依頼者:
職業:50代 男性会社経営者
結果:不正受給分の返還(刑事告発、公表、20%の課徴金なし)
事案の概要
Aさんは、接客業や飲食業を中心とした複数の会社を経営していました。
Aさんの経営していた会社は、長引くコロナウィルスに伴う接客業・飲食業の不振により、経営が厳しくなっていき、会社の存続、ひいては従業員の雇用を守れなくなるかもしれないという危機に瀕していました。
そんな中、Aさんは、雇用調整助成金の存在を知り、なんとかして多くの助成金を受給できないかと考えました。
Aさんは、経理担当者と共に、実際には休業していない従業員について休業したものとして雇用調整助成金を申請するなどの方法により、約2500万円の雇用調整金助成金及び緊急雇用安定助成金を不正に受給しました。
相談の経緯
Aさんは、雇用調整助成金の申請の一部について、労働局から不正受給の疑いを指摘されたため、労働局に対して、申請の取り下げや受け取った助成金について返金することを申し立てましたが、労働局からは、調査が必要であるとして受け入れてもらえませんでした。
そこで、Aさんは、今後どうすれば刑事処罰や公表を避けられるかという観点から弊所にご相談いただきました。
弁護活動
まず、労働局に対して連絡を取り、Aさんが経営する会社について雇用調整助成金を不正受給したこと、その内容について精査中であること等を伝えました。
その後、関係資料を精査し、不正受給の全容を解明し、不正受給に至る経緯や申請時の状況等について明らかにする報告書を作成しました。
当該報告書をもって労働局に直接伺って、事案の概要や不正受給に至る経緯等を説明しました。
最終的に、労働局からは、不正受給分の返還のみで、刑事告発や公表といった処分はなされず、20%の課徴金についても課されることはありませんでした、
弁護士のコメント
雇用調整助成金等の不正受給の場合、刑事告発や公表等の処分がされるかどうかについて、労働局は具体的な基準を挙げてはいません。
しかし、労働局(とその上級庁である厚生労働省)が各事案における不正受給の金額や不正受給に至る経緯や動機、反省の有無などの事情などの様々な事情を総合的に判断して決しているものと思われます。
本件は、不正受給の額が多額であり、不正の態様も、架空の従業員を作出して助成金の申請を行うなどしており悪質性は高いと判断される可能性が高かったことに加え、Aさんが不正に至る経緯に仕方ない部分があったということを労働局にうまく説明することが困難だったことから非常に厳しい処分になることが予想された事案でした。
しかし、本件においては、弊所の弁護士がAさんと労働局との間に入り、労働局に対してAさんにとって有利な事情を説明することで最良の結果を導くことができました。
上原総合法律事務所では、雇用調整助成金の不正受給に関する労働局対応を数多く行っており、正確な判断と迅速な対応を行う態勢が整っています。
助成金の不正受給等で悩んでいる方は遠慮なくご相談ください。