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雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金の不正受給が多発し、都道府県労働局が広く調査をしています。
厚生労働省は、令和3年12月9日に「雇用調整助成金等の不正受給への対応を強化します」という書面を公表し、広く調査を進めていました。
厚生労働省は、令和4年に入ってからはさらに進んで、3月4日に「雇用調整助成金不正受給の対応を厳格化します。不正受給は「刑法第246条の詐欺罪」等に問われる可能性があります」という書面を公表しました。
この書面には
・都道府県労働局が不正受給対応について都道府県警察本部との連携を強化すること
などが書かれています。
上原総合法律事務所には、日々、「雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の不正受給をしてしまったけれどもどうすればいいか」というご相談をいただいています。
このようなご相談の中には、「何もしなければ刑事事件になってしまうな」と感じる事案も少なくありません。
このような事案でも、適切な対処をすれば刑事事件化を避けることができる可能性は十分にあります。
本記事では
・どのような事案が刑事事件になるか
・刑事事件化を防ぐための方法
についてご説明します。
雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の不正調査は、労働局や会計検査院が行っています。
労働局や会計検査院は国の機関ですが、労働局や会計検査院が把握している情報がすぐに警察や検察といった捜査機関に伝わるわけではありません。
雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の不正受給については、事案に応じて労働局が警察に被害届を出すなどし、警察・検察に情報が伝わります。
このようにして情報が伝わると、警察・検察は必要に応じて不正受給をした人及びそれに関わった人を逮捕し、取調べ、刑事裁判にします。
雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の不正受給は被害額が高額になることも多く、逮捕されればメディアで実名報道される可能性が高いですし、刑事裁判で有罪となれば、実刑(実際に刑務所行きになること)になる可能性が高いです。
このように、雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の不正受給で刑事事件になるというのは、単にお金を返さなければいけないというレベルにとどまらず、とても大きな不利益が生じます。
なお、刑事事件で有罪・実刑になったからといって、不正受給したお金を返さなくても良いことにはならず、不正受給したお金を返す義務は残ります。
全ての不正受給が刑事事件にされるわけではありません。
刑事事件は厳格な手続で行われるため、警察に刑事事件として扱ってもらうためには、労働局において多大な労力を割いて事実を調査し、証拠を集め、警察が求める形に整える必要があります。
労働局にも人手に制限があるので、発覚した全ての不正受給を刑事事件にすることは困難です。
そのため、労働局は、数ある雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金不正受給の中で警察に刑事事件として扱ってもらうべき事案を選び、その事件にエネルギーを集中させることになります。
では、 どのような雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金不正受給が警察に刑事事件として扱ってもらうべき事案ということになるのでしょうか。
上原総合法律事務所では、以下のようなことが考慮要素となると考えています。
雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の不正受給をした場合、労働局や会計検査院の調査が入る前に自分から不正受給であることを報告することが理想的です。
また、自分から不正受給であることを報告する前に労働局や会計検査院の調査が来てしまった場合、調査に対して事実を正直に伝え、十分な証拠を提出することも大切です。
実は、誠実に対応することは簡単ではありません。
不正受給をしてしまった方は、不正受給したことをとても後悔していますし、とても不安で正常な思考がしづらい状況になっています。
そのため、「黙っていればバレないないんじゃないか」「口裏合わせをすれば乗り切れるんじゃないか」などと考えてしまいがちです。
ですが、このような考えは非常に危険です。
口裏合わせをしても誰かが喋ってしまうかもしれませんし、労働局や会計検査院の検査は甘くありませんので、証拠の矛盾点を突かれて言い逃れできなくなる可能性も少なくありません。
そして、口裏合わせをしたりごまかそうとしたりするという態度を見せてしまうと、そのような態度自体が悪質さを増やしてしまいます。
誠実な対応をしていれば刑事事件化が避けられる事案であっても、不誠実な対応であることにより刑事事件になりかねません。
いかに誠実に対応するか、ということがとても大切だと考えます。
雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の不正受給の中にもいろいろな手口があります。
実際に雇っている従業員を休業させている会社が休業時間を水増ししたり、休業手当を従業員に支払っていないのに支払っていることにしたり、というのが不正の典型例です。
これに対し、より悪質性が増すのは、 「架空」という要素が入ってくるものです。
そもそも存在しない従業員を雇っていることにして雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の申請をすると、理屈上、無制限に不正受給できる可能性が生じます。
さらには、そもそも事業自体が架空である不正受給事案もあると聞きます。
事業自体が架空である場合は、守るべき事業というものがない分、従業員が架空である場合よりも悪質性が高いと評価されると考えられます。
また、不正受給の手口を他人に指南してお金を得ている場合、自分だけではなく他人にも不正受給をさせているという意味で悪質性が高いと評価されると考えられます。
言うまでもありませんが、不正受給の金額が大きければ大きいほど被害が大きいと言えます。
雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の不正受給をしてしまったという場合、不正をしたという過去の事実を変えることはできません。
そのため、未来を変えるためにできることは今現在からの行動を変えることです。
今現在から誠実な行動をする必要があります。
すでに労働局や会計検査院の調査が入っている事案においては、事実を正直に説明し、求められている証拠を提出するべきです。
まだ労働局や会計検査院の調査が入っていないのであれば、調査がなされるよりも前に自発的に不正を申告すべきです。
調査が入ってから正直に説明するよりも、より誠実さが伝わります。
誠実な対応をすることを前提に、会社に有利な事情についても労働局や会計検査院に理解してもらう必要があります。
雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の不正受給は悪いことですが、なぜ不正受給をしたのかについては、 必ず理由があります。
例えば
・感染拡大の影響で業績が悪化して不安で精神的に病んでしまい、正常な判断が全くできなかった
・指南役に「犯罪ではない」「みんなやっている」「受給資格がない場合には申請が却下されるから大丈夫だ」などとだまされた
など、様々な事情があります。
このような事情は、不正受給をなかったことにはしてくれませんが、有利な情状になり得ます。
有利な情状については、適切に伝えなければ理解してもらうことができないため、しっかりと準備をして伝える必要があります。
不正受給をしたのですから、お金を返さなければいけません。
また、 雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の不正受給をしてしまうと、不正受給をした時以降の助成金について、本来であれば正当に受給できた部分も含めて返金しなければなりません。
さらに、その返金額の2割に該当するペナルティと、受給日から年3%で計算した延滞金も支払わなければいけません。
これは、 不正受給をした方にとってとても大きな負担になります。
多くの方は、経営に困って 雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の不正受給をしています。
そのため、支払わなければいけないお金はすぐに一括で払えないという方も少なくありません。
このような場合、分割での返済で許してもらえないか、ということを交渉していくことになります。
そもそも、雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金は、労働者を保護するための制度です。
労働局も、できることなら事業を継続させて雇用を維持したいと考えています。
ですので、場合によっては分割払いにも応じてもらうことができます。
分割払いにも応じてもらうためには、 それまでの調査対応や報告において誠実性を示し、分割にしてもちゃんと払ってもらえる、と労働局に感じてもらえるようにしておくことが大切だと考えます。
上原総合法律事務所では、雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の不正受給をしてしまった、刑事事件化を避けるためにどうすれば良いか、 というご相談を多数いただいています。
上原総合法律事務所では、事案に応じ、刑事事件化を避けるべく、個別具体的な対応をしています。
感染拡大により経営が急速に悪化する中で、魔が差して不正受給をしてしまった、という方は少なくありません。
そのような方がどうにかこの問題を乗り越えて事業を継続したい、 という局面においてお力になれることに、とてもやりがいを感じます。
上原総合法律事務所では、雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の不正受給案件を熟知した元検事の弁護士が迅速にご相談に乗れる体制を整えています。
お困りの方はお気軽にご相談下さい。
雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金についてご相談いただく際の流れはこちらをご覧ください
雇用調整助成金不正受給をしたらどうなるかなどについてはこちらをご覧ください
雇用調整助成金について労働局などから手紙が来たらどうすべきかについてはこちらをご覧ください
雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の不正受給として公表されるのを避ける方法についてはこちらをご覧ください
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※事案の性質等によってはご相談をお受けできない場合もございますので、是非一度お問い合わせください。
弁護士 上原 幹男
第二東京弁護士会所属
この記事の監修者:弁護士 上原 幹男
司法修習後、検事任官(東京地方検察庁、奈良地方検察庁等)。検事退官後、都内法律事務所にて弁護士としての経験を経て、個人事務所を開設。 2021年に弁護士法人化し、現在、新宿事務所の他横浜・立川にも展開している。元検事(ヤメ検)の経験を活かした弁護活動をおこなっている。
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