鑑定留置とは?行われるケースや期間、その後の流れなどについて元検事の弁護士が解説

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弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

鑑定留置とは何か

どのくらいの期間なのか

その後の手続の流れはどうなるのか

このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

鑑定留置は、主に、被疑者・被告人の精神状態が問題となりうる場合にこれを調べるために行われる手続です。適切な理解がないまま対応すると、その後の処分や裁判結果に大きな影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、実務上実施されることの多い責任能力に関する捜査段階の鑑定留置を前提に、元検事(ヤメ検)の弁護士が、鑑定留置が行われるケースや手続、リスクと対策までわかりやすく解説します。

鑑定留置とは?

鑑定留置とは、被疑者・被告人の心神または身体に関する鑑定を行うため、裁判官または裁判所の判断により、病院その他の相当な場所に一定期間留置する手続です。

刑事訴訟法第167条は「被告人の心神又は身体に関する鑑定をさせるについて必要があるときは、裁判所は、期間を定め、病院その他の相当な場所に被告人を留置することができる。」と被告人(起訴された後)の鑑定留置について定めており、同法第224条で被疑者(起訴される前)についても鑑定留置が認められています。

実務上、鑑定留置が行われるのは、被疑者・被告人の責任能力を判断するための精神鑑定を行うためという場合がほとんどです

刑事事件では

  • 犯行当時、善悪を判断できる状態だったのか(是非弁別能力)
  • 自分の行動をコントロールできる状態だったのか(行動制御能力)

が問題になることがあります。

刑事責任を問う前提として、犯罪を行わないという選択が可能であったということが必要であり、そもそも善悪の区別がつかない、あるいは自分の行動をコントロールできないという状態であったのであれば、刑事責任を負わせることができない(責任能力がない)とされているのです

また、責任能力がない(心神喪失)という状態ではなくとも、是非弁別能力や行動制御能力が減退している状態(心神耗弱)であれば、完全な責任能力がある場合と同じだけの責任を負わせられないとも考えられています。

具体的には、刑法39条は、心神喪失者(責任能力がない状態)の行為は罰せず、心神耗弱者(責任能力が減退している状態)の行為は刑を減軽すると定めています。つまり、犯行当時の精神状態等によって、起訴か不起訴か、有罪か無罪かの判断や、刑罰の重さが大きく変わることがあります。

被疑者段階では、捜査機関が裁判官に鑑定留置を請求し、裁判官が必要性を認めた場合に鑑定留置が実施されます。実務上は、検察官が責任能力の判断に必要と考えて請求するケースが多いといえます。

精神疾患や知的障害が疑われる場合のほか、薬物・アルコールの影響などが疑われる事件で行われることがあり、重大事件だけでなく、事案によっては比較的軽微な事件でも実施されることがあります。

※精神鑑定や責任能力についてはこちら(精神鑑定・責任能力について元検事の弁護士が詳しく解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。

鑑定留置の目的

鑑定留置の目的は、被疑者・被告人の責任能力の有無や程度を調査、判断するための期間、被疑者等の身柄を拘束しておき、その状況下で慎重な鑑定を行うことです。

特に捜査段階においては、勾留中に後述のような簡易鑑定が実施されることも多いですが、より慎重な判断が必要とされる事案では、簡易鑑定ではなく、より時間をかけた鑑定が必要となる場合があります。

被疑者としての勾留の期間は延長含め20日間ですし、その間に鑑定以外の捜査も行う必要があり、本格的な鑑定のためには時間が足りないというのが実情です。

また、勾留についてはその場所が刑事収容施設とされるところ、鑑定留置の場合設備の整った病院で留置することも可能となり、より充実した鑑定に資する場合もあります。

このような観点から鑑定留置が行われることが多いと考えられます。

鑑定留置と簡易鑑定の違い

実務上、捜査段階において責任能力に問題があるかを確認する方法として、まず短時間の面談による簡易的な精神鑑定が行われることがあります。

一般に「簡易鑑定」と呼ばれるものです。

簡易鑑定

簡易鑑定は、検察庁や警察署などで、精神科医が比較的短時間の面談を行い、精神状態を確認するものです。

責任能力に問題がある可能性がどの程度あるのか、さらに本格的な鑑定が必要かどうかを判断するために行われることがあります。

簡易鑑定については被疑者の同意を得て書面を作成した上で行われるのが一般的です。同意が得られない場合には鑑定処分許可状を取得した上で実施されることもあります。

鑑定留置

これに対し、鑑定留置は、病院その他の相当な場所に一定期間留置し、継続的な観察や面談を通じて本格的な鑑定を行う手続です。

簡易鑑定よりも詳細な観察が可能であり、責任能力が重要な争点となる事件や、短時間の面談だけでは判断が難しい事件で実施されることがあります。

ただし、簡易鑑定を経なければ鑑定留置ができない、という法律上の決まりがあるわけではありません。事件の内容や被疑者・被告人の状態によって、手続の進み方は異なり、簡易鑑定を経ずに鑑定留置が行われることもあります。

鑑定留置の流れ

鑑定留置は、事件の内容や手続段階によって流れが異なります。

もっとも、身柄事件の被疑者段階で責任能力が問題となる典型的なケースでは、以下のように進むことが多いです。

※刑事事件(身柄事件)の流れ一般についてはこちら( 逮捕から起訴までの流れと期間を元検事の弁護士が図でわかりやすく解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。

① 逮捕・勾留

まず、通常の刑事事件と同様に、逮捕・勾留が行われます。

この段階で、警察官や検察官が被疑者の言動に違和感を覚えたり、精神疾患歴、通院歴、服薬歴などの事情が明らかになったりすると、精神鑑定の必要性が検討されます。

② 簡易鑑定

責任能力に問題がある可能性がある場合、まず簡易的な精神鑑定が行われることがあります。

ここで、さらに詳しい鑑定が必要と判断されると、鑑定留置が検討されます。

なお、先述のとおり、いずれにせよ鑑定留置が必要であろうと目される場合には、簡易鑑定を経ずに鑑定留置に至ることもあります。

③ 鑑定留置の請求

被疑者段階では、捜査機関が裁判官に鑑定留置を請求します。

その後、裁判官による鑑定留置質問が実施されることもありますが、勾留中に鑑定留置の請求をした場合には、勾留質問を経ていることから改めて鑑定留置質問は行われないのがほとんどというのが実情です。

裁判官が必要性を認めると、鑑定留置状が発付され、鑑定留置が実施されます。

④ 病院などへの移送

鑑定留置が決定されると、被疑者・被告人は精神科病院など、鑑定に適した施設へ移送されることが多いです。

鑑定留置の間は被疑者としての勾留は停止しますが、病院での留置とはいえ、一般の任意入院とは異なり、鑑定留置は刑事手続上の身柄拘束を伴うもので基本的に勾留に関する規定が準用されます。そのため、自由に外出や通信、面会などができるわけではありません。

⑤ 精神鑑定

精神科医が、面談、行動観察、診療記録、家族からの情報、捜査記録などをもとに鑑定を行います。

鑑定では、主に以下のような点が確認されます。

  • 犯行当時の精神状態
  • 精神障害の有無・程度
  • 幻覚・妄想の有無
  • 犯行動機や犯行態様と精神症状との関係
  • 善悪を判断する能力
  • 判断に従って行動をコントロールする能力
  • 詐病の可能性
  • 現在の治療状況や今後の医療的対応の必要性

特に実務では、「精神障害があるかどうか」だけでなく、「その精神障害が犯行にどのように影響していたのか」が慎重に検討されます

※精神鑑定や責任能力についてはこちら(精神鑑定・責任能力について元検事の弁護士が詳しく解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。

鑑定留置の期間はどれくらい?

鑑定留置の期間は、一般的には1か月から3か月程度となることが多いです。

もっとも、事件内容、精神状態、鑑定の難易度、資料収集の状況などによって、期間は変わります。

刑事訴訟法上、鑑定留置は期間を定めて行われますが、必要がある場合には期間が延長されることがあります。

そのため、家族としては「いつ終わるのか分からない」という不安を抱えることもあります。特に重大事件や、精神状態の評価が難しい事件では、数か月に及ぶこともあります。

鑑定留置中の生活はどうなる?

鑑定留置中は、一般的な留置場や拘置所とは異なり、精神科病院などで生活することになるのが一般的です。

もっとも、自由な入院生活ではありません。

鑑定留置は、刑事手続上の身柄拘束を伴う制度であり、基本的に勾留に関する規定が準用されます。そのため、以下のような制限が設けられることがあります。

  • 外出は原則としてできない
  • 通信や面会が制限されることがある
  • 行動が管理される
  • 医師や看護師による観察が続く
  • 睡眠、生活態度、会話内容なども観察対象になる

施設によって運用は異なる部分もありえますが、身柄拘束が続いている状態である点は変わりません。

他方、鑑定留置中については捜査機関による取調べは行われることはまずないでしょう。

鑑定留置後はどうなる?

鑑定留置が終わると、鑑定結果を踏まえて、検察官がその後の処分を判断します。

主な流れは以下のとおりです。

起訴されるケース

責任能力が認められる場合には、通常どおり起訴されることがあります

また、心神耗弱と判断される可能性がある場合でも、責任能力が完全に否定されるわけではないため、起訴されることもありますし、その後刑事裁判の中で責任能力が争われることもあります。

不起訴になるケース

心神喪失により責任能力がないと判断される場合には、処罰できないため、不起訴処分となることがあります

他方、完全責任能力や心神耗弱という判断であった場合にも、その他の事情も鑑み、不起訴(起訴猶予)となる可能性もあります。

※不起訴(起訴猶予)の獲得についてはこちら(起訴猶予とは?元検事の弁護士が不起訴との違いや起訴猶予獲得のポイントを解説|上原総合法律事務所)の記事もご参照ください。

ただし、不起訴になったからといって、精神疾患等が認められた場合には、必ず直ちに社会復帰できるわけではありません。

医療観察法につながるケース

心神喪失または心神耗弱の状態で、殺人、放火、強盗、不同意性交等、不同意わいせつ、傷害などの重大な他害行為を行ったとされる場合には、医療観察法の対象になる可能性があります。

ただし、鑑定留置が行われたからといって、自動的に医療観察法の手続へ進むわけではありません。

検察官が心神耗弱か心神喪失と認めて不起訴とした場合や心神喪失で無罪となった場合に、検察官は裁判所に申立てを行い、裁判所の審判によって、入院医療、通院医療、または不処遇などが判断されます。医療観察法は刑罰ではなく、専門的な医療を提供し、社会復帰を促進するための制度です。

精神福祉保健法に基づく措置入院等

精神保健福祉法において、検察官は、精神障害やその疑いのある被疑者を不起訴としたり、執行猶予判決となった場合で、医療観察法に基づく申立てをしない場合には、都道府県知事等に通報をするものとされています。

その通報を受け、指定医の診察を経て、精神障害のために自傷他害のおそれがあると認められた場合には、精神病院等に措置入院となることがあります。

また、精神福祉保健法では、措置入院や本人の意思による入院とならない場合にも、精神保健指定医の診断と家族等の同意で入院させる医療保護入院という制度も設けられています。

鑑定留置で家族が注意すべきポイント

① 早めに弁護士へ相談する

鑑定留置が問題になる事件では、通常の刑事事件とは異なる専門的な対応が必要になります。

責任能力の判断には、本人の供述だけでなく、過去の通院歴、診断名、服薬状況、入院歴、家族から見た日常生活の様子などが重要になることがあり、正しい鑑定がなされるためにも、どのような手続の流れかを把握した上、捜査機関等に適切な情報提供や主張を行っていくことが必要な場合もあります。

また、精神疾患や知的障害を抱えているがゆえに取調べ等で容易に捜査機関に迎合して不利な供述調書が作成されたり、不正確な供述をしてしまうというおそれもあり、被疑者本人との接見における打合せや弁護人からの捜査機関への申入れ等が必要なケースも多くあります。

そのため、家族としては、できるだけ早い段階で刑事事件に詳しい弁護士へ相談することが重要です。

② 家族からの情報提供が重要になる

実務上、家族からの情報は非常に重要です。

例えば、以下のような事情は、鑑定に影響する可能性があります。

  • 以前から幻覚や妄想のような症状があった
  • 急に怒り出す、支離滅裂な発言をするなどの変化があった
  • 精神科への通院歴がある
  • 服薬を中断していた
  • 睡眠障害が続いていた
  • 事件前に生活状況が大きく変化していた

家族が持っている情報は、本人の責任能力を判断するうえで重要な資料になることがあります

どのような情報をどのように伝えるべきかについても、捜査段階における鑑定等についても知見を有する弁護士に相談することが望ましいでしょう。

③ 「不起訴になる=すべて終わり」ではない

責任能力が否定されれば、不起訴になる可能性はあります。

しかし、対象行為や本人の状態によっては、医療観察法による入院医療・通院医療や精神保健福祉法による措置入院や医療保護入院が問題になることがあります。

また、そうでなくとも、精神疾患の治療やサポート等が再犯防止等のために必要な場合もあります。

精神疾患が問題となる場合には、「不起訴」がゴールではなく、入院や通院といった事後的な対応まで想定しなくてはなりません。

鑑定留置に関するよくある質問

Q. 鑑定留置は誰でもされるのですか?

いいえ。

鑑定留置は、責任能力などを判断するために専門的な鑑定が必要とされる場合に行われます。むしろ行われることはまれと言ってよいでしょう。

Q. 家族は面会できますか?

施設や事件内容、接見禁止の有無などによります。

面会や通信が制限される場合もあるため、弁護士を通じて確認することが重要です

Q. 鑑定留置になると必ず不起訴になりますか?

いいえ。

鑑定留置は、責任能力などを判断するための手続です。鑑定の結果、責任能力が認められれば、通常どおり起訴されることがあります。

また、心神耗弱の可能性がある場合でも、起訴されたうえで裁判の中で責任能力が争われることがあります。

Q. 鑑定留置は前科になりますか?

鑑定留置自体は前科ではありません。

前科とは、一般に有罪判決を受けた経歴を指します。そのため、鑑定留置を受けただけで前科になるわけではありません。

ただし、その後に起訴され、有罪判決が確定すれば、前科となります。

まとめ

鑑定留置とは、主に被疑者・被告人の責任能力などを判断するために、病院その他の相当な場所に一定期間留置して鑑定を行う刑事手続です。

特に精神鑑定を目的とする鑑定留置では、犯行当時の精神状態、精神障害の有無・程度、善悪を判断する能力、行動をコントロールする能力などが慎重に確認されます

鑑定結果によって、

  • 起訴されるか不起訴になるか
  • 有罪になるか無罪になるか
  • 刑の減軽の対象となるか
  • 医療観察法の申立ての対象となるか、措置入院の対象となるか

など、その後の流れが大きく変わる可能性があります。

家族としては不安が大きい場面ですが、通院歴、服薬歴、事件前後の様子などの情報が重要になることがあります。早い段階で刑事事件に詳しい弁護士へ相談し、必要な資料や情報を整理することが重要です。

当事務所では、元検事の弁護士が鑑定留置に関する対応やその後の弁護活動について丁寧にサポートいたします。お困りの方は、お早めにご相談ください。

上原総合法律事務所は、元検事8名を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。

刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。

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