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強制わいせつについて元検事の弁護士が解説

 強制わいせつをして捕まってしまった方、家族が強制わいせつで捕まってしまった方、強制わいせつをしていないのに捕まってしまった方。皆さん、突然のことで何が起こっているのか、この先どうすれば良いのか、今後どうなっていくのか等、とても不安な気持ちを抱えていると思います。

 以下、強制わいせつとは何か、強制わいせつで逮捕された場合の流れやそれに伴う弁護活動、そして元検事の集団である当事務所にできることなどを説明していきます。

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強制わいせつの罪とは

 強制わいせつとは、13歳以上の男女に対しては暴行又は脅迫をしてわいせつな行為をした場合を、13歳未満の男女に対しては暴行又は脅迫をしなくてもわいせつな行為をした場合を言います。13歳未満の男女に対しては、本人の承諾を得て行ったとしても強制わいせつが成立します。

 強制わいせつの法定刑は「6月以上10年以下の懲役」です(強制わいせつの時効は7年です)。

 強制わいせつに至らない痴漢行為は、各都道府県の条例違反で処罰されることがあります。(詳しくは、「痴漢」をご覧ください)

強制わいせつの弁護活動(強制わいせつで捕まったらどうすればいいのか)

逮捕・勾留される割合

 強制わいせつで逮捕・勾留される割合はどれくらいでしょうか。

 令和3年版犯罪白書(以下、出典同じ。)によると、強制わいせつの場合、警察に発覚した事件のうち、約56%が逮捕されます。

 逮捕された方のうち、約1%は検察庁に送致する前に釈放されます。これを送致前釈放と言いますが、この場合は、逮捕されてから48時間以内に身柄が解放されます。

 上記のように送致前釈放されずに身体拘束されたまま検察庁に送致されると、警察から事件を受け取った検察官は、被疑者の勾留請求をするか否かを判断します。この判断は、犯行を認めているか、家族など身元引受人がいるか等が考慮されます。検察官はこれらを考慮しますが、約98%について勾留請求がなされます。

 その後、裁判官は、検察官の勾留請求を受けて、被疑者を勾留する必要があるかどうかを判断します。勾留請求された事件のうち、約94%について勾留が決定され、10日間の身体拘束がなされます。

 つまり、強制わいせつで逮捕された人のうち、逮捕から3日以内に身柄が解放されることになるのは約8%となります。

早期の身柄解放のためにすべきこと

 以上のように、強制わいせつで逮捕をされると、勾留は長期間に及ぶ可能性が高くなっています。

 しかし、強制わいせつであったとしても、弁護士が検察官や裁判官に対して勾留しないよう働きかけをすることによって早期に釈放をしてもらえる可能性があります。

 具体的には、罪を認めて反省や謝罪の意思を伝えること、被害者に対して謝罪や示談を行うこと、身元引受人を用意することなどが挙げられます。

1 上申書・身元引受書を作成する

 検察官や裁判官は、証拠隠滅の恐れや逃亡の恐れがあるときは身柄拘束を続けるべきだと考えます。そのため、「罪を認めて謝罪・弁償をする」と伝えるに際しては、事件について可能な限り詳細に記載した上申書を弁護士とともに作成することが有益です。詳細に事件について伝え、証拠隠滅の余地をなくすとともに、証拠隠滅するつもりがないことを伝えることができます。

 検察官が勾留請求するかどうかの判断をする前や裁判官が勾留するかどうかの判断をする前に上申書を提出できれば、検察官や裁判官が上申書を考慮して判断をしてくれるため、釈放される可能性が高まります。そのため、できるだけ早く手を打つ必要があります。

 また、身元引受人の用意も大切です。検察官や裁判官は、釈放後に誰も監督してくれない場合に比べると、家族や職場の人が監督してくれる場合の方が釈放しやすいと考えます。

 そのため、上申書の提出に際して、身元引受書も併せて提出します。

2 被害者への謝罪や示談交渉を行う

 被害者への謝罪や示談交渉もとても重要な考慮要素になります。

 示談交渉は、捜査機関を経由して被害者の氏名や連絡先をお聞きするところから始まりますが、性犯罪の被害者は精神的被害が大きく、被疑者やその家族等に連絡先は知られたくないし話もしたくないという方がほとんどです。そのような場合でも、連絡先を「弁護士限り(被疑者やその家族には伝えない)」という約束のもとで弁護士に教えてくれることが多くあります。

 そのため,謝罪や示談交渉は、弁護士を介して行います。

 示談をするためには、被害者に対して誠実に行動することが何よりも大切です。

 被害者は、被害に遭った精神的被害に加え「被害に遭ったけれど、この後どうなるのだろうか。」「警察に被害を届けてしまったけど、犯人から報復されないだろうか。」など不安を抱えていますし、示談や謝罪は遅れれば遅れるほど不信感が募っていき、示談交渉が困難になることもあります。

 そのため、できる限り早く弁護士を介して被害者に連絡を取り、謝罪の意思を伝えたり、示談交渉に向けて行動することをおすすめします。

 示談についての詳細は、「示談について」をご覧ください。

3 準抗告を行う

 仮に勾留が認められてしまった場合は、その決定に対して異議申立て(準抗告と言います。)を行い、準抗告が認められれば釈放してもらえます。準抗告をしても勾留が認められてしまった場合、10日間は警察の留置所から出られない状態になってしまいます。

 逮捕・勾留された場合に、会社等を欠勤して捕まったことが会社等に知られるのを防ぎたい、として、一刻も早い身柄の解放を望まれる方が多くいらっしゃいます。強制わいせつは勾留がなされることが多い罪名ですが、罪を認めて、被害者への謝罪や慰謝料等を支払う意思があることを弁護士経由で警察に伝えるなどすることで早期に身柄が解放される場合があります。これは、早ければ早いほど釈放される可能性が高まるため、できるだけ早く手を打つ必要があります。

 釈放についての詳細は、「釈放、保釈してほしい」をご覧ください。

不起訴などのより軽い処分のために

 強制わいせつは、前科がなく、被害者との示談が成立している場合、不起訴処分を獲得できることがあります。

 不起訴にならずに起訴されてしまった場合、強制わいせつ罪は罰金刑がないため、確実に懲役刑となります。そのため、実刑を避けて執行猶予を獲得することが目標となります。

 令和2年における「わいせつ等」の罪(強制わいせつのみではなく、公然わいせつ等を含む。)に関して、以下のような統計が出ています。

 公判請求され、令和2年に第一審が終結した事件1369件のうち、

    約55%が全部執行猶予判決

 となっています。

 前科があるかどうか、反省したり再犯防止の環境が整っているのか、示談ができているかなど、個別の事情で判断されますが、公判請求されたうちの半数以上は執行猶予判決となります。

 以上のように、不起訴や執行猶予を獲得するためや早期の身柄の解放のために、被害者との示談を成立させることはとても重要となります。示談成立のためには、逮捕当初から被害者に対して誠意を示すことが大切です。

自首について

 罪を犯してしまった方の中には、まだ警察から連絡が来ていなかったり逮捕されていない場合でも、「後悔している」「夜も眠れない」「いつか逮捕されるのだろうか」「逮捕されたらどうしたらいいのか」と不安な気持ちを抱えている方も多いです。

 このような方には、被害者が分かっていれば弁護士を通じて示談交渉したり、警察に自首や出頭することを強くお勧めします。

 強制わいせつのように被害者に大きな被害を生じさせてしまった事件は、何もしないで放っていると逮捕される可能性が高いです。ですが、自首をすれば逮捕を避けられる可能性もありますし、逮捕されたとしても自首したことを考慮して裁判官が勾留しないでくれる可能性が出てきます。

 さらには、自首をすることによって、起訴されたとしても、執行猶予がつく可能性が上がります。被害者にも反省していることを分かりやすく示すことができ、示談が成立する可能性が高くなります。

 自首についての詳細は「自首を考えている」をご覧ください。

 上原総合法律事務所では、自首のサポートを行っております。

 自首に行く前に警察にどのようなことを話すのかを弁護士と打ち合わせを行い、弁護士同行の上で自首することをお勧めします。自首すべきか迷っている方、どのように自首をしたらいいのかお困りの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。詳しくは「自首サポートの内容について」をご覧ください。

無実の場合(冤罪による刑罰を避けるために)

 強制わいせつをしていないのに容疑がかけられている場合、冤罪により刑罰を受けないように、不起訴や無罪を求めて徹底的に戦う必要があります。

 具体的には、証拠を収集したり、取調べに対する対応準備などを行っていきます。

 強制わいせつなどの性犯罪の事件では、被害者による犯人の特定が誤りである可能性や、被害者が嘘を言っていて被害自体がなかったという可能性もあります。そのため、弁護士が、無罪を勝ち取るための証拠を探します。

 また、取調べ対応についても、弁護士としっかり打ち合わせをする必要があります。「自分はやっていないのだから正直に話をしていれば大丈夫だ」と考えてしまうのは危険です。取調べにおいてどのように話をし、どのような調書が作成されるのかによっては、本当は強制わいせつをしていなくても有罪判決を受けてしまうことがあります。

 冤罪により刑罰を受けないようにするための手段は事案によって大きく異なるため、個別のご相談が必要です。

無罪の場合にどのように対処すべきかについては、詳しくは「無実の罪についての弁護士上原幹男の思い」「無実の証明をしたい」をご覧ください。

ご相談は上原総合法律事務所へ

上原総合法律事務所では、元検察官(いわゆるヤメ検)の経験を活かし、それぞれの事案に即して、自首、示談交渉、早期の身柄解放などの弁護活動に加え、逮捕勾留中の勤務先への対応など、刑事事件に伴う困りごとへのアドバイスも行います。

上原総合法律事務所は、迅速にご相談をお受けできる体制を整えています。お電話又はメールフォームからお問い合わせいただけますしLINEからもお問い合わせいただけます。まずはお気軽にご連絡ください。

弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

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