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不法就労助長罪とは?罰則や外国人を雇用する際の注意点

 

 不法就労の罪とは

 世界的なグローバル化が進む昨今、我々の住む日本においてもいろいろなところで働いている外国人労働者を見かけることが日常になっています。

 実際に、外国人労働者を従業員として雇用している企業や経営者の方々も多いことと思います。

 そんな中で、最近増えている犯罪類型として「不法就労助長罪」というものがあります。
 あまり耳慣れない犯罪ではありますが、これを知らずに外国人を雇ってしまうと、雇用した側、事業主が罪に問われる可能性があるのです。

 以下、この不法就労助長罪とは何か、事業主が不法就労助長罪とならないようにするための注意点等について解説します。

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 不法就労助長罪とは

 不法就労助長罪とは、簡単に言うと「外国人に不法就労させること」により成立する犯罪です。

 そもそも、適切な在留資格と就労資格を有していない外国人が我が国で働くことは「不法就労」という犯罪になります。

 ここで言う不法就労は、以下のような場合です。

1 不法入国した(不法在留)外国人や在留期間を超えて日本に残留している(不法残留)外国人などのそもそも正規の在留資格を持たない外国人が就労する場合
2 正規の在留資格を持っている外国人だが、許可を受けずに、与えられた在留資格では行い得ない就労をする場合(資格外活動)

 
 日本に不法残留している外国人や就労資格のない外国人の中には、日本で生活したり、母国の家族に仕送りしたりする目的で金銭が必要であり、なんとかして働きたいと思っている人もいます。そこには様々な事情があることは否定できません。

 しかし、外国人の不法就労を見逃すことは日本の適正な出入国管理行政を害することになり、許されることではありません。

 こういった不法就労を行う外国人は後を絶たず、それは日本国内において不法就労することを望んでいる外国人を安価な労働力として用いる雇用者の存在が一つの要因となっています。

 そこで、不法就労の外国人を雇用したり、仕事の斡旋をしたりする人を「不法就労助長罪」として処罰することで、不法就労自体を抑止しようというわけです。

 不法就労助長罪の3類型

 不法就労助長罪が成立する類型は、3つ存在します(入管法73条の2)。

1 実際に外国人に不法就労活動をさせた場合
2 不法就労活動をさせるために外国人を自己の支配下に置いた場合
3 1や2の斡旋行為を行った場合

 
 これらは、外国人を雇用する側が、「この外国人は不法就労である。」と分かったうえで雇用する場合(いわゆる「故意」の場合)だけでなく、単に不法就労であると知らなかった場合や確認を怠ったなどの過失であっても成立してしまいます(過失がないときを除く)。

 不注意で不法就労であると知らずに雇っていても処罰されてしまう可能性があり、罰則も厳しいため、とても注意が必要です。

罰則

3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金。又は併科。

 

 外国人を雇用する際の注意点

 では、どういった場合に過失があると判断されるのでしょうか。
 ここで重要になるのが、「在留カード」を確認することです。

 在留カードとは、日本に中長期間在留する者(中長期在留者)に対して交付されるものです。
 短期滞在の方や、在留資格のない方には交付されません。
 また、日本に在留する者は在留カードの携帯義務が課されており、これに反した場合には、刑事処罰の対象になります。

 この在留カードには、出入国在留管理庁長官が把握する情報の重要部分が記載されています。

・ 氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地
・ 在留資格、在留期間、就労の可否など

 
 外国人が日本で働くためには、適正な在留資格と就労資格を有していることが必要であるところ、雇用しようと思っている外国人の在留カードを見れば、在留資格や在留期間、就労の可否について記載されており、誤って不法就労の外国人を雇ってしまうということが防げるというわけです。

就労の可否在留資格
就労活動に制限なし


永住者
日本人の配偶者等
永住者の配偶者等
定住者
就労可能(在留資格に基づく活動のみ)
外交
公用
教授
芸術
宗教
報道
高度専門職
経営・管理
法律・会計業務
医療
研究
教育
技術・人文知識・国際業務
企業内転勤
介護
興行
技能
特定技能
特定実習
就労不可留学
研修
家族滞在
文化活動
短期滞在
※「留学」、「家族滞在」について、原則1週28時間まで資格外活動許可を受けていれば就労可能(風俗営業等は除く)代表例はアルバイト。

 では、在留カードを確認さえすれば、不法就労の外国人を雇ってしまう可能性は一切ないのでしょうか。

 こういった事例を考えてみましょう。

 個人商店を営むAが、日本人の配偶者がいるなどの就労に制限がない在留資格を持つ外国人Bを雇用しているとします。
 Bから「同じ国出身のCも働きたいって言ってるけど雇ってくれないか。」と言われました。

 人手の足りなかったAは、Cと会って、在留カードを確認させてもらいました。
 するとCは「今手元にないけど、コピーならある。」と言って、在留カードのコピーを出しました。
 Aが内容を確認すると、「日本人配偶者等」と記載があり、Cの名前と顔写真が付いていました。
 Aは、「Bの友人だし、在留カードも確認したし、大丈夫だろう。」と考え、Cを雇用していました。

 しかし、Cは実際には不法就労であり、CがAに見せた在留カードのコピーは偽造されたものでした。
 後日、雇用主Aは不法就労助長罪で逮捕されてしまいました。

 
 以上の事例では、Aは偽の在留カードの写しを見せられ、それを信じてしまったという場合であり、Cに騙された立場であるにもかかわらず逮捕されてしまいました。

 それは、Aの確認方法が十分ではなく、Cが不法就労であることを知らなかったことについて「過失」があるからです。

 在留カードは、携帯義務のある身分証明書であり、これを携帯していないということ自体が不自然です。

 写しの確認をしたのみでは、就労資格等の確認としては不十分であるということです。

 この事例の場合、少なくとも在留カードの原本を見て偽造ではないかの確認をする必要がありますし、当該在留カードが偽造でない場合でも、現在も有効なものか(失効していないか)確認することも必要です。

 これらの確認については、出入国在留管理庁のホームページに、「在留カード等の確認方法」や、「在留カード等読取アプリケーション」等が公開されておりますので参考にしてください。

 不正就労助長罪の相談事例

1 不法就労助長罪の被疑事実で、警察から事情聴取を受けた方からご相談(令和3年11月)

2 雇っていた外国人の就労が違法だったため捜査を受けているというご相談(令和4年9月)

3 不法就労助長で被疑者として警察から取り調べを受けていた方からご相談(令和5年3月)

 終わりに:不法就労で捜査を受けたら

 初めに記載したとおり、日本で働く外国人は増加の一途であり、それに付随して、不法就労助長の事案もその数を増やし、捜査機関においても積極的に摘発が行われています。

 一方で、企業においても外国人を雇用する機会は増えており、不法就労の外国人を雇ってしまうリスクも増えていると考えられます。

 不法就労助長罪は両罰規定が存在するため、従業員が不法就労助長罪を行うと、従業員のみならず、法人も不法就労助長等で処罰を受けることになります。

 法人が処罰を受けることは、法人の社会的評価を著しく低下させることになり、絶対に避けなければなりません。

 不法就労助長罪は、どういった場合に犯罪が成立し、どういう対策をすれば防ぐことができるのかが難しい類型であり、企業において不法就労助長罪を犯してしまわないように専門家によるコンプライアンス体制の構築の必要性が高い事案です。

 上原総合法律事務所は、元検事の弁護士が多数在籍しており、不法就労助長罪についても専門的な知識を有しています。

 不法就労助長罪についてご相談いただければ

・ そもそも罪が成立するのか
・ 成立するとしてどのような処分があり得るか

などの見通しについてお話しさせていただきます。

 また、事前に不法就労助長罪を犯さないようなコンプライアンス体制の構築のお手伝いもさせていただきます。

 不法就労助長罪で警察から事情聴取された、自分の雇っている外国人が不法就労かもしれないなどのお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

 

不法就労助長罪で摘発された場合の不利益と不起訴にする方法について詳しくはこちらをご参照ください

技能実習や特定技能の外国人労働者を雇用している会社の刑事罰と刑事罰を避ける方法について詳しくはこちらをご参照ください

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弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

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