
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
当事務所では、顧問先企業等から、労働問題に対するご相談を頻繁にいただきます。
労働者(社員)が関わる問題ですので、物心共に会社への影響は大きく、労働問題への対応を誤ると、紛争が拡大し、会社は大きなリスクを負うことになってしまいます。
労働問題には迅速かつ適切に対応を行う必要があり、その前提として、労働問題を会社の方が一定程度理解しておいていただく必要があります。
本記事では労働問題について、よくあるパターン・会社の対応・弁護士に依頼するメリットなどを解説します。

目次
1. 労働問題とは
「労働問題」とは、使用者(会社など)と労働者の間で生じるトラブルや、労働者の雇用に関する法令違反などを幅広く意味します。
会社が事業を継続するに当たって、労働者の存在は欠かせません。労働問題への対応を誤ると、会社は当事者の労働者だけでなく、他の労働者からの信頼も失ってしまい、事業運営に支障をきたすおそれがあります。
労働問題への対応は、労働基準法をはじめとする労働法や、労働者と締結している雇用契約などの内容を踏まえて検討する必要があります。
2. 労働問題のよくあるパターン・傾向
労働問題のパターンは非常に種類が多く、会社はさまざまな形で労働問題に見舞われるリスクを負っています。
2-1. 労働問題のよくあるパターン
以下に挙げるのは、会社で発生することの多い労働問題の一例です。
(例)
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2-2. 実際に発生している労働問題の傾向
厚生労働省は、全国の都道府県労働局や労働基準監督署などに「総合労働相談コーナー」を設置しています。
令和4年度(2022年度)において、総合労働相談コーナーに寄せられた個別労働紛争相談は31万6,815件でした。その内訳において、上位を占める相談内容は以下のとおりです。
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出典:
「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します p4|厚生労働省
001306666.pdf
3. 労働問題について、会社がとるべき対応
労働問題について、会社は労働者本人をはじめとして、さまざまな主体と折衝を行うことになります。相手方の種類や立場に応じて適切に対応し、労働問題の穏便な解決を目指しましょう。
以下のパターンごとに、労働問題について会社がとるべき対応を解説します。
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3-1. 労働者への対応
労働者本人から損害賠償請求や不当解雇の主張を受けた際には、会社として非があったのかどうかにつき、法的な観点から検討した上で対応する必要があります。
労働者の要求は、合理的な場合もそうでない場合もあります。合理的な要求に対しては誠実に対応しつつ、不合理な要求は毅然と拒否しましょう。
3-2. 労働者側弁護士への対応
労働者側に弁護士が就いた場合は、会社側も弁護士を立てて交渉することをおすすめします。弁護士はこの種の問題の専門家ですので、会社側が弁護士を立てずに交渉をすると、不必要に不利な交渉になったり、揚げ足を取られるおそれがあります。弁護士同士が和解案を話し合うことで、スムーズに労働問題を解決できる可能性もあります。
労働者側弁護士の主張内容には、労働者本人の意向が反映されます。そのため、弁護士の言うことだからと鵜呑みにせず、会社としても弁護士にアドバイスを求めて、法的な観点から適切な検討を行うことが大切です。
3-3. 労働組合への対応
労働組合が団体交渉を求めてきた場合、会社は拒否する正当な理由がない限り、団体交渉に応じる必要があります。正当な理由なく団体交渉を拒否すると、不当労働行為の責任を追及されるおそれがあるので要注意です。
労働組合との団体交渉に当たっては、労使対等の交渉環境を整えることが重要になります。交渉に出席する人数を労使同数とするなどの対応をとりましょう。
3-4. 労働基準監督署による調査への対応
労働基準法または労働安全衛生法の違反が疑われる場合、労働基準監督署による立ち入り調査(=臨検)が行われることがあります。
臨検が行われる場合、会社は労働基準監督官に協力しなければなりません。資料を隠したりせず、求められたら速やかに提出しましょう。
労働基準監督官から是正勧告を受けた場合は、それに従って迅速に是正措置を講じましょう。是正勧告を無視して悪質な違反状態を放置すると、刑事罰の対象になり得るので十分ご注意ください。
4. 労働問題を弁護士に依頼するメリット
会社において労働問題が発生したら、気軽に弁護士に相談してみることをおすすめします。事件を依頼するかはさておき、専門家である弁護士に相談をしてみることで、有益な指摘や気付きがあり得るはずです。以下で、具体的なメリットを述べます。
なお、弁護士は守秘義務を負っているため、相談内容が他者に漏れることはありません。弁護士に相談するデメリットは、相談料がかかることくらいです。
労働問題を弁護士に相談・依頼することの主なメリットは、以下のとおりです。
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4-1. 法的な観点から適切な主張ができる
弁護士は、法律上の要件・効果を踏まえた上で、労働問題について適切な主張を行います。
労働審判や訴訟などの法的手続きに発展した場合でも、裁判官などに対して、会社の主張を説得的に伝えられます。
4-2. 労働審判や訴訟などの対応を一任できる
労働者との間に発生した労働問題は、労働審判や訴訟などの法的手続きで解決すべき場合があります。これらの手続きは煩雑かつ専門的で、準備や対応に多大な労力がかかります。
弁護士にご依頼いただければ、労働審判や訴訟の手続きを全面的に代行し、会社のご負担を軽減いたします。
4-3. 会社に有利な証拠を集められる
労働問題を会社に有利な形で解決するためには、会社の主張を根拠づける有力な証拠を確保することが大切です。
弁護士は、会社にとって有利な解決を実現するため、証拠の収集についてもアドバイスいたします。
4-4. スピーディな解決が期待できる
会社と労働者本人の交渉は、労働者側が感情的になってしまい、なかなかまとまらないケースも多いです。
弁護士が介入すれば、論点を整理した上で交渉を行い、必要に応じて法的手続きも活用することで、労働問題の迅速な解決が期待できます。
4-5. 社内規程を整備できる
労働問題を予防するためには、コンプライアンスを重視した社内規程を整備することが効果的です。
弁護士にご相談いただければ、会社の実態に沿った社内規程の内容についてアドバイスいたします。社内規程のドラフトの作成・チェックについても、弁護士にお任せいただけます。
5. まとめ
労働問題を迅速かつ適切な形で解決するには、弁護士による法的なサポートが有益です。
労働問題を取り扱う弁護士は会社側(使用者側)と労働者側のどちらかの事件のみを取り扱う弁護士も少なくありませんので、会社経営をされている方や管理職の方は、会社側(使用者側)を取り扱っている弁護士を探して相談することをお勧めします。
上原総合法律事務所では、労働問題を抱えた会社の方からのご相談をお受けしています。
お悩みの方は、お気軽にご相談ください。