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お店のお客様やファンによるストーカー被害について雇用者側はどのように対策すべきか元検事の弁護士が詳しく解説します。

1 店舗スタッフやインフルエンサーへのつきまとい行為には会社が対処する必要があります

コンカフェなどの飲食店のスタッフやインフルエンサーの方は,たくさんのお客さんに見られます。

お客さんの中には,特定のスタッフやインフルエンサーに強い興味や好意,場合によっては恨みなどの強い関心を持ち,つきまとってしまう人がいます。

関心の表現方法はさまざまで,穏和な常連客として来店し続けるといったなんら問題のない行為から,お店から家まで後をつけてインターホンを鳴らして接触しようとする,インターネット上で迷惑な書き込みやメッセージを送り続ける,脅迫や暴力などの明白な犯罪行為に及ぶ,など様々です。

つきまとい行為の被害者は女性だけではなく,男性が被害者になることもあります。

また,被害者が男性で加害者が女性だとしても,女性が武器を持っていたり肉体的に強かったりすれば,男性被害者が身体的に害される危険も十分にあります。

従業員が勤務に関連して危険なつきまとい行為を受けている場合,道義上,会社が従業員を助けるべきですが,それだけでなく,会社に従業員を助ける法的義務があることがあります。

会社は従業員の労働環境が安全であるようにする義務があり(安全配慮義務),この義務を果たさなかった結果として従業員が害を受けると,場合によっては会社が損害賠償義務を負います。

そのため,店舗のお客さんやインフルエンサーの視聴者といった人がつきまとい行為をして従業員に危険が迫っている場合,その状況を放置することは,会社経営上のリスクでもあります。

以下では,つきまといがどのような違法行為であると言えるのかつきまとい行為を認識した会社がどう対処すべきか,について説明します。

 

※ストーカー行為,つきまとい行為

日本語の意味として,ストーカーとは,特定の人につきまとい行為をする人のことを言い,ストーカー行為とは,このつきまとい行為のことを意味します。

法律上は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(ストーカー規制法)という法律において,「同一の者に対し、つきまとい等(中略)又は位置情報無承諾取得等を反復してすること」をストーカー行為というと規定されています。

ストーカー規制法で規定されているストーカー行為以外の行為でも,従業員が被害に遭っていた場合には対処すべきつきまとい行為があります。

法律上の用語かどうかを区別するため,本記事では,ストーカー規制法上の「ストーカー行為」を含む広い意味として「つきまとい行為」という言葉を用い,特に法律上の規制に合致する行為に限定する場合に「ストーカー行為」と表現します。

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2 つきまとい行為はどのような違法行為になるか

(1)ストーカー規制法違反におけるストーカー行為

ストーカー規制法にいうストーカー行為に該当すれば,加害者はストーカー規制法に基づく刑罰や規制を受けます。

ストーカー規制法における「ストーカー行為」とは,「同一の者に対し、つきまとい等(中略)又は位置情報無承諾取得等を反復してすること」を意味します。

(2)出入り禁止となった店舗への侵入

特定の問題行為をした人間に対しては,店舗の判断で,店舗へ立ち入り禁止(いわゆる「出禁」)にすることができます。

お客さんが店舗に立ち入ることができるのはお店が立ち入りを許しているからです。

立ち入り禁止となった人間は店舗に立ち入ることはできず,立ち入り禁止となったにも関わらず店舗に立ち入れば,建造物侵入罪等の犯罪になり得ます。

(3)インターネット等での誹謗中傷

インターネット等での誹謗中傷は,侮辱罪等の犯罪になり得ます。

昨今では特にインターネットでの誹謗中傷が問題となっており,法改正により,2022年7月7日から侮辱罪が厳罰化されました。

今後,侮辱罪での刑事事件立件が増えるものと考えられます。

3 従業員からつきまとい被害の申告を受けた会社はどうすべきか

業務に関連してつきまとい行為を認識した場合,状況に応じて危険性を判断し,回避策を講じる必要があります。

そのためには,以下の3ステップを念頭におくべきです。

(1) まず冷静に事実を確認する

 つきまとい行為等の被害を申告されると,どうして良いかわからずに慌てて行動を取ってしまうことがあります。ですが,従業員の勘違いであったり,従業員が何らかの事情で嘘をついたり大袈裟に話をしていることもあり得ます。お客さんが関わるため,本当につきまとい行為があったのかという事実確認が大切です。

 また,至急対応すべきことがあるか,という事実確認も大切になります。

(2) 事実に基づいて対策を決める

 警察に相談すべきなのか,まずは店舗への立ち入りを禁止すべきなのか,至急で被害者を隠さなければいけないのか,など,事実に基づいた対策を講じる必要があります。

 事実が異なれば行うべき対策も異なります。

 対策は事実に基づいて決定する必要があります。

(3) 決めた対策を実行する

 被害者を守るための対策を決めたとしても,実行するのはまた別の労力を要します。

 しっかりと対策が実行できるよう体制を整えることが大切です。


つきまとい行為は様々ですので,これに対する対応も,加害者に警告する,店舗への立ち入りを禁止する,被害者の勤務先店舗を移動したり,勤務内容を変更するなど,個別具体的な事情に応じて対応すべきです。

危険性の判断や安全の確保は簡単ではありませんし,多大なストレスになりますので,自社で対処できないことは,無理せずに警察や弁護士に相談することが有益です。

4 お気軽にご相談ください

上原総合法律事務所は,元検事5名(令和4年10月10日現在)を中心とする弁護士集団です。

所属弁護士全員が刑事事件について熟知しており,独自のノウハウにより企業の不正対応・被害対応を支援しています。

紛争は大きくなる前に解決することが大切です。

紛争が大きくなる前に弁護士にご相談いただければ,より小さく紛争を処理できる可能性が高まります。

上原総合法律事務所は,迅速にご相談に乗れる体制を整えています。

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弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

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