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準強制性交等罪とは、「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等を」することを言います(刑法第178条2項)。
ここにいう性交等とは「性交、肛門性交又は口腔性交」のことを言います(刑法第177条)。
準強制性交等罪の法定刑は5年以上の有期懲役で、準強制性交等罪の時効は10年です。
準強制性交等罪はとても重く、有罪判決を受ければ実刑(刑務所行き)となる危険性が高いです。
具体的にどのような行為が準強制性交等罪になるのかなどについて、これから説明していきます。
なお、かつては、準強制性交等罪に該当する性交等のうち性交については準強姦と呼ばれていました。平成29年に法改正され、準強制性交等罪が規定されました。
また、準強制性交等罪を犯して人を死亡させたり怪我させた場合、強制性交等致死傷罪となります。
強制性交等致死傷罪は、無期懲役または6年以上の有期懲役となります。(強制性交等致傷罪の時効は15年、強制性交等致死罪の時効は30年です)。
準強制性交等とは、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をすることです。
では、心神喪失や抗拒不能とはなんでしょうか?
「心神喪失」とは
精神の障害によって正常な判断能力を失っている状態をいいます。
例えば、お酒を飲みすぎて意識を失っている状態や重度の精神障害の状態が心神喪失になり得ます。
「抗拒不能」とは
心理的、物理的に抵抗することが不能又は著しく困難な状態をいいます。
例えば、隠部に薬を入れると嘘をついて被害者を騙して実際には性交をした、などという場合が抗拒不能になり得ます。
お酒に酔った状態でした性交等のトラブルが準強制性交等罪の問題となることが多いです。
特に、コンパやクラブ、インターネット等で出会った人と飲酒の上で性交等をした翌日、「酒に酔って意識がないところにひどいことをされた」として被害者側が警察や弁護士に相談する、というトラブルが散見されます。
被害者が飲酒酩酊していた状態での準強制性交等事件については、加害者側が「酔った勢いでやってしまった。」と罪を認めることもあり得ます。
ですが、加害者とされた側が「飲酒はしていたけれども酔って抵抗できない状態ではなかった。」「相手も積極的に性行為をしてきていたのだから、問題はなかったはずだ。」などと言って悪いことをしていないと主張することも多いです。
このような場合、当事者の主張が真っ向から対立するため、トラブルになります。
そこで次に、このようなトラブルにおいて準強制性交等罪になるかどうかがどのような証拠から判断されるのか、を説明します。
※以下では、わかりやすくするため、実際に加害者ではなく加害者とされているだけの状態の人、実際に被害者ではなく被害者だと主張しているだけの状態の人についても、単に「加害者」「被害者」と書きます。
性交等自体の目撃者や性交等自体の録音・録画があれば、これらの証拠により準強制性交等罪に当たるかどうかがはっきりします。
ですが、多くの場合そのような証拠はなく、お酒を飲みすぎて抵抗できない状態で性交等が行われたことの証拠は、被害者の発言しかありません。
そのため、この被害者の発言が信用できるかを、性交等の前後の状況から判断することになります。
例えば以下の通りです。
■性交等が行われたホテルの防犯カメラ映像に意識を失っている状態の被害者が部屋に担ぎ込まれている状況がうつっていれば、ホテルの部屋に入る時点では被害者が意識を失っていると言えるため、性交等が行われた時も被害者は抵抗できない状態であったと推測できます。
■一緒に飲んでいた人や飲食店の従業員などに聞き取りしたところ被害者の飲酒量が著しく多かった場合、性交等が行われた時も被害者は抵抗できない状態であったと推測できます。
■事件翌日には被害者が加害者に愛想の良いメッセージを送っていたけれども、その数日後に加害者が被害者との交際を拒否したら被害者の態度が急変した、という場合、事件翌日は良い関係性であったのだから意識を失っている状態で性交等が行われた可能性が低いと考えられます。
■その他、行為前に被害者に性的行為の経験があったか、被害者と加害者はどのような関係性か、なども考慮要素になり得ます。
明らかに準強制性交等罪を犯したとわかるような証拠がない限り、被害届が出されたら加害者がすぐに逮捕される、という可能性は高くありません。
上に記載したように、性交等が行われている状況の目撃者や客観的な証拠があることは稀で、多くの場合、警察官や検察官は、被害者の話を信用して良いのかを性交等の前後の状況から慎重に判断します。
また、報道については、逮捕・起訴される場合、捜査機関から報道機関に情報提供されることがあります。ですが、逮捕される場合を除けば、加害者に話を聞く前に警察が報道機関に情報提供する可能性は低いです。
そのため、被害者から「警察に相談した」「被害届を出す」「弁護士に頼んだ」などと言われても、慌てる必要はありません。
しかし、何もしなくて良いのかというと、それも違います。
まず、実際に準強制性交等をしてしまった場合、真摯に対応し、許してもらうよう謝罪すべきです。
これを示談交渉といいます。
また、警察に自首することで逮捕される可能性を下げることも選択肢として検討すべきです。
では、準強制性交等をしていないのに被害があると言われている場合にはどうすれば良いのでしょうか。
このような場合、被害者が酒に酔っていたなどの何らかの事情で勘違いをしていることもありますし、精神的な障害により被害にあったと思い込んでいる可能性もあります。また、過去には、痴漢被害者を装って示談金を得ようとした女性が有罪判決を受けたこともありますので、示談金目的で事件が捏造されている可能性もあり得ます。
あ 身の潔白を証明するための証拠を集める
準強制性交等をしたつもりがないのであれば、まず第一に、身の潔白を証明するための証拠を集めることを考えるべきです。
そして、この証拠収集は急ぐ必要があります。
一緒に飲んでいた人や飲食店の従業員から被害者の飲酒状況を聞き取ろうとする場合、早く話を聞かなければ記憶が薄れてしまいます。
また、防犯カメラ映像やメッセージなどの客観的証拠も時間が経てば消えてしまいます。
さらに、ご本人の記憶も薄れるため、弁護士が事件直後にご本人に聞けば覚えていることも、時間が経てば忘れてしまう可能性があります。
い 警察に相談する
また、証拠収集という観点から、警察に相談することも有効です。
被害者が警察に相談したり被害届を出している状態で加害者が何もしなければ、警察は加害者の言い分を知ることができません。
そうすると、被害者側の話しか聞いていないため、警察官は被害者の話を前提としながら捜査を進めていくことになります。
ですが、加害者から警察に相談し、「被害を訴えられているけれども本当は準強制性交等をしていないのだ。●●という流れで普通に性行為をしただけだ。」ということを説明すれば、警察が加害者に有利な証拠を見つけて身の潔白を証明してくれるかもしれません。
警察に相談することは、万が一の身柄拘束を避けるためにも有効です。
捜査機関は、証拠隠滅の恐れや逃亡の恐れがあると判断した場合に、被疑者を逮捕します。
ですが、逮捕される前に自ら証拠を持って警察に行って事情を説明していれば、証拠隠滅の恐れや逃亡の恐れが低いと考えてもらえる可能性があります。
また、万が一逮捕されてしまったとしても、加害者が自ら警察に行っていることを考慮し、裁判所が勾留決定をしないで釈放してくれることもあります。
逮捕を避ける方法についての詳しい説明はこちらをご覧ください。
う 示談交渉する
加害者の社会的立場などによっては、示談交渉することも有用です。
この場合の示談は、準強制性交等をしたことを前提とする示談ではなく、「準強制性交等をしたつもりがない。けれども、被害者が準強制性交等をされたという認識なのであれば、その気持ちを否定するつもりはない。」などとして謝罪し、お金をお支払いすることで事件を終わりにすることです。
準強制性交等をしていないのですから、本来、加害者が自称被害者に謝罪したりお金を支払ったりする理由はありません。
ですが、普通に生活していた方が突如として準強制性交等をしたとして弁護士から連絡をされたり被疑者として捜査の対象になったりすると、とても強いストレスを感じます。
特に、著名人、会社経営者、有名企業の会社員などの社会的地位の高い方が容疑をかけられてその情報が広まった場合、実際には準強制性交等をしていなくても、とても大きな損害となります。
このような状況においては、真実として犯罪を犯したかどうかにかかわらず示談をすることを希望する方が少なくありません。
実際に、上原総合法律事務所でも、このような場合に示談交渉をして事件を終結させていることがままあります。
準強制性交等を訴えて弁護士を立てられたり警察沙汰になったりすることは人生の一大事です。
本当に準強制性交等したのであれば刑務所行きのリスクがありますし、そうでなくても、起訴されたり報道されたりするリスクがあります。
準強制性交等の疑いをかけられたら、信頼できる弁護士に急いで相談することをお勧めします。
上原総合法律事務所では、元検事の弁護士が迅速にご相談に対応できる体制を整えています。
準強制性交等の疑いをかけられてお困りの方はお気軽にご相談ください。
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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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