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罰金が払えないとどうなる?分割は認めてもらえる?

公開日:2024年10月10日

罰金刑とは何か、分割払いは認められるのか、罰金を支払えないとどうなるのか、罰金刑を回避して不起訴処分を獲得するためのポイントについて、元検事の弁護士が解説します。

1 罰金刑とは

罰金刑とは、一定の金額の財産のはく奪を内容とする財産刑です。

刑法15条において、「罰金は、1万円以上とする。ただし、これを減軽する場合に おいては、1万円未満に下げることができる。」と定められており、罰金刑として科されるのは1万円以上ということになります。

1万円未満の金額の財産のはく奪を内容とするものは「科料」と呼ばれます

なお、同じように金銭の納付を指示されるものとして「反則金」がありますが、罰金と反則金では、その意味合いは全く異なります

罰金は、刑事手続を経て科される「刑事罰」であるのに対し、反則金は、交通反則通告制度(軽微な交通違反をした場合の手続を簡略化する制度)に基づいて課される「行政罰に過ぎません。

交通違反通告制度とは、交通違反処理の効率化と迅速化を目的として軽微な交通違反のみを対象として手続の合理化を図る制度です。

法律上、交通違反についても全て刑事手続に付されることが原則とされているのですが、反則金の納付の指示があった場合、反則金を納付すればそれ以上刑事手続は進行しないこととなります。

一方、反則金納付の指示があったにもかかわらず反則金を納付しなかった場合には、原則通り刑事手続が進行します

交通違反通告制度の対象となるのは、軽微な交通違反のみであり、飲酒運転等の重大な交通違反は交通違反通行制度の対象とならず、原則通り、刑事手続が進行することとなります。

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2 罰金刑の流れ

罰金とは、懲役等と同じく「刑事罰」ですので、公開裁判を経て科されることが原則です

ただし、簡易裁判所の管轄に属する事件で、100万円以下の罰金(科料も含みます。以下同じです。)を科す事件については「略式手続」という手続が設けられており、実務上多く用いられています。

略式手続は、迅速な処理の実現という観点から、通常の公開裁判によらず、書面の審理のみで罰金を言い渡す特別な裁判手続です。

略式手続は、検察官が起訴と同時に略式命令の発付を求めた場合に行われます。

この点、日本国憲法第37条は、刑事事件の被告人に対して「公開裁判を受ける権利」を保障しています。

略式手続はその例外として非公開で行われる裁判手続ですので、被疑者が予め検察官から説明を受け、略式手続によることについて異議がない旨を書面で明らかにしなければ、略式手続はできません。

ここで注意しなければならないのは、略式手続によるためには、被疑者が自らその事件の有罪を認めていることが前提となっているということです。

そのため、原則として、検察官は「被疑者が犯罪事実を争っている場合には、略式手続を選択することはない」ですし、被疑者の立場からすれば、「犯罪事実を争いたい場合は、略式手続開始に同意すべきではない」ということになります。

略式手続は、罰金刑が言い渡されるため自由刑が科されることは想定されない、通常の刑事裁判と異なり書面の審理のみで行われるので傍聴人に事件の内容等を知られることがない、手続が比較的早く終わるなどの多くのメリットがありますが、

・ 簡易裁判所の管轄に属する事件で、100万円以下の罰金を科す事件に限られること

・ 原則として被疑者が犯罪事実を争っている場合には選択されないこと

 

には注意が必要です

略式手続が進行し、裁判所が略式命令が相当であると判断した場合には、被疑者に対し、罰金の金額、命令の原因となった事実の内容等が記載された書面(略式命令書)を交付し、被疑者はそれに沿って指定の罰金を納めることとなります。

 

刑事事件の流れについてはこちらをご参照ください

3 罰金を払えない場合、分割は可能?払えなかったらどうなる?

罰金は裁判により科せられた「刑事罰」であり、原則として、必ず、所定の期間内に検察庁に納付しなければなりません

罰金は、検察庁が指定する方法で検察庁指定の金融機関に納めるか、又は検察庁に直接納めることになります。

罰金を支払わない場合、検察庁から督促状が届いたり、徴収担当者から連絡が来ることになりますし、これらの督促や連絡に応じなかった場合、財産に対して強制執行(差押え等)がされることとなり、強制執行をすべき財産がない場合には、労役場に留置されることになります。

基本的に、罰金の支払猶予や分割払いの制度はなく、定められた期間内に一括して納付しなければなりません

しかし、やむを得ない理由のために、定められた期間内に一括で罰金を支払えない場合には、納付の通知をしている検察庁の「徴収事務担当者」に相談することで、支払猶予や分割払いが認められる場合があります。

法務省が定める徴収事務規程16条1項においては、「徴収金について納付義務者から納付すべき金額の一部につき納付の申出があった場合において、徴収主任は、事情を調査し、その事由があると認めるときは、一部納付願を徴して検察官の許可を受けるとともに、検察システムによりその旨を管理する」と規定されており、場合によっては分割払いが行われることも想定されてはいるのです。

検察庁のホームページにも「定められた期間内に納付できないときは,納付の通知をしている検察庁の『徴収事務担当者』にお尋ねください。」と記載されており、もし罰金を期間内に支払えない場合には、徴収事務者にその旨を伝えることが重要と言えます。

財産がなく、罰金を支払えない場合、最終的には労役場に留置されることになります。

労役場留置とは、罰金を完納することができなかった者に対して、裁判で定められた日数分、刑務所(刑事施設内の労役場)に留置して作業させることを言います。

留置される日数は裁判で決められますが、現在、多くの裁判において1日の留置は罰金5000円相当と換算されています。

例えば、罰金20万円で1日の留置が罰金5000円相当とされた場合には、40日間留置されることとなります。

ただし、刑法18条において「罰金を完納することができない者は、1日以上2年以下の期間、労役場に留置する。」と規定されていますので、罰金を支払えなかった人の労役場留置の期間は、1日以上2年以下の範囲内となります。

4 罰金刑も前科?

前科とは、一般的に、刑事裁判で有罪判決を受けその刑が確定した事実をいいます。

令和6年9月30日現在、刑罰の種類としては、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料がありますが、これらの刑が確定した場合には、いずれも前科となります

罰金刑であったとしても、それが確定した場合には前科となるのです。

そのため、転職活動の際に提出を求められる履歴書の「賞罰欄」には、罰金の前科も記載しなければなりません。

申告しなかった場合、経歴詐称として採用後に懲戒処分を下されるおそれがあります。

また、罰金の前科は、各種法律によって行政処分や資格制限の事由になりえます

例えば、医師法は「罰金以上の刑罰」に処されたものに対して医師免許を制限する処分をすることがあると定めていますし、宅建業法は「宅建業法又は一定の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり・・・5年を経過しない者」を欠格事由として指定しており、罰金を払い終わった日から5年間は、宅建業免許や宅建士登録はできないこととなります(元検事の弁護士が宅建士が逮捕されたらについて解説 | 元検事の弁護士へのご相談なら (keiji-kaiketsu.com)

5 罰金刑を避けるためには

罰金刑になり得る犯罪は数多くありますが、代表的なものとしては、刑法上の窃盗罪傷害罪器物損壊罪等のほか、痴漢(各都道府県における迷惑防止条例違反)盗撮(性的姿態撮影等処罰法違反)などが挙げられます。

罰金刑を回避するためには、不起訴処分(検察官による公訴を提起しない処分)を目指した活動をすることが重要です

被害者が存在する事件で、実際に犯罪に及んでしまった方は、被害者に謝罪と被害弁償を行い示談をすれば、不起訴処分に近づくことになります。

この点、被害者との示談交渉を自分でしようとするのには注意が必要です。

被害者が警戒して被疑者本人と連絡をとるのを拒むことが多いこと、そもそも被疑者本人が被害者の連絡先を知らなければ進めることは不可能なことなどから、被疑者本人で行うことは非常に困難ですし、示談交渉自体がトラブルの種になりかねません

このような場合は、弁護士を入れることをお勧めします

弁護士であれば、被害者が警戒を解いて連絡をとってくれる可能性は高いですし、捜査機関は、被害者の承諾を得られれば、その連絡先を開示してくれます。

弁護士が被害者の心情に寄り添った上で交渉を進めれば、トラブルになる可能性は低くなります。

そのほか、不起訴処分の獲得のためには、犯罪を犯した原因を除去し、再犯防止を図ることも重要です

精神的な疾患が犯罪の原因となっている場合には、医療機関の治療を受けることが必要となるでしょうし、監督者の不在が原因となっている場合には、監督体制を整備することが必要となります。

この点についても、効果的に再発防止措置を講じた上、検察官に適切に報告する必要があります

6 お気軽にご相談ください

上原総合法律事務所は、元検事8名(令和6年9月26日現在)を中心とする弁護士集団で、迅速にご相談に乗れる体制を整えています。

所属の元検事弁護士全員が刑事事件について熟知し、独自のノウハウを有しており、具体的な事案につき「罰金刑が予想される事案なのか」「罰金刑を回避し不起訴処分を獲得するためにどのような事情が必要なのか」などアドバイスすることが可能です。

刑事事件に関するお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。経験豊富な元検事の弁護士が、迅速かつ的確に対応いたします。

 

ご相談の流れについてはこちらをご参照ください。 

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