ストーカー規制法に違反すると・・・
気になる相手や好きな相手に「気持ちを伝えたい」と思うことは、人として自然な感情です。
しかし、その気持ちを相手が望まない場合に、一方的な恋愛や好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情に基づく行き過ぎた行為をしてしまえば、ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」といいます)に違反する犯罪となるおそれがあります。
恋愛感情や好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情に基づく行為はエスカレートしやすく、ストーカーに端を発する凶悪な事件も多数発生しているところです。
ご自身では「これくらいなら問題ない」「目的、理由があるからストーカー行為にはならないはずだ」などと思っていたとしても、ストーカー規制法に抵触し、すぐに対応しなければ更なる被害が発生する可能性があるなどとされれば、逮捕される可能性も十分にあります。
逮捕されれば、復縁等が叶わないのはもちろんのこと、その後の人生に影を落とすことになります。
そこで、元検事(ヤメ検)である弁護士が、ストーカー規制法で規制される行為やその罰則、逮捕された場合の流れや対応方法などについて詳しく解説します。
ストーカー規制法とは
ストーカー規制法で規制される行為とは
ストーカー規制法において、「ストーカー行為」とは、「つきまとい等」(※)又は「位置情報無承諾取得等」を反復してすることをいうと定義されています(同法2条4項)。
※ ただし、「つきまとい等」のうち、下記1~4及び5のメールやSNSのメッセージの送信等については、「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により」行うのでなければ、(反復して行っても)「ストーカー行為」には該当しないこととされています(同項)。もっとも、上記のような「方法」により行うのでなくとも、「つきまとい等」として禁止されていることに変わりはありません。
そして、「つきまとい等」とは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で(以下「好意や怨恨の感情を充足する目的」といいます)、以下の8つの行為のいずれかをすることと定義されています(同法2条1項・2項)。
- つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、現に所在する場所若しくは通常所在する場所(住居・勤務先・学校など。以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと
- 行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと
- 義務のないこと(面会・交際など)を行うよう要求すること
- 著しく粗野又は乱暴な言動をすること
- 無言電話、又は拒まれたにもかかわらず連続して電話・文書送付・メールやSNSのメッセージの送信等を行うこと
- 著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物(汚物・動物の死体等)を送付し、又は知り得る状態に置くこと
- 名誉を害する事項を告げ、又は知り得る状態に置くこと
- 性的羞恥心を害することを告げ若しくは知り得る状態に置くこと、又は性的羞恥心を害する文書・写真・画像や動画の電子データ等を送付・送信し若しくは知り得る状態に置くこと
また、「位置情報無承諾取得等」とは、相手方の承諾を得ないで、GPS機器や紛失防止タグを用いて位置情報を取得したり、そうした機器等を所持する物に取り付けたり、取り付けた物を交付したりすることをいうと定義されています(同法2条3項)。
ストーカー規制法は、こうした「ストーカー行為」「つきまとい等」「位置情報無承諾取得等」を禁止しているのです。
近時、SNSやインターネットを使って特定の相手をしつこく監視したり嫌がらせをしたりするネットストーカー(サイバーストーカー)なる行為が増えているようですが、こうしたインターネット上の行為であっても、好意や怨恨の感情を充足する目的で上記に該当する行為を行えば、ストーカー規制法に抵触します。
ストーカー規制法の罰則
ストーカー規制法は、ストーカー行為をした者について、「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処する」と定めています(同法18条)。
さらに、つきまとい等又は位置情報無承諾取得等をして相手方に不安(※)を覚えさせた者が、更に反復して当該行為をするおそれがあると判断されるときには、都道府県公安委員会等は、相手方の申出又は職権で(同委員会等のみの判断で)、禁止命令等を出すことができます(同法5条1項等)。
※ 厳密には「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安」と定められています。
この「禁止命令等」とは、公安委員会等が、ストーカー加害者に対して、
- 更に反復して当該行為をしてはならないこと
- 更に反復して当該行為が行われることを防止するために必要な事項
を命ずることができるものです。
相手方に近付いてはならないという、いわゆる接近禁止命令(接近禁止令)は、この「禁止命令等」の1つとして発せられるものになります。
なお、令和8年7月28日、政府の犯罪対策閣僚会議が、ストーカー加害者にGPS機器を装着させ被害者に接近した場合に被害者らに通知するシステムの導入に関して早急に検討を進めることを決定しましたが(同様のシステムを導入している諸外国では、GPSを装着させるなどした加害者の再犯率が有意に低減したとされています)、現時点では、日本において、上記の禁止命令等の一環等としてそのような機器の装着が義務付けられることはありません。
そして、禁止命令等に違反してストーカー行為(※)をした者については、「2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金に処する」と、禁止命令等を受けないでストーカー行為をした者よりも重く処罰することが定められています(同法19条1項)。
※ なお、禁止命令等の後に(後だけを見れば)、つきまとい等又は位置情報無承諾取得等を行ったけれども反復しては行っていないという場合であっても、禁止命令等の前後を通じて見れば「反復して行った」(=「ストーカー行為」を行った)と認められる場合にも、同様に「2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金に処する」と定められています(同条2項)。
また、禁止命令等に違反した者についても、「6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する」と定められています(同法20条)。
なお、つきまとい等又は位置情報無承諾取得等をして相手方に不安(前同)を覚えさせた者が、更に反復して当該行為をするおそれがあると判断されるときには、警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長は、相手方の申出又は職権で、更に反復して当該行為をしてはならない旨を警告することもできますが(同法4条)、この警告に違反した場合の罰則はありません。
ストーカーで逮捕された場合の流れ
ストーカー規制法に違反する行為をした者は、相手方に対する強い執着心や支配意識を有していることがうかがわれ、相手方に対して危害を加える事件にまで発展させるおそれが大きいと考えられており、逮捕される可能性が高い犯罪です。
逮捕されると、まず警察署に身柄を拘束され、取調べを受けることになります。
その後、検察に送致され、勾留請求されるかどうかが判断されます。
ごく軽微な事案や証拠上問題がある事案では、検察に送致される前に釈放される可能性もありますが、例外的な場合です。
勾留請求後、裁判所の判断で勾留が認められた場合、最長でそこから20日、身柄拘束が続く可能性があります。
この間、会社や学校に行くことはできず、周囲に事件が知られてしまうリスクは相当高まります。
逮捕後の流れについて詳しくは、 逮捕から起訴までの流れと期間を元検事の弁護士が図でわかりやすく解説 の記事をご参照ください。
ストーカー加害者への弁護活動
ストーカー規制法に違反する行為をしてしまった場合であっても、相手方と示談を(して二度と会わないことを誓約するなど)すれば、刑事事件化を回避したり、事件化したとしても身柄拘束を回避したり、不起訴処分を得られたりする可能性が高くなります。
※不起訴(起訴猶予)処分の獲得については起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや前科・前歴との関係、起訴猶予処分獲得のポイントについて解説の記事もご参照ください。
したがって、弁護人としては、相手方との示談成立に向けた活動が重要なものとなります。
相手方と示談をする場合に支払う示談金や慰謝料の相場は、一般的には数十万円から数百万円程度です。
もっとも、ストーカー行為(つきまとい等や位置情報無承諾取得等)の態様や頻度、それによって相手方が受けた被害の大きさ等、具体的事情によっても大きく異なってきますし、また、最終的には相手方に納得していただけるかどうかで決まることになります。
交際関係のもつれによる示談交渉は、お互いに言い分があるため、困難が伴う事案も多く見受けられますが、弊所では、交際トラブルを端緒とした事件も数々手がけた元検事の弁護士が担当し、最悪の事態にならぬようサポートいたします。
※示談については刑事事件で示談する方法を元検事の弁護士が解説の記事もご参照ください。
また、ストーカー規制法に違反する行為をしてしまっている場合、相手方と認識が大きく異なってしまっていることが多いと言わざるを得ず、「相手方は通常どのような認識を持つのか」ということを理解することが大切です。
この点、弊所では、元検事の弁護士が、多数の被害者から話を伺うなどした経験を生かしながら、お話をさせていただきます。第三者である弁護士に話すことにより、心の整理ができる場合もあるかと思いますので、お気軽にご相談ください。
※もし本当に冤罪であるという場合には、まずは嫌疑不十分といった形での不起訴を目指すこととなります。嫌疑不十分の獲得については嫌疑不十分とは?不起訴となるためのポイントや処分までの流れについて元検事の弁護士が解説をご参照ください。
ストーカー行為をしてしまった方は、元検事の弁護士にご相談ください
上原総合法律事務所は、元検事の弁護士7名 を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
刑事事件のご相談、ご依頼については、元検事の弁護士が担当し、直接対応させていただいております。
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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。



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