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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。捜査・公判の両面で多数の刑事事件 を担当。検事退官後、都内法律事務所を経て個人事務所を開設。2021年に弁護士法人化し、新宿・ 横浜・立川に展開。元検事(ヤメ検)として、捜査機関の思考・動き方を熟知した立場から、逮捕前 の対応・示談交渉・公判弁護まで一貫してサポートしている。
「家族が警察に逮捕され、これから『こうりゅう』されるかもしれないと聞いた」
「ニュースで聞く『こうりゅう』には、どんな違いがあるのだろう」
「勾留(こうりゅう)」と「拘留(こうりゅう)」は、同じ読み方をするため混同されることが少なくありません。しかし、法律上は全く異なる制度であり、目的や適用される場面、期間などにも大きな違いがあります。
ニュースなどで「勾留が認められた」「拘留刑が言い渡された」と耳にしても、その違いを正確に理解している方は多くないでしょう。
そこで本記事では、元検事(ヤメ検)の弁護士が、勾留と拘留の違い、それぞれの制度の意味や期間、手続の流れなどについて分かりやすく解説します。
目次
第1 勾留と拘留の基本的な定義
1 勾留とは何か
勾留とは、刑事事件の被疑者や被告人が逃亡したり証拠隠滅をしたりすることを防ぐために、身体拘束を行う手続です。
勾留は刑罰ではなく、あくまでも捜査や裁判といった刑事手続を適正に進めるための措置です。
警察に逮捕された場合、48時間以内に事件と身柄は検察に送致され、それから24時間以内に検察官は勾留請求を行うかを判断します。
勾留請求が行われた場合には、勾留質問も経た上で裁判官が必要と判断した場合には勾留されます。
刑事事件では、逮捕された後に必ず勾留されるわけではなく、勾留請求されずに釈放される、勾留請求が却下されて釈放されるといったケースもありますが、逮捕後に勾留が続くケースは多く、延長も含め20日間勾留されることも少なくありません。
※逮捕後の流れと釈放される手段については( 逮捕から起訴までの流れと期間を元検事の弁護士が図でわかりやすく解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
また、勾留されている被疑者が起訴された場合、その後も被告人としての勾留が継続し、保釈が認められるまで(あるいは判決等まで)勾留が続くこともあります。
※各段階における身柄の解放については(釈放、保釈について元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
2 拘留とは何か
拘留とは、刑法で定められている刑罰の一種です。
刑法第16条では、拘留について「1日以上30日未満の期間、刑事施設に拘置する」「拘留に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる」と定められています。
つまり、拘留は有罪判決を受けた人に対して科される刑罰であり、勾留とは根本的に性質が異なります。
実際には、現在の刑事裁判では拘留刑が言い渡されるケースは非常に少なく、多くの場合は罰金刑や拘禁刑(従前の懲役・禁錮)が選択されています。
第2 勾留と拘留の法的な違い
1 勾留の目的と期間
勾留の目的は
- 被疑者・被告人の逃亡防止
- 罪証隠滅(証拠隠滅)の防止
にあります。
勾留は刑罰ではなく、捜査や裁判を適正に行うための制度です。
被疑者段階の勾留期間は原則10日間です。
さらに裁判官が必要と認めた場合には10日間の延長が可能であり、合計20日間となります。
一般的にニュースなどで「勾留延長が認められた」と報道されるのは、この制度によるものです。
他方、被告人の勾留については、2か月とされているものの、その後も1か月ごとの更新がありえ、実質的には保釈が認められるまで身体拘束が続くケースが多いのが実情ですし、重大な事件などでは被告人としての勾留が年単位で続くこともあります。
2 拘留の目的と期間
拘留は刑罰であるため、勾留のような捜査上の必要性とは無関係です。
裁判で有罪が確定した者に対して科される刑であり、その期間は
1日以上30日未満
と定められています。
拘留は自由刑の中でも最も軽い部類の刑罰です。
もっとも、現代の刑事実務では拘留刑が選択されることは非常に少なく、拘禁刑を科されるに至らない軽微な事件については罰金刑が科されることが一般的です。
第3 勾留・拘留が行われるそれぞれのケース
1 勾留が行われるケース
前提として、勾留(被疑者としての勾留)は、逮捕された場合に引き続いて行われるものであり、いきなり被疑者として勾留されることはありません(逮捕前置主義といいます。)。
他方、レアケースではありますが、起訴と同時に勾留請求が行われ(求令状起訴と呼ばれ、被疑者として勾留されていた事実とは異なる事実で起訴される場合などにも行われます。)、被告人として勾留されるパターンもあります。
勾留は、被疑者(被告人)が犯罪をしたと疑うに足りる相当な理由があり、かつ次のような事情がある場合に認められる可能性があります。
(1)住居不定の場合
特定の住居がない場合には勾留の要件に該当します。
(2)罪証隠滅(証拠隠滅)のおそれがある場合
被害者への働きかけ、共犯者との口裏合わせ、データの削除などの罪証隠滅(証拠隠滅)が行われるおそれも勾留が認められる要件のひとつです。
勾留を回避するためには、その事件における証拠としてどのようなものがあるかなども念頭に置いて、罪証隠滅のおそれがないことを主張しなくてはなりません。
(3)逃亡のおそれがある場合
そもそも法定刑の重い罪名であったり内容が悪質であったりといった重大事件や、被疑者(被告人)の前科等から重い刑罰が予想される事件では、逃亡の危険性が高いと判断されることがあり、逃亡のおそれも勾留の要件のひとつです。
一方で、定職がある、家族と同居しているなど、社会的基盤が安定している場合には逃亡のおそれが認められないと判断されることもあります。
勾留を回避するためには、検察や裁判所にこれらの要件がないことを主張し、勾留請求をしない、勾留を認めないといった判断を獲得する必要があります。
※逮捕後の流れと釈放される手段については(逮捕から起訴までの流れと期間を元検事の弁護士が図でわかりやすく解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
また、被疑者として勾留されている中、その事件で起訴された場合には被告人としての勾留がなされることとなり、釈放されるためには保釈が認められる必要があり、その際にも罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれなどが考慮されることとなります。
※各段階における身柄の解放については( 釈放、保釈について元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
2 拘留が適用される状況
拘留は刑罰であるため、刑事裁判で有罪判決が言い渡された場合に適用されます。
もっとも、実務上は拘留刑が選択される例は少なく、比較的軽微な犯罪には罰金刑が科されることが多いです。
そのため、一般の方が拘留を受けるケースはそれほど多くありません。
第4 勾留と拘留の手続
1 勾留に関する手続の流れ
勾留に関する手続は一般的に次の流れで進みます。
(1)逮捕
警察により逮捕されます。
(2)検察官への送致(逮捕から48時間以内)
事件と身柄が検察官へ送致されます。
(3)勾留請求(送致を受けてから24時間以内)
検察官が必要と判断した場合、勾留請求を行います。
(4)勾留質問
裁判官が被疑者本人から事情を聴きます。
(5)勾留決定
裁判官が勾留の必要性を判断し、勾留するかどうかを決定します。
勾留決定後は、原則として警察署の留置施設などで身体拘束が続きます。
勾留回避のためには、検察官の勾留請求前に意見書を提出する、裁判官の勾留決定前に意見書を提出する、勾留決定に対し準抗告を行うなどの手段があります。
※逮捕後の流れと釈放される手段については(逮捕から起訴までの流れと期間を元検事の弁護士が図でわかりやすく解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
2 拘留に関する手続
拘留は刑罰であるため、刑事裁判の判決により科されます。
一般的には
- 捜査(逮捕等される場合もいわゆる在宅事件の場合もあります。)
- 起訴(公判請求)
- 刑事裁判
- 拘留を科す旨の有罪判決
- 判決の確定
- 刑の執行
という流れになります。
勾留と異なり、裁判で有罪となり、判決が確定して初めて拘留刑が執行されます。
第5 勾留と拘留がもたらす影響
1 勾留がもたらす影響
勾留されると、日常生活へ大きな影響が生じます。
(1)仕事への影響
長期間出勤できなくなり、解雇や退職につながる場合があります。
(2)家族への影響
警察官が立ち会う、時間的制限があるなど、家族との面会も制限され、家族も本人も精神的・経済的な負担を抱えることがあります。
(3)社会生活への影響
学校や親族、友人などとの関係にも影響を及ぼす可能性があります。
勾留は有罪を意味するものではありませんが、社会的な不利益が大きい制度といえます。
2 拘留がもたらす影響
拘留は刑罰であるため、有罪判決が前提となります。
そのため
- 前科が付く
- 就職や資格に影響する場合がある
- 社会的信用が低下する可能性がある
などの影響が生じます。
勾留との大きな違いは、有罪判決に基づく刑罰である点です。
第6 勾留・拘留に関するよくある疑問
1 勾留された場合はいつ釈放されるのか
勾留された場合
- 起訴されずに釈放される
- 起訴後に保釈が認められる
- 判決まで勾留が続く
など、事件によって異なります。
被疑者段階では最長20日間ですが、その後起訴されるとさらに身体拘束が継続する可能性があります。
早期釈放を目指すためには、弁護士による勾留を阻止するための活動や準抗告、保釈請求などが重要になります。
※各段階における身柄の解放については(釈放、保釈について元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
2 一度決まった勾留を、途中で解く方法はあるのか
裁判官が下した勾留決定に対し、弁護士が「準抗告(じゅんこうこく)」という不服申立ての手続を行うことができます。
「勾留の要件を満たさない」「この事件において身柄拘束は不利益が多きすぎる」などと別の裁判官に訴え、これが認められれば、勾留期間の満了を待たずに釈放されます。
また、起訴されなければ勾留期間の満期で釈放されますし、起訴されてしまった場合には、保釈金を納めて一時的に外に出る「保釈(ほしゃく)」の請求で身柄の釈放を求めていくこととなります。
3 勾留は前科になるのか
「勾留された=前科が付く」と誤解している方もいますが、これは誤りです。
勾留はあくまで捜査段階の「一時的な身柄拘束」にすぎません。弁護士による早期の示談交渉や弁護活動によって、最終的に検察官から「不起訴処分」を勝ち取ることができれば、前科は一切つきません。 一方で、「拘留」は有罪判決そのものであるため、確定すれば確実に前科となります。
第7 刑事事件でお困りの方は弁護士へ相談を
同じ「こうりゅう」でも、手続きや性質は全く異なります。特に、逮捕後に待ち受ける「勾留」は、有罪・無罪とは関係なく、あなたやご家族の仕事、学校、日常生活を強制的にストップさせてしまう非常に恐ろしい措置であり、他方で逮捕された場合には大多数の事案で行われるものでもあります。
検察官が勾留を請求するか否か、裁判官がそれを認めるか否かまでの各タイムリミットは、逮捕からわずか数日間しかありません。このわずかな間に、捜査機関や裁判所に対して「身柄を拘束する必要はない」と法的な書面(意見書・上申書)で強く働きかけられるのは捜査の流れなども含め刑事事件に精通した弁護士だけであり、効果的な準抗告についても同様です。
ご自身やご家族が逮捕され、勾留される可能性がある場合には、できるだけ早い段階で刑事事件に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
上原総合法律事務所は、元検事8名を中心とする、刑事事件について圧倒的な知見を有するプロフェッショナル集団です。捜査機関がどのような基準で勾留を求め、裁判官がどこを見て判断するのか、その「手の内」を熟知しているからこそ、迅速かつ的確に介入し、不当な勾留等阻止し、不起訴等を獲得するための弁護活動を行います。
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