお、労働局による調査と並行して、会計検査院による調査が行われる場合もあります。
それでは、労働局により不正受給に該当すると判断された場合、どうなるのでしょうか。
この点については、雇用保険法施行規則や前述の「雇用関係助成金支給要領」に定めがあります。
この要領では、労働局による措置として、①不支給決定又は支給取消決定、②返還命令、③不支給措置、④公表などが定められています。
また、刑事訴訟法第239条第2項は、「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」と定めており、労働局が捜査機関に対して刑事告発を行うこともあります。
申請中の助成金については不支給決定、既に支給を受けた助成金については支給取消決定が行われ、それぞれ申請者に通知書が送付されます。
これにより、後に述べるとおり、既に支給を受けた助成金を返還する義務が生じます。
労働局により不正受給と認定された場合には、既に支給を受けた助成金の返還を求められることになります。
また、その場合、不正受給の日の翌日から返還の日まで、原則として年3%の割合で算定した延滞金の納付も求められます。
さらに、返還を求められた金額の20%に相当する金額の納付も求められることになります。
このように不正受給と判断された場合には、制裁として、支給を受けた助成金の金額よりも多額の金額を納付しなければならなくなることに注意が必要です。
不正受給を行った事業主等は、不支給決定又は支給取消決定の日から起算して5年間、助成金の支給を受けることはできません。
また、不正受給を行った事業主等の役員等であって不正受給に関与した者が、他の事業主等の役員等となっている場合には、当該他の事業主等についても、同様に5年間、助成金の支給を受けることができません。
これにより、不正受給と判断されてしまった場合には、将来にわたって、ハローワークで取り扱うほぼすべての助成金の支給が受けられなくなります。
※新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例は除く
要領によれば、不正受給が「特に重大又は悪質なものであると認められる場合」には、原則として、事業主等の名称を公表するものとされています。
公表の対象となる事項は、①不正受給を行った事業主等の名称、代表者及び役員等(不正受給に関与した役員等に限る。)、②不正受給に係る事業所の名称、所在地及び事業概要、③不正受給に係る助成金の名称、返還を命じた金額及び返還状況、④事業主等が行った不正の内容、⑤社会保険労務士が不正受給に関与していた場合は、事務所の名称、所在地、氏名及び不正の内容等が公表されることになります。
公表の方法は、記者発表に加え、管轄労働局のホームページに掲載することにより行うとされており、ホームページへの掲載は、原則として、不支給決定又は支給取消決定の日から起算して5年が経過するまでの期間行うこととされています。
このように不正受給を行ったことを長きにわたって公表されてしまうことは、企業の社会的評価(レピュテーション)を大きく低下させるものであり、取引先や従業員からの信頼低下を招きかねないものです。
そのため、不正受給が疑われる場合には、速やかに事実関係の調査を行い、公表を防止するための方策を講じていくことが肝要です。
具体的には、不正受給に該当すると判断できる場合には、「特に重大又は悪質なもの」と評価されることを防止するため、不正受給に至った原因や再発防止策を含めて調査結果を速やかに労働局に報告するとともに、労働局から返還を命じられた金額を一括して納付することなどが重要と考えられます。
前述のとおり、刑事訴訟法第239条第2項は、「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」と定めています。
この条文によれば、労働局の職員は、不正受給が詐欺等の犯罪に該当すると判断した場合には、必ず捜査機関に対して刑事告発をしなければならないようにも読めます。
しかし、刑事訴訟法上はそのようには解釈されておらず、告発を行うべきか否かは、事案の重大性であったり、今後の行政運営に与える影響等を総合的に考慮し、慎重に検討して判断されることも許容されていると解釈されています。
そのため、重大な事案と評価されたり、今後の助成金の運営に悪影響を与える事案であると評価されたりするのを防止するためにも、不正受給が疑われる場合には、前述と同様、速やかに事実関係を調査した上、不正受給に至った原因や再発防止策を含めて調査結果を速やかに労働局に報告するとともに、労働局から返還を命じられた金額を一括して納付することなどが重要と考えられます。
刑法第246条第1項は、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」と規定されており、詐欺罪で起訴されると、最大で懲役10年の罪に問われる可能性があります(なお、詐欺罪に罰金刑はありません。)。
また、数種類の助成金について虚偽の申請をしていたり、同一種類の助成金について複数回(複数月)にわたって虚偽の申請をしたりしている場合、それぞれの申請について詐欺罪が成立するため、刑の上限が加重され(併合罪加重といいます)、最大で懲役15年の罪に問われる可能性があります。
不正受給事案のように、「国家的・社会的な利益を不正に得た場合に詐欺が成立するか」という点については議論がありますが、判例では、行政法規の罰則が特別法として詐欺罪の適用を排除する趣旨と認められない限りは詐欺罪が成立するとされており、不正受給が詐欺に当たるとされた場合、被害者は労働局(国)になります。
次に、誰が詐欺罪の責任を負うのかという点を見ていきます。
不正受給事案は、「内容虚偽の書類を提出する」ことによって労働局側の担当者をだますという構造になりますので、提出書類に虚偽の記載があることを分かっていた助成金の申請者(書類の作成者)は詐欺の責任を問われます(実行行為者)。
ところで、企業においては、総務・経理担当の職員が助成金の申請作業を担当している場合もあると思います。
このような場合に、助成金の申請者以外の人が責任を負う場合はあるでしょうか。
刑法では、「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」と規定されており、助成金の申請や書類の作成をしていない人であっても、共謀共同正犯として、詐欺罪に問われることがあります。
具体的には、企業の代表者等において、助成金の申請者(書類の作成者)に対して、内容虚偽の申請をするよう指示していた場合はもちろん、明確な指示はしていなくとも、その申請を黙認していた場合であっても、詐欺罪に問われることがあります。
では、企業から依頼を受けて書類の作成・提出を行っている社会保険労務士はどうでしょうか。
社会保険労務士であっても、企業から受け取った書類について、内容に虚偽があることを分かりながら、企業に修正等を求めなかったり、内容虚偽の記載があるかもしれないと薄々分かっていながら申請書類の作成・提出を行った場合には詐欺罪に問われる可能性があり、実際に逮捕された例もあります。
一口に詐欺といっても、事案の悪質性は比較的低い(軽い)ものから極めて悪質なものまで様々です。
不正受給事案にあっては、その悪質性に応じて、労働局による公表をされずに済むものから、公表にとどまらず刑事告発がされるもの、刑事手続に移行し、逮捕、起訴されるもの、起訴されたものの執行猶予にとどまるもの、起訴されて実刑となってしまうものなど、様々な処分がされる可能性がありますが、捜査機関が事案の悪質性を判断する上で考慮する事情はある程度決まっています。
まず、詐欺罪は財産犯ですので、不正受給事案にあっては受給金額(被害額)・利得の有無が最も重要なポイントになります。
財産犯の場合は、被害額が大きくても、被害者との間で示談が成立すれば寛大な処分がされることが多いですが、不正受給のように被害者が国の場合は示談ができません。
もっとも、受給金額の全額を返金していたり、労働局等に発覚する前に自主申告していたり、警察に自首しているという事情があれば、悪質性を低下させる事情として考慮され、寛大な処分がされる可能性が高くなると考えられます。
詐欺で起訴されて有罪になった場合でも、初犯であれば執行猶予が付くのが大半です。
しかし、報道をみていると、過去には詐取額が合計6000万円に及ぶ事案で、懲役4年の実刑となった例があるようです。
また、持続化給付金の不正受給事案については、各種裁判結果や弊所での同種事例の結果から、詐取額が500万円以上になると実刑の可能性が高くなるものと分析しています。
なお、弊所では、助成金の不正受給事案について、量刑傾向を含む各種情報について随時アップデートし分析を重ねておりますので、最新の情報はご相談時にお尋ねください。
既に雇用調整助成金の支給を申請しているものの、その申請に事実と異なる内容が含まれているのではないかと不安になる方もいらっしゃるかと思います。
申請をしたもののまだ助成金が振り込まれていない(支給を受けていない)場合には、雇用調整助成金の支給申請を取り下げるという方法がありえます。
雇用調整助成金の支給申請を取り下げるには、申請の取下げを労働局に申し出る必要があります。
その際、労働局に対して、申請を取り下げたい理由も申し出る必要があります(なお、申請の取下げに当たって書面の提出を求められることもあります。)。
しかし、前述のとおり、「不正受給」には、本来受けることのできない助成金の支給を受けようとする行為も含まれます。
そのため、仮に申請の取下げが認められたとしても、当初の申請行為が不正受給として扱われる可能性を否定することはできません。
このような事態を防ぐために、労働局に対して、助成金の支給申請に至った経緯や申請を取下げに至った経緯を正確に説明しておくことが重要です。
また、既に労働局による調査が行われている場合など、そもそも申請の取下げが認められないこともあります。
申請の取下げが認められないようなケースでは、次にご説明するように、事案調査を行って正確に事実関係を特定した上で労働局への対応を行っていくことが重要となります。
まだ労働局による調査は入っていないけれど、事実と異なる申請をして過大な助成金を受給してしまった(不正受給をしてしまった)、もしかしたら誤って事実と異なる申請をして過大な助成金を受給してしまったかもしれない(不正受給だったかもしれない)などのご不安を抱えている方もいらっしゃるかと思います。
そのような場合には、まずは申請書の記載内容が事実と異なっているかどうかを早期に精査し、事実関係を明らかにする必要があります。
また、申請書の記載内容が事実と異なる場合には、そのような記載内容となったのが故意によるものなのか(不正受給なのか)、過失によるものなのか(不正受給ではないのか)を特定する必要があります。
その上で、不正受給であると判断される場合には、自主的に労働局に不正受給である旨の申告を行い、助成金の返還を行ったことに加え、自主的に申告を行ったことを有利な事情として斟酌してもらうことが重要です。
他方で、不正受給ではないと判断される場合にも、自主的に労働局に申告を行い、過誤受給をしてしまった助成金を返還することが有用です。
この点、故意なのか過失なのかは、不正受給かどうかを分ける重要な概念でありますが、正確な事実関係を前提とした法的判断が必要になる事柄ですので、弁護士に事案調査・法的評価を依頼することが有用です。
(参考)
不正受給の事案の中には、知人やSNSで知り合った人(以下「指南役」といいます。)から「誰でも助成金がもらえる」「弁護士や社会保険労務士がいるから安全・合法」「不安になったら取り下げもできる」などと言われ、だまされて不正受給をしてしまうなどのケースもあります。
このようなケースでは、指南役から、事前や事後に多額の手数料の支払いを求められることが往々にしてあります。
このように不正受給であることをよく分からないまま申請してしまった場合や被害者的な側面がある場合には、労働局により寛大な措置がなされる余地がありうると考えられます。
指南役から誘われて不正受給をしてしまったというケースにおいては、事案調査によって正確に事実関係を明らかにした上で、指南役から誘われたことや指南役に多額の手数料を支払ったことを根拠づける資料(指南役とのメール・LINE履歴、通話履歴等)と共に労働局に申告することが有効でしょう。
弊所でも、指南役から誘われて不正受給をしようとした事案において、早急に事案調査を行い、根拠資料と共に労働局に事情を申告したことにより、不正受給ではあるものの公表・刑事告発を避けることができたという事案があります。
弊所では、「労働局の調査が入ることになった」「どう対応すればよいかわからない」とお困りの方から多くのご相談をいただいております。
ほとんどの方は、労働局の調査を受けること自体が初めてのご経験でしょうし、不正受給と判断された場合には、種々の不利益を受ける可能性がありますから、大きな不安を抱えてご相談にいらっしゃいます。
労働局による調査を受けることは、企業にとっての危機であり、眠れない日々を過ごしている事業主の方々もたくさんいらっしゃいます。
弊所では、企業危機管理の観点から、いかに企業が受けるダメージを最小限に止めるかという観点からアドバイスを行っております。
前述のとおり、労働局の調査を拒絶することは雇用保険法違反になる可能性がありますので、労働局の調査に対しては、少なくとも誠実に対応することが必要になります(会計検査院による調査についても同様です。)。
他方で、労働局は、不正受給であることの疑いを持って調査を行いますので、主張するべきことがあればしっかりと主張していくことも必要です。
具体的には、不正受給に該当しない事情がある場合には、その事情と根拠をしっかりと労働局に主張する必要があります。また、仮に不正受給に該当する場合であっても、不正受給に該当する範囲(全部なのか一部にとどまるのか)や、不正受給に至った動機や背景事情などの有利な事情を主張する必要もあります。
しかし、事業主の方は、「不正受給をしてしまった」「不正受給かもしれない」という負い目や不安がありますし、行政調査や雇用調整助成金に関する専門的知識をお持ちでないのが通常ですから、労働局に対して、正確に事情を伝えることは容易ではありません。
弊所では、このような事業主の方々のために、事案調査によって事実関係を明らかにした上で、その事実関係を前提として今後のリスクを予想し、事業主の方々が受けるダメージを最小限に止めるための対応策をご提案しています。
また、弊所では、事業主の方々の代理人として、労働局の担当者と直接やりとりしたり、労働局による実地調査に立ち会ったり、労働局による申立書の作成に立ち会ったり、労働局に対して調査報告書・意見書を提出するなどの対応を行っています。
労働局の調査が実施されている事案の中には、架空の従業員を雇い入れて休業させたことにし、多額の雇用調整助成金を不正に受給してそれを私的に費消したなどといった事案のように「雇用の安定」という趣旨に真っ向から反するような事案もあります。
そのような事案では、労働局による調査が入っている場合はもちろんのこと、労働局の調査がまだ入っていない場合でも、今後、不正受給が発覚して詐欺罪により刑事告発されるリスクも大きいものと考えられ、予め刑事手続に移行した後のことも考えておく必要があります。
弊所では、児童ポルノ・持続化給付金の案件で捜査機関への自首同行サービスをご提供していますが、その考え方は、雇用調整助成金にも当てはまるものと考えています。
「自首」とは、犯人が捜査機関に自発的に自己の犯罪事実を申告し、その訴追を含む処分を求めることを指します。
捜査機関は、逮捕状の請求や勾留の請求をするとき、裁判所に対して、「罪証隠滅のおそれ」「逃亡のおそれ」があることを疎明しなければなりません。
自首は、罪証隠滅や逃亡の意思がないことを示す行動ですから、自首していることは、逮捕・勾留されるかどうかという段階において、被疑者に有利に働く事情といえます。
また、刑法第42条第1項は、「自首したときは、その刑を減軽することができる。」と規定しています。
そのため、もし起訴をされて裁判を受けることになってしまった場合でも、自首をしていることは、刑を決める上で有利に働くことになります。
詳しくはこちらをご覧ください。
前述のとおり、雇用調整助成金を不正受給した場合には、申請担当者を実行行為者とする詐欺罪に問われる可能性があります。
また、経営陣や社会保険労務士についても、不正受給であることを知っていた場合(黙認していた場合を含む。)には、詐欺罪の共謀共同正犯に問われる可能性があります。
そして、雇用調整助成金の不正受給については、持続化給付金とは異なって、その被害金額も多額となる傾向があり、厳しい刑事処分が行われるリスクがあります。
そのため、既に刑事告発されて刑事事件となってしまっている場合には、速やかに弁護士に相談して今後の対応方針を決めていく必要があります。
既に刑事告発されてお困りの方、刑事告発されるのではないかと不安の方は、弊所までご相談ください。
上原総合法律事務所では、雇用調整助成金の不正受給案件に力を入れており、全国どこからのご相談でもお受けしています。
雇用調整助成金の不正受給案件でご相談をなさる方は、どうしてよいのかわからず、不安なので相談をしたいと思っていることでしょう。
上原総合法律事務所は、ご相談者のご不安をできるだけ早く解消するため、なるべく即日、遅くとも翌日と、迅速にご相談をお受けすることを心がけています。
上原総合法律事務所では不正受給事案のご相談を多数お受けしておりますので、豊富な対応ノウハウがございます。
個別の事情を伺い、適切な対応をご案内いたします。
また、上原総合法律事務所は、会計事務所及び社会保険労務士事務所を併設しています。
ワンストップサービスとして、法律事務所のみではできないアドバイスを提供することも可能です。
100件を超える事業主様からの問い合わせをいただいております。
雇用調整助成金の不正受給でお困りの方は、お気軽に弊所までお問い合わせください。
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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。
上原総合法律事務所にご相談いただく際の流れはこちらの記事をご参照ください。
「労働局の対応をどうしたらいいか分からない」
「会計検査院の対応をどうしたらいいか分からない」
「警察が来てしまった場合」
雇用調整助成金の不正受給・詐欺に関して以上のようなお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
有料相談(60分) 25,000円(税込)
⑴着手金:助成金申請額に応じる
・申請額1000万円未満・・・770,000円(税込)
・1000万円以上2000万円未満・・・申請額1000万円未満に事案調査費用110,000円追加(税込)
※ 以下同様に1000万円増えるごとに事案調査費用110,000円追加(税込)
⑵成功報酬
公表及び刑事告発を避けられた場合 770,000円(税込)
刑事告発を避けられた場合 550,000円(税込)
※刑事告発を避けられた場合とは,会社役員・従業員の刑事告発を避けられた場合を指します
※不正受給に該当しないとの判断となり追加の納付命令(加重金)等が避けられた場合の成功報酬については,ご相談時に個別にご案内いたします
顧問契約締結(月額10万円以上のプラン)の場合,成功報酬から220,000円減額。
雇用調整助成金不正受給の解決事例(多額の不正受給につき返還のみで解決)
お客様の声2021年3月度_4(雇用調整助成金労働局等対応)
お客様の声2021年3月度_3(雇用調整助成金労働局等対応)
お客様の声2020年12月度_4(雇用調整助成金労働局等対応)
2021年4月3日(土)代表弁護士上原が雇用調整助成金詐欺についてNHKスペシャルに取り上げられました
労働局などからの調査対応の詳細についてはこちらをご覧ください
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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