覚醒剤(覚せい剤)で家族や知人が逮捕された方は、突然のことで何が起こっているのか、この先どうしたら良いのか、今後どうなっていくのか等、とても不安な気持ちを抱えていると思います。
また、覚醒剤で警察に任意同行した後に一度帰された方も、この先逮捕されるのか、いつ逮捕されるのかなど不安な気持ちを抱えて過ごしていると思います。
以下、覚醒剤取締法違反とは何か、覚醒剤取締法違反で逮捕された場合の流れやそれに伴う弁護活動、そして元検事の集団である当事務所にできることなどを説明します。
Contents
覚醒剤取締法違反は、使用、所持、輸出入などが覚醒剤取締法違反として犯罪となりますが、その態様で法定刑・時効が異なります。
■覚醒剤の使用、所持、譲渡し、譲受け、覚醒剤原料の輸入、輸出、製造の場合
➤「10年以下の懲役」
➤ 時効:7年
■営利目的での覚醒剤原料の輸入、輸出、製造の場合
➤「10年以下の懲役、情状により300万円以下の罰金併科*1」
➤ 時効:7年
■覚醒剤原料の使用、所持、譲渡し、譲受けの場合
➤「7年以下の懲役」
➤ 時効:5年
■覚醒剤の輸入、輸出、製造の場合
➤「1年以上の有期懲役」
➤ 時効:10年
■営利目的での覚醒剤の所持、譲渡し、譲受けの場合
➤「1年以上の有期懲役、情状により500万円以下の罰金併科」
➤ 時効:10年
■営利目的での覚醒剤の輸入、輸出、製造の場合
➤「3年以上の懲役、情状により無期もしくは3年以上の懲役及び1000万円以下の罰金併科」
➤ 時効:15年
となっています。
*1「罰金併科」とは、懲役刑に加えて、罰金についても判決で言い渡される場合をいいます。
上記に加え、犯人が所有・所持している覚醒剤は原則没収されます。
覚醒剤取締法違反で逮捕・勾留される割合はどれくらいでしょうか。
令和3年版犯罪白書(以下、出典同じ。)によると、覚醒剤取締法違反の場合、警察に発覚した事件のうち、約71%が逮捕されます。
逮捕された方のうち、検察庁に送致する前に釈放されるのは約0.3%とごくわずかです。これを送致前釈放と言いますが、この場合は、逮捕されてから48時間以内に身柄が解放されます。
上記のように送致前釈放されずに身体拘束されたまま検察庁に送致されると、警察から事件を受け取った検察官は、被疑者の勾留請求をするか否かを判断します。この判断は、犯行を認めているか、家族など身元引受人がいるか等が考慮されますが、約99%について勾留請求がなされます。
その後、裁判官は、検察官の勾留請求を受けて、被疑者を勾留する必要があるかどうかを判断します。勾留請求された事件のうち、約99%について勾留が決定され、10日間の身体拘束がなされます。
つまり、覚醒剤取締法違反で逮捕された人のうち、逮捕から3日以内に身柄が解放されることになるのは約1%となります。
以上のように、覚醒剤取締法違反は、逮捕されてしまうとほとんどの場合長い期間勾留されてしまうことが分かります。
覚醒剤取締法違反をしたという場合、弁護活動として大切になることは、主に、身柄解放と刑の減軽の2つです。
以下、詳しく説明します。
逮捕・勾留された場合、初めに10日間、勾留が延長されれば最長で20日間、警察の留置所から出られない状態になってしまいます。
勾留から解放されるためには、起訴されずに釈放されるか、起訴後に保釈される必要があります。
覚醒剤取締法違反を含む薬物事件で逮捕された場合、捜査機関は犯罪を裏付ける証拠をすでに入手済みで、証拠がはっきりしているため、弁解の余地がないことが多いです。通常、尿から覚醒剤が検出されたり、身体検査や家宅捜索により衣服や部屋から覚醒剤が発見されている場合が多く、証拠としてはより直接的なため、犯罪を裏付けることが容易だからです。そのため、覚醒剤取締法違反で逮捕された場合、基本的には勾留がなされ、そのほとんどが起訴されてしまいます。
覚醒剤取締法違反をして逮捕された場合になるべく早く釈放されるためには、なるべく早く起訴されて、なるべく早く保釈される、ということが必要になります。
なるべく早く起訴されるためには、取調べに対する対応が必要です。検察官は、必要な捜査を終えなければ起訴・不起訴の決定をすることができません。必要な捜査とは、覚醒剤の鑑定などに加え、どのようにして覚醒剤取締法違反が行われたかを解明する必要があります。そのため、警察官や検察官の取調べにおいて正直に罪を認めて捜査上必要なことを伝えたり、弁護士経由で伝えたりすることが大切です。
また、このように捜査上必要なことを伝えることで反省していることも示すことができるため、保釈請求が通りやすくなります。
起訴されずに釈放される場合は、無実であったり犯罪の立証が困難な場合となります。詳しくは、下記「無実の場合」をご覧ください。
刑の減軽については、執行猶予の獲得や量刑の減軽を目指して活動することになります。
起訴されてしまった場合、覚醒剤取締法違反は罰金刑がないため、確実に懲役刑となります。そのため、実刑を避けて執行猶予を獲得することが目標となります。
令和2年における覚醒剤取締法違反に関して、以下のような統計が出ています。
公判請求され、令和2年に第一審が終結した事件7020件のうち、
約32%が全部執行猶予判決
約16%が一部執行猶予判決
となっています。
同種前科があるかどうか、反省したり再犯防止の環境が整っているのか、覚醒剤の入手経路等との連絡を絶ったのかなど、個別の事情で判断されますが、公判請求されたうちの半数近くは執行猶予判決となります。
全部執行猶予判決と一部執行猶予判決の違いについては、「執行猶予,一部執行猶予,実刑について元検察官の弁護士集団が解説します」をご覧ください。
執行猶予を得るためには、再び薬物に手を染めることがないことを裁判所に伝えることが重要です。
特に、覚醒剤の使用は自分の意思ではなかなかやめることができないものですので、二度と覚醒剤を使用しないために治療・更生プログラムに参加したり、専門の病院やクリニックなどでの入院や治療をする必要があります。当事務所では、信頼できる病院を複数ご紹介できるため、これらの病院から最適な施設を選んでご紹介します。
事案に応じた最良の方策を選択し、執行猶予に結びつきやすい有利な事情を積み重ねて、これらを裁判官に対して十分に主張・立証することが必要です。
覚醒剤を使用していなかったり、覚醒剤と知らずに所持していたり、所持していること自体を知らなかったという場合、覚醒剤取締法違反は成立しません。そのため、弁護士が無罪を勝ち取るための証拠を探します。
このような場合には、その理由があるはずですから、理由を確認することが重要になります。例えば、鑑定された尿や薬物自体の採取過程に問題がないかについて調査することになります。
また、無実の場合、取調べ対応についても、弁護士としっかり打ち合わせをする必要があります。
警察官や検察官は「無実なら事実を正直に言えば良い」といって話をさせようとすることがありますが、そう思って取調べに応じていると、思わぬ形で揚げ足を取られる可能性があります。
逮捕されている事案では、弁護士が警察署に行ってこの打合せをします。弁護士との打合せには警察官の立ち会いはなく、誰にも聞かれることがないので安心して相談ができます。
冤罪により刑罰を受けないようにするための手段は事案によって大きく異なるため、個別のご相談が必要です。無罪の場合にどのように対処すべきかについては、詳しくは「無実の罪についての弁護士上原幹男の思い」や「無実の証明をしたい」をご覧ください。
まだ警察から連絡が来ていなかったり逮捕されていない場合でも、「夜も眠れない」「逮捕されたらと考えると不安でしかたない」という方も多いです。このような方は自首をすることを強くお勧めします。
覚醒剤取締法違反は放っておけば逮捕される可能性が高い犯罪です。ですが、自首をすれば逮捕を避けられる可能性が出てきますし、逮捕されたとしても裁判官が勾留しないでくれたりする可能性が出てきます。
さらには、自首しておけば、起訴されたとしても、執行猶予がつく可能性が上がります。自首についての詳細は「自首を考えている」をご覧ください。
上原総合法律事務所では、自首のサポートを行っております。
自首に行く前に警察にどのようなことを話すのかを弁護士と打ち合わせを行い、弁護士同行の上で自首することをお勧めします。自首すべきか迷っている方、どのように自首をしたらいいのかお困りの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。詳しくは「自首サポートの内容について」をご覧ください。
覚醒剤取締法違反事件では、まずは弁護士に相談し、事案に応じた適切な対応を速やかにとるように努めることが大切です。
特に、覚醒剤の使用は再犯の確立がとても高いため、もう二度と覚醒剤に関わることがないようにするための環境をしっかりと整える必要があります。
当事務所では、まずはじっくりお話をお聞きしてから、それぞれの事案に即して、示談交渉、早期の身柄の解放や勤務先への対応など必要な弁護活動を誠心誠意行います。お気軽にご相談ください。
上原総合法律事務所は、迅速にご相談をお受けできる体制を整えています。お電話、メール(メールでのお問い合わせはこちら)、LINE(LINEのご登録方法はこちら)からもお問い合わせいただけます。まずはお気軽にご連絡ください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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