保護観察とは?対象者や期間、生活のルールについて

基礎知識
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弁護士 上原 幹男

弁護士 上原 幹男

第二東京弁護士会所属

この記事の監修者:弁護士 上原 幹男

司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。

元検事(ヤメ検)の弁護士が保護観察について解説。保護観察となる場合やその内容、保護観察中の留意点等についても解説しています。

第1 保護観察とは

保護観察とは、犯罪や非行を犯した者が、刑務所等の矯正施設に収容されることなく、地域社会の中で更生を図るための制度です。更生保護法に基づき、国の保護観察所や地域の保護司が協力して、指導・監督・支援を行います。

保護観察の目的は、単なる処罰を与えるのではなく、対象者が社会復帰を果たすための支援を行い、再犯を防ぐことにあります。また、地域社会の安全を確保するためにも重要な役割を果たしています。

この制度の意義は、社会との関わりを維持しながら更生のチャンスを与える点にあります。

矯正施設での拘禁生活に比べ、社会生活の中で更生を図ることが可能になるため、対象者にとっても家族や社会にとっても大きな利点がありえます。

第2 対象者(更生保護法第48条)及びその期間等

1 保護観察付執行猶予判決を受けた者

裁判で有罪となり、保護観察付執行猶予の判決(刑の一部について執行猶予となった場合を含みます。)を受けた者をさします。

たとえば、懲役2年・執行猶予5年・付保護観察という判決が出た場合、実刑ではないためすぐに収容されることはありませんが、5年間の執行猶予期間中は保護観察が義務付けられることになります。

一般的には、執行猶予とはなったものの、再犯の防止や更生といった観点からやや不安がある場合に保護観察も付される場合が多いと考えられます。

また、再度の執行猶予(執行猶予期間中に有罪判決を受けたものの、その判決でも執行猶予が付された場合)には保護観察が付されます。

※再度の執行猶予について下記の記事も参照ください。
再度の執行猶予とは?元検事(ヤメ検)の弁護士が執行猶予中の再犯でも執行猶予となる要件等について

なお、保護観察が付されている場合においても執行猶予が取り消されれば収容されることとなるのは同様です。

※執行猶予が付される場合や執行猶予中の注意点等については下記の記事もご参照ください。
執行猶予とはなにか?元検事(ヤメ検)の弁護士が懲役や禁固で実刑となる場合との違いなどついて
執行猶予の満了とは?元検事(ヤメ検)の弁護士が執行猶予中の注意点や期間の満了等について

2 仮釈放者

実刑となって刑務所に服役することとなったものの、その後仮釈放された者をさします。
刑期の残り期間中、保護観察が適用されます。
たとえば懲役5年の実刑判決を受けた者が刑期のうち4年6か月を終えた段階で仮釈放された場合、残りの6か月の仮釈放期間は保護観察がつくことになります。

3 少年院の仮退院者

少年院での処遇中に更生の見込みがあると判断され、仮退院した少年が対象です。
20歳になるまで保護観察が継続される場合があります。

4 家庭裁判所で保護観察処分を受けた少年

家庭裁判所の審判で、少年院送致よりも軽い処分として保護観察が科される場合があります。
保護観察は、犯罪の背景や更生の可能性に応じて適用されます。特に少年事件では、社会内での更生を重視した対応がとられることが多いです。

保護観察の対象者は、犯罪や非行を犯した者です。
更生保護法第48条に基づき以下のように分類されます。

第3 保護観察の内容とは

保護観察は、大きく「指導監督」と「補導援護」の2つの内容に分かれます。
また、これらの活動は保護観察所や保護司によって実施されます。

1 指導監督

対象者が犯罪を再び犯さないように監視し、生活態度の改善を促す役割を担います。具体的には

  • 定期的な面談による生活状況の確認
  • 遵守事項(後述)の指導
  • 問題行動の未然防止

2 補導援護

更生のための支援を行い、生活基盤の安定を図ります。たとえば

  • 職業訓練や就職先の紹介
  • 住居の確保や家族関係の調整

3 誰が行うのか

保護観察の実施主体は、以下の2つに分けられます。

保護観察所:国家機関として専門職員が指導や監督を行います。
保護司:地域社会で活動するボランティアで、対象者に寄り添った支援を提供します。

第4 保護観察中の生活(遵守事項、住居、保護司との面談)

保護観察中には、対象者が守るべき「遵守事項」が設定されます。

これは、対象者が社会生活を送るうえでの基本的なルールです。

1 一般遵守事項

全ての対象者に共通する基本ルールです。

  • 指定された住居に住み、勝手に転居しない。
  • 保護観察所や保護司との面談に応じる。
  • 規律正しい生活を送り、犯罪や非行をしない。

2 特別遵守事項

個別の事情に基づいて課されるルールです:

  • 特定の人物との接触禁止。
  • 酒、薬物、ギャンブルの禁止。
  • 外出時間の制限や門限の設定。
  • 薬物検査等

3 住居の確保

安定した住居が求められます。住環境が不安定な場合、保護観察所や保護司が住居の確保をサポートします。

第5 保護観察を受けることのメリット・デメリット

1 メリット

  1. 社会生活を維持できる:家族や仕事を失わず、社会との繋がりを保ちながら更生が図れる。
  2. 支援を受けられる:職業訓練や住居支援など、生活基盤を整えるためのサポートが受けられる。
  3. 早期の社会復帰:矯正施設に収容されるよりも早い段階で社会復帰が可能になる。

2 デメリット

  1. 行動の自由が制限される:転居や外出に制約があり、生活に一定の制限がかかる。
  2. 社会的な偏見:保護観察を受けていることが知られた場合、周囲からの偏見や差別を受ける可能性がある。
  3. 違反時のリスクが大きい:遵守事項を破ると、矯正施設への収容等、重い処分を受ける可能性がある。また保護観察付執行猶予期間中に何らかの犯罪を犯した場合、その罪についての刑罰は実刑となる

第6 保護観察の遵守事項に違反したらどうなる

保護観察中の遵守事項違反には、次のような処分が科されることがあります。

1 指導強化

軽微な違反であれば、保護司や保護観察所が生活態度の改善を指導します。

2 保護観察の取消し

重大な違反がある場合、保護観察処分が取り消されることがあります。執行猶予者は刑務所に収容され、仮釈放者は再び刑務所に戻る可能性があります。

3 再処分や刑事責任

違反行為が犯罪に該当する場合、新たな刑事責任を問われる可能性があります。

第7 お気軽にご相談ください

上原総合法律事務所は、元検事8名(令和6年10月31日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
 

刑事事件に関するお悩みがある方は、ぜひ当事務所にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。

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