刑事事件で示談する方法を元検事の弁護士が解説
刑事事件の多くでは、示談が成立すれば処分が軽くなります。
起訴前の事件では不起訴が期待できますし、起訴後に示談ができた場合、執行猶予が期待できます。
そのため、刑事事件を起こした人にとって、示談できるかどうかは極めて重要です。
示談の方法や示談書の具体的内容は事案によって様々ですが、基本は共通します。
この事件では、刑事事件を熟知している元検事の弁護士が、刑事事件を犯した加害者側の視点で、どうしたら示談できるのかを説明します。
なお、犯罪をしていないけれども疑われていて示談を検討している方もいるかと思います。
犯罪をしていないけれども示談した方が良いのかどうかについて、示談する際の注意点についてはこちらをご覧ください。
示談に関するよくある質問(FAQ)はこちらをご参照ください。
目次
1 示談とは何か
示談とは、当事者間で話し合った結果、示談書記載の内容・条件で合意する手続です。
当事者間の合意ですので、違法でない限り、どのような内容にするかは自由です。
多くの場合は、加害者が謝罪してお金(示談金)を支払うこと、被害者が加害者を許すこと、今後その事件に関しては示談書記載のこと以外の請求をしないこと、の3点を中心として、今後互いに接触しないなど、事件ごとに約束の内容を加えて示談書を作ります。
2 刑事事件において示談の有効性
被害者のいる刑事事件では、被害者が警察に被害申告する前に示談できれば被害申告自体を避けることができます。
また、被害申告された後であっても、起訴前であれば、多くの場合、示談できれば不起訴になります。
起訴された後の段階でも、裁判所は刑の重さを決める上で示談できたことを考慮してくれます。
そのため、刑事事件においては、示談できる可能性があるのであれば、できる限りの事をして示談することがとても大切です。
3 示談するための流れ
⑴ 被害者の連絡先を調べる
示談交渉をするためには相手方と話し合う必要がありますが、相手方の連絡先がわからないことがあります。
そのような場合、何らかの方法で相手方の連絡先を調べる必要があります。
まだ被害申告がなされていない段階であれば、連絡先を知っていそうな人などに聞いて調べます。
被害申告後や起訴後は、警察もしくは検察に連絡し、被害者の連絡先を尋ねます。
連絡先を尋ねられた警察官や検察官は被害者に連絡を取り、「連絡先を教えても良いか」と確認し、了解が得られた時に連絡先を教えてくれます。
なお、警察官や検察官はトラブル防止のため、加害者本人やその家族には被害者の連絡先を教えないことが多いです。
しかし、弁護士が「加害者本人には伝えないので、弁護士限りで連絡先を教えてください。」などという形で聞けば、被害者に確認の連絡をとってくれます。
⑵ 被害者と話し合いをする
連絡先を知ることができたら、弁護士が相手方とお話をします。
その際、加害者の思っている反省を的確に伝えるため、謝罪文を書くことが一般的です。
謝罪文については、加害者本人に書いてもらいますが、本人が真剣に反省して書いたものでも、相手方の視点で見ると不快なことが書かれている場合もあるため、事前に弁護士が確認し、必要に応じて修正すべきです。
なお、加害者に代わって弁護士が謝罪文を書くと、加害者本人の言葉ではないため、どうしてもリアリティに欠けるものになる危険があります。
加害者自身が書くことをお勧めします(上原総合法律事務所では、弁護士による謝罪文作成はしません)。
⑶交渉を成立させ、書面にする
被害者と会うことができ、示談に応じてもらえるということであれば、最後に書面を作成します。
この書面には、刑事事件について被害申告しないこと(被害届を取り下げること)や被害を許すことなど、事件を起こしてしまった方が有利になるような言葉を書く必要があります。
どのような言葉を書くかは、被害者の意思によるため、交渉に際して相手方の希望を丁寧に聞き、こちらの希望と被害者の希望が両立するような言葉を選ぶことが大切になります。
4 示談するために注意すべきこと
⑴ 誠意を示す
加害者側から示談を持ちかける時は、何より、誠意が大切です。
誠意を示すために大切なのは、被害者の立場を想像し、尊重することです。
加害者側からすれば、示談をすることにより刑事事件の処分が軽くなるというメリットがあります。
そのため、加害者は、なんとしても示談がしたい、と考えます。
この「なんとしても、一刻も早く示談がしたい」という気持ちが前に出ると、被害者の立場や気持ちを無視して示談を求めることになりかねません。
誠実に対応するためには、まずは謝罪をするとともに被害者の気持ちを聞くことが必要です。
被害回復(弁償・示談金)の話は、被害者の気持ちを受け取った後になければいけません。
場合によっては、初回の面談ではお話を聞いて心を開いてもらうことに集中すべきで、お金の話を一切出してはいけないこともあります。
どのようにすべきかは、被害者が何を望んでいるか次第です。
もしかしたら、被害者も被害者になることに慣れているわけではありませんので、自分が何を望んでいるのかわかっていないこともあります。
そのため、被害者が何を望んでいるかをお聞きするだけではなく、察する必要があります。
察するために被害者の立場に立って考え抜くことは、誠意の一部であると考えられます。
被害者側に一度でも「処分を軽くしたいから謝っているのだろう。」と思われてしまえば、示談できる事件も示談できなくなってしまいます。
的確に誠意を示す必要があります。
⑵ 相手方への接触は早ければ早いほど良い
被害者側は、「被害にあったけれども加害者側はちゃんと対応してくれるのだろうか。」と不安に思っています。
そのため、少しでも早く被害者側に連絡することが大切です。
すぐにお会いすることが難しいこともありますが、連絡だけでも、可能な限り早くする必要があります。
⑶ 事態を悪化させないように注意する
事件を起こしてしまった場合、加害者側は、どうにかして示談をしたいと思います。
しかし、この時に、被害者の気持ちを無視してはいけません。
例えば、被害者の家に押しかけることが迷惑であることはいうまでもないかと思います。
また、被害者が家族に事件のことを秘密にしているかもしれませんので、電話のかけ方や時間帯も工夫する必要があります。
被害者と共通の知人を使って示談しようとしたところ、知人が被害者に強い言葉を言ったために、被害者が脅迫されたと感じてしまうこともあります。
この場合、被害者が、知人ではなく加害者に脅されたと受け取ってしまう可能性もあります。
このようなことが起きると、適切に行動すれば示談できていた事案でも、示談が難しくなってしまうことがあります。
5 お気軽にご相談ください
上原総合法律事務所は、元検事8名(令和6年12月10日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
所属の元検事弁護士全員が刑事事件について熟知しており、独自のノウハウにより、「罪を犯してしまったが示談等して事件をなるべく穏便に解決させて再出発したい」「罪を犯していないので冤罪を受けないようにしたい」といった方々の弁護をしています。
たくさんの事件を不起訴や執行猶予に導いています。
お悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。
弁護士費用一例
【傷害・不同意性交等の事件で、示談成立により不起訴】
着手金:55万円
成功報酬(不起訴・立件なし):66万円
日当(出張1回):3万3000円
※費用は一例です。弁護士費用は具体的な事案によって異なることがありますので、法律相談時にお問い合わせください。
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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。
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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。