カツアゲ、ぼったくりなど、身近な言葉で表されることが多い恐喝罪。
言葉はよく聞きますが、実際にどのようなことを行えば恐喝罪となるのか、よく分からないと思われている方も多いのではないでしょうか。
そこで、元検事である弁護士が、恐喝罪の成立要件、検挙された場合の逮捕率、起訴率などの統計情報、そして元検事集団である当事務所にできることなどをお話します。
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恐喝罪は、人に暴行を振ったり、脅したりして、相手に恐怖心を抱かせて、財物を交付させたり、財産上不法の利益を得る犯罪です(刑法249条)。
恐喝とは、暴行・脅迫によって、相手の反抗を抑圧するに至らない程度に恐怖させ、金銭等の要求することをいいます。
恐喝罪の法定刑は「10年以下の懲役」です(恐喝罪の時効は7年です)。
罰金刑は規定されていないため、起訴されると必ず公開の法廷での裁判となりますし、有罪判決を下されると必ず懲役刑(執行猶予含む)となる重い犯罪です。
恐怖の感じ方は人それぞれ異なりますが、同じ行為が被害者の感じ方で恐喝になったりならなかったりしないよう、「恐怖を感じさせる程度の暴行・脅迫」と言えるかどうかは、一般人を基準として裁判官が客観的に判断します。
具体的には、暴行行為や脅迫文言そのものだけではなく、犯行時間や場所、周囲の状況、相手の年齢、体格、職業、地位などの事情を考慮して判断されます。
例えば、ぼったくりバーで、体格の良い男性数名で被害者を取り囲んで「金を払わなければ、どうなるか知らないぞ!」と言った場合、「恐怖を感じさせる程度の暴行・脅迫」に当たり得ると考えられます。
対して、一般的な飲食店で小柄な一般女性店主が格闘家の男性集団に「金を払わなければ、どうなるか知らないぞ!」と言ったとしても、恐喝に当たらないと判断される可能性があります。
これに対し、「恐怖を感じさせる程度」を超えて反抗できなくなる程度の暴行脅迫をした場合、強盗の問題になります。
例えば、拳銃やナイフを突きつけるなど、相手の反抗ができなくなる程度の暴行・脅迫を加えて金銭等を交付させた場合は、恐喝罪ではなく、強盗罪(236条)となり得ます。
恐喝罪は相手の財産だけでなく、意思決定や行動の自由をも保護しているため、告げた内容が正当な権利行使などであったとしても、恐怖心を抱かせる程度の暴行・脅迫によって財物を交付させれば、恐喝罪が成立する可能性があります。
例えば、貸したお金の返金を要求する際に「払わないと海に沈めるぞ!」と告げたり、会計の際に「支払いをしないと店から1歩も出さない」と告げる行為などです。
返金やサービスの支払いを求めることは正当な権利行使ですが、告げ方によっては恐喝となり得る可能性があります。
当然、許された範囲内での権利行使であれば、違法性が阻却されることとなります。
恐喝罪には未遂処罰規定があり、恐喝行為、すなわち暴行・脅迫を開始した時点で未遂罪が成立します。
そのため、金品が交付されなかったとしても、恐喝未遂罪で処罰されます。
恐喝罪にいう「財物」とは、金品のほか、不動産や麻薬等の禁制品も含まれます。
財産上不法の利益とは、不法な手段によって利益を得ることを言います。
例えば、借金の支払いを免除させるなどです。
令和2年に刑事事件として処理された恐喝事件のうち、約75%が逮捕されています。
逮捕されたもののうち、その後、検察庁に送検され、勾留されたのは約97%です。
刑事事件として最も多い窃盗罪の逮捕率が32%、勾留率が85%ですので、恐喝罪が逮捕・勾留される可能性が高い犯罪であることが分かります。
長期間身柄拘束が続くと、会社等を欠勤することを余儀なくされ、捕まったことを他の人に知られたり、その結果、日常生活へ影響を与える恐れがありますので、一刻も早い身柄の解放(釈放)を目指すことが重要です。
逮捕や勾留といった身柄の拘束が行われるのは、
①証拠隠滅の恐れ(物的証拠の破壊、被害者を脅したり、関係者との口裏合わせなど)
②逃亡の恐れ
がある場合です。
早期釈放を実現するためには、できるだけ早く検察官や裁判官に証拠隠滅や逃亡の恐れがないことを示す必要があります。
具体的には、家族などの身元引受人を用意したり、反省の態度を示していることを検察官や裁判官に意見書という形で提出したり、また勾留決定がなされた後は勾留決定の取消を求める旨の申立て(準抗告)を行うことができます。
恐喝罪のように被害者が存在する事件の場合、被害者に謝罪の気持ちを伝え、示談することが、不起訴を獲得する上で重要です。
示談をして被害者にお許しいただけた場合には、不起訴になる可能性が高くなります。
示談できない場合でも、被害者に謝罪と賠償の申し入れをしていること自体が有利な上場となります。
また、恐喝をせざるを得ないような状況に追い込まれていたなどの場合には、動機や犯行に至る経緯によって情状が変わるため、なぜ恐喝をするに至ったのかの事情を説明する必要があります。
令和元年の検察統計年報によると、恐喝罪の起訴率は24%です。
恐喝罪には罰金刑がないため、全て公開の裁判を求める起訴です。
不起訴率は約50%です。
不起訴の内訳は、起訴猶予と嫌疑不十分が半分ずつです。
起訴猶予とは、犯罪事実は明白であるものの、情状等(犯罪の軽重、示談の成否など)によって不起訴とされてものをいいます。
嫌疑不十分とは、犯罪の成立を認定すべき証拠が不十分な時です。
次に、起訴されたうち、約65%が執行猶予付判決です。
裁判では、前科の有無、被害弁償や示談ができているか、暴力団であるかなど個別具体的な事情を考慮して判決が決められることになりますが、恐喝罪のような被害者の存在する事件の場合、示談ができれば執行猶予付判決となる可能性が高いです。
恐喝を受けたと思ったら、まず警察に相談することが重要です。
録音データ、メールやLINEなどの証拠があるのなら、持っていくことで具体的な話をできることが多いです。
どのような証拠を持って良いかわからなかったり、警察に一人で怖いという方もいると思います。
また、加害者と示談交渉をしたくても自分でどうやって良いかわからない方もいると思います。
上原総合法律事務所では、被害者側の弁護もお受けしておりますので、遠慮なくご相談ください。
上原総合法律事務所が被疑者側と被害者側の両方の弁護をする理由についてはこちらをご覧下さい
恐喝罪は、要求時の言動によっては、誰しもが犯す恐れのある身近な犯罪であります。
身近な犯罪ではありますが、身柄を拘束される可能性が極めて高く、起訴されてしまうと懲役刑しかない重い犯罪です。
そのため、できるだけ早く手を打つ必要がある犯罪の1つであると言えます。
当事務所では、恐喝事件を多数処理してきた元検事の弁護士が複数在籍し、個々の状況をじっくりお聞きし、それぞれの事案に即して、示談交渉、早期の身柄の解放や勤務先への対応、取調べなど必要な弁護活動を誠心誠意行っております。
恐喝罪を犯したことで不安になられている方、恐喝の被害に苦しんでいる方は、是非お気軽にご相談ください。
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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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