IT導入補助金は、補助率、採択率ともに高く、中小企業等にとって有益な制度です。
他方で高い補助率、採択率を悪用して不正受給等の温床ともなりうる側面があり、近時、中小機構等は積極的に調査を行う方針を明らかにしています。
この記事では、どのような場合に不正受給や詐欺等になりうるかや、具体的な対応策について、元検事の弁護士が解説します。
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IT導入補助金とは、中小企業等がITツールを導入するに当たって支出した費用について補助金を受けられるという制度です。
対象となるITツールにはソフトや機器等があり、それらについてのサポート費用等も補助金の対象となりえます。
補助率も50%以上と高く、業務効率化等のためデジタル化を進めたい中小企業等にとっては有益な制度といえます。
IT導入補助金の対象となるITツールは、IT導入補助金事務局によって登録を受けたものに限られ、当該ITツールを提供するITベンダーについても、IT導入支援事業者として登録を受けている必要があります。
また、補助金の交付を受けるためには、IT導入支援事業者のサポートも不可欠です。
まとめると、IT導入補助金とは、中小企業等(制度上「補助事業者」と呼ばれます。)が、「IT導入支援事業者」として登録を受けているITベンダーが提供する、登録されたITツールを導入した場合に、その費用について50%程度の補助を受けられる制度です。
この補助金には通常枠、インボイス枠など様々なバリエーションがありますが、ここでは詳細は割愛します。
詳細は同補助金のサイトをご参照ください。
IT導入補助金とは | IT導入補助金2024 (smrj.go.jp)
不正となりうるパターンは様々であり、例えば事務局のサイトでは
1.本補助事業と同一の内容で国(独立行政法人を含む)から他の補助金、助成金等の交付を重複して受けていた場合。
2.事業期間中及び補助金交付後において、不正行為等、情報の漏洩等の疑いがあり、補助事業者として不適切な行為を行っていた場合。
3.補助事業者自身が行うべき行為(申請マイページの開設及びその後の交付申請における手続き等)を当該補助事業者以外が行っていた場合(なりすまし行為)。
4.ITツールの販売金額に占める補助事業者の自己負担額を減額又は無償とするような販売方法(形式・時期の如何を問わず、補助事業者に実質的に還元を行うもの)あるいは、一部の利害関係者に不当な利益が配賦されるような行為を行っていた場合。
が列挙されていますが、これらに限定されるものではありません。
IT導入補助金は、ITツールの導入のために支払った費用についての補助金で、受給するためには、補助事業者とIT導入支援事業者双方の協力が必要です。
そのため、補助事業者(中小企業等)単体で不正受給に該当するような行為を行うことは通常は困難で、多くは補助事業者とIT導入支援事業者が結託して、あるいは一方が他方を半ば騙して巻き込むような形で不正受給が行われます。
※意図せず不正受給に巻き込まれてしまったという場合については下記の記事をご参照ください。
IT導入補助金の不正受給や詐欺に意図せず関与してしまった場合のリスクや調査等への対応策は?元検事の弁護士が解説します。 | 元検事の弁護士へのご相談なら (keiji-kaiketsu.com)
おそらく、最も典型的なケースは、上記では4に分類される、実際には価値の低いITツールについて高額で提供することにより高額の補助金の交付を受けつつ、IT導入支援事業者に支払った費用の一部についてキックバック(還流や実質的還元などともいいます。)を受け、補助金による利益を補助事業者とIT導入支援事業者で分け合うというパターンかと思われます。
また、そもそも一度費用を支払ってキックバックを受けることすらせず、費用を支払ったように見せかけるだけという手法もありえます。
例えば、実質的な価値の乏しいITツールを100万円としておき、いったん補助事業者からIT導入支援事業者に100万円を支払いIT導入補助金50万円の交付を受けた上、IT導入支援事業者から75万円を補助事業者にキックバックすれば、下記のように、補助金50万円について、その利益を25万円ずつ補助事業者とIT導入支援事業者で分け合うような形になります。
【補助事業者】
-100万円(支払)+50万(補助金)+75万(キックバック)=25万円
【IT導入支援事業者】
100万円(被支払)-75万円(キックバック)=25万円
このようなパターンでは、IT導入支援事業者やその関連会社が多くの補助事業者を勧誘し、補助事業者は甘い言葉に半ば騙されるような形で関与してしまったという状況もしばしば見受けられますが、たとえ「不正ではない、犯罪ではない」と説明されていてそれを信じていたとしても、支払った費用の一部がキックバックされることなどを認識していれば、やはり不正受給や詐欺の共犯者として責任を問われることとなりえます。
また、こういった場合には、費用のキックバックを仲介する別会社も関与していたり、キックバック等について経理上の操作等も必要になるため、中には専門資格を持つ者も関与するなどしている組織的な事案もありますので、「専門家も関与しているから違法ではないのだろう」と安心できるわけでもありません。
また、ITツールについても登録を受けているからといって必ずしも実態が伴っているものとは限らず、実際には価値の低いものや、ITツールたる部分はハリボテに過ぎないといった場合もありえます。
過去の具体的な例としては、逮捕者も出た「ワールドエージェント」というIT導入支援事業者が関与していた事案(※詳細はこちらの記事をご覧ください。)も上記のパターンの事案であり、テレビ局の部長や厚生労働省の職員等も関与していたことなどから大々的に報道されました。
他方で、不正受給になりうるのは、上記のようなパターンに限られません。
費用の金銭でのキックバックがなくとも、実際には価値の低いITツールを高い費用での提供とし補助金の交付を受けつつ、他の商品やサービス(例えば広告宣伝、コンサルティング、保守点検等)を安価、実質的に無償で提供するというパターンや、本来IT導入補助金で対象となるITツールにはなりえないようなサービスを、形式的なものに過ぎないITツールと抱き合わせることにより補助金の交付を受けるといったパターンも想定されます。
後者の場合などは、どこからが不正受給等とされるのか線引きが難しく、グレーゾーンとも呼べる部分もあるかもしれませんが、他方で不正受給や詐欺等と評価されるリスクがあるので注意が必要です。
まず第一に考えられるのが、調査を受けて発覚する場合です。
IT導入補助金の後年窓口のサイトにおいても、補助事業者及びIT導入支援事業者に対する不正受給等に関する調査を実施していることが明言されており、弊所へのご相談やご依頼をいただいた件を通じても、補助事業者とIT導入支援事業者の双方に対し、実際に調査が行われている状況がうかがわれます。
調査については、IT導入補助金の交付等についても取り扱っていた事務局主体の調査、中小機構による調査のみならず、会計検査院主体の調査も行われているようです。
調査の規模の全体像はなお明らかではありませんが、コロナ禍以降、各種助成金等の不正受給が激増し、持続化給付金、雇用調整助成金等の不正受給について大規模な調査が行われたことは記憶に新しいところですし、公式サイトで明言していることも踏まえると、IT導入補助金についても大規模な調査が実施されることが見込まれます。
調査の手法は事案によって様々かと思われますが、資料の提出要求といった簡易なものから、事業所を訪問しての本格的なものまで実施されているようですし、当初は資料の提出要求等のみであっても、疑わしい状況等があれば、本格的な調査が行われ、問題があればいずれ明らかになる可能性が大きいと思われます。
なお、調査については、交付規程第32条に定めが置かれており、正当な理由なく調査を拒否した場合についても交付決定が取り消されうることとされています。
また、事務局等への通報をきっかけとして、不正受給等が発覚するケースも考えられます。
例えば、補助事業者やIT導入支援事業者の従業員が自身の勤務先の不正について通報するパターンや、退職後に通報するパターンが考えられます。
IT導入補助金に限った話ではなく、他の助成金等の不正受給の事案でも、特に円満とは言えない形で退職等した従業員による通報はしばしば見受けられるところです。
また、自社の従業員等に限らず、IT導入支援事業者の勧誘を受けて不審に感じた中小企業等が通報したり、その反対も想定されるところです。
事務局等も通報をそのまま鵜呑みにして取消等をするわけではないと思われますが、具体的な通報等があれば、強い疑いをもって徹底的な調査が行われることが見込まれます。
当該事業者への直接的な調査や通報がなくとも、芋づる的に不正が発覚するというパターンも想定されます。
特に、IT導入支援事業者やその関係会社等が不正なスキームを構築し、多数の補助事業者を勧誘して多額の不正受給が行われているような場合、一件の不正が発覚すれば、その件に係るIT導入支援事業者等が関与している他の不正についても芋づる式に発覚することがままあります。
関与した相手方が別の申請について不正と認定された、あるいは調査を受けている様子だといった場合は要注意です。
不正受給等の場合におけるペナルティについては、IT導入補助金のサイトで「IT導入支援事業者の登録取消、 補助事業者の交付決定の取消の他、事業者名の公表、中小機構が所管する全てのIT導入補助金事業での登録取消、警察への通報」等の措置があるものと明言されています。
交付決定の取消があれば、給付を受けた補助金の全額はもちろん、それに加え、年利10.95%の加算金、延滞金も併せて返金しなくてはなりません。
年利ですので、不正受給の発覚や返金が遅くなればなるほど、返金総額は大きくなってしまいます。
このペナルティについては、IT導入補助金の交付規程第28条及び第29条に明確に定められています(最新の24年度通常枠第7回公募の規定の場合)。
事務局のサイトの「事業者名の公表」が、どのような場合にどの範囲でなされるのかは、現時点ではなお判然としない部分があります。
例えば、持続化給付金、家賃支援給付金、一時支援金、月次支援金、事業復活支援金については、不正受給者が経済産業省のサイトで公表されており(https://www.meti.go.jp/covid-19/fusei_nintei.html#jizoku)、持続化給付金給付規程や家賃支援給付金給付規程には不正受給の場合には公表となる旨の定めが置かれています。
他方で、IT導入補助金の交付規程には、不正受給の場合の公表に関する明確な定めは見当たらず、不正に交付を受けた補助事業者について実際に公表された事例も見当たりません(刑事事件化し、捜査機関による報道発表等がなされたであろう事案はあります。)。
とはいえ、IT導入補助金の公募要領の「留意事項」には、申請者についてなりすまし行為があったと事務局が判断した場合には、申請者(補助事業者)及びIT導入支援事業者について公表する場合がある旨記載されているほか、「事務局及び中小機構は、必要に応じて補助事業者又は IT 導入支援事業者に対して、導入した IT ツールの導入実態及び導入効果等について現地確認やヒアリング等を行う場合があり、これらによって得られた情報を公開する場合がある。」ともされており、これらを根拠としての公表がなされる可能性もあります。
今後、補助事業者についても公表がなされていくのか、もしそうであれば何を根拠とするものでどのような基準で公表されるのか、また公表を回避しうる場合があるのかなどについては、状況を注視していく必要がありそうです。
登録を取り消されたIT導入支援事業者については、IT導入補助金のサイトのトップページにおいて、既に多数の件が公表されています(https://www.it-hojo.jp/)。
これは、交付規程において、登録されたIT導入支援事業者が公表されることとなっていることを踏まえ、登録が取り消されたIT導入支援事業者を公表したものではないかと推察されるところですが、公表についての明確な規定が見当たらないにもかかわらずこのような公表がなされることについては疑問もありうるところです。
不正等の疑義が生じた場合、IT導入支援事業者としての登録、またITツールとしての登録が取消となりうる旨、交付規程に定められています。
ここで特に注意すべきなのは、不正とは認定されなくても登録が取り消される可能性があるという点です。
交付規程によれば、取り消されうるのは「IT導入支援事業者及び補助事業者における虚偽や不正、第5条第2項で規定する支援の責務を果たしていない、又は第7条に規定する業務を行っていない、その他不適当な行為が行われていると疑義が生じ、その疑義に係る調査等を行った結果、IT導入支援事業者として不適当であると事務局が判断した場合」と定められており、登録の取り消しは、厳密に言えば不正と認定された場合に限られないとも解釈できるのです。
もし、事務局の疑義が払拭できないというレベルで取り消されうるのでしたら、疑われれば積極的にその疑いを晴らさなくてはならないでしょうし、登録が取り消されたIT導入支援事業者は公表もされていること、当該年度のみならず中小機構が所管する全てのIT導入補助金事業での登録取消とされていることからすると影響も非常に大きく、注意する必要があります。
さらに、IT導入支援事業者がその登録を取り消された場合、当該IT導入支援事業者に係る交付申請全てについて交付決定が取り消されうることとなります。
※ただし、交付規程では上記の場合でも、「当該補助事業者の責に帰する事由でないIT導入支援事業者の登録取消の場合、当該補助事業者は本事業に交付申請を行うことができる。」とされています。
以下で詳述しますが、IT導入補助金の不正受給は、詐欺等の犯罪にも該当する可能性があります。
既に刑事事件化して報道された例もありますし、捜査機関からの聴取等を受けたとしてご相談やご依頼をいただく事例もあり、現に事務局から警察への通報等がなされていることがうかがわれます。
IT導入補助金の不正受給は、犯罪として刑事事件に発展する場合もあり、IT導入補助金事務局も、警察への通報等を行う場合がある旨明言しています。
では、どのような犯罪になりうるのでしょうか。
本来、対象とならないようなITツールを対象となるかのように偽って登録を受け、それに基づいて補助金の交付を受ける、実質的には費用を支払わない(後にキックバックを受けたりする場合もこのように評価される可能性があります)のに支払ったかのように装って交付を受けるなどすれば、補助金を騙し取ったとして、刑法上の詐欺罪に該当し、最大で懲役10年の刑に処される可能性があります。
詐欺罪の法定刑に罰金はなく、懲役のみであるため、起訴される場合には必ず公判請求となり、公の法廷で審理を受けることとなります。
先述のワールドエージェントに関する事案(※詳細はこちらの記事をご参照ください。)は、ITツールの導入費用を支払ったかのように装ったという事案であり、現に詐欺罪で起訴されています。
補助金に係る予算の執行の適正化に関する法律(ここでは「補助金適正化法」といいます。)第29条第1項は
偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受け、又は間接補助金等の交付若しくは融通を受けた者は、五年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
と定めており、さらに同法第32条は
法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定のあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、当該法人又は人に対し各本条の罰金刑を科する。
と定めています。
要するに、補助金等を不正受給した場合、補助金適正化法違反として、会社の代表者等には最大で懲役5年及び罰金100万円、会社に対して罰金100万円の刑が科される可能性があるのです。
・詐欺と補助金適正化法違反の関係
以上のように、不正受給の場合に成立しうる犯罪は複数あります。
ですが、実際には詐欺罪の立件、起訴となる場合が多いかと思われます。
会社を処罰しようとする場合は別ですが、個人に着目した場合、法定刑(その犯罪で科すことのできる刑)は、詐欺が10年以下の懲役、補助金適正化法違反が5年以下の懲役と倍の差があり、双方が成立しうる場合、より重い(法定刑の高い)詐欺で処罰するのが一般的かと思われます。
なお、詐欺と補助金適正化法違反の関係については判例も存在し、最決令和3年6月23日(裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan)では、いずれの罪にも該当しうる保育事業に関する助成金の不正受給につき、詐欺罪での処罰を肯定しています。
・実際の処罰について
上記のような犯罪で立件された場合、起訴され、さらに有罪判決を受ける可能性も十分にあります。
補助金適正化法違反の場合、罰金刑のみという選択肢があり、略式手続(※略式手続についてはこちらをご覧ください。)の可能性もありますが、詐欺の場合、不起訴か公判請求しかありません。
また、公金の詐欺であること、被害額も多額となりうる等の事情により執行猶予が付されず、実刑となり実際に刑務所に長期間服役することとなる可能性も十分にあります。
・逮捕や実名報道の可能性も
刑事事件となった場合の不利益は刑罰そのものに限られません。
本来、有罪判決が確定するまでは無罪が推定されることが前提のはずですが、実際には逮捕や検察庁への事件送致、起訴の段階で報道され、大きな社会的制裁を受ける可能性があるほか、特に会社を経営されている立場の方にとっては、長期間の身柄拘束自体が極めて大きな不利益となります。
報道については、どの段階でどの程度の内容を報道発表するかは捜査機関次第と言わざるを得ませんし、逮捕や勾留について(※逮捕や勾留についてはこちらをご参照ください。)も、特に起訴された場合には長期間となる場合も少なくありません。
もし、不正受給をしてしまった、あるいは関与してしまったのではないかという場合、座して待つというのはおすすめできません。
後記のとおり、実際には関与等していないというのであれば、その疑いを晴らすための行動を起こすべき場合が多いと思われますし、関与等してしまったという場合にも、少しでもペナルティを軽減するための行動を起こすべきです。
まず、不正受給の場合には、自主的な申告と返還は行うべきでしょう。
これらについては、事務局も推奨しています。
これらの手段をとっても、交付決定の取消や加算金等を含めた返金については免れる可能性は低いと思われますが、捜査機関への通報等が実際になされるかという点などについては、事後的な対応の悪質さ、あるいは誠実さも影響しうるのではないかと思われるところであり、早期の自主的な申告と返還はプラスの評価に繋がるものと考えられます。
また、申請はしているものの交付は未了という段階であれば、なおさら交付の決定がなされる前に迅速に自主的な申告をすべきでしょう。
事案の重大さや悪質さなどから刑事事件化が見込まれる場合や、関連する事案について捜査機関の関与がうかがわれる場合などについては、さらに進んで、警察への自首を検討すべきです。
法律上刑の減軽事由となる刑法第42条の自首が成立するには、犯罪や犯人が捜査機関に発覚する前に自首することが必要ですが(※自首についてはこちらの記事をご参照ください。)、そうでなくとも、起訴不起訴を判断するに当たって、また求刑や判決の内容を決めるに当たっても、自首したことは有利な事情として考慮されます。
さらに、逮捕等を避けるという観点からも自首は有益です。
なぜなら、逮捕状を得るには、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれ等が認められる必要があるのですが(※逮捕についてはこちらの記事をご参照ください。)、自首という事情は、今更逃亡や証拠隠滅のおそれは認められないという逮捕を避ける方向に働く事情となるからです(要するに、自首をするような人なのだから逃げも隠れもしないだろうから、逮捕する必要はないだろうということです。)。
自首をする場合には、上記のような効果を最大限得られるよう、申告すべき内容を正しく伝えるとともに、場合によっては適切な証拠資料を持参することなども有益です。
もし、補助事業者の立場で、騙されるような形で不正受給に巻き込まれてしまった場合には、返金等は免れられないとしても、このような事態に巻き込んだIT導入支援事業者や勧誘役に責任追及をするという選択肢もありえます。
調査等を受けている、あるいはどうも疑義を抱かれているようだという場合、真実は不正受給ではないとしても、受け身でいると不当な結果になってしまう可能性があります。
まず、調査を行う事務局や中小機構、会計検査院などは、警察などの捜査機関でないため必ずしも調査や証拠に基づく事実認定のプロフェッショナルではありません。
ましてや、例えば円満とは行かない形で退職した元従業員からの通報や、自社の責任を軽減しようとする関係者の供述等は、必ずしも事実に沿ったものとも限らないため、誤った事実が認定され、それを前提に交付決定の取消やそれに伴うペナルティが生じるおそれもあります。
また、IT導入補助金の公募要領の「留意事項」においては、下記のように記載(太字は筆者によるものです。)されており、費用のキックバックを伴うような不正等が疑われる場合、不当な申請という「蓋然性」や「不適切」であるとの判断で交付決定を取り消すという、不正の事実が認定まではできなくても、より低いハードルで容易に交付決定が取り消されうるような記載がなされています。
本事業におけるITツールの販売金額に占める補助事業者の自己負担額を減額又は無償とするような販売方法(形式・時期の如何を問わず、補助事業者に実質的に還元を行うもの。キャッシュバックを含む)あるいは、一部の利害関係者に不当な利益が配賦されるような行為については、本事業全体を通じて補助金交付の目的に反する行為として取り扱うこととしている。
事務局及び中小機構は、上記のような行為が疑われる場合には、交付規程に基づき、以下のとおり措置を講じることができる。
1) 補助事業者及び IT 導入支援事業者に対し、立入調査(訪問のみならず補助事業に関する一切の報 告・資料要求・前述に付随して関係者と見做される者への調査等を含む)を、事前に連絡なく行うこと。
2) 立入調査の対象となった申請が不当な申請である蓋然性が高く、補助事業者及びIT導入支援事業者として不適切であると判断した場合、その交付決定を取り消すとともに、その不当な申請に関わっ たIT導入支援事業者に対しIT導入支援事業者およびITツールの登録取消処分を行うこと。
これらの記載等を踏まえれば、客観的には不正ではない場合であっても、疑いを晴らすべく、積極的な活動を行うべき場合が多いと思われます。
その場合にはもちろん、どのような疑いを抱かれているかに応じ、正確かつ的を射た内容の主張をすることが必要ですし、適格な根拠資料等を示していくことも非常に重要です。
IT導入補助金については、様々なパターンの不正がありえ、加算金等を含めた返金等のペナルティに加え、詐欺等として刑事事件にも発展する可能性があります。
また、他の助成金等と同じように、積極的かつ大規模な調査が行われることも予想される状況となっています。
実際に不正を行った場合はもちろん、不正に関与してしまった、巻き込まれてしまったのではないかと不安な場合や、不正ではないのに疑われているという場合にも、迅速な対応が望ましいといえます。
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上申書等作成で署への同行なしの場合 着手金:330,000円(税込)、成功報酬:220,000円(税込)(返還終了時点)
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身柄拘束されている場合 880,000円(税込)
*余罪立件された場合
在宅事件1件あたり 330,000円(税込)
身柄拘束されている場合1件あたり 440,000円(税込)
⑵ 報酬金
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イ 略式罰金 330,000円(税込)
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弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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