わいせつ動画販売で逮捕を避けるには?わいせつ物頒布等罪の刑罰や対策を元検事の弁護士が解説

[投稿日]2021.12.13
[更新日]
弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。捜査・公判の両面で多数の刑事事件 を担当。検事退官後、都内法律事務所を経て個人事務所を開設。2021年に弁護士法人化し、新宿・ 横浜・立川に展開。元検事(ヤメ検)として、捜査機関の思考・動き方を熟知した立場から、逮捕前 の対応・示談交渉・公判弁護まで一貫してサポートしている。

インターネット上でわいせつ動画を販売していた人が「わいせつ電磁的記録等送信頒布罪」で逮捕されたなどといった報道が散見されます。

海外の動画販売サイトやコンテンツ販売サービスを利用していたとしても、日本国内の利用者に向けて販売を行っていれば、日本の刑法に基づいて摘発されるおそれがあります。

そこで、以下では、わいせつ電磁的記録等送信頒布罪・わいせつ物頒布罪などとして処罰される行為の内容やその刑罰、海外のサイトやサーバを介していた場合でも処罰されるのか、逮捕を回避するために採り得る策などについて、元検事(ヤメ検)の弁護士が詳しく解説していきます。

※本記事は、わいせつ電磁的記録等に該当し、そもそも頒布等が犯罪となるケースを念頭に解説しています。これらには該当しない動画等であってもAV新法の規制対象となる場合はあり、詳しくはAV新法とは?主要な規制や罰則規定、及び契約解除や逮捕の可能性等について元検事の弁護士が解説の記事をご参照ください。

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わいせつ物頒布等罪

刑法175条1項は

わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の拘禁刑若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は拘禁刑及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。

と定めています。

上述のわいせつ電磁的記録等送信頒布罪は、この刑法175条1項の後段(2文目)に該当します。

わいせつ電磁的記録等送信頒布罪における「頒布」とは

刑法175条1項後段の「わいせつ電磁的記録等送信頒布罪」について解説します。

「わいせつな電磁的記録その他の記録」とは、例えば、わいせつな画像や動画のデータのことです。

そして、「頒布」とは、「不特定又は多数の者の記録媒体上に電磁的記録その他の記録を存在するに至らしめること」をいうとされています。

この「不特定又は多数の者の記録媒体上」というのは、例えば、不特定又は多数の者のパソコン(のHDD)や外付けSSD等のことです。

また、「電磁的記録その他の記録を存在するに至らしめること」というのは、例えば、わいせつな画像や動画のデータをダウンロードさせることです。

つまり、わいせつな画像や動画のデータをインターネット等で不特定又は多数の人に販売してダウンロードさせた場合、売り手に「わいせつ電磁的記録等送信頒布罪」が成立します。

そのほかに頒布等で処罰される行為

上記のわいせつ電磁的記録等送信頒布罪のほか、上述の刑法175条1項の前段(1文目)では、

  • わいせつな文書
  • わいせつな図画
  • わいせつな電磁的記録に係る記録媒体
    ※上記のわいせつ電磁的記録等送信頒布罪は、わいせつな電磁的記録(データ)を送信することを処罰する罪でしたが、ここでいう「わいせつな電磁的記録に係る記録媒体」とは、わいせつな電磁的記録(データ)自体ではなく、そのわいせつなデータが保存されたUSBメモリやDVD等の記録媒体のことを指します。
  • わいせつなその他の物
    ※「その他の物」には、例えば彫刻等が該当します。
    のいずれかについて
  • 頒布(不特定又は多数の人に対して交付・譲渡すること)
  • 公然と陳列(不特定又は多数の人がその内容を認識できる状態に置くこと)
    のいずれかの行為をした者についても、同様に処罰すると定めています。

その罪名は、客体と行為に応じて、

「わいせつ文書頒布罪」
「わいせつ文書陳列罪」
「わいせつ図画頒布罪」
「わいせつ図画陳列罪」
「わいせつ電磁的記録記録媒体頒布罪」
「わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪」
「わいせつ物頒布罪」
「わいせつ物陳列罪」

に細分化されます。

「わいせつな電磁的記録に係る記録媒体」(わいせつ電磁的記録記録媒体)の「公然陳列」

“わいせつな電磁的記録に係る記録媒体の公然陳列(わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪)”がイメージしにくいかと思いますが、例えば、わいせつ動画のデータをインターネットサイト上にアップロードして、そのサイトのサーバー(サーバコンピュータ)のHDD上に保存し、これを不特定多数の者が見られるようにするという行為は、わいせつな電磁的記録に係る記録媒体(である“サーバコンピュータのHDD”)を公然と陳列する(不特定又は多数の人がその内容=わいせつ動画を認識できる状態に置く)行為に該当します。

有償頒布目的での所持・保管として処罰される行為

さらに、刑法175条2項は

有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

と定め、有償頒布の目的で「わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物」を所持した者や、有償頒布の目的で「わいせつな電磁的記録」を保管した者についても、同様に処罰すると定めています。

その罪名も、客体に応じて、

「わいせつ文書有償頒布目的所持」
「わいせつ図画有償頒布目的所持」
「わいせつ電磁的記録媒体有償頒布目的所持」
「わいせつ物有償頒布目的所持」
「わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管」

に細分化されます。

そもそも「わいせつ」とは?

なお、どのような動画等が「わいせつ」な物に該当するのかについては、最高裁判例において、

いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう

とされています。

この定義は、具体的に何がわいせつであり何がわいせつではない、と一義的に線引きができるようなものではありません。

何がわいせつかは、時代と社会によって変わり得る相対的・流動的な概念であり、一般社会における良識、すなわち社会通念に従って、裁判所が判断すべき事柄であるとされています。

したがって、どのような物が「わいせつ」に当たるかを一概に述べることは困難ですが、モザイク等を付すことなく性器が露骨に記録されているような動画等は、「わいせつ」であるとされる可能性が高いでしょう。

※モザイク等の施されたいわゆるAVについても、AV新法の規制対象とはなりえます。詳しくはAV新法とは?主要な規制や罰則規定、及び契約解除や逮捕の可能性等について元検事の弁護士が解説の記事をご参照ください。

犯罪に該当しないケース

なお、前述のとおり、わいせつ動画に関して刑法上犯罪と定められているのは、

  • 記録媒体の頒布
  • 記録媒体の公然陳列
  • 電気通信の送信による電磁的記録の頒布
  • 有償頒布目的での記録媒体の所持
  • 有償頒布目的での電磁的記録の保管

等のみですから、わいせつ動画を撮影したり購入したりしただけでは犯罪となりません(ただし、当該動画が児童ポルノに該当する、撮影について同意がないなどの場合には、他の法律に抵触します)。

 ※ 児童ポルノについては児童ポルノについて元検事の弁護士が解説の記事もご参照ください。
 ※ 性的姿態等撮影罪については撮影罪(性的姿態撮影罪)とは何かの記事もご参照ください。

外国にあるサーバーを利用した場合でも日本で処罰される

データをアップロードしたサーバー(サーバコンピュータ)が外国にある場合にも、わいせつ電磁的記録等送信頒布罪が成立するかどうかについては、刑法1条が関係します。

結論としては、サーバーが外国にあってもわいせつ電磁的記録等送信頒布罪等が成立し得ます。

刑法1条1項は「この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。」と規定しています(このように“犯人の国籍を問わず、日本国内で罪を犯した人には、日本の刑法を適用する”という考えを「属地主義」といいます)。

ここにいう「日本国内において罪を犯した」とは、犯罪を構成する事実の全部又は一部が日本国内で生じたことをいい、

日本国内で行為が行われたが、海外で結果が生じた
海外で行為が行われたが、日本国内で結果が生じた

といういずれの場合であっても、「日本国内において罪を犯した」に該当し、日本の刑法が適用される(日本の刑法で処罰される)こととなります。

わいせつ電磁的記録等送信頒布罪についていえば、たとえ海外のサイトを通じて(外国にあるサーバコンピュータにデータをアップロードして)わいせつな動画等を販売したとしても、日本国内に存在する記録媒体(買い手のHDD等)に当該動画等をダウンロードさせたのであれば、「頒布」が日本国内で生じていることになり、刑法1条により日本の刑法で処罰されることになるのです。

なお、平成23年に刑法が改正されるまでは、刑法175条1項後段の規定(「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。」)がありませんでした(わいせつ電磁的記録等送信頒布罪が存在しませんでした)。

そのため、同改正までは、同様の行為について、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪、すなわち、前述のとおり“わいせつな動画等を記録したサーバコンピュータのHDDについて、不特定多数の人がその内容たる当該動画を認識できる状態に置いた”として処罰できないかが検討されていたのですが、その適用に当たっては、わいせつ動画等が記録されたサーバコンピュータが海外にある場合、日本国内でアップロード行為を行った(日本国内からアップロードした)と立証できなければ、「日本国内において罪を犯した」ということができず、立件のハードルが高かったのです。
しかしながら、現在は、前述のとおりわいせつ電磁的記録等送信頒布罪の規定が置かれるに至りましたので、“サーバー(サーバコンピュータ)が国外にあるため立件が難しい”(処罰されない)といったことは考え難くなったといえます。

逮捕される可能性

昨今、インターネット上のわいせつ動画等に対する取締りは強化されています。

インターネット上のわいせつ動画等は、かねてから、健全な性秩序・性的風俗を乱す、見たくない人の自由を害する、青少年の心身の健全な育成を阻害するなどといったことが指摘されてきたほか、近時は、そうした点のみならず、児童ポルノやいわゆるAV出演強要など、さまざまな観点からも社会問題化しており、今後規制が更に強化されることはあっても緩和されることになるとは考え難いところです。

そして、わいせつ電磁的記録等送信頒布罪は、捜査の対象となれば逮捕される可能性のある犯罪です。
特に、送信頒布を常習的に繰り返しているような場合やかなりの収益を挙げているような場合には、逮捕される可能性が高くなります。
時効が成立するまでは、いつ逮捕されてもおかしくないと考えておくべきです。

逮捕や起訴、実刑を回避するために取り得る策

証拠の破壊はすべきでない

ご相談の中で「証拠となるパソコンなどを破壊したほうが良いのか。」といった質問を頂くことがあります。
ですが、証拠となり得る物を破壊することはお勧めできません。
そもそも上原総合法律事務所の弁護士が証拠隠滅を勧めることはありませんが、そうした点をひとまず措いても、別の問題があるからです。
すなわち、逮捕や処罰を免れたいと思ってわいせつ電磁的記録等送信頒布罪の証拠となり得る物を破壊したとしても、それがむしろ不利に働く可能性があります。

というのも、インターネット上で行われた犯罪に関して、捜査機関は、サーバコンピュータの管理会社や通信会社から情報を入手するなどの捜査が可能であるため、被疑者に知られることなく水面下で証拠を収集することができるのです。
そのため、捜査機関に水面下で十分な証拠を入手されてしまっていれば、仮に手元のパソコン等を破壊したとしても、逮捕や処罰を免れられることにはなりません。
逆に、捜査機関があらかじめ収集した証拠で逮捕された後に「パソコンなどを壊して証拠隠滅をしていた」と発覚することで、釈放されにくくなったり、情状が悪化したりする可能性があります。

では、どうすれば良いのでしょうか。

自首のメリット

上原総合法律事務所は、わいせつ動画等をインターネット上で販売してわいせつ電磁的記録等送信頒布罪を犯してしまった(又はその可能性がある)場合、上申書を作成した上で、手元に存在する証拠を持参して、警察に自首することが有益であると考えます。

※ 自首とは何か、については自首したいの記事をご覧ください。

自首することで、まず、身柄拘束(逮捕・勾留)の可能性が下がります。
手元に存在する証拠を持参して自首することで、反省していることを示すとともに、証拠隠滅したり逃亡したりするおそれがないことを捜査機関に認識してもらうことができます。
証拠隠滅したり逃亡したりするおそれがある場合に身柄拘束がされるため、証拠隠滅したり逃亡したりするおそれがないと認識してもらえれば、身柄拘束を避けられる可能性が高まります。

また、身柄拘束は捜査機関が裁判所から令状の発付を受けることにより行われるところ、自首することで、仮に捜査機関には身柄拘束する必要があると考えられたとしても、裁判所の方で身柄拘束の必要がないと判断してもらえる可能性も高まります。裁判所が身柄拘束の必要がないと考えて令状を発付しなければ、身柄拘束は避けられます。

また、自首することで、情状が良くなります。
反省して自首していれば、検察官や裁判所は、そのことを処分や判決の際に考慮してくれます。
そのため、自首すれば、起訴猶予処分や執行猶予判決など、より有利な処分や判決が期待できます。
さらに、自首する場合には、あらかじめなぜ犯行に及んだのかなどの詳細をわかりやすく記載した上申書を準備できるため、有利な情状も含めて捜査機関に理解してもらうことも可能です。

法律上の自首に該当するためには、犯罪や犯人が捜査機関に発覚する前の段階であることが必要ですが、仮に捜査機関において把握しているという状況であっても、自ら出頭して証拠を提出するなどしたという点は、事実上先に述べたような効果があり得るところであり、既に捜査機関に発覚はしているという場合であっても、やはり有効であると考えられます。

※不起訴(起訴猶予)の獲得については起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや前科・前歴との関係、起訴猶予処分獲得のポイントについて解説の記事もご参照ください。

※執行猶予の獲得については執行猶予を獲得するには?元検事の弁護士が執行猶予となるための弁護活動や条件について解説の記事もご参照ください。

わいせつ動画販売(わいせつ電磁的記録等送信頒布罪等)について弁護士に相談するメリット

わいせつ電磁的記録等送信頒布罪は、直接の被害者がいるわけではなく、酌量すべき(被疑者・被告人にとって有利な)事情を想定しにくい犯罪であることもあってか、立件・送致された場合は起訴されることが多い犯罪です。
もっとも、例えば、少数の動画を短期間だけサイトにアップしていたにすぎないとか、送信頒布を繰り返していた業者の末端従業員として働いていたにすぎず従属的な立場であるなど、悪質性が低い事案等の場合には、不起訴処分となる可能性があります。
早期に弁護士にご相談・ご依頼いただければ、そのような悪質性が低いと評価し得る事情等について、打合せを通じて適切に把握し、検察官等に主張できる可能性があります。

さらに、処罰される前に逮捕が先行する場合もあり、逮捕時に実名報道されるなどすれば、事実上、刑罰より重大な社会的な不利益を被ることにもなりかねず、逮捕や報道を避けるために早期の対応が望ましいという場合もあります。
また、弁護士がご事情を伺うことにより、今後の捜査や処分の見通し、取調べに応じる上での注意点等について、ご助言させていただくことも可能であり、実質的にも心情的にも、大きな助けとなり得ます。

※ 逮捕については逮捕されたくないの記事もご参照ください。
※ 実名報道については実名報道を避けたいの記事もご参照ください。

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上原総合法律事務所は、犯罪を犯してしまった場合、やってしまった過去自体は変えられませんから、以後「いかに誠実に対応するか」が大切であると考えています。

上原総合法律事務所は、元検事の弁護士7名を中心とする弁護士集団で、 元検察官としての視点を活かして、「犯行後に誠実に行動することで、より早く立ち直れる機会を得る」ことのサポートに力を入れています。

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上原総合法律事務所の自首同行サービスについては自首サポートの内容についての記事をご覧ください。

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