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侮辱罪厳罰化とインターネット上の誹謗中傷について元検事の弁護士集団が解説します

1 侮辱罪厳罰化について

令和4年2月22日、法務省が侮辱罪を厳罰化する刑法改正案を自民党の法務部会で示して了承された、という報道がありました。

現行法(令和4年2月現在)では侮辱罪の法定刑は拘留又は科料※とされています(刑法231条)。
改正案では侮辱罪の法定刑に「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」を加えるとされています。
これにより、侮辱罪の時効は1年から3年に延長されます。
なお、この改正の施行は数年先になるとのことです。

※拘留とは、一日以上三十日未満、刑事施設に拘置されることをいいます(刑法16条)。
科料とは、千円以上一万円未満の裁判所の定める金額を国に収めなければならないことをいいます(刑法17条)。

今回、侮辱罪の厳罰化について動画を作成いたしました。
5分ほどの動画ですが、記事の内容をよりご理解いただけると思いますので、是非ご覧ください。

2 侮辱罪厳罰化の背景

報道によると、侮辱罪厳罰化はインターネット上の誹謗中傷対策を強化するためであるとのことです。
インターネットが普及する以前は、一般的な個人が自分の言葉を社会に広く伝える方法はありませんでした。
ところが、インターネットが普及し、メディアや著名人でない個人の発言が広く拡散される可能性が発生しました。
現在、インターネット上での誹謗中傷は、書いた人が軽い気持ちでしたことだとしても、被害者をとても傷つけてしまうことがあります。

実際に、恋愛リアリティー番組『テラスハウス』に出演中だったプロレスラーの木村花さんがネット上で誹謗中傷を受けて亡くなりました。この事件は、社会に大きなショックを与えました。

インターネット上での誹謗中傷は厳しく処罰されるべきものとして社会に認知されつつあるように思われます。

3 侮辱罪厳罰化により何が変わるのか

(1)侮辱罪による身柄拘束がしやすくなる

どのような場合に罪を犯したと疑われる人を身柄拘束できるかは、その罪の法定刑により違います。

侮辱罪のように拘留又は科料に当たる罪については、被疑者・被告人が定まった住居を有しない場合又は正当な理由がなく出頭要請に応じない場合に限り、逮捕することができます(刑事訴訟法199条1項但書)。

また、拘留又は科料に当たる罪は、定まった住居を有しない場合に限り勾留できます(刑事訴訟法60条3項)。

このような条件下では、捜査機関が身柄拘束したいと感じても、実際に逮捕・勾留することは困難でした。

これに対し、厳罰化により侮辱罪の法定刑に「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」が加わると、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある時に逮捕が可能になります(刑事訴訟法199条1項本文)。
勾留についても、この厳罰化が実現すれば「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」や「逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき」に可能となります(刑事訴訟法60条1項2号・3号)。

インターネット上の誹謗中傷は、傷害事件などと違い、インターネット上という性質上、犯人の姿や声がわからない、という特徴があります。そのため、証拠隠滅をする余地も大きく、「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」場合も多いと思われます。

侮辱罪厳罰化により、捜査機関が侮辱罪の被疑者・被告人を身柄拘束できる範囲は大きく広がるといえます。

(2)立件の増加が想定される

侮辱罪の法定刑が軽く、(1)で述べたように身柄拘束も困難でした。
そのためか、これまで、侮辱罪での立件は多くありませんでした。

また、「拘留または科料」と法定刑が軽いことは、そもそも侮辱罪を立件する必要性を感じづらいという感覚があったかもしれません。
「拘留または科料」と法定刑が軽いことは、捜査の難易度と関係がありません。
捜査機関は、法定刑にかかわらず、被疑者被告人がその罪を犯したと認められるに足りる程度に十分な証拠を収集する責任があります。

この証拠収集にはとても労力がかかります。

大きな労力をかけて証拠収集しても、侮辱罪では被疑者被告人が拘留または科料にしかならないのだとすれば、「捜査する必要があるのか」という感覚があってもおかしくないと考えます。

しかし、侮辱罪厳罰化により、状況は変わり得ます。

法改正により侮辱罪が厳罰化されることは、侮辱罪をこれまでよりも重大と考えるという立法者のメッセージと受け取ることもできます。
また、法定刑に懲役刑が加わったことで、侮辱罪を繰り返せば確実に刑務所行きになります
さらに、身柄拘束しやすくなるため、捜査もしやすくなります。
こうしたことから、捜査機関が侮辱罪の立件により積極的になる可能性が高いと考えられます。

(3)損害賠償請求の増加が想定される

現在も、インターネット上の誹謗中傷に対する損害賠償請求は多数行われています。

インターネット上の誹謗中傷が許されない、誹謗中傷に対する損害賠償をすることができる、という社会の認識は日々強化されているように思われ、インターネット上の誹謗中傷に対する損害賠償請求はこれからも増えていくものと考えられます。

侮辱罪厳罰化は、この傾向を後押ししうるものです。

捜査機関が侮辱罪の立件に積極的になれば、まず捜査機関に刑事手続をお願いしてから損害賠償請求もするという対応が可能になります。

また、刑事手続が進行する可能性が上がると、刑事手続を避けたい加害者が早期に損害賠償する可能性が上がります。
これまでは損害賠償請求をする手間や費用が大きかったため、泣き寝入りした方が良いと考える被害者も少なくありませんでした。しかし、今後、厳罰化により、加害者が早期に損害賠償請求に対応するようになれば、被害者としても加害者にしっかり責任をとらせようと考えやすくなります。

このように、侮辱罪厳罰化はインターネット上の誹謗中傷に対する損害賠償請求を増加させる可能性が十分にあると考えられます。

3 お気軽にお問い合わせください

上原総合法律事務所では、「インターネット上での誹謗中傷の被害に遭っている、書き込みを削除してほしい」、という被害者側のご相談とともに、「インターネット上で誹謗中傷してしまったが後悔している、自分が書いてしまった書き込みを消したい」、という加害者側のご相談にも対応しています。
加害者が軽い気持ちで行ったことでも、被害者には大きなダメージを生じさせます。

上原総合法律事務所では、迅速にご相談に対応できる体制を整えています。
被害者の方はしっかり救われるようお力になりますし、後悔している加害者の方には誠意を尽くす方法をお伝えします。

インターネット上の誹謗中傷についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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