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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。捜査・公判の両面で多数の刑事事件 を担当。検事退官後、都内法律事務所を経て個人事務所を開設。2021年に弁護士法人化し、新宿・ 横浜・立川に展開。元検事(ヤメ検)として、捜査機関の思考・動き方を熟知した立場から、逮捕前 の対応・示談交渉・公判弁護まで一貫してサポートしている。
犯罪が複数人によって行われた場合、「共同正犯」という言葉を耳にすることがあります。
しかし、「自分は直接犯罪行為をしていないのに共同正犯になるのか」「見張り役や運転手役でも共同正犯になるのか」など、共同正犯の成立範囲について疑問を持つ方は少なくありません。
特に共犯事件では、共犯者の供述によって共同正犯として立件されるケースも多く、取調べへの対応や弁護活動が重要になります。
そこで本記事では、共同正犯の意味や成立要件、教唆犯・幇助犯との違い等について、元検事(ヤメ検)の弁護士が解説します。
目次
第1 共同正犯とは
「共同正犯」というのは、刑法上の「共犯」の一類型です。
一般的に「共犯」という言葉は、「一緒に犯罪をした仲間」という広い意味で使われますが、刑法上の「共犯」には、以下の3種類が存在します。
- 共同正犯(刑法第60条)
- 教唆犯(刑法第61条)
- 幇助犯(刑法第62条)
ニュースなどで「共犯として逮捕された」と報じられるケースの多くは「共同正犯」の疑いによるものです。
共犯事件では、自分自身が犯罪の実行行為に及んでいなくとも刑事責任を問われる可能性があることに注意が必要です。
第2 共同正犯の成立要件
共同正犯については、刑法60条に規定されています。
(共同正犯)
刑法60条
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
条文のとおり、「共同正犯」となるのは、「共同して犯罪を実行した者」です。
「正犯とする」とは、自ら実行しなかった行為から生じた結果についても刑事責任を負う という意味です(「一部行為の全部責任の原則」と呼ばれます)。
共同正犯が成立するためには、一般的に、以下の3つの要件(成立要件)を満たす必要があるとされています。
1 共謀(意思の連絡)
2人以上の者が、共同してある犯罪を行おうとする意思を通じ合うことを言います。
これは、事前に綿密な計画を立てる場合に限らず、犯行の現場で行われる「現場共謀」であっても要件を満たすと解されています。
2 正犯意思
「他人の犯罪を手伝う」という従属的な意思ではなく、「自分自身の犯罪として実行する」という主体的な意思(正犯意思)を持っていることを言います。
この正犯意思の有無が、後述する「幇助犯」と区別する際の重要な要素となります。
なお、単に「手伝うだけのつもりだった」と主張すれば正犯意思がないと判断されるわけではなく、立場や役割、報酬などから総合的に判断されるのが一般的です。
3 共謀に基づく実行行為
共謀した内容に基づき、共犯関係にある誰かしらが実際に犯罪の実行行為に及ぶことをいいます。
判例上、自ら実行行為に及んでおらず、共謀に参加し、他の共犯者を介して犯罪を実現させた場合にも「共謀共同正犯」として共同正犯が成立し得るとされています。
そのため、「自分は手を下していないから共同正犯にはならない」ということにはなりません。
共謀共同正犯に対し、実行行為の一部ないし全部を行った場合を「実行共同正犯」と呼ぶこともあります。
例えば、特殊詐欺において、リーダー的な役割の人物は騙す行為やお金の授受等に関与していなくても共謀共同正犯となる可能性があり、これに対し、実際に電話をかけて被害者をだます「架け子」やお金を受け取ってくる「受け子」などは、詐欺の実行行為を分担していることから実行共同正犯となる可能性があります。
第3 共同正犯と教唆犯・幇助犯との違い
共犯の類型としては、共同正犯のほかに
- 教唆犯(刑法第61条)
- 幇助犯(刑法第62条)
があります。
条文は以下のとおりです。
(教唆)
第61条 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
2 教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。
(幇助)
第62条 正犯を幇助した者は、従犯とする。
2 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
教唆犯は、犯罪をする気のなかった人に対して、犯罪を実行するよう教唆し(そそのかし)、犯罪を実行する決意を抱かせ、実際に犯罪を行わせた場合に成立します。
教唆犯は「正犯の刑を科する」と規定されており、原則として実際に実行行為に及んだ者と同じ法定刑で処罰されます。
幇助犯は、正犯(犯罪を実行する者)に対して、物理的又は心理的な支援を行い、犯罪の実行を容易にした場合に成立します。
例えば、犯行用の道具を貸したり、逃走経路を確保したりする行為は幇助行為と認められる可能性があります。
幇助犯は「従犯」とされているところ、刑法63条で「従犯の刑は、正犯の刑を減軽する」と規定されていますので、必ず正犯の法定刑から減軽されて処罰されることとなります。
実務上は
「共同正犯なのか」それとも「幇助犯にとどまるのか」
が重要な争点になることが多いです。
道具の準備や下見、実行犯の勧誘などをしたケースでも、果たした役割の重要性や立場などによっては幇助犯ではなく共同正犯と評価される場合もあります。
第4 どこまで関与すると共同正犯になるのか
実務上、「自ら実行行為を行っていない者に対し、どこまで関与すれば共同正犯(共謀共同正犯)が成立するのか」という点がよく問題となります。
判例上、共同正犯が成立するか(正犯性があるか)どうかは、客観的な事実関係を総合的に考慮して判断するとされています。
具体的には、以下の要素が重視されます。
・ 地位・上下関係
実行者に対して優越的な地位を有しているか。
・ 動機や利害関係
積極的な動機で犯行に加担しているか。
犯罪結果にどの程度の利害関係を有しているか。どの程度の「分け前」を得る立場であったか
・ 役割の重要性
その人物の関与がなければ、犯罪の実現が困難であったか。
例えば、窃盗の現場で「見張り」をしていたケースを想定すると、単に「頼まれて仕方なく外で立っていただけで、利益もほとんど得ていない」場合は、幇助犯にとどまる可能性があります。
しかし、「自ら窃盗を提案し、見張りとして全体の状況を指揮し、盗んだ金品の多くを受け取った」ような場合には、自ら現場に侵入していなくとも、正犯意思に基づく重要な役割を果たしたとして、共同正犯が成立する可能性が高くなります。
なお、特殊詐欺(いわゆるオレオレ詐欺など)における「見張り役」については、近年は厳しい判断がなされ、共同正犯として処罰される例が多くなっています。
第5 共犯事件に関する実務
複数人が関与する共犯事件では、単独犯の事件とは異なる特徴があります。
1 逮捕・勾留及び接見禁止のリスク
共犯事件では、共犯者同士が口裏合わせをして証拠を隠滅する(罪証隠滅行為に及ぶ)リスクが高いと判断されます。
そのため、在宅捜査(逮捕されずに捜査が進むこと)ではなく、逮捕・勾留した上で捜査が行われやすい傾向にあります。
また、勾留された場合に、弁護士以外との面会を原則として禁じる「接見禁止決定」が付され、外部との連絡は弁護士に頼らざるを得なくなるというケースも多いです。
2 他の共犯者の供述による影響
自身が関与を否認していても、他の共犯者が「彼が主犯格だ」と虚偽または誇張した供述をした場合、その供述が不利な証拠として採用されてしまう危険性があります。
共犯者同士で責任のなすりつけ合いが発生することは珍しくありません。
特に口頭で共謀がなされた場合や、メッセージがすぐに削除されるようなアプリなどで共謀がなされたような場合、各人の供述が重要な証拠となるため、特に注意が必要です。
第6 共同正犯を争う方法
共同正犯として捜査を受けている場合、まず重要なのは「本当に共同正犯が成立するのか」を検討することです。
例えば、「そもそも犯罪の計画作成に参加していない」「犯罪が行われること自体を知らなかった」のであれば、共謀や故意がないとして無罪を主張することができるでしょう。
また「主導的な立場ではなく、他人の犯罪を従属的に手伝ったに過ぎない(正犯意思がない)」 のであれば、「共同正犯ではなく幇助犯にとどまる」と主張することが考えられます。
さらに、「犯罪の計画には加わったものの、実行行為に移る前に計画から離脱した」ような場合には「共犯関係から離脱したのだから、その後の犯罪について責任を負わない」と主張することも考えられます。
このように、共同正犯につき争えるのか、争うとしてどのように主張すれば良いのかについて検討するには専門的な知識が必須であるため、早期に経験豊富な弁護士に相談すべきと言えます。
早期の段階で共謀等を争い、嫌疑不十分などで不起訴となる可能性もあります。
不起訴(嫌疑不十分)の獲得についてはこちら(嫌疑不十分とは?不起訴となるためのポイントや処分までの流れについて元検事の弁護士が解説)の記事もご参照ください。
また、起訴されて裁判を受けることとなった場合であっても、事案の内容や証拠関係を踏まえた的確な弁護活動により、共謀が否定されるなどして無罪になる、共同正犯で起訴されたものの、判決では幇助犯という認定となり、執行猶予となるなどの可能性もあります。
執行猶予の獲得についてはこちら(執行猶予を獲得するには?元検事の弁護士が執行猶予となるための弁護活動や条件について解説)の記事もご参照ください。
無罪の獲得についてはこちら( 無罪を勝ち取りたい)の記事もご参照ください。
第7 共同正犯でお困りの方は弁護士へ相談を
共同正犯は、実際に犯罪の実行行為に及んだ者だけでなく、事件全体を計画した者や重要な役割を担った者についても成立する可能性があります。
その一方で、単に手伝っただけの者まで共同正犯として評価されるとは限りません。
共犯事件では
「共犯(共謀)が成立するのか」
「共同正犯なのか」
「幇助犯なのか」
が大きな争点となり得ます。
また、共犯者の供述によって不利な立場に置かれるケースも少なくありません。
共犯となりうるのか、共同正犯なのか幇助犯なのかなどは、法律の専門家であっても判断が難しいケースもありえ、安易な判断は禁物です。
共犯事件で捜査を受けている場合には、早い段階で刑事事件に精通した弁護士へ相談することが重要です。
上原総合法律事務所は、元検事の弁護士8名(令和8年7月31日現在)を中心とする弁護士集団で、捜査機関がどのような観点から共同正犯の成否を判断しているのかなども踏まえた弁護活動を行っています。
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