弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
「いじめは犯罪になるのか」「どこから警察が介入するのか」「加害者が逮捕されたり、起訴されたりはするのか」
いじめを受けている本人や保護者、あるいは加害者側や学校関係者もこのような点でお悩みの方は多いかもしれません。
結論から言えば、いじめは内容次第で明確に犯罪に該当し、刑事事件として立件され、逮捕されたり起訴され、有罪になる可能性もあります。
もはや「学校内の問題」、「指導で対応すべきもの」として済まされる時代ではなく、犯罪行為に該当するいじめについては、刑事責任が問われることとなる流れが強まっているようにも感じられます。
本記事では、元検事(ヤメ検)の弁護士の立場から、いじめは犯罪になりうるのか、何罪になる可能性があるのか、刑事事件としての立件、逮捕や起訴に至るパターン、被害者加害者それぞれの具体的な対処法などについて、分かりやすく解説します。
目次
第1 いじめが犯罪に該当するケースとは
最近、SNS上で拡散された暴行動画をきっかけに、各地でいじめが発覚したといった報道が見受けられます。
刑法上、「いじめ」を処罰の対象としている罪名はありません。
しかし、実際に行われているいじめの多くは、具体的な行為ごとに見れば様々な犯罪に該当する場合があります。
殴る・蹴る・突き飛ばすなどのいじめ
殴る、蹴る、突き飛ばすなどといった行為は、典型的な犯罪行為です。
けがをしていない場合でも、相手の身体に対して不法な有形力を行使すれば暴行罪が成立します。 暴行罪の法定刑は、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金等です(刑法208条)。
さらに、打撲、骨折、出血、精神疾患等、いわゆるケガをさせたり、健康状態を害したりした場合には傷害罪となります。
傷害罪の法定刑は、15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金であり(刑法204条)、重い犯罪です。
「ふざけていただけ」「遊びの延長だった」という主張は、結果として暴行や傷害が生じていれば通用しません。
また、「ケガをさせてやろう」という意思がなくとも、暴行自体に故意があり、その結果としてケガが生じれば傷害罪が成立すると解されています。
※暴行罪についてはこちら(暴行について元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
※傷害罪についてはこちら(傷害罪で刑事事件に!初犯の場合の刑罰は?逮捕は?元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
金銭を要求する・行為を強制するいじめ
「金を出せ」「ジュースを買ってこい」「払わないと殴るぞ」「土下座しろ」などといった言動や暴行で、金品や特定の行動を求めるなどの行為は、恐喝罪や強要罪に該当しえます。
相手を怖がらせるなどして金品を交付させた場合は恐喝罪となり、法定刑は10年以下の拘禁刑です(刑法249条)。
金品の交付ではなく、無理に何かをさせた場合には強要罪となり、3年以下の拘禁刑が科されます(刑法223条)。
それぞれについて未遂罪もあるほか、脅すだけでも脅迫罪が成立することもあります。
※恐喝罪についてはこちら(恐喝罪について元検事の弁護士が解説します|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
※強要罪についてはこちら(強要罪とは何か?元検事の弁護士が脅迫罪や恐喝罪との違いや成立要件等を解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
※脅迫罪についてはこちら(脅迫について元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
物を奪う・壊す・捨てるいじめ
他人の持ち物を勝手に持ち去るといった行為は窃盗罪に該当する可能性があります。
窃盗罪の法定刑は、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(刑法235条)。
また、持ち物を壊す、落書きをするなどの行為は器物損壊罪となり、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科されます(刑法261条)。
「あとで返すつもりだった」「冗談だった」などと弁解しても、犯罪性が否定されるわけではありません。
※窃盗罪についてはこちら(窃盗について元検事(ヤメ検)の弁護士が徹底解説:想定される処分や刑罰、対応方法等|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
※器物損壊についてはこちら(器物損壊をしたらどうしたら良いか元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
悪口・SNSでのいじめ
SNSでの悪口、情報の拡散、写真の無断掲載などは、内容次第で犯罪になりえます。
社会的評価を下げる事実を公然と摘示する行為は名誉毀損罪に該当し、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます(刑法230条1項)。
事実の摘示がなくても、人格を否定するような表現を用いた場合には侮辱罪が成立し、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります(刑法231条)。
※名誉棄損についてはこちら(元検事の弁護士が名誉棄損について解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
※侮辱罪等についてはこちら(侮辱罪厳罰化とインターネット上の誹謗中傷について|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
性的ないじめ
無理やり体を触る、性的な行為を強要するなど著しく性的羞恥心を害する行為は、不同意わいせつ罪等に該当します。
不同意わいせつ罪の法定刑は、6か月以上10年以下の拘禁刑であり(刑法176条)、極めて重い犯罪です。
また、裸の画像を撮影する、送らせる、拡散する行為については、性的姿態等撮影罪、リベンジポルノ防止法違反や児童ポルノ関連法違反が成立する可能性もあります。
※不同意わいせつについてはこちら(不同意わいせつ罪で逮捕されたら?元検事の弁護士が刑罰や刑事事件の対応を解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
※性的姿態等撮影についてはこちら(撮影罪(性的姿態撮影罪)とは何か|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
※児童ポルノについてはこちら(児童ポルノのダウンロードや単純所持について弁護士に相談|元検事の弁護士が弁護します|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
被害者が死亡するに至った場合
いじめの結果、被害者が自ら死を選ぶという痛ましい事態が生じる例もしばしば報道等されています。
ただ、あくまで自死であれば、いじめを苦にした場合であっても、法律上、殺人罪(刑法第199条)が成立することはまれでしょう。
他方で、苛烈ないじめの結果として死亡結果が生じていれば、傷害致死罪が成立したり、さらに死亡結果についての認識認容まで認められれば殺人罪が成立する可能性もあります。
また、状況によっては自殺教唆等が成立することもあるかもしれません。
※殺人罪その他の人を死亡させる罪についてはこちら(殺人・殺人未遂について元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
第2 いじめの加害者が被疑者として立件・逮捕される場合
1 14歳以上の加害者の法的責任
刑法上、14歳以上であれば刑事責任能力が認められます(刑法41条参照)。
そのため、14歳以上の生徒が犯罪に該当するいじめを行えば、刑事事件として立件され、捜査を受けたり、時には逮捕等される可能性もあります。
被害の程度、行為の継続性、証拠の有無、被害者の処罰感情等を踏まえ、警察・裁判所が逮捕の必要性等を判断します。
「未成年だから刑事事件にはならない、逮捕されない」という認識は誤りです。
2 14歳未満の加害者の扱い
14歳未満の場合、刑事責任は問われませんが、何も起きないわけではありません。
警察が関与し、児童相談所への通告や、家庭裁判所での保護処分につながることがあります。
また、民事上の損害賠償責任については、加害者本人や保護者が負う可能性もあります。
3 少年事件の流れ
刑事事件では、20歳未満の少年(18歳、19歳の少年は「特定少年」としてやや異なる扱いとなります。)は、犯罪事実が認められる場合でもいきなり処罰対象とはならず、少年事件として全件家庭裁判所に送致されます。
とはいえ、刑事事件として捜査を受けている段階では成人の場合と大きな差があるわけではありません。
大きな分かれ道は逮捕等されるか、身柄拘束はされずにいわゆる在宅事件として捜査が進められるかという点でしょう。
※刑事事件(身柄事件)の流れについてはこちら(逮捕から起訴までの流れと期間を元検事の弁護士が図でわかりやすく解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
※在宅事件の流れについてはこちら(在宅事件とは?元検事の弁護士が身柄事件との違いや流れ、注意点について解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
一定の捜査が遂げられて犯罪事実が認められると、少年を被疑者とする事件は家庭裁判所に送致されます。
そして家庭裁判所の判断で、検察に事件が戻されて(「逆送」といいます。)刑事事件として起訴されたり、家庭裁判所の審判で保護観察や少年院送致などの保護処分を受けることもあります。
他方で、犯罪・非行事実の認定に問題があったり、事案が軽微で情状も問題ない事案などでは、「審判不開始」や「不処分」となる場合もあります。
身柄が拘束される場合、逮捕後勾留される場合や、少年鑑別所において観護措置の対象となることもあり、当該少年や保護者にとっては大きな負担となりえますし、少年院送致となったり逆送の上起訴されて前科がつくこととなれば、その後の人生にも大きな影響がありえます。
もし刑事事件となりうるような「いじめ」に関与してしまったという場合には、問題がより深刻になる前に、謝罪や被害弁償、示談交渉等を検討すべきかもしれません。
※少年事件についてはこちら(少年事件について元検事の弁護士が解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。
第3 いじめを受けた場合の対処法
いじめを受けた場合、まず重要なのは証拠を残すことです。
日時、場所、内容をメモし、LINEやSNSの画面、写真、動画等を保存しておきます。
次に、学校への相談です。
担任だけでなく、管理職や学校のいじめ対策を行う立場の人物や部署に正式に伝えることが重要な場合もあるでしょう。
それでも改善しない場合やどうしても学校が信用できないという場合、犯罪性が強い場合には、警察への相談や被害届の提出を検討すべきでしょう。
他方で、捜査機関としても「いじめ」の扱いには苦慮している場合もあり、必ずしもすぐに積極的に捜査等をしてくれるとは限りませんし、そもそもどのような被害がどのような犯罪に当りうるのか、どのように相談や被害申告をしていいのかでまず悩んでしまうこともあるでしょう。
そのような場合には、刑事事件にも精通した弁護士に相談することが解決の糸口となりえます。
被害内容や手元にある証拠資料等を踏まえ、どのような形での被害申告等が可能なのか、より有効なのかを相談できます。
また、刑事事件にまではしたくない、という場合でも、弁護士が関与することで「いじめ」の問題を法的に整理し、その上で学校や相手方と交渉をするといった選択肢もあります。
弁護士に相談することで、刑事責任の追及だけでなく、民事での損害賠償請求や示談交渉を含めた法的対応についてアドバイスやサポートを受けることができます。
第4 いじめをしてしまった場合の対処法
自らや子供がいじめをしてしまった、という場合、そのような行為をすぐにストップし、二度と繰り返さないことはもちろんですが、法的なリスクも踏まえた対応が必要となることもあります。
まず、学校との関係での処分がありうるほか、不法行為等として民事上の賠償請求を受ける可能性があります。
さらには、これまで解説してきたとおり、「いじめ」の内容次第では犯罪に該当し、場合によっては刑事事件として立件され、逮捕されたり鑑別所に収容されたりという可能性もあります。
少年の場合、まずは家庭裁判所に送致となりますが、逆送されて起訴された結果前科が付いてしまったり、少年院送致となって社会から一定期間隔離されることもあり、現状の生活はもちろん、将来に渡っても大きな影響がありえます。
もちろん、行ってしまったこと自体はなかったことにはなりませんし、道義的にも法的にも責任を負わざるを得ない場合はありますが、事後的にでも誠実に対応することで、刑事事件化を回避できたり、刑事処分や保護処分をより程度の軽いものとできるかもしれません。
まずは刑事事件にも精通した弁護士に相談し、行った「いじめ」が法的にはどのように評価されるのか、そこからどのような結末が想定されるのかを把握するとともに、謝罪や被害弁償、示談交渉等を試みるべき場合が多いでしょう。
また、逮捕等の身柄拘束を避けるという観点からは、時には自首をして逃亡や罪証隠滅のおそれがないことや反省していることを明確にすべき場合もあります。
他方、被害申告されているような行為はしていない、関与していないという場合もやはり弁護士に相談すべきです。
特に年少者の場合、取調べの中で不本意な供述をしてしまったり、事実とは異なる供述調書が作成されて不利な状況となってしまうリスクが大です。
刑事事件に精通した弁護士のサポートやアドバイスを受け、不当な結末とならないよう適切に対応していくことが肝要です。
第5 まとめ
いじめは、決して曖昧にしてよい問題ではありません。
内容次第では、暴行罪、傷害罪、恐喝罪、不同意わいせつ罪等、明確に犯罪として刑事処罰の対象になります。
加害者が14歳以上であれば、刑事事件として立件され、逮捕される可能性もあり、警察や家庭裁判所が関与することとなりえます。
被害を受けた場合は、我慢せず、証拠を確保し、学校・警察・弁護士と連携することが重要です。
反対に犯罪に該当するような「いじめ」をしてしまったというような場合、二度と繰り返さないことはもちろん、刑事事件化や逮捕等を避けるためには、謝罪や被害弁償、時には自首等の対応を行うべきでしょう。
「これは犯罪なのか」「警察に相談すべきか」と迷っているのであれば、早期に弁護士に相談することが、問題の更なる深刻化を防ぎ、自らの将来を守る最善の選択になります。
上原総合法律事務所は、元検事8名を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。
※未成年の方からのご相談については、保護者の方のご同意等をいただいております。
予めご了承ください。



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