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業務上横領罪とは? 要件・事例・時効・量刑・予防策・対応策などを元検事の弁護士が解説

業務上横領罪は、会社の資金を着服した役員や従業員などに成立する犯罪です。

上原総合法律事務所には元検察官の弁護士が多数在籍しており、業務上横領に関する詳細な知見を有していることを強みとし、業務上横領された会社、業務上横領した従業員の双方から多数のご相談をお受けしています。

本記事では、そのような経験に基づいて、業務上横領罪について、要件・事例・時効・量刑・予防策・対応策などを解説します。

1. 業務上横領罪とは

業務上横領罪とは、業務上自己の占有する他人の物を横領した者に成立する犯罪です(刑法第253条)。

(業務上横領)

第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

1-1. 業務上横領罪の構成要件

業務上横領罪は、以下の構成要件をすべて満たす行為について成立します。

①業務性
犯人が委託を受けて物を管理する内容の事務を取り扱っており、その立場で対象物を専有していたことが必要です。

②委託信任関係に基づく占有
犯人が他人の委託に基づき、横領の対象物を事実上支配している必要があります。

③他人の物であること
横領の対象物は、犯人以外の者の所有物であることが必要です。

④横領
犯人が委託された任務に背いて、所有者でなければできないような行為をしたことが必要です。

1-2. 業務上横領罪と単純横領罪・窃盗罪の違い

業務上横領罪は、業務上の地位にあることを理由に、横領者をより重く処罰する犯罪です。
これに対して単純横領罪(刑法252条)は、業務上の地位にない者が横領した場合に成立します。
単純横領罪の法定刑は、業務上横領罪よりも軽い「5年以下の懲役」です。

また業務上横領罪は、自己の占有している物を横領した場合に成立します。
これに対して、他人の意思に反して物の占有を奪った場合窃盗罪(刑法235条)が成立します。
窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。

1-3. 業務上横領のよくある事例

業務上横領罪が成立する行為としては、以下の例が挙げられます。

  • ・現金出納担当者が、会社のお金を着服した。
  • ・経理担当者が、架空の請求書を悪用して会社資金を別の会社へ流した。
  • ・運送業者が、運送すべき荷物を自分のものにした。
  • ・従業員が、業務用に保管していた切手や収入印紙を着服した。
     など

1-4. 業務上横領罪の量刑目安

業務上横領罪の法定刑は「10年以下の懲役ですが、実際の法定刑は罪状によって異なります。

初犯であれば、業務上横領罪の量刑の目安は以下のとおりです。

被害金額100万円以下 執行猶予付判決
被害金額100万円超1000万円以下 2−3年程度の実刑判決

ただし、横領をした回数や示談の成否などの情状によって量刑は増減します。

特に、どのようにして犯行が発覚したか、犯行発覚後にどのような対応をしたか、捜査機関に自首したかどうかなどによって、執行猶予の有無が変わってきます。

また前科がある場合は、さらに量刑が重くなることもあります。

1-5. 業務上横領罪の時効

業務上横領については、刑事上の「公訴時効民事上の「消滅時効という2種類の時効が問題となります。

1-5-1. 業務上横領罪の公訴時効

公訴時効期間が経過すると検察官は犯人を起訴できなくなります。

業務上横領罪の公訴時効期間は、横領の時から7年です(刑事訴訟法250条2項4号)。
公訴時効期間がリセットされることはありません

1-5-2. 民事上の消滅時効

不法行為の消滅時効期間が経過すると、横領された物の返還を請求できなくなります。

不法行為の消滅時効は、以下のいずれか早く経過する期間の経過によって完成します(民法724条)。

  1. ①被害者が横領被害と犯人を知ったときから3年間
  2. ②横領の時から20年間

ただし、上記の期間中に時効の完成猶予(例:内容証明郵便による請求)または更新(例:訴訟の判決の確定)に当たる事由が発生した場合は、消滅時効の完成を阻止できます。

横領された金銭などを取り戻すためには、早い段階で返還請求に着手することが大切です。

2. 業務上横領の予防策

役員や従業員による業務上横領を防ぐには、以下の対策が考えられます。

  1. ①現金を自由に引き出せない仕組みを作る
  2. ②出金履歴をこまめに確認する
  3. ③お金の動きを2名以上が把握できる状態を作る

2-1. 現金を自由に引き出せない仕組みを作る

経理担当者などであっても、自由に現金を引き出せない仕組みを作れば、業務上横領のリスクを最小限に抑えられます。

たとえば、出金の際には必ず出金伝票を作成し、上長の承認を受けるようにすることが考えられます。

また、オフィスなどに保管する現金は最小限にして、簡単に現金を持ち出せないようにしておきましょう。

2-2. 出金履歴をこまめに確認する

預貯金口座や金庫・レジなどの残高は、短期間ごとに確認すべきです。

こまめに残高をチェックしていれば、万が一業務上横領が発生しても早期に発見できます。

また、横領すればすぐに発覚することが役員・従業員に周知されれば、横領しようと考える者もいなくなるでしょう。

2-3. お金の動きを2名以上が把握できる状態を作る

横領は、犯人が「ここでお金を取ってしまっても誰にもわからない。」という状況下で出来心で行なってしまうことが多いです。
このような人は、お金を取ったら同僚に発覚すると思うと、横領に踏み切ることができません。

お金の動きを2名以上が把握できる状態にしておくことで、横領の大部分は防ぐことができます。

3. 業務上横領が発生した場合の対応策

役員または従業員による業務上横領が発覚したら、会社の被害を最小限に食い止めるため、以下の対応を行いましょう。

  1. ①業務上横領の証拠を十分に揃える
  2. ②横領者に対して返還を請求する
  3. ③横領者の懲戒処分・刑事告訴などを検討する

3-1. 業務上横領の証拠を十分に揃える

横領をした役員・従業員に厳しく対応するためには、まず業務上横領の証拠を十分に揃えることが大切です。証拠が曖昧なまま対応を進めると、後に会社が不利な立場に置かれてしまいかねません。

業務上横領を本人が認めている場合は、認める旨と横領した金品を返還する旨を記載した誓約書を提出させましょう。この時に、具体的な横領金額を記載することも大切です。

これに対して、業務上横領を本人が認めていない場合は、いっそう確実な証拠を確保する必要があります。
出金履歴などからお金の流れを調査し、その内容を整理した上で記録して、後の対応に備えましょう。
本人以外の人が横領していないことを確認するため、従業員からヒアリングすることも検討する必要があります。

また、業務上横領の疑いに対する本人の主張を確認するため、弁明書を提出させることも考えられます。

3-2. 横領者に対して返還を請求する

横領された金品については、横領をした役員・従業員に対して返還を請求しましょう。

まずは本人に対して任意の返還を求め、応じなければ裁判所に訴訟を提起することが考えられます。

身元保証人がいる場合は、その人への請求が可能かどうかも検討する必要があります。

なお、本人が自己破産をした場合であっても、横領された金品の返還は請求可能です。

破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権は、破産しても免責されないことになっています(破産法253条1項2号)。

3-3. 横領者の懲戒処分・刑事告訴などを検討する

横領をした役員・従業員に対しては、厳しい処分をもって臨みましょう。

役員については解任、従業員については懲戒解雇を検討すべきです。

ただし従業員を懲戒解雇する際には、不当解雇と判断されないように十分な法的検討を行う必要があります。

また、警察に対して告訴状を提出し、刑事告訴をすることも考えられます。刑事告訴をすれば、捜査によって犯人が検挙される可能性が高まります。

ただし、刑事告訴をするかどうかは、会社の利益の観点から総合的に判断すべきです。
刑事事件で裁判になれば、横領被害に遭った事実が社外に伝わる可能性もありますし、横領した者が会社に恨みを持っていて偏った犯行動機を裁判で語る可能性もあります。
また、本人が有罪判決を受けて刑務所に収監されれば、横領された金品の回収が困難になるかもしれません。
本人の態度なども踏まえた上で、刑事告訴すべきか否かを適切に判断しましょう。

4. まとめ

役員・従業員による業務上横領が発生すると、会社は横領による損害を被るだけでなく、その対応にも多大なコストを要します。
横領が報道されれば会社の信用にも悪影響が及びますし、役員・従業員のモラルが低下した状態では、会社の生産性も損なわれてしまいかねません。

業務上横領の発生を防ぐためには、普段から弁護士と顧問契約を結ぶなどして、従業員を牽制しておくことが効果的です。

上原総合法律事務所には、元検察官の弁護士が多数在籍しており、多数の横領事件に関する知見・ノウハウを有しています。

上原総合法律事務所では、横領被害の対策だけでなく、業務上横領に関する具体的な予防策や対応策についてもアドバイスいたします。

業務上横領の予防・対応についてお悩みの企業様は、お気軽にご相談ください。

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