技人国の違法状態を改善する方法 ― 担務変更・特定技能への切替えと更新不許可への備え

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弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。捜査・公判の両面で多数の刑事事件 を担当。検事退官後、都内法律事務所を経て個人事務所を開設。2021年に弁護士法人化し、新宿・ 横浜・立川に展開。元検事(ヤメ検)として、捜査機関の思考・動き方を熟知した立場から、逮捕前 の対応・示談交渉・公判弁護まで一貫してサポートしている。

はじめに:「まだ大丈夫」が一番危ない

2026年10月現在、宿泊業で、技人国(技術・人文知識・国際業務)の在留期間更新が「不許可」となる事案が全国で相次いでいます。背景には、入管が「技人国で認められない業務に就いている」と判断するケースの増加があります。

資格外の業務に従事させている状態が続けば、雇用主・担当者は不法就労助長罪(5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、または併科)に問われるおそれがあります。有罪となれば、刑の執行を終えるなどしてから5年間、特定技能や技能実習(育成就労)の外国人を受け入れられなくなります。

本記事では、外国人労働者雇用に注力している元検察官の弁護士が、違法状態にある技人国雇用を、今いる人材を守りながら適法な状態に改善する方法を、手順に沿って解説します。

ステップ1:まず確認すべき3つのこと

改善の第一歩は、自社の現状を正確に把握することです。次の3点を早急に確認してください。

  • ☐ 自社で雇用している技人国外国人の人数と、それぞれの担当業務を把握している
  • ☐ 技人国外国人が、従事できない業務(配膳・片付け、館内案内、客室清掃・備品交換など)を主に行っていないか洗い出した
  • ☐ 技人国の資格外活動が違法であり、不法就労助長罪のリスクがあることを、経営層と現場責任者が認識している

確認の際は、雇用契約書や申請時の書類に書かれた業務ではなく、実際に毎日何をしているかを基準にすることが重要です。フロント担当として採用した人が、繁忙期には配膳が中心になっている、といったズレがよく見られます。

ステップ2:改善方法は「担務変更」か「特定技能への変更」

今いる外国人を雇用し続けたい場合、改善方法は大きく2つです。

方法 内容 向いているケース 注意点
担務変更 業務を技人国で従事できる内容(フロント、企画・広報、財務・人事・営業など)に切り替える 本人の学歴・専門と業務を結びつけられ、施設にその業務量がある 現業が主にならないよう、業務割合を継続的に管理する
特定技能への変更 在留資格を「特定技能1号(宿泊)」に変更する 本人が接客・配膳など現場業務を中心に担っている 技能評価試験と日本語試験の合格が必要で、準備に時間がかかる

宿泊業の現場業務を担ってもらうなら、入管の考えに沿う特定技能(宿泊分野)への変更が本筋です。担務変更は、施設に技人国にふさわしい業務が実際にある場合に限られます。

ステップ3:技人国から特定技能への変更手続

特定技能1号への在留資格変更は、次の流れで進めます。

  1. 特定技能1号の評価試験(宿泊分野)と日本語試験に合格する
  2. 特定技能雇用契約書・雇用条件書を作成する
  3. 「宿泊分野特定技能協議会」に加入する
  4. 自社で支援体制を整えるか登録支援機関へ支援を委託し、支援計画を策定する
  5. 入管に提出する申請書類を収集・作成する
  6. 入管へ、在留資格変更許可申請を行う

最も注意すべきは、審査期間中の在留資格はまだ技人国であるという点です。申請を出したからといって、結果が出る前に配膳や客室業務に就かせれば、その間は引き続き違法な状態になります。

家族がいる場合は「日本にいるうちの変更」が重要

特定技能1号は、原則として家族の帯同が認められません。ただし、技人国の家族として「家族滞在」ですでに日本で暮らしている配偶者・子は、本人が日本国内で特定技能1号に変更する場合、「特定活動」への変更が認められ、引き続き日本に残れる運用があります。

一方、一度帰国してから特定技能1号で新たに入国する場合、家族を呼び寄せることはできません。家族がいる技人国外国人については、更新不許可で帰国を余儀なくされる前に、日本にいるうちに特定技能へ変更できるよう準備を進めることが特に重要です。

実務でつまずきやすいポイント

改善を進めようとすると、事業主側・外国人側の双方から次のような声が上がります。

立場 よくある声 考え方
事業主 うちの地域・業種はまだ摘発されていないので対応しなくてよいのでは 不法就労助長罪は、『知らなかった』では処罰を免れず、確認を怠った過失があれば成立します
他業種では1名の資格外活動でも警察の捜査対象になっています。摘発の有無は対応しない理由になりません
事業主 うちの技人国は更新が数年後だから、まだよいのでは 違法状態は更新時ではなく「今」生じています。立入検査は更新を待たずに入る可能性があります
外国人 特定技能に変更するなら転職する 変更の必要性と、施設として用意できる処遇・キャリアを丁寧に説明することが重要です
外国人 特定技能は家族を連れて来られない 1号は原則として家族帯同不可です。将来の2号移行(帯同可)を見据えた育成計画を示します
外国人 特定技能は永住許可の算定期間に入らない 1号の期間は「就労資格での在留」に算入されない一方、2号は就労資格として扱われます。2号を目指す道筋が説得材料になります

鍵になるのは「特定技能2号」への育成

外国人側の懸念の多くは、特定技能2号への移行で解消できます。2号には在留期間の上限がなく、家族帯同も認められます。

ただし2号には、宿泊施設での実務経験が通算2年以上あること、複数の従業員を指導・管理した実績があることなどが求められます。

そのため、1号のうちから班長・リーダーなど指導的な役割を与え、シフト作成や新人OJTといった管理業務を文書で明確にしておく必要があります。

更新不許可に備える:申請時・審査中・不許可後にすべきこと

更新申請時:「職務内容説明書」で積極的に立証する

入管の審査は原則として書面で行われます。そのため、「現業労働を主に行っていない」ことは申請側から積極的に立証する必要があります。

申請書の業務内容欄とは別に、別紙で「職務内容説明書」を添付し、技人国への該当性を詳しく説明しましょう。

  • 1日・1週間あたりの業務割合(現業労働が主でないこと)
  • 本人の専門知識や外国文化に基づく思考と、担当業務との関連性
  • 職場環境の写真(フロントでの多言語対応、PCでのデスク作業など)

審査中:出頭を求められたら上長が同席する

審査中に本人が入管から出頭を求められた場合、不許可が予想されます。出頭時には不許可の理由が説明されるため、上長などが同席して理由を正確に聞き取ってください。そのうえで、弁護士・行政書士に相談することをお勧めします。

不許可の通知後:「30日」か「31日」かで道が分かれる

更新が不許可になると、通常は出国準備のための「特定活動」に在留資格が変更されます。このとき指定される期間が「30日」か「31日」かで、取れる選択肢が大きく変わります。

更新不許可後の分岐 · 30日と31日

「31日」は、是正すれば許可の可能性がある、という入管からのメッセージとも受け取れます。申請が受理されれば、審査結果の通知か在留期限から2か月経過のいずれか早い日まで、適法に日本に滞在しながら結果を待てます。

ただし、特定技能への切替えには試験合格が必要です。不許可処分を受けてから準備を始めても、31日以内には間に合いません。担務変更も十分な立証もできない場合は、一旦帰国し、現地で試験に合格してから特定技能で再雇用する道を取ることになります。

まとめ:不許可を待たずに、今から動く

技人国の違法状態の改善は、更新不許可を受けてからでは選択肢が大きく狭まります。特定技能への切替えに必要な試験準備には時間がかかるため、早めの着手が欠かせません。

  1. 自社の技人国外国人の人数と実際の業務を把握する
  2. 担務変更か、特定技能への変更かを人ごとに決める
  3. 特定技能に変える人は、試験準備と書類作成を前倒しで進める
  4. 審査中は技人国の範囲内の業務に限定する
  5. 将来の特定技能2号を見据え、指導的な役割と体制を整える

技人国の不法就労助長のリスクそのものについては、別記事「技人国での不法就労助長」で詳しく解説しています。

上原総合法律事務所は、元検事の弁護士7名(令和8年10月1日現在)と労働案件を専門とする弁護士とが共同して外国人労働者雇用に関わる問題について取り組んでいるプロフェッショナルな弁護士集団です。労働問題についても、捜査機関側の視点と判断基準についても、熟知しています。

労働問題のご相談・ご依頼については労働問題の専門家が、刑事事件のご相談・ご依頼については全て元検事の弁護士が、それぞれ必ず直接担当させていただいております。

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※本記事は2026年10月時点の情報に基づく一般的な解説です。個別の事案については、弁護士・行政書士などの専門家にご相談ください。

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