威力業務妨害罪とは?成立要件・刑罰・逮捕の可能性について元検事の弁護士が解説

[投稿日]2026.07.15
[更新日]
弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。捜査・公判の両面で多数の刑事事件 を担当。検事退官後、都内法律事務所を経て個人事務所を開設。2021年に弁護士法人化し、新宿・ 横浜・立川に展開。元検事(ヤメ検)として、捜査機関の思考・動き方を熟知した立場から、逮捕前 の対応・示談交渉・公判弁護まで一貫してサポートしている。

店員に強い口調で抗議したら威力業務妨害になるのか」「クレームを繰り返されていて犯罪ではないのか」と気になっている方もいるでしょう。

近年では、いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)が社会問題となっており、企業や店舗に対する過度なクレームや迷惑行為が刑事事件として取り扱われるケースも増えています

その中で問題となることが多い犯罪が「威力業務妨害罪」です。

威力業務妨害罪は、暴力を振るわなくても成立する可能性があります。また、実際に業務が停止していなくても成立する場合があるため、知らないうちに犯罪に該当してしまうケースもあります。

本記事では、威力業務妨害罪の成立要件や刑罰、他の犯罪との違い、逮捕される可能性について、元検事の弁護士が解説します。

第1 威力業務妨害とは何か

威力業務妨害罪は、刑法234条に規定されている犯罪です。

刑法234条では

威力を用いて人の業務を妨害した者

を処罰すると定めています。

威力業務妨害罪の法定刑は

3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

です。

第2 威力業務妨害の構成要件

威力業務妨害罪が成立するためには、主に以下の要件が必要です。

1 業務が存在すること

ここでいう業務とは、仕事や営業活動全般を指します。

例えば

  • 飲食店の営業
  • コンビニの営業
  • 病院の診療
  • 学校の教育活動
  • 会社の事業活動
  • 鉄道会社の運行業務

などが含まれます。

営利目的の事業に限られず、継続して行われる社会的活動であれば業務に該当します。

2 威力を用いたこと

ここでいう威力とは、「人の意思を制圧するに足りる勢力」をいいます。

一般の方は「暴力を振るっていないから大丈夫」と考えがちですが、実際には暴行がなくても威力業務妨害罪が成立するケースは少なくありません

「威力」は威力業務妨害罪の中心となる要件です。

典型例としては

(1)店舗で怒鳴り続ける

店員に対し大声で威圧し続け、接客業務を停止させるケースです。

(2)クレームを繰り返す

正当な苦情の範囲を超え

  • 何十回も電話する
  • 毎日押しかける

などの行為は威力と評価される可能性があります。

(3)多数人で押しかける

複数人で店舗や会社へ押しかける行為も典型例です。

(4)居座り行為

退去を求められているにもかかわらず長時間居座り、営業を妨害するケースです。

3 業務を妨害したこと

法律には「妨害した」と書かれていますが、現実に業務遂行が妨害されることまでは必要がなく、業務遂行が妨害されるおそれのある行為をすれば業務妨害罪が成立するとされています。

これに関連し、威力業務妨害罪でよく検索されるのが

どこから犯罪になるのか

という疑問です。

正当なクレームや苦情の申入れであれば犯罪にはなりません。

しかし

  • 長時間怒鳴り続ける
  • 店員を囲んで帰らせない
  • SNSで従業員を攻撃すると告げる
  • 営業を続けられない状態にする

など、業務遂行が妨害されるおそれがある程度に達すると犯罪となる可能性があります。

例えば

  • レジ対応ができなくなった
  • 会議が中断した
  • 通常業務に支障が出た

    という程度でも成立する可能性があります。

    4 故意があること

    故意とは、自分の行為によって業務が妨害されることを認識していることです。

    「迷惑をかけるつもりはなかった」という主張が問題になることもありますが、客観的状況から故意が認定されることも少なくありません。

    第3 威力業務妨害罪と他の犯罪の違い

    1 偽計業務妨害罪との違い

    非常によく比較される犯罪です。

    偽計業務妨害罪は、威力ではなく偽計を用いて業務を妨害する罪です。

    ここでいう偽計とは、人を騙したり、人の不知を利用したり、計略や策略を講じるなど、威力以外の不正な手段のことをいうとされています。

    例えば

    • 嘘の情報
    • 虚偽の通報
    • デマ

    などを利用して業務を妨害する犯罪です。

    例えば

    「爆弾を仕掛けた」

    と虚偽通報するケースです。

    一方、威力業務妨害罪は

    • 怒鳴る
    • 威圧する
    • 居座る

    などの威力によって業務を妨害する点が異なります。

    2 公務執行妨害罪との違い

    警察官や公務員の職務執行を妨害した場合は、公務執行妨害罪が問題となります。

    例えば

    • 警察官を突き飛ばす
    • 職務質問を暴力で妨害する

    といったケースです。

    対象が公務である点が異なります。

    3 脅迫罪との違い

    脅迫罪は、生命、身体、自由、名誉または財産に害を加える旨を告知する犯罪です。

    一方、威力業務妨害罪は業務妨害が目的となる点に違いがあります。

    もっとも

    「店を潰してやる」

    などの発言をした場合には、複数の犯罪が成立する可能性があります。

    4 不退去罪との違い

    店から退去を求められたにもかかわらず居座った場合は不退去罪が成立する可能性があります。

    そして、その結果として営業に支障が生じれば威力業務妨害罪も成立し得ます。


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    第4 威力業務妨害罪の刑罰前記のように威力業務妨害罪の法定刑は、

    3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。

    比較的軽い犯罪だと思われる方もいますが、前科が付く可能性がある以上、決して軽視できません。

    1 不起訴・罰金になったり執行猶予が付くケース

    前科がなく、犯行を認めて

    • 反省している
    • 被害弁償をした
    • 示談が成立した

    などの事情を作ることができれば、不起訴・罰金になったり執行猶予付き判決となることが期待できます。

    2 実刑となるケース

    次のような場合は実刑の可能性が高まります。

    • 前科がある
    • 同種前科がある
    • 被害が大きい
    • 反省がない
    • 暴行や脅迫も伴う

    第5 威力業務妨害罪で逮捕される可能性

    1 現行犯逮捕

    店舗や駅などで騒ぎを起こした場合、その場で現行犯逮捕されることがあります。

    特に

    • 酒に酔って暴れる
    • 店舗で怒鳴り続ける
    • 警察の警告に従わない

    場合は逮捕の可能性があります。

    2 後日逮捕

    最近は防犯カメラが普及しています。

    そのため

    • 店舗の録画映像
    • 音声データ
    • 通話録音

    などから身元が判明し、後日逮捕されるケースもあります。

    3 SNSによる業務妨害

    近年増えているのがSNSによる業務妨害です。

    例えば

    • 店舗へ大量の苦情を煽る
    • 営業妨害を呼びかける

    などの行為は刑事事件に発展する可能性があります。

    4 逮捕後の流れ

    逮捕されると

    • 取調べ
    • 勾留請求
    • 起訴・不起訴の判断

    という流れで手続が進みます。

    勾留されると最長20日間身柄拘束される可能性があります。

    そのため、早期の弁護活動が重要になります。

    第6 威力業務妨害で問われた場合の弁護活動

    1 威力業務妨害をしてしまった場合

    してしまった犯罪行為を認め、被害者に謝罪と賠償をすることが必要となります。

    示談が成立して許してもらうことができれば、不起訴や執行猶予付き判決を期待できます

    また、示談の有無に関わらず、反省を深め、再犯予防体制を構築することも大切です。

    2 威力業務妨害をしてしない場合

    (1) 成立要件を争う

    本当に威力があったのか

    業務妨害が発生したのか

    などを検討します。

    (2) 証拠を精査する

    防犯カメラ映像や録音データを確認し、実際の状況を分析します。

    (3) 示談交渉を行う

    被害店舗や企業との示談は非常に重要です。

    示談が成立すると

    • 不起訴
    • 略式命令
    • 執行猶予

    など有利な結果につながる可能性があります。

    (4) 早期釈放を目指す

    逮捕・勾留された場合には

    • 勾留請求への対応
    • 準抗告
    • 身元引受人の確保

    などを行い、早期釈放を目指します。

    第7 お気軽にご相談ください

    威力業務妨害罪は、単なるクレームや口論のつもりでも成立する可能性がある犯罪です。

    特に近年は、カスタマーハラスメントへの社会的関心が高まっており、企業側が刑事告訴を行うケースも増えています

    一方で、正当な苦情であったにもかかわらず、威力業務妨害罪を疑われるケースもあります。

    当事務所には、検察官として数多くの刑事事件を担当してきた経験を有する弁護士が在籍しています。

    威力業務妨害罪で捜査を受けている方、ご家族が逮捕された方、警察から連絡を受けて不安を抱えている方は、お早めにご相談ください。

    上原総合法律事務所は、元検事8名を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えており、経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。

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