防犯カメラ映像があっても証拠不十分?逮捕や起訴を回避しうるかや対処法について元検事の弁護士が解説

現代社会の刑事事件
[投稿日]
弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

近年、防犯カメラの普及により、犯罪捜査における証拠映像の役割はますます大きくなっています。

昨今、コンビニ、スーパー、ドラッグストア等の店舗はもちろん、マンション、オフィスビル、駅や路上まで、あらゆる場所に防犯カメラが設置されており、事件が発生すれば、まず現場付近の防犯カメラに記録があるかなどが検討される時代です。

一方で、「防犯カメラに映っていたかもしれない」
「映っているなら逮捕されるのか?」
と不安を抱く方からのご相談を受ける機会も多くあります。

実際、防犯カメラ映像は重要な証拠ではあるものの、ただ映っているという理由だけで逮捕されたり起訴されて有罪になるわけではありません

例え防犯カメラ映像が存在したとしても、「証拠不十分」と判断されて処罰に至らないことも多くあります。

また、防犯カメラ映像がむしろ有利な証拠となることもあり、冤罪だという場合には積極的に証拠を収集し、捜査機関に提出するといった対応も考えられます

この記事では、元検事(ヤメ検)の弁護士が、刑事事件における防犯カメラ映像の位置付け防犯カメラ映像があっても証拠不十分となる可能性や対策等を詳しく解説します。

第1 刑事事件における防犯カメラ映像の証拠能力

防犯カメラ映像は、客観性の高い証拠として捜査機関や裁判所が重視するものの1つです。
目撃者の記憶が曖昧であったり、被害者や参考人の供述が安定しない場合でも、映像は「その時の事実」を固定的に記録しているため、極めて強力な資料となりえます。

もっとも、防犯カメラ映像であるというだけで、自動的に高い証明力が認められるとは限りません。
刑事裁判では、「証拠能力」と「証明力」は別に考えられます。

「証拠能力」とは、刑事裁判において証拠として提出できるかどうかという問題で、多くの場合に、防犯カメラ映像には証拠能力が認められます
一方で、「証明力」とは、特定の証拠がある事実を証明するのにどれだけの価値があるかという問題です。

映像が不鮮明で人物を特定することが困難であれば、「犯人が誰であるか」に関する証明力は著しく低くなります。
最近は高画質のカメラも増えましたが、それでも夜間の明るさやカメラ位置の問題、帽子やマスク等による顔の隠れなどがあると、人物を判別することは容易ではありません。

また、「誰であるか」はある程度確認しうる映像であっても、「何をしたか」が判然としない場合もあります。
そもそも、「事件」そのものの状況が記録されうる場所に防犯カメラが設置されているとは限らず、「犯行」の前後を記録しているに過ぎない場合は、「記録されている人物」が「犯人」であるといえるかや「疑われている犯罪行為があったかどうか」までは分からないこともありますし、「犯行現場」そのものが記録されている場合であっても、「何をしているか」まで分かるほど鮮明ではない場合もあります。

つまり、映像があるからといって、必ずしも強力な証拠があるとは限りませんし、むしろ曖昧な映像しか残っていないケースが圧倒的に多いのが実情です。

第2 防犯カメラ映像があっても証拠不十分とされる理由

防犯カメラ映像があっても「証拠不十分」とされる事例は多く存在します。

「証拠不十分」というのは正式な用語ではなく、起訴不起訴の段階で証拠が十分でないときは「嫌疑不十分」や「嫌疑なし、あるいは実質的には嫌疑不十分的な要素もありつつ「起訴猶予」などで不起訴となり、裁判の段階で証拠が不十分であれば「無罪となります。

※嫌疑不十分等の不起訴処分についてはこちら(嫌疑不十分とは?不起訴となるためのポイントや処分までの流れについて元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。

※無罪についてはこちら(無罪を勝ち取りたい|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。

〇被疑者・被告人が犯人だと言えるか

防犯カメラ映像があっても証拠が不十分とされる場合のよくあるパターンのひとつは、映っている人物が被疑者本人だと断定できないということです。

先ほども述べたように、カメラ位置の問題で横顔や背後からしか映っていない場合、マスクや帽子を着用して顔が隠れている場合等は、防犯カメラ映像だけから犯人と被疑者の同一性を立証することが困難になります。

また、画質が荒く、人相や特徴が読み取れない場合も、防犯カメラ映像の証拠としての価値(証明力)は低くなります。

さらに、映像に記録されている場所、時間などが他の証拠から推測される被疑者の行動履歴と整合しない場合や、目撃証言・スマートフォンのGPS履歴・交通系ICカードといった他の証拠と矛盾する場合等は、防犯カメラ映像からは被疑者が犯人のように見える場合であっても、起訴や有罪となるだけの根拠にはならない場合があります

他方で、防犯カメラに鮮明に顔や姿が記録されている場合、顔貌鑑定や耳介鑑定、歩容鑑定等の専門家による鑑定、身に着けている衣服と被疑者所有の衣服の合致など、他の証拠関係もあいまって、犯人は被疑者・被告人であるという強固な証拠になることもあります

〇防犯カメラ映像の人物が犯人だと言えるか

防犯カメラ映像に写っている人物が特定できたとしても、その人物が犯人であるとまでは言いがたい場合もあります。

ある時ある場所で事件が起きた場合、その近くの防犯カメラで事件前後に特定の人物が写っていたとしても、それだけでは、それ以外の人物が犯人であるという可能性も残ります

こういった場合、被害者の目撃供述やその他の証拠、事件に関与した以外に当該人物がその時その場所にいる理由があるかなどの事情も考慮の上、判断されることになります。

〇犯罪行為があったといえるかなど

防犯カメラ映像にある人物が写っているとして、犯行状況そのものが記録されていない場合、「犯罪行為があったか」が分からない場合もあります。

刑事事件では、「犯人が誰か」ではなく、「犯罪行為があったか」などが問題となる場合も多々あるほか、行為自体はあっても、「先に向こうが手を出してきたので身を守ろうとしただけだ」「たまたま手が当たってしまっただけだ」などといった主張がなされ、正当防衛や故意が問題となり、防犯カメラ映像だけでは判断がつかないこともあります

〇刑事事件のルール

刑事事件では「合理的な疑いを超える証明」が必要であり、少しでも「犯人が別人である」「犯罪行為がなかった」「故意がなかった」「正当防衛等が成立する」などの可能性が残る場合には有罪認定をすることができません

そのため、防犯カメラ映像だけでは足りず、被害者の供述、目撃証言、指紋・DNA、犯人と被疑者の行動の一貫性等、多数の証拠が連鎖することで初めて「被疑者・被告人が特定の犯罪行為をした」と証明できるという場合が多いでしょう。

※嫌疑不十分等の不起訴処分についてはこちら(嫌疑不十分とは?不起訴となるためのポイントや処分までの流れについて元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。

※無罪についてはこちら(無罪を勝ち取りたい|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。

第3 防犯カメラ映像の開示請求や保存期間等

防犯カメラ映像について不安を抱えている方が最も気にするのは、「防犯カメラの映像を確認することができるか」「今も保存されているのか」という点でしょう。

取調べの中で「防犯カメラに写っている」などと言われ、どのような内容が記録されているのか気になったり、無実を証明するために防犯カメラ映像を入手したいという場合もあるでしょう。

しかしながら、結論からいえば、多くのケースで被疑者・被告人本人による映像の確認や入手はできません

まず、防犯カメラによる映像の記録は一般にプライバシー侵害には当たらないとされます。
なぜならば、多くの防犯カメラは、公衆が自由に往来する場所に設置され、防犯を目的としているためです。
そのため、映像自体が違法に撮影されたと評価されることは極まれにしかありません。

とはいえ、撮影された映像を誰でも自由に閲覧できるわけではありません
防犯カメラ映像には第三者が多数映り込んでいることが多く、個人情報保護の観点からも、設置者は任意に映像を提供する義務を負わないとされているからです。

店舗やマンション管理組合、ビル管理会社等は、被疑者・被告人本人からの要望であっても映像を開示しないのが通常です。
つまり、「自分が写っているかどうか確認したい」という目的では、開示請求は認められないのが一般的です。

ただし、警察が捜査として照会した場合は別です
警察から協力依頼があれば、多くの店舗は映像を提供します。
また、通常は1~4週間程度で上書きされることが多い防犯カメラ映像も、警察の要請があれば保存されることがあります。
保存期間は設置者の設定によって異なりますが、おおむね以下のような傾向があります。

● コンビニ:1〜2週間
● 商業施設:1〜4週間
● マンション:2週間〜1か月
● 駅・公共施設:1か月以上の場合もあり

メモリ容量が拡大したことで保存期間は長期化傾向にあるものの、これまで述べてきた理由から、一般人が確認することができる機会はほぼありません。

他方で、弁護士からの照会には応じてもらえるといった場合もあり、必要に応じて積極的な証拠収集を行うべき状況もありうると考えられるほか、捜査機関に対して特定の防犯カメラの記録を確認すべきと弁護士から申し入れるなどの対応を行う場合もあります。

第4 防犯カメラ映像が原因となって逮捕されることはある?

防犯カメラ映像を根拠に逮捕される可能性はあります

しかし、「映像があるから逮捕される」という単純な話ではありません。
捜査機関は、防犯カメラ映像だけでなく、被害者供述、目撃証言、現場状況、指紋・DNA等の他の証拠を総合的に考慮して判断します。

防犯カメラ映像が鮮明で、犯人の顔や体型、行動等がはっきりと映っている場合には、その映像が逮捕の決め手になり得ます。
例えば、特徴的な服装や持ち物が映っていたり、複数の防犯カメラに同一人物と思われる姿が映っている場合や、防犯カメラ映像上で改札の出入りやカードによる支払が行われている場合などは、映像をきっかけに被疑者が特定され逮捕に至ることもあります。

しかし、多くの事件では防犯カメラ映像だけでは特定が難しく、逮捕には至らない場合もあります。
先ほども述べたようにマスクや帽子で顔が見えなかったり、暗い場所で映りが悪かったり、体型や歩き方が似ている人が多く存在するような場合には、映像単体では被疑者を特定する決定打にはならないからです。

また、逮捕されなくても「任意での取調べ」や「在宅捜査」が進むことがあります。

警察は必要に応じて本人へ連絡したり、任意同行を求めたりします。

逮捕されていないからといって、捜査対象にならないとは限らない点には注意が必要です。

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第5 防犯カメラ映像に関するリスクが不安なときに取るべき対処法

防犯カメラ映像について不安を感じている場合、まずやってはいけないのは、本人が一人で警察へ相談に行くことです。

「自分が映っているか確認したい」という行動が、かえって疑いを深めたり、不用意に取調べを受けて不利な供述につながったりすることがあります。
警察は相談に来た人の言動を“供述”として記録することがあり、そこから事情聴取が始まることも珍しくありません。

また、現場周辺を見に行ったり、SNSに不安を書き込んだり、知人に相談して結果的に口裏合わせを依頼したように見える行動も避けるべきです。

捜査機関から見ると、逃亡や証拠隠滅を疑われる行動となりかねないため、逮捕されるリスクが上がる可能性があるほか、そのこと自体が犯人であることをうかがわせる事情として扱われるおそれもあります。

さらに、取調べを受ける中で「防犯カメラ映像という重大な証拠がある」などと言われても、焦らず慎重に対応を検討することが必要です。

これまで述べてきた通り、防犯カメラ映像だけで「特定の誰かが特定の犯罪行為をした」と十分に証明できることはまれです。
映像があること自体は事実であっても、実際は誰だか分からないものであったり、犯行の場面とは場所的時間的に離れている状況の映像ということもありえます。

「本当はやってないけれども、防犯カメラ映像があるということなら認めてしまった方がいいんじゃないか」などと短絡的に考え、事実と異なる自白をするなどは決してすべきではありません

不安を感じている段階で最も重要なのは、弁護士への相談です

刑事事件に精通した弁護士であれば、実際にどのような映像が存在しうるかや当該映像の証拠価値、逮捕の可能性、捜査の進み方などを総合的に判断できますし、それを踏まえ、取調べ等への対応を助言したりすることもできます。

また、実際に刑事事件を起こしていて防犯カメラにも記録されている可能性が高く、他方で逮捕や起訴を免れたいという場合、自首という選択肢もあります。

自首した場合、逮捕の要件である逃亡や証拠隠滅のおそれは低いものと判断されえますし、事件や犯人の発覚前であれば刑の減軽事由となりえますし(刑法第42条1項)、そうでなくとも起訴猶予や酌量減軽に繋がる有利な情状となりえます。

※自首についてはこちら(自首について元検事の弁護士が解説 |上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。

※起訴猶予についてはこちら(起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや起訴猶予獲得のポイントを解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。

第6 防犯カメラ映像が有利な証拠になる場合も

防犯カメラ映像は必ずしも被疑者・被告人にとって不利な証拠とは限りません

内容によっては、アリバイを証明したり、「被害者」が先に手を出していることを証明したり、そもそも「被害者」が主張する犯罪行為がなかったことを証明する材料になることもあります。

また、そこまで直接的な場合でなくとも、例えば、実際には同意の上でのことなのに不同意性交等の被害申告がなされている場合に、「被害」があったと主張されている直後に被疑者と「被害者」が親密に過ごしているような防犯カメラ映像があれば、同意があったことをうかがわせる証拠のひとつとなりうるでしょう。

問題は、捜査機関としてはこのような「被疑者・被告人にとって有利なものとなりうる防犯カメラ映像」を積極的に収集しようとはしない可能性がある上、防犯カメラ映像の保存期間が限定されていることです。

先に述べたとおり、通常、防犯カメラ映像は一般の方が閲覧等を求めてもこれに応じてもらえる可能性はまずないでしょう。

ただ、弁護士であれば、任意で、あるいは弁護士会照会を通じて記録を得られる可能性もあります。

また、他の手段として、弁護士名で捜査機関に書面を提出するなどし、被疑者・被告人にとって有利なものともなりうる防犯カメラ記録の収集を求めるといった方法もありえます。

もし、自らの身の潔白を明らかにしうる防犯カメラ映像等があるのではないかという状況であれば、なるべく早期に弁護士に相談するのが望ましいでしょう

第7 まとめ

防犯カメラ映像は刑事事件における重要な証拠ではありますが、映像に映っているからといって必ず逮捕や起訴、有罪につながるわけではありません

映像が不鮮明だったり、人物の特定が難しかったり、他の証拠と矛盾したりする場合、証拠不十分として扱われ、不起訴や無罪となることもあるのが実際です。

防犯カメラ映像に映っていた可能性があると感じて不安を抱えている場合、その不安から焦って誤った行動を取ってしまうと状況を悪化させる要因となりかねません。

まずは自らの置かれた状況を正確に把握し、適切な対応をするためには弁護士に相談することが重要です

元検事の弁護士であれば、捜査機関の動きや判断基準、防犯カメラ映像の価値や限界を熟知しており、可能な限り捜査の全体像を踏まえ、逮捕や起訴されるリスクの分析や取調べ対策をより適切に行うことができます。

また、むしろ被疑者・被告人にとって有利な内容が記録されている可能性もあり、弁護士が早期に対応することでそのような防犯カメラ映像の確保等につながることもあります

防犯カメラ映像に関する懸念は、早期に専門家へ相談することで、適切な対応が可能になります。
少しでも悩みがある場合は、できるだけ早い段階で弁護士へ相談し、状況に応じた最善の判断と行動を選択してください。

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