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職場におけるセクハラ防止策・対策|厚労省の指針を踏まえて元検事の弁護士が解説

上原総合法律事務所では、顧問先企業などから、セクハラについてのご相談をいただいています。
事業主は、職場におけるセクハラを防止するための措置を講じる義務を負います。労働災害や労働者の離職を防ぐためにも、徹底的にセクハラ対策を行う必要があります。

本記事ではセクハラ防止策・対策について、厚生労働省の指針を踏まえて解説します。

セクハラ・マタハラとは何かや、ハラスメントを放置した場合のリスクについて詳しくはこちらをご参照ください。

セクハラ加害者に対する処分の方法について詳しくはこちらをご参照ください。

各種ハラスメントやパワハラの詳細、ハラスメントによる精神疾患に関する労災認定についてはこちらをご参照ください。

1. 職場におけるセクハラ(セクシャルハラスメント)対策の重要性

事業主は、職場におけるセクハラを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません(男女雇用機会均等法11条1項)。

セクハラは、被害者である労働者が精神疾患を発症したり、職場に嫌気が差して離職したりすることに繋がります。セクハラが横行する職場では人材が定着せず、会社の業務に重大な悪影響が生じかねません。

各企業においては、厚生労働省のセクハラ防止指針を踏まえて、適切なセクハラ対策を講じることが求められます。

参考:
事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成 18 年厚生労働省告示第 615 号)|厚生労働省

2. 職場におけるセクハラの類型

セクハラには、「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」の2種類があります。

  1. ①対価型セクハラ
    意に反する性的な言動への労働者の対応により、当該労働者が労働条件について不利益を受けるタイプのセクハラです。
    (例)

    • ・労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため解雇した。
    • ・労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため不利益な配置転換をした。
    • ・日頃から労働者に関する性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため降格させた。
  2. ②環境型セクハラ
    労働者の意に反する性的な言動をし、就業環境を不快なものにさせて、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障を生じさせるタイプのセクハラです。
    (例)

    • ・労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該労働者が苦痛に感じて就業意欲が低下した。
    • ・労働者に関する性的な内容の情報を、取引先へ意図的かつ継続的に流布したため、当該労働者が苦痛に感じて仕事が手につかない。
    • ・労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、当該労働者が苦痛に感じて業務に専念できない。

3. 性別・性自認を問わずセクハラの被害者になり得る

異性に対する性的な言動だけではなく、同性に対する性的な言動もセクハラに当たることがあります。

また、被害を受ける者の性的指向や性自認にかかわらず、性的な言動であればセクハラに該当し得る点に留意すべきです。

4. 事業主が講ずべきセクハラ対策

厚生労働省のセクハラ防止指針では、事業主に以下のセクハラ対策を講じることを求めています。

  1. ①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  2. ②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. ③職場におけるセクシャルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
  4. ④①~③の措置と併せて講ずべき措置

4-1. 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

事業主は、セクハラに関する方針の明確化、および労働者に対するその方針の周知・啓発として、次の措置を講じなければなりません。

  1. ①セクハラの内容や、セクハラを禁止する旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発する。
  2. ②セクハラを行った者については厳正に対処する旨の方針および対処の内容を、就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発する。

なお、上記の周知・啓発に当たっては、セクハラの発生原因や背景(特に性別役割分担意識)について、労働者の理解を深めることが重要であると指摘されています。

4-2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

事業主は、セクハラに関して労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、次の措置を講じなければなりません。

  1. ①相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する。
  2. ②相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じて適切に対応できるようにする。
    (例)人事部門との連携、マニュアルの整備、研修の実施

4-3. 職場におけるセクシャルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

事業主は、労働者からセクハラ被害の申出を受けた場合には、次の措置を講じなければなりません。

  1. ①事案に係る事実関係を迅速かつ正確に把握する。他社の労働者によるセクハラの場合は、必要に応じて、当該他社に対して事実関係への確認への協力を求める。
  2. ②セクハラの事実が確認できた場合は、速やかに被害を受けた労働者に対する配慮のための措置を適正に行う。
    (例)行為者との関係改善に向けての援助、行為者から引き離すための配置転換、行為者の謝罪、労働条件上の不利益の回復、メンタルヘルス不調への相談対応
  3. ③セクハラの事実が確認できた場合は、行為者に対する措置を適正に行う。
    (例)懲戒処分、被害者との関係改善に向けての援助、被害者から引き離すための配置転換、被害者に対する謝罪
  4. ④改めて職場におけるセクハラ防止方針を周知・啓発するなど、再発防止に向けた措置を講じる。

4-4. 併せて講ずべき措置

上記の各事項と併せて、事業主はセクハラ防止に関して、次の措置を講じなければなりません。

  1. ①セクハラに関する相談対応および事後対応に当たり、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨を労働者に対して周知する。
    (例)プライバシー保護のために必要な事項をマニュアルに定める、相談窓口担当者に対してプライバシー研修を行う、社内報・パンフレット・社内ホームページなどによる掲載・配布
  2. ②セクハラに関する相談をしたことなどを理由として、労働者が解雇その他の不利益な取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する。

5. ハラスメントに関する最近の法整備と社会の潮流

セクハラ防止措置は2007年から事業主に義務付けられていますが、パワハラについても事業主に防止措置が義務付けられています。

大企業については2020年6月から、中小企業については2022年4月1日から、それぞれパワハラ防止措置が義務付けられました。
パワハラ防止措置の内容は、セクハラ防止措置の内容とおおむね同等です(方針の明確化および周知・啓発、相談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応など)。

社会的にも、さまざまな種類のハラスメントが提唱されるなど、ハラスメントに対する問題意識はいっそう高まっています。企業においては、コンプライアンスの一環として、セクハラやパワハラをはじめとするハラスメントの対策を徹底すべきです。

6. まとめ

法制度および社会の潮流の両面から、企業が適切なセクハラ防止策・対策を講じることの重要性は日々高まっています。
上原総合法律事務所では、労働問題に詳しい弁護士が、セクハラをはじめとするハラスメントに関する企業からのご相談をお受けしています。
お困りの方はお気軽にご相談ください。

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