
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
「再度の執行猶予」とは、刑の執行猶予中に再度犯罪をした場合に、もう一度執行猶予にしてもらう場合のことです。
再度の執行猶予になることはそう多くありませんが、確かに存在します。
この記事では、元検察官の弁護士が、再度の執行猶予について説明します。
1 再度の執行猶予はどういうものなのか
裁判所や検察庁では「執行猶予は一生に一度限り」などと言われます。
これは、「一度執行猶予にされたにもかかわらず再度犯罪を犯したら(再犯)、再犯については実刑になるべき」という考えを述べたものです。
これには、執行猶予期間中に再犯をしてしまった場合はもちろんのこと、執行猶予期間を無事に過ごした後に犯罪をした場合でも、一度社会内で更生するチャンスを与えられたのにもかかわらず再犯をした以上、実刑になるべきだという意味が含まれることもあります。
この考え方からもわかるように、再度の執行猶予は例外的なものです。
2 再度の執行猶予になる法律上の条件
再度の執行猶予は、執行猶予中であっても、「情状に特に酌量すべきことがある」場合で、再犯についての判決が拘禁2年以下であるとき(※)に言い渡され、執行猶予期間中保護観察を受ける義務があります(刑法第25条第2項本文、第25条の2第1項)。
※執行猶予中にすでに保護観察を受けている場合、再度の執行猶予にはなりません(刑法第25条第2項但書)。再度の執行猶予の場合必ず保護観察を受けることになるので、再度の執行猶予中に再犯をしてしまった場合には「再々度の執行猶予」はありません。
3 どうやったら再度の執行猶予になるのか
再度の執行猶予は、「情状に特に酌量すべきことがある」場合にのみ認められます。
執行猶予中にまた犯罪をしてしまったのだから、さらに執行猶予とするためには、初めの執行猶予の場合よりもさらに被告人のために酌量(しゃくりょう)すべき情状が必要だ、と考えられています。
この「情状に特に酌量すべきことがある」場合とは、犯罪の情状が特に軽微で実刑にする必要性が小さく、かつ、更生の見込みが大きいことを意味すると考えられています。
このように、通常の執行猶予に比べ、再度の執行猶予が認められる可能性は高くありません。
ですが、諦めるべきではありません。
再犯に及んだ事情や犯行後の事情などに、情状として特に酌量すべきことがある場合には、しっかりと裁判所に理解してもらうことで再度の執行猶予になる可能性はあります。
酌量すべき事情の内容や犯罪類型別に重視すべき点は初回の執行猶予と共通する部分も多いため、詳細はこちらの記事をご欄下さい。
執行猶予を獲得するには?元検事の弁護士が執行猶予となるための弁護活動や条件について解説
他方で、再度の執行猶予を得るためには、初回の執行猶予を受けた際との違いをアピールする必要がある場合も少なくありません。
一度チャンスを与えられたにも関わらずそれを活かせなかった、というところからのスタートですので、被告人自身の意図、周囲のサポート等の事情が、初回の執行猶予を受けた段階とは異なるものであり、今度こそ再犯をせず社会内で更生できるのだと裁判官に強くアピールすることが重要です。
さらに、そもそもの再犯の内容や経緯についても酌むべき点が多いというのであれば、その内容も的確に主張していく必要がありますし、被害者のいる犯罪類型であれば謝罪や被害弁償、示談も重要になってきます。
また、再度の執行猶予にならなかったとしても、再度の執行猶予を得るために反省を深めて再犯予防体制を整えることは無駄にはなりません。例え再度の執行猶予が認められず実刑となってしまった場合でも、酌量すべき事情が多ければ刑期が短くなるという影響もありえますし、社会復帰後のことまで考えれば、更生へ向かう準備は将来的に必ず役に立ちます。
執行猶予中の再犯だからといって諦めずに、最善を尽くすべきです。
4 お気軽にご相談ください
上原総合法律事務所は、元検事弁護士の集団で、刑事事件に精通しています。
執行猶予中の再犯の場合でも、刑務所を避けられるよう、事案ごとの事情を詳細に把握した上、検察官、裁判官の考え方なども踏まえた最善の弁護をします。
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